パンサラッサ
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パンサラッサ(Panthalassa) とは、2017年生まれの日本の競走馬である。
パンサラッサ Panthalassa![]() |
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生年月日 | 2017年3月1日 | 性・毛色 | 牡・鹿毛 | ||
父 | ロードカナロア![]() |
馬種 | サラブレッド | ||
母 | *ミスペンバリー![]() |
馬主 | 広尾レース(株)![]() |
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母父 | Montjeu![]() |
調教師 | 矢作芳人 (![]() |
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馬名意味 | かつての地球に存在した 唯一の海(父名より連想) |
生産者 | 木村秀則 ( ![]() |
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主な勝鞍 | 2021年: | 福島記念[GIII] | |||
2022年: | ドバイターフ[![]() |
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競走馬テンプレート |
2017年3月1日、新ひだか町の木村秀則牧場で誕生。オーナーは一口馬主クラブの広尾サラブレッド倶楽部こと広尾レース株式会社。募集価格は1口1.6万円×2000口 (=3200万円)であった。
木村秀則牧場は広尾レースおなじみの牧場で、パンサラッサを含め2021年までの広尾レース所有の重賞勝ち馬6頭のうち3頭がこの牧場の生産馬である。
父ロードカナロアは言わずとしれた世界の短距離王で、種牡馬としても大活躍中。彼譲りのスピードを持ちつつも母系の血統の能力も引き継いだ産駒が多く、アーモンドアイを筆頭に距離の融通が利く産駒も少なくない。なお、「パンサラッサ」という名前はハワイの海神カナロアを名の由来とする彼の名から連想したものである。
母*ミスペンバリーはアイルランド生まれの外国産馬で、競走馬としては7戦未勝利に終わったが、母としては重賞2着馬を複数送り出しまずまずの成績を残している。牝系は本馬から数えて4代母のItchingの半弟には仏GI2勝の*クロコルージュがいるが、そこまで遡らないと一流馬は出てこない感じの血統である。
母父Montjeu(*モンジュー)は20世紀最後の欧州最強馬。日本では1999年の凱旋門賞でエルコンドルパサーを破り、同年のジャパンカップにも参戦してスペシャルウィークに敗れたことであまりにも有名。彼の血統は非常にスタミナに優れており、1歳下のタイトルホルダーも母の血統に*モンジューが入っている(母父父)。
海外遠征に強みを持つ矢作厩舎に入厩し、2歳9月に阪神競馬場でデビュー。初戦はロータスランド(2021年関屋記念・サマーマイルシリーズチャンピオン、2022年京都牝馬ステークス)、2戦目はアカイイト(2021年エリザベス女王杯)という後の重賞馬の後塵を拝するも、3戦目で初勝利。レース展開としては1戦目は中団からの競馬となったが、2戦目からは逃げ・先行戦術で2着→1着と結果を出したため、スタートで出遅れない限り逃げ脚質の競馬を定着させていく。なお、基本的に逃げ馬だが、必ずしもハナを奪うわけではなく、他の逃げ馬とかち合った場合など展開次第では2~4番手あたりに控える先行策を取ることも少なくない。
しかしその後は自己条件、ホープフルS、若駒Sと3連敗。弥生賞ディープインパクト記念も9着に敗れ、さらに体調も崩してしまい春のクラシックには出られず。しかし一休みした6月の自己条件戦では2馬身半差で逃げ切り勝ちを決める。次走に格上挑戦となるGⅢラジオNIKKEI賞を選択すると7番人気を覆して2着に好走し、賞金を加算する。しかしその後再び頭打ちになり、神戸新聞杯では12着。リステッド競走では2着、4着と善戦したが勝てず、年末の初ダートで11着と惨敗して3歳を終える。
