バンカーバスターとは、地面に突入して地中で炸裂する地中貫通爆弾の総称である。
この種の爆弾が登場し始めたのは第二次世界大戦のころ。当時のドイツ軍はUボート基地の上に「ブンカー」と呼ばれる厚さ5mものコンクリート製の巨大な屋根を築いて連合軍の爆撃をほぼシャットアウトしていた。そこでイギリス軍の変態紳士達はなんとかこれをぶち抜こうと様々な趣向をこらした装甲貫通爆弾を考えだした。
まず空軍が造り出したのは5トン爆弾「トールボーイ」と、“地震爆弾”の異名を持つ「グランドスラム」10トン爆弾というほぼ同型の涙滴型爆弾であった。両者はその硬い装甲と音速を超える落下速度で地面やコンクリートを容易にぶち抜く怪物爆弾であった。
…が、ここはさすが紳士の国。特に10トン爆弾グランドスラムには語るべきエピソードが尽きない。まず生産が大変。コイツの全長は7.7m。その巨体に炸薬を詰めるのが大変で、熱して溶かした炸薬をバケツリレーで流し込み、冷えて固まるまで一ヶ月を要したため生産性は悪かった。そして作戦には魔改造して機体一杯に弾倉扉を広げたランカスターを用いたが、生産数が少なかったので投下に失敗した際は基地まで持って帰ることになっていた。
グランドスラムの威力は絶大で、分厚いブンカーを貫通してその下の地面に突入した、橋を狙って投下したものがかなりずれて落下してしまったが、炸裂による地震で目標の橋も破壊された、などすさまじい戦果が残っている。ただ不発も多かったらしく、炸薬の炸裂よりも10トンの鉄の塊が落下したことによる被害のほうが大きかったらしい。
余談だが、もし日本が降伏しなかった場合はグランドスラムで海底の関門トンネルを破壊したり、米軍がグランドスラムをさらに大型化した20トン爆弾「クラウドメイカー」を戦線投入したとも言われている。
もう一つ、イギリス海軍はトールボーイやグランドスラムとは別の地中貫通爆弾を投入していた。両者は命中率が悪かったのでその辺りを改善した爆弾を新たに開発したのだ。ディズニー制作の戦意高揚映画を参考に開発されたため「ディズニーボム」と呼ばれるそれは重量こそ2トンと小ぶりだが、細長い弾体とロケットによる加速で装甲目標を確実に貫通できるものになっていた。前二者よりも生産性が高い上に不発が少なかったのでこちらのほうがより多くのUボート基地を破壊することができたようだ。
1991年の湾岸戦争で、多国籍軍はフセインが潜伏している可能性がある建物やバンカーを片っ端から徹甲爆弾で破壊していたが、北タジの航空基地に2箇所存在する指揮用バンカーは途方もなく頑丈で、F-117が投下するGBU-27徹甲爆弾でも破壊できなかったため、米空軍は米本土の空軍航空機兵装システム部にこのバンカーを貫通できる徹甲爆弾の開発を命じた。[1]
数週間の不眠不休の作業の末、彼らはGBU-28「ディープ・スロート」を完成させた。分厚いコンクリート壁を貫通する新素材など研究している時間も無かったので、陸軍の予備在庫として残っていた203mm榴弾砲の砲身を加工し、GBU-27の誘導装置を取り付けた。投下実験では厚さ6.7mの強化コンクリートを貫通した。
完成したわずか2発のGBU-28が停戦前日の2月27日にサウジアラビアに運び込まれ、2機のF-111に1発ずつ搭載されて爆撃を実施、少なくとも1発が命中し、目標を破壊している。
GBU-28はその後も生産されたが、F-111が退役したため現在はF-15E専用となっている(一応B-2にも搭載できる)。全長5.7m、直径36cm、重量2.1トン。
完成したGBU-28であったが、目標であった深さ100mの施設を破壊するには遠く至らなかった。米軍は核弾頭搭載のバンカーバスターであるB61を開発したが、核を持ってしても深さ100mはまさに難攻不落であった。そこで米軍は地下深くまで自ら掘削する爆弾を試作してテストを繰り返した。その中には先端に削岩機のような高速振動する楔を取り付けたり高速回転により地中にねじ込まれる文字通りの「ドリルミサイル」もあったが、それでも地下100mには届くことはなかった。さらには開発中に別の問題も生じた。爆弾の貫徹力を上げるには爆弾を細く長くする必要があるのだが、そうすると今度は搭載炸薬が減ってしまって施設を破壊するには至らなくなってしまうのだ。最終的に米軍は貫徹力よりも破壊力優先の方向で妥協し、現在30000ポンド(13.6トン)の地中貫通爆弾MOP(Massive Ordnance Penetrator)を開発中である。
その一方で炸薬を積むのを諦め。落下の運動エネルギーのみで地下100mの施設を直接破壊しようというプランも存在する。「神の杖」の通称で知られる「運動エネルギー爆撃」だ。
これは衛星軌道上にあらかじめ全長6m、直径30cm、重量9トンのタングステン製の杭を打ち上げ、目標上空で減速。マッハ10の猛スピードで瞬時に大気圏を突き抜けて地面に激突。TNT火薬12トン分の運動エネルギーで地下100mまで達して施設を直接破壊するというものだ。…だが、ICBM以上の命中精度で施設にピンポイントで落下させねばならないなど課題も多い。
掲示板
26 ななしのよっしん
2023/07/05(水) 01:41:32 ID: RLQXPs3orT
>中には核兵器の影響も及ばない地下100mのものまであったからだ。
メガトン級の大型の熱核兵器なら地上起爆で蒸発or破砕できる深度だぞ()
27 ななしのよっしん
2023/07/05(水) 01:51:54 ID: CLrT6LsbAO
バンカーバスターに核弾頭つければ最強では?んな簡単じゃないか
28 ななしのよっしん
2023/12/02(土) 10:37:20 ID: jmsYw9U8n7
イスラエルに大型地中貫通爆弾「バンカーバスター」100発を提供
https://
アメリカがイスラエルに対して大型の地中貫通爆弾、いわゆる「バンカーバスター」を提供したとアメリカメディアが伝えました。
ウォールストリート・ジャーナルは「BLUー109」の提供は「民間人保護のためより小さな爆弾を使うようイスラエルに促していると伝えられるバイデン政権の姿勢と矛盾するものだ」という専門家の指摘を紹介しています。
また、ウォールストリート・ジャーナルはイスラエルの情報機関が世界各地にいるハマスの指導者を殺害するため準備を進めていると伝えています。
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最終更新:2025/03/11(火) 09:00
最終更新:2025/03/11(火) 08:00
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