『ファイナルファンタジー』(英:FINAL FANTASY:The Spirits Within)とは、2001年(米7月、日9月)に公開されたフルCG映画である。
映画を製作したスクウェア(現:スクウェア・エニックス)のゲーム『ファイナルファンタジーシリーズ』を元にしたつもりらしいが、内容は完全オリジナルのもの。
スクウェアとハリウッドのコラボレーションによって誕生した、世界初の“CGのみの役者”によるフルCG映画。高額な制作費(後述)のほか、映画の制作に伴う皺寄せはゲーム部門にも当然起こり、あの「『ゼノギアス』の"Disc 2問題"の遠因」とも言われている。
『FF7』までの作品をメインにディレクター、プロデューサーとして中心的に関わり、「ファイナルファンタジーの生みの親」とも呼ばれる坂口博信が総合監督を務めた。氏によると「壮大な幻想科学や壮大な輪廻思想の壮大な世界観」らしい。
L'Arc~en~Cielが(世界共通の)主題歌を歌っている。坂口監督によると「日本発の映画なんだから日本人アーティストにも主題歌を歌ってほしい。同時に日本公開時の宣伝につなげたいという狙いもありました」(日経エンタテイメント!『メイキング・オブ・ファイナルファンタジー』初版 122ページから引用)ということみたいだ。
全編にわたって画面が暗い。これは制作費の安い映画で背景や小道具の荒いディテールを隠蔽するためにも用いられるテクニック。
初期構想ではファンタジーな世界観でバハムートのような幻獣の登場も考えられてはいたらしいが、坂口監督が「ファンタジー世界では生死の扱いが曖昧になってしまう」ということで取りやめになったらしい。そのため世界観がSFとなり、アル・ライナー版の脚本では主人公が男性のグレイであった。その後脚本の書き直しが行われジェフ・ヴィンター版では主人公が男性のグレイから女性のアキへと変わった。この脚本の全文は英語だが大判のMaking of FinalFantasyで読むことが出来る。
映画『ファイナルファンタジー』の製作が開始されたのは1996年後半であった。ちょうど『FF7』が完成に近づきつつあったころ、坂口監督は自分たちで製作したフルCGカットシーンのレベルの低さに気付き、後のゲーム業界が映画業界とぶつかるのを見据えてフルCGの映画製作に入った。1996年と言えば、1996年3月23日に日本でフルCG映画『トイ・ストーリー』が公開された年でもある(アメリカでは1995年11月22日に公開された)。
同年後半フルCG映画を製作するうえで、かなり資金がかかることを予想し、資金回収のためハリウッド映画として世界で公開する必要があった。そのためプロデューサーにジャン=クロード・ヴァン・ダムが主演した映画版『ストリートファイター』をプロデュースした経験のある会田純を起用することになった。映画製作のスタジオをハワイで開設することを決定し、そのための人材募集も始まった。日本側のスタッフはすぐ集まったものの、アメリカ側のスタッフが集まるのに時間がかかってしまった。
1997年夏ごろには配給会社であるコロンビア・ピクチャーズと契約交渉が開始された。その間に脚本の製作が進み、脚本が完成したのは秋ごろであった。製作に関わった一人であるアル・ライナー(『アポロ13』や『フロム・ジ・アース/人類月に立つ』の脚本を担当)の脚本を基に、ストーリーボードが作られた。脚本の初期段階のころの主人公は男性だったため、テスト映像製作の時には「グレイ・プロジェクト」と呼ばれた。しかし、日米どちらもリアルスティックなフルCG映画の製作経験がないため組織図は何度も変わり、製作はなかなか進展しなかった。
モーションキャプチャーの研究が始まったのは1998年に入ってからだった。だが、この年になって脚本の見直しが決定し、今まで作ってきた脚本やストーリーボードや素材が没になってしまった。新しく脚本を書くことになったのはジェフ・ヴィンター(当時では新人の脚本家、ジョン・ウーのLong Hello and Short Goodbyeに参加した、後年にアイ・ロボットの脚本にも参加している)となり、主人公もグレイからアキへと変わった。公開時期も2000年秋から2001年へと延期してしまった。同年11月にはソニーピクチャーズと正式契約し、日本で製作発表記者会見を行った。
製作を進めていくうえで様々な問題が襲いかかってきた。まずスタッフに日米その他多国籍の人物が大勢おり、言語、予算、制作進行の対立、様々なことが起こった。スケジュールも伸びたため追加の予算が必要となり、資金集めに走り回ることになった。なんとか予算を取り付け製作を進めることが出来たのは、他のフルCG映画のプロジェクトがほとんど中止または凍結となったのもあったからだ(1996年ぐらいから計画されていた映画は『アバター』、『ダイナソー』、ILMの『フランケンシュタイン』といったもの。『アバター』は1996年に製作発表されたが一時凍結し、ご存知の通り2009年に公開された)。さらに製作を進め締切に間に合わせる為にさらに人材が必要となり、さらに予算が必要となってしまった。