4歳初戦は2着。しかし中山記念ではゲートでつまずいて出遅れ中団から伸びられず7着。福島のリステッド競走を除外されたため方向転換したマイラーズCは左前脚の跛行で登録除外と運も味方せず。復帰に時間もかかり、結局半年休養して秋競馬で復帰。初戦のリステッド競走オクトーバーSで逃げ切り勝ちを収めOP初勝利を挙げる。
次走はGⅢ福島記念 。前年ラジオNIKKEI賞以来の福島となった。本馬は単勝9.0倍の5番人気という単穴ポジションに落ち着く。
4枠8番からスタートを決めたパンサラッサ、2度目のコンビとなった鞍上の菱田裕二は押して逃げの手を打ち、後続との差を広げ2~3馬身のリードを確保する。前は4頭がバラバラで先行、その後は10馬身以上離れる超縦長の展開。そして1000mの通過タイムは驚きの57秒3 !撃沈覚悟の爆逃げ……かと思いきや、菱田の手綱はそれほど動いていない。3コーナーでも後続との差は15馬身以上あり、ハイペースについてきていた先行馬はもうアップアップ……。
まさか……
そのまさかであった。残り300mあまりで仕掛けられたパンサラッサは後続との差を一気に開く。直線に入った時点で2番手集団との差は6~7馬身あまりもあった。ここで後方待機していた各馬がようやく加速してきたがここは直線の短い福島、既に時遅し。結局4馬身差をつけて圧勝、1分59秒2の好タイムで大逃亡劇を完成させてしまった。
2着につけた4馬身差は、福島競馬場の芝2000m重賞ではグレード制以降最大タイ。同じ記録を樹立したのが遡ること28年前、1993年に七夕賞を制した「暴走逃亡者」ツインターボであった。奇しくも同じ逃げ切り勝ち……どころか、同競走でツインターボが記録した1000mラップが57秒4で本馬とコンマ1秒差、勝ちタイムは1分59秒5でコンマ3秒差、上がり3ハロンも37.7秒でコンマ1秒差と、当時のツインターボと同様の粘り腰を見せ、ほとんど同じようなめちゃくちゃな勝ち方。「令和のツインターボ」として一躍注目を集めることになった。
こうして一躍次代の大逃げ馬として注目馬になったパンサラッサ、次走は有馬記念を目標にすると表明。クロノジェネシスの引退レースで話題持ちきりのレースであったが、かつて同馬が2着になった未勝利戦で1着を獲り、福島記念直後のエリザベス女王杯で大金星を得たアカイイトも出走を表明。2頭揃って出走が叶えば一波乱を起こしうる馬になるだけあり、人気投票の結果に期待が集まった。
人気投票の結果は33位。第1回特別登録を行なった馬の中では12番目。優先出走権は取れなかったものの、第1回特別登録を行った17頭のうち優先順位15位となり、(フルゲートは16頭なので)出走が確定。本番3日前の公開抽選では1枠2番の内枠を引き当て、堂々の逃げ宣言で中山2500mに挑む。
迎えた本番ではスタートを決めると内枠を活かして宣言通り逃げを打ち、最初の1000mを59秒5で入る。このタイム、あのツインターボのオールカマーと全く同じである。奇しくも舞台も同じく中山、鮮やかに逃げ切り…とはいかず、残り400mまで粘りを見せたものの最後は力尽きて13着。2年ぶりのGIはほろ苦い結果に終わった。
なお、13着という着順も1994年有馬記念のツインターボと全く同じであったが、ツインターボは13頭立てで大差のシンガリ負けであったのに対し、パンサラッサは16頭立てで後ろにまだ3頭抜かせなかった馬が居たという違いがある。
5歳初戦は4月の大阪杯を目標に始動。ステップにはGⅡ中山記念 を選択する。スーパーGⅡの一角を占める重賞ではあるが、この年はヒシイグアス以外能力が抜けたメンバーが居なかった前年同様比較的小粒で、本馬は出走メンバー中唯一のGIホースであるダノンザキッドに次ぐ2番人気の支持を集める。
5番枠から素晴らしいスタートを切ったパンサラッサ。前年のオクトーバーS以来の騎乗となった鞍上の吉田豊が積極的にハナを主張し、先行争いも制して単騎の逃げを打つ。道中も後続から2馬身ほど前で逃げ続け、1000m通過タイムは57秒6 。福島記念に匹敵するハイペースである。さらに3角で垂れ始めた先行馬を置き去りにして差を広げ、6~7馬身のリードを取ってただ一頭直線に突入する。この時点で馬群は縦長になり、人気のダノンザキッドは早めの押し上げでようやく中団という段階だった。
まさか……また……!?
