バランタイン・カウフ 単語

バランタインカウフ

2.6千文字の記事

バランタイン・カウフValentine Kauf)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。

概要

フェザーン自治領公民男性歴史上のフェザーン独立商人で、本伝3巻雌篇(帝国489年、宇宙798年)より「半世紀ほど昔」に、全財産を失った青年の身から噂話をたよりに財を成し、"今年のシンドバッド賞”を3回受賞して巨億の財閥を築くに至った、銀河商人伝説な人物である。

古くはカルタゴバスラから近くはマーズポート、プロセルピナまで連綿と続いてきた「”冒険と野心天国”の人類史的結集」フェザーン自治領と、独立商人が集まり玉石混淆の情報をやり取りする場『ドラクール』を物語のひとつとして紹介されるのが、彼カウフの成功のエピソードである。全人類宇宙から『ドラクール』に流れ込む情報をみごとに活用して成功したカウフの伝説は、のちのちまで商人たちの語りぐさとなっている。

銀河商人伝説

破滅篇

商人バランタイン・カウフのスタート地点は、「中堅どころの商」という地位の父親のもとに生まれ、その跡をついだところ。しかし開始々にして謀な投機に挑んだカウフ、全財産ロストの憂きにあう。破滅エンドRTAじゃないんですけど!?とはいえここからでも再出発は可なのでゲーム続行。

そこでカウフは、切な友人の助けを得、保証人になってもらって小さな鉱石輸送を購入する。しかしここでランダムイベント「磁気」が発生。輸送は難破し、カウフ当人どころか頼みの友人までも巻き添えで破産においやられてしまった。さすがにリセット案件しょこれは。

かくして八方塞がり、処刑台でレンネン寸前。これ以上の進行を断念したカウフは、友人を受取人として自分に保険をかけて自殺し、せめて借りの一部だけでも返そうと思い詰めた。いきなり投機で全財産をなくした軽率な男とはいえど、流石友人まで破産させてしまったことには良心がとがめたのだろうけど、やっぱり根がギャンブラーの発想じゃない?

だが、最後のを楽しむべく『ドラクール』を訪れた彼のもとに、隣のテーブルから話しが聞こえてくる。これが大逆転レアイベなのだった。

立志篇

に届いた話しは途切れ途切れだが、どうも銀河帝国貴族が権力闘争にやぶれ、自暴自棄の叛乱に及ぼうとしている……という感じの内容。だがこの断片的な噂が人生を変えることとなる。噂話の内容から彼が導き出した話題の人物の領地からはとある鉱物が産していて、生じる内乱が一ヶ程度としても、そのあいだ不可欠のものとして不足を見せることになりそうだった。

そこでカウフは、三度にして人生最大の賭けに出る。彼は強引な借金で元手をつくり、幾種類かの戦略物資を買い占めたのだ。すでに二回も全財産が吹き飛んでいるんだからある意味ノーリスクでハイリターン怖いものしではあるが、強引にでも金を集められたあたり、序盤の不運の分が返ってきた感がある。神はサイコロを振らないかもしれないが、乱数を偏らせるのは稀によくある

そして一週間後に内乱が勃発し、カウフは賭けに勝った。挙げた利益は商を1ダース買い込めるほどになった。その半数は、大恩ある友人へと贈られた。それ以降、独立商人として驚くべき立身をとげたカウフは、精力的な活躍により巨億の富を得て、カウフ財閥を築き上げてゆく。50代なかばで急逝するまでに、独立商人が憧れる“今年のシンドバッド賞”を獲得すること三度に及んだのである。

回顧篇

かくしてバランタイン・カウフの名は、商業国家フェザーン歴史上でも出色の存在となり、独立商人たちのと野心の標たる英雄的存在になった。もっとも彼の6人いた息子はどれもの才行動力も持たず、本伝の時期までに財閥を四散させてしまったが、それはカウフの成功をけしてませはしない。

もうひとつ、生涯にわたるカウフの忠実な友人、オヒギンスが寄附して設立された商科大学は、カウフ財閥のごとく消え去ることなく、フェザーン最大の商科大学にまで成長した。もとより人材を一の資とするフェザーンにあって、独立商人経済学者経済官僚を多く輩出したその大学の功績は大なるものがある。作中では、オヒギンスをカウフ以上にフェザーンに貢献した人物」とまで評している。

その商科大学には、(あまり洗練されていないが)若者の心にひびく標語が掲げられていた。

今日のきみは名の新人、しかし明日カウ二世に!

ほんもののカウ二世は6人全員だったじゃんとか言っちゃいけないよ。
標にするにはちょっと勝負師気質が過ぎるとも思うよ。

アニメへの登場

キャラクターエピソードともにアニメには登場していないが、『Die Neue These』第30話「細い一本の糸」はフェザーンに注してその社会の様子を描写しており、「バランタイン・カウフ記念商科大学が登場する。学内には初代自治領レオポルド・ラープの彫像が置かれ、フェザーン自治領の成立を説明するための演出として使用されている。

大学じたいは特段この回のストーリーに関わっていないが、この回の原作といえる「雌篇」第三章「細い一本の糸」はカウフのエピソードが語られる章でもある。アニメに盛り込みきれなかった原作エッセンスの断片をさりげなく漂わせた、原作読者へのファンサービスといえる。

余談

彼の立身のきっかけとなった銀河帝国貴族叛乱について、作中(雌篇第三章)に明記された会話は「……それで侯爵皇帝を擁立しようと……ところが逆に軍務尚書は……」「……自暴自棄に……おいつめられて……兵を……糧はしないが……言ってみば、あの身体では食われる寸前の豚の叛乱……」というもので、詳細は特に述べられていない。カウフの出来事が「半世紀ほど昔」のエピソードだという作中の記述からすると、大雑把帝国440年頃の出来事ということになる。

時期的には第27代皇帝マンフレート2世の(399年崩御)から第35代オトフリート5世(456年崩御)のあいだ、第二次ティアマト会戦が436年だが、当時の皇帝定できないことからわかるように、このあたりの帝国内については作中の記述自体が多くなく不明点が多い。なお、この時期の貴族叛乱として、486年より「六〇年ほど前」に鎮圧されたヴィレンシュタイン公爵の叛乱は存在する。

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