2000年11月には音楽製作に入り、最終的に映像部分が完成したのは2001年5月になってからだった。ちょうど1997年に製作を開始してから4年後の事だった。2001年6月に最終調整が入り、映画が完成したのは6月13日であった。
ハワイでプレミア試写会を開催するほどの気合の入れ方で、米国での初公開数日間の成績は良かったものの、その後客入りは低迷し、制作費の1億3,700万ドル(当時の為替レートで157億円)に対して全米興行収入は3,200万ドル(およそ36億8000万円)という僅かなものに終わる。
この記録的大損失は、あのギネスブックに「映画の興行赤字」の例として掲載されるほどであった。ただし、よくカン違いされているが、本作が「最も興行赤字を出した映画」としてギネスブックに載ったわけではない。「最も興行赤字を出した映画」は1995年のアメリカ映画『カットスロート・アイランド』であり、この記録は現在も破られていない。
一応、集客数で言えば600万人を動員したらしく(書籍『メイキング・オブ・ファイナルファンタジー』より)、これはアメリカで売り上げた『FF8』『FF9』の本数の約3倍にあたる。
後から公開された日本においても米国での評判(主にB級っぷり)が伝わったほか、興行的な意味で「大失敗作である」という噂が広まってしまう。その他、同時期の日本では『千と千尋の神隠し』(スタジオジブリ製作)が公開・大ヒットを記録したが、『FF』のメイン宣伝媒体がジブリの株主にも名を連ねる日本テレビ放送網であったため、「『千と千尋』と引き換えに宣伝の量が減った」との話もある。それに日本での公開は元々8月を予定していたのだが、映画『ジュラシックパーク3』とぶつかるのを避けるため延期に延期を重ねたためとも見える。もう一つの失敗原因として日本での公開時、吹き替え版の製作が間に合わず字幕版のみ公開となってしまったためと監督は見ている。それは字幕だと映像に集中できず、せっかくの映像美を堪能してもらえなかったからといったようだ。
最終的にこの映画で出した赤字は5,190万ドルとなり、もちろん映画業界からは撤退せざるを得なくなった。この歴史的不振はスクウェアに130億円もの負債を残した。さらに負債の影響で倒産の危機にまで陥り、スクウェア本社へのソニー・コンピュータエンタテインメントの資本参加、またテレビアニメ『FF:U 〜ファイナルファンタジー:アンリミテッド〜』の放送終了(打ち切り)にまで発展した。
なお、このSCEの資本参加によってスクウェアの経営は持ち直したが、(それとはあまり関係なく)同じく経営が危ぶまれていたエニックスと合併し、現在のスクウェア・エニックスに生まれ変わることとなる。
この膨大な制作費は延期に延期を重ね、雪だるま式に大きく膨れ上がったものだった。この制作費の大半は人件費であり、設備費はそこまで大きくないらしい。映画製作後、スクウェアピクチャーは解体される前にアニマトリックスの「ファイナル・フライト・オブ・ザ・オシリス(Final Flight of the Osiris)」を制作している。そのメイキングでは本作ファイナルファンタジーについて制作した感想が述べられてる。
この映画を作るために各種の新技術が山ほど開発され、当時のCG屋さんは(技術「だけ」を見に)こぞって映画館に足を運んだとか。
『ファイナルファンタジーXI』の片手剣の技のひとつに、この映画のサブタイトルである「スピリッツウィズイン」という名前のものがある。
掲示板
180 ななしのよっしん
2023/06/18(日) 04:51:16 ID: y/NiWR75cZ
この映画は観てないから表面的な情報だけの話なんだけど
ファントムの設定が2016年公開されたスペクトルって映画のクリーチャーにめっちゃ似ててちょっとびっくりした
181 ななしのよっしん
2024/11/02(土) 23:28:25 ID: Uavs37Zwco
ギネスブック読んでたら「世界で最も大きい赤字を出した映画」としてこの作品が乗ってて、少し笑ってしまった…。
182 ななしのよっしん
2025/02/20(木) 00:11:03 ID: vWfbof7Pbn
今作が新潟国際アニメーション映画祭にてスクリーン上映されることについて、坂口博信監督がツイート。
「いろいろとありましたが、
これも自分の一部なので純粋にうれしいかも
すべて「こどもたち」ですな」
【ソース】(2025.2.19)
https://
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最終更新:2025/04/07(月) 09:00
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