ヒカルドとは、漫画『キン肉マンII世』に登場するキャラクターである。
超人オリンピック ザ・レザレクション編で登場したブラジル出身の超人で、関節技と寝技を得意とする「関節技(サブミッション)アーティスト」と呼ばれる正義超人としての一面と、血を見ると敵を血祭りにあげなければ気が済まない程の残虐性を持つ「暗黒の主(ロード・オブ・ダークネス)と呼ばれる悪行超人としての一面を持つ多重人格(マルチプル)超人である。笑い声も正義超人のときは「クケケケ~」、悪行超人のときは「フィギュ~、フィギュ~」と違っている。詳しくは後述するが、彼の物語の結末がこれまでキン肉マンという物語が描いていたテーマと相反するものであり、長く読者の間で物議を醸している。
正義超人のときは、オーバーボディを着用しており、特撮ヒーローっぽいビジュアルになっている。ファイトスタイルは、連載当時総合格闘技の世界でトップに立っていたブラジリアン柔術をモチーフにしたもので、グレイシー一族やアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラらがモデルになっていると思われる。正義超人といっても、イリューヒンらと同じく残虐超人寄りの性格であり、相手を挑発したうえでいたぶることもあった。また、鍛錬によって尋常ではないほど首が強靭になっており、高角度からの落下技で叩きつけられてもこれを無効化してしまう。
オーバーボディの下に隠された真の姿「暗黒の主」は、巨大な鋭い牙と全身が細かいうろこで覆われたピラニアの特徴を備えており、左頭部には鎖のついた角が生え、見るからに邪悪で、醜悪な姿をしている。この禍々しい姿を目撃した正義超人たちも思わず恐怖を感じていた。ただし、ハラボテ・マッスルの中では息子のイケメンのほうがもっと醜いようだ。体格も正義超人時より一回り大きくなっていることからパワーは上で、凶器攻撃やラフプレイ、相手を殺害する勢いで攻撃を続けるなど、凶悪な悪行超人そのものである。
本人は正義超人でありたいと願っており、多重人格であることに苦悩している。しかし、真の姿を見られただけで周囲からは忌み嫌われてしまい、ファイトスタイルそのものが残虐すぎることもあって悪行超人と決めつけられてしまう。なお、原作者は、正義の祭典である超人オリンピックに悪行超人が混じるのも面白いかもと考えて登場させたらしく、当初は決勝で万太郎と戦わせることを考えていたらしい。
d.M.pのアジトにおいて悪行超人の子として生まれたが、両親が正義超人の技術を身に付けさせるためにオーバーボディを着せ、ブラジルに住む寝技と関節技のスペシャリストであるパシャンゴのもとへと預けられる。当初は早くアジトに戻るために修行に励んでいたが、いつしか当初の目的を忘れてしまい、関節技の面白さに目覚めてひたすら鍛錬に励むようになっていた。
15年後のある日、d.M.pのアジトが崩壊したことと両親がそこで死亡したことを知り、ようやく自分が悪行超人であることを思い出す。しかし、正義超人として育ったことで両親の死を悲しいと思わず、本人も正義超人として生きていくつもりだった。ところが、スパーリングの最中にオーバーボディの一部が破損したことをきっかけに正体が悪行超人であることをパシャンゴに知られてしまう。
両親よりも慕っていた師匠から悪行超人であるという理由で問答無用で成敗されそうになり、血を見たことで悪行超人としての本能を抑えきれず、パシャンゴを殺害してしまう。
師匠を殺害してから1年後、超人オリンピック ザ・レザレクションのブラジル予選を勝ち抜き、出場を決める。なお、開催する日本へ向かう際に列車に無賃乗車していた(この時点で正義超人としてどうかと思うが……)。予選も無事勝ち抜き、本戦ではBブロックにエントリーされる。
1回戦では、デパートの屋上でアメリカ代表のザ・摩天楼と対戦。このときデパートまでトラックの荷台に乗せられて移動という不憫な扱いを受けたが、文句を言うキン肉万太郎たちとは対照的に冷静そのものだった。序盤は高層ビルのような巨体を誇る摩天楼のパワーファイトに劣勢に立たされていたかのように見えたが、相手の実力を見極めていただけだった。高角度から脳天を叩き落とすハイクレーバー・ボムを喰らっても強靭な首のためダメージを受けず。得意の関節技によって痛めつけ、最後はトーチャー・スラッシュによって摩天楼の巨体を股から引き裂き、難なく初戦を突破。試合後、マスクの一部が欠け、その恐るべき素顔の一部を覗かせる……。
2回戦では、師匠である伝説超人ブロッケンJr.がセコンドにつくジェイドと対戦。序盤は関節技を警戒して打撃技主体で攻めてくるジェイドと一進一退の攻防を展開。このままプロレスらしい好勝負が繰り広げられるかに見えたが、戦いの中でオーバーボディがついに砕け、「暗黒の主」と呼ばれる真の姿を露わにする。その怪異な姿に誰もが驚愕するなかで、自らが悪行超人の出身であることをカミングアウトし、生い立ちを告白する。自らの本質は正義超人だと主張するものの、ブロッケン&ジェイドの師弟からは完全否定され敵視されてしまう。だが、真の姿を見せたヒカルドは、悪行超人そのものの凶悪ファイトを見せるようになり、優位に試合を進める。トドメのトーチャー・スラッシュのモーションに入った段階ですでにジェイドに意識は無く、二階堂凛子がタオルを投げ入れたことでTKO勝ちが確定する。しかし、一度は技を解こうとしたものの悪行超人の本能によって最後まで技を続けジェイドに重傷を負わせる。この行動が物議を醸すが、「技を停めることができなかった」というヒカルドの主張が認められる。