直線も鞍上のゲキに応えて粘るパンサラッサ。ついていった先行馬と早仕掛けのダノンザキッドは完全に撃沈し、入れ替わって中団から人気馬カラテやアドマイヤハダルが押し上げてきたが、全て遥か後方のこと。残り100mを過ぎてカラテが2番手争いを制して差を詰め始めたが既に時遅く、もうパンサラッサはゴール板目前にいた。そのまま2着カラテに2馬身半差をつける完勝で逃げ切り、重賞2勝目を挙げた。吉田豊は2年ぶりの重賞制覇。GIIを勝利したことで、師匠超えは果たしたと言えよう。
ちなみに中山記念の約17時間前にサウジアラビアで開催されたGⅢレッドシーターフハンデでは同厩のステイフーリッシュが逃げ切り勝ちを収めており、矢作厩舎はほぼ半日の間に2カ国で重賞を逃げ切る馬を送り出したことになる。
次走はGⅠ大阪杯かと言われていたが、3月26日にドバイ・メイダン競馬場で開催されるドバイターフ (G1・芝1800m)の招待を受諾したとオーナーの広尾サラブレッド倶楽部から発表された。エフフォーリアら国内強豪との対決は一旦お預けになってしまったが、平坦コース、1800mという直近で実績のある距離、超高額賞金、遠征を苦にしない彼の気質(詳細後述)、とこちらを選ぶ理由は十分すぎるほどにある。世界を相手に大逃げを見せつけることができるか、ファンの期待は高まった。
バスラットレオン、ステイフーリッシュ、クラウンプライドと、日本馬がドバイを席巻する中発走したドバイターフ。いつも通り好スタートから先手を取るが、矢作師曰く「ナイターを気にしたのか」、前2走ほどは後続を突き放せない逃げになる。と言っても、1000m通過は58秒台というハイペース逃げであり、直線ではそれについてきた先行馬を突き放していく。そこに入れ替わるように外から飛んできたのが前年の同レース覇者である英国馬Lord North。さらに馬群の中にいたはずの日本馬ヴァンドギャルドが残り150mで急加速、一気に抜け出し大外から追い込む。パンサラッサとの差はみるみる縮まり、3頭が完全に重なったところがゴール板。
写真でも角度によって見え方が変わるほどの僅差となったが、長い写真判定の結果、パンサラッサとLord Northの同着優勝 で決着。初GⅠ制覇を珍しい形で成し遂げたパンサラッサは、世界にその名を轟かせた。
矢作芳人厩舎はこの日ドバイで3勝目。鞍上の吉田豊は2008年マイルCS(ブルーメンブラット)以来14年ぶりの国際GⅠ勝利、28年目にして初の海外重賞勝利を成し遂げた。
次走はそのまま欧州へ転戦してロイヤルアスコットを目指すプランもあったが、世界情勢などを考慮して帰国、宝塚記念での凱旋レースということになった。
春天を圧勝したタイトルホルダーとの逃げ馬対決をはじめ、大阪杯で苦杯をなめたエフフォーリアら現役最強中距離勢との対決はもちろん、距離延長になる阪神2200mで大逃げが決まるかに注目が集まった。
ファン投票では15位に入り、有馬記念から大幅にランクアップ。当日のオッズは距離延長を不安視されたか、単勝10.2倍の6番人気にとどまる。
レース本番。序盤は大方の予想通り、タイトルホルダーとのハナ争いになる。タイトルホルダーが抜群のスタートを切ったためややもたつくが、1コーナーに差し掛かるあたりで「スタコラサッサとパンサラッサ」というカンテレ岡安アナの迷実況をよそになんとか先頭に立った。だがそのハナ争いの結果、できあがったペースは2000m台の中距離レースでは異常と断言出来るスタート1000m57秒6 。あのサイレンススズカでさえ58秒6だったので、飛ばしすぎもいいところである。1600mの通過タイムは1分33秒4 で、前年のドウデュースの朝日杯FS勝ちタイムより速いというまさに狂気のハイペースとなった。
さすがにこのペースでは逃げ切れず、4コーナーを過ぎ、直線に差し掛かる頃にはタイトルホルダーに抜かされ、後続にも抜かれる一方。しかしそもそも普通ならそのまま最後方まで撃沈するはずのペースでありながら、9着のステイフーリッシュに2馬身差の8着まで粘ったのはさすが海外GI馬……いやいやおかしいって。なんで8着に粘れるんだ。実際、走破タイムや上がり3Fの数字だけを見ると、先の福島記念や中山記念と比べても遜色のないタイムで駆け抜けている。GI級[1]以外の馬で先着を許した相手はマイネルファンロンだけであり、もしGII級以下の馬が相手のレースなら十分勝負になっていたと思われる。
GI級の相手がズラリと揃った中距離レースではさすがに逃げ切れなかったが、そもそもパンサラッサのこの超ハイペース逃げは普通なら道中10馬身は離した独走大逃げになるはずのもの。しかしそこに2番人気のタイトルホルダーが着いてついていったことで全体がそのペースに付き合わざるを得なくなり、一番後ろにいたアリーヴォの1000m通過タイムが、去年の宝塚記念の先頭の1000m通過タイムと変わらないという異常なレース展開となったのである。この超ハイペースによりタイトルホルダーはこれまでのコースレコードを0秒4更新する2分9秒7 のタイムを叩き出したが、パンサラッサがこのレコードの樹立とレースの盛り上げに一役買ったのは間違いない。
次走は、海外転戦も含め慎重に考えられていたが札幌記念(GII)に向かうとクラブ内で発表があった模様。
