ヒルドルブとは、OVA『機動戦士ガンダムMS IGLOO』に登場するジオン公国軍の試作兵器である。
初出は『MS IGLOO』第2話「遠吠えは落日に染まった」。分類はモビルタンクで、モビルスーツの上半身と戦車の下半身を持つジオン脅威のメカニズムの産物。パイロットを務めるのは戦車教導団のベテラン教官デメジエール・ソンネン少佐。名前の由来は北欧神話に登場する大神オーディンが使った偽名の一つであり戦の狼を意味する。
一年戦争開戦前、ジオン軍はいずれ来る地球侵攻の時に備えて地上用兵器の開発に着手。ドップ、ガウ、マゼラアタックといった兵器群が造り出された。しかしスペースコロニー国家であるジオンには戦車のノウハウが致命的に足りておらず、どう造ったら良いのか技術陣は頭を抱える。また国力に劣るジオンが地球連邦に勝利するには兵器の質で圧倒するしかない。そこで連邦軍の現行主力戦車こと61式戦車を凌駕する超大型戦車というコンセプトのもと、ヒルドルブの開発計画がスタートした。ところが開発が進むにつれて迷走し始め、「生産数が限られているから」と単純だったコンセプトは高性能化という名の下に肥大化してゆく。
結果、気が付けばヒルドルブは複雑怪奇なトンデモ戦車になってしまった。当然、コストも膨れ上がり、国力に乏しいジオン軍は低コスト戦車マゼラアタックの存在もあってヒルドルブに不採用の烙印を押した。小説版では、当初のコンセプト通り開発が進んでいれば、また違う道もあっただろうと表現されている。
ともあれ、評価試験が済んだヒルドルブはモスボール化され、いすごかの倉庫で眠る事になる。
時は流れ、一年戦争開戦初期の4月。ジオンの地球侵攻に伴い、ヒルドルブは再び評価対象となり第603技術試験隊へと回される事になった。評価試験内容はジオン勢力圏下の北米・アリゾナにコムサイで降下、走行・射撃を行うものであった。試験を行う地域の付近に存在する第128物資集積所が連邦軍の襲撃で壊滅していたが、所詮敵は61式戦車程度でヒルドルブの敵ではないだろうと思われた。なお、ヒルドルブは評価試験終了後そのまま現地配備とし、回収される予定は無かった。いわゆる“使い捨て”であった。軍上層部は戦力となりうる物は何でも使うつもりだった模様。
軌道上からアリゾナへ向けて降下したコムサイは突然攻撃を受け、バックアップ担当の第67物資集積所との交信が途絶している事に気が付く。被弾したコムサイを軽くすべく、ソンネンの判断でヒルドルブを地上に投下。ほどなくして集積所を壊滅させた敵は鹵獲したザクⅡ6機を運用している事が判明。ソンネンはヒルドルブの不採用が間違いだという事を証明すべく、単機で連邦軍のコマンド部隊に挑んだ。
戦闘はヒルドルブ対ザクⅡ6機と61式戦車2輌という数の上では圧倒的不利な状況で幕を開けた。しかしヒルドルブの高い性能と、凄腕の戦車兵であるソンネンの腕が合わさり、互角以上の戦闘を繰り広げる。10km以上の距離から狙撃し、初弾でザク1機を撃破。しかし敵コマンド部隊も優秀で、数の利を活かしてヒルドルブを包囲。無限軌道を破壊して足を止めようとする。そんな中、タンク形態のヒルドルブを見た連邦兵は「巨大な自走砲」と誤認している。ザクマシンガン程度の攻撃ではヒルドルブの装甲を貫通する事は出来ない、しかしヒルドルブの砲撃もまた軽快な敵を捉える事が出来ない。互いに決め手に欠く中、ついに無限軌道が被弾し、ヒルドルブが停止する。じりじりと包囲網が狭まる中、ソンネンはスモークを散布。一帯の視野を奪うと、モビル形態に変形。近接防御のマシンガンを手に、再び暴れまわる。そこから立て続けにザク2機を撃破。61式戦車2輌がヒルドルブを狙うも、相手にならず秒殺。倒したザクのパーツを巻き込み、行動不能に陥るアクシデントに陥るも、高くなった車高を逆手に利用して機体を傾かせ、片輪走行をする事で強引に移動。接近してきていたザク1機を返り討ちにして撃破した。敵機の姿は周辺から消え去り、ヒルドルブは勝利したかに見えたが……。
行動不能に陥らせたはずの敵隊長機がいつの間にか起き上がり、ヒルドルブに肉薄。機体に組み付いて行動を封じてきた。拘束されたヒルドルブはショベルアームを使って隊長葉機を打ち据えるが、ゼロ距離射撃を受ける。機体の中に飛び込んだ銃弾はヒルドルブの柔らかい内臓をかき乱し、ソンネンは瀕死の重傷を負ってしまう。が、最期の力を振り絞り、撃破したと思って背を向けた敵隊長機を背後から撃ち敵コマンド部隊を全滅させる。その直後ソンネンも息絶え、ヒルドルブも死んだように重くこうべを垂れるのだった。
U.C.0072、ヒルドルブは核融合炉を搭載した超弩級戦車として開発をスタート。
主砲は30サンチ砲(メガ粒子砲の登場により一線を退いた宇宙戦艦用の砲を転用)を搭載しており最大射程32km(有視界、ミノフスキー境下の有効射程は20km)の長射程を活かすため車高可変システムを組み込む。