準決勝では、パニッシュメント・Xというリング中央にあるX型の木に剣がいっぱい刺さっているという残酷なデスマッチでキン肉万太郎と対戦する。2回戦でジェイドに瀕死の重傷を負わせてしまった負い目のあるヒカルドはオーバーボディを着た状態で登場。あくまで正義超人としてのクリーンファイトで決着を付けようとする。宣言通り、関節技アーティストとして正々堂々としたファイトで戦い、バニッシュメント・Xを使わずとも万太郎相手に優位に試合を進める。また、暗黒の主の姿にビビる万太郎も、オーバーボディが割れないように修復していた。だが、バニッシュメント・Xに突き刺さった万太郎の血を見て、オーバーボディが剥がれ、暗黒の主の姿になってしまう。また、会場に姿を見せていたヒカルドの兄弟弟子たちの証言によって師匠であるパシャンゴを殺害していたことが告発される。血を見てスイッチが入ると本能に逆らえず、相手を血祭りにあげなければ気が済まなくなるヒカルドは、グロッキー状態の万太郎をさらに痛めつける。だが、火事場のクソ力を発動した万太郎のマッスル・ミレニアムを喰らい敗北。
試合後、両親の幻影が現れ、「中途半端に正義の力を学んだから負けた、悪の道に邁進すればより強くなる」と言われる。正義超人の技術を学ばせたのは自分らだというのになんたる言い草であろうか。「クラッシュマニアをミイラにしてやれ」と自殺行為になるお告げをカーメンに下した神と同じくらいひどい。
だがそれでも自分に流れる悪行超人の血を信じ、悪行超人道を邁進することを決意。傷ついた体のまま一人いずこかへと去って行く。
こうして、「自分は正義超人だ」と訴え続けたヒカルドはとうとう全てに見放され、正義超人の手によって悪行超人への道に追い込まれてしまった。
ヒカルド関連のストーリーには、正義超人として生きていたいという気持ちがありながら救いのない結末となり、悪行超人として一人で生きていくことを誓って寂しく去って行くという後味の悪さだけが残った。しかも、その後ヒカルドは作中で登場せずフェードアウトしている。「悪の心が無いと試合場に入れない」という設定の悪魔種子編では再登場・改心の絶好の機会でありながら姿を見せず、また、過去に戻って師匠パシャンゴに再会する機会を得られる究極タッグでも登場しなかった。
『キン肉マン』という作品は、「昨日の敵は今日の味方」というジャンプ漫画の王道ともいえる作風が支持されてきたのであり、初代のアイドル超人たちはテリーマン以外は最初はキン肉マンの敵というポジションだった。ヒカルドと同じように悪魔超人出身であるバッファローマンやアシュラマンも戦いを通じて友情パワーに目覚め、キン肉マンたちとの友情を築いている。
だが、ヒカルドの場合はこれまでと異なり、自らを正義超人と信じて戦い、悪行超人としての本能に苦しんでいたにも関わらず、周りから正義超人であることを真っ向から否定され、理解しあうということを拒絶された。師匠のパシャンゴは正体が悪行超人と知った途端に手のひらを返して問答無用で退治しようとし、超人血盟軍で悪魔超人出身の超人と組んだ過去のあり、自身も残虐超人(二世では悪行超人)であったはずのブロッケンJr.は「正義超人の手ほどきを受けているがその体の中にはドス黒く冷たいものが脈々と流れている」と悪行超人出身という出生だけで差別しているとも受け止められる発言をしている。一部ではその醜悪な見た目だけで仲間として受け入れられなかったのではないか?という指摘もある。
正義超人として生きていきたいという彼の願いを正義超人側は差別や偏見によって否定し、最後は悪行超人として生きていくしかないような状態に追い詰めてしまったと受け取れる結末は、これまでの『キン肉マン』の根幹を揺るがすような話であり、最後に主人公の万太郎が「悪行超人として現れてもまた倒せばいい」と突き放している。
後に連載されるようになったキン肉マンの新シリーズでは、「考えや出生の異なる敵と理解し合うこと」、「敵をも救う慈悲の心」がテーマとなっているが、それだけにこのヒカルドへの扱いは未だにファンの間で物議を醸す話題になっている。根幹設定が矛盾するため、「始祖編・超神編から二世へは繋がらないのではないか」という説も広く語られている。
掲示板
27 ななしのよっしん
2024/10/14(月) 20:49:20 ID: mIIFXU4Jo1
まず2世基準だと悪行超人ってのが犯罪者の集団だからなぁ
現在のイデオロギーの違いで、敵対していてもリスペクトし合える仲じゃなくて。ガチの敵、侵略者
マジで悪行の所業見てたら、将軍様と閻魔が手を組んで粛清に来てもおかしくないレベルなのよね
なんでヒカルドにまず必要なのは、悪行超人じゃなくて残虐超人と扱われる世界設定
28 ななしのよっしん
2025/09/18(木) 16:18:22 ID: E26d14TTSx
バッファローマンやザ・ニンジャとか元悪魔超人の正義超人がいるし、そもそもII世にもチェックメイトと言う元悪行超人から改心して正義超人になったのもいるのに、ヒカルドだけ駄目ってゆで先生は描いてておかしいなと思わなかったのだろうか?
29 ななしのよっしん
2025/09/18(木) 18:24:16 ID: CYK6LgaLvi
流石に変だと思ったからVジャンプ版のドゥームマンは
ラストに正義超人になる感じだったのかもなぁ
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最終更新:2025/12/08(月) 06:00
最終更新:2025/12/08(月) 06:00
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