パンサラッサの他にもソダシやグローリーヴェイズ等、GI馬5頭が出走予定というかなり豪華な面々が揃った。また、パンサラッサは同じく逃げ馬として注目を浴びているジャックドールとも初対戦となる予定で、GIIながらGI並みのハイレベルなレースになるのではないかと注目が集まっている。
ともあれ、稀代の超ハイペース大逃げ馬として確固たる地位を確立したパンサラッサ。もはやツインターボという先達の名を借りる必要はない。偉大な父がかつて言われていたのと同じ称号を獲得し、世界のパンサラッサとなった彼の逃げ街道は、これからどこへ続いていくのだろうか。
ロードカナロア 2008 鹿毛 |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo 1990 鹿毛 |
Mr. Prospector 1970 鹿毛 |
Miesque 1984 鹿毛 |
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*マンファス Manfath 1991 黒鹿毛 |
*ラストタイクーン 1983 黒鹿毛 |
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Pilot Bird 1983 鹿毛 |
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レディブラッサム 1996 鹿毛 |
Storm Cat 1983 黒鹿毛 |
Storm Bird 1978 鹿毛 |
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Terlingua 1976 栗毛 |
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*サラトガデュー Saratoga Dew 1989 鹿毛 |
Cormorant 1974 鹿毛 |
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Super Luna 1982 鹿毛 |
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*ミスペンバリー 2002 鹿毛 FNo.9-f |
*モンジュー Montjeu 1996 鹿毛 |
Sadler's Wells 1981 鹿毛 |
Northern Dancer 1961 鹿毛 |
Fairy Bridge 1975 鹿毛 |
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Floripedes 1985 鹿毛 |
Top Ville 1976 鹿毛 |
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Toute Cy 1979 鹿毛 |
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Stitching 1992 鹿毛 |
*ハイエステイト High Estate 1986 黒鹿毛 |
Shirley Heights 1975 鹿毛 |
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Regal Beauty 1981 黒鹿毛 |
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Itching 1989 黒鹿毛 |
Thatching 1975 鹿毛 |
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Alligatrix 1980 鹿毛 |
クロス:Northern Dancer 4×5(9.38%)、Special=Thatch 5×5(6.25%)
掲示板
535ななしのよっしん
2022/08/04(木) 12:12:20 ID: 4EbM/5z/B+
もう好調を迎え出してから1年になろうとしてるが、この衰えも気にかかってくる時期に国内のGⅡレースでやたらハイレベルな競走馬を相手取って体力を消耗しそうなのは多少惜しい気もする
まあ公営競技の面からいえば「スーパーGⅡ」の立役者になってくれるほうが日本競馬のためなのかもしれないけど
536ななしのよっしん
2022/08/05(金) 23:18:45 ID: QHkZB3OsGr
537ななしのよっしん
2022/08/10(水) 02:48:43 ID: UYvcJQKJtU
2000mはギリギリだけど札幌は平坦な2000mで1800m走れればベストパフォーマンス発揮できるらしいので今回の最有力候補かなあ・・・対抗馬はジャックドールかな?
急上昇ワード改
最終更新:2022/08/16(火) 04:00
最終更新:2022/08/16(火) 04:00
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