この車高可変システムは同時期に開発されたモビルスーツの技術を転用した物であり、モビルスーツ同様の腕(上腕部は変形機構に合わせて、折り畳み可能な2本の可動式フレームになっている。)と改良型のモノアイ(長距離照準に合わせて改良)を搭載している。
その他にも最高速度110km/hの機動性、220tの自重に対応した片側ごとに3分割された履帯(一つが使用不能になっても移動可能)、8種類の砲弾を任意に給弾できる自動給弾システム、有視界戦闘を意識したスモークディスチャージャー、戦車壕設営用として2本のショベルアームと機体後部に格納したドーザーブレード、近距離戦闘用にザクⅠのマシンガンを短銃身に改造した物を車体右後部に搭載(ドラムマガジンは腕部収納スペースに搭載)するなど多くの装備・機構を搭載することにより戦術・戦略的な運用を可能としている。
また、これら多くの装備・機構を搭載しながらモビルスーツ技術の転用によりヒルドルブは一人の乗員により運用する事が可能になっている。(コクピット構造もモビルスーツと似た構造になっている。)
多くの技術を取り入れて開発されたヒルドルブは試作1号機による評価試験を実施、開戦2年前のU.C.0077に全ての評価試験を終える。
結果は軍不採用。
MSとAFV(装甲戦闘車両)を併用した方が柔軟な運用が可能になるとの判断を示した軍部に対して、あくまでも『戦車』としてカテゴライズされたヒルドルブはコストパフォーマンスの悪い戦車として結論付けられたのである。
※参考情報
コムサイはMS2~3機を搭載可能、HLVは全高58m、直径48m、積載荷重は250tと言われています。
マゼラアタックの重量は62t、ジオン系MSの重量は60t前後、ヒルドルブは220tです。
劇中ではコムサイからパラシュート降下を行っているが過積載により着陸が不可能だったのか、もしくは投下装置を利用した降下のテストを兼ねていたのかは不明。
ギレンの野望シリーズには、アクシズの脅威から参戦。ソンネン少佐を犠牲にする事で、開発プランを入手する事が出来る。このため、たとえ量産してもソンネンを乗せる事が出来ない。また開発時期の遅さと、ザメルの存在からソンネンを犠牲にしてまで生産する価値が無いと言われてしまっている。皮肉にも不採用と言う原作再現をしてしまった。量産機は、評価試験から得られたデータを基に改修されている。ヒルドルブがマゼラアタックやザクとともに戦う姿は新鮮。原作同様、モビル形態とタンク形態の二種類が存在する。
Gジェネシリーズでは、競合相手のマゼラアタックから進化可能。さらにライノサラスを経由して進化させる事でシャンブロやα・アジールへと繋がる。しかし完全に地上専用なので、宇宙ステージには出撃できない。
戦場の絆やエクバにも参戦しており、徐々にマイナー機の範疇から抜け出そうとしている。タンクだからかジャンプできないが、代わりにコムサイによって引き上げてもらうというシュールな動作をする。複数の弾頭を扱うことができるため、作品によってはそれらを選択して出撃できる。VSシリーズではタンク形態時、格闘攻撃ができない代わりに、格闘ボタンで現在使用している弾頭を切り替えることができる。
バトオペ及びバトオペ2にも参戦している。
その派生作品である機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairyでは本機の砲塔を再利用したドム・ノーミーデスが登場した。
ニコニコ動画ではヒルドルブを使用したVSシリーズ動画において(そのVSシリーズの略称)+ヒルドルブ視点のタグが付けられる事が多く、その数は2023年2月の時点で千を超えている。
ヒルドルブ | パンターG型 | レオパルド2 | |
全長 | 35.3m | 8.86m | 10.93m |
全幅 | 14.7m | 3.43m | 3.74m |
全高 |
8.6m(標準) 13.3m(最大) |
3.1m | 3.03m |
重量 | 220.0t | 44.8t | 59.7t |
エンジン | 核融合炉 | ガソリン | ディーゼル |
速度 | 110km/h | 55km/h | 72km/h |
武装 |
30サンチ砲 最大射程32km |
75 mm Kw.K.42 L/70 |
|
砲弾 |
通常榴弾(HE) 粘着榴弾(HESH) 焼夷榴弾(HEAT/I) |
通常榴弾(HE) |
掲示板
提供: ロードカナロア
提供: 寺本
提供: saya
提供: ゲスト
提供: 村人A
急上昇ワード改
最終更新:2025/03/24(月) 23:00
最終更新:2025/03/24(月) 23:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。