ファンタジスタドールイヴとは (ファンタジスタドールイヴとは) [単語記事]

『ファンタジスタドールイヴ』とは、メディアミックス作品『ファンタジスタドール』の小説の一つで、アニメ本編の前日譚にあたる。著者は野﨑まど。

それは、概要であった

並製本の雑誌記者である女性は心霊現象の特集誌の記事を作るべく、川越の廃研究所の噂の調査へ行く。結果から言うと、ネタになるようなものは何も無く、代わりに見つけたのは、短い小説ほどの長さのテキストファイルの入ったメモリー、そして三枚の紙だった……

ファンタジスタドールの前日譚。といっても、アニメの直前の出来事ではなく、かなり（約25年以上？）前の出来事。当然アニメキャラクターは誰一人として登場しない。
ドール、各種カード、デバイスといったものはどういった理屈で、誰の手によって、何のために作られたのか、といった設定が明かされる。
ライトファンタジーで明るい展開のアニメ本編とはかなり毛色の違う、陰鬱なSF作品といった趣が強い。とはいえ、アニメと同様、脳裏に強く刻みつけられる迷言台詞回しは似通っている。

太宰治『人間失格』へのオマージュと思われ、構成や文体、小説の結末が、狂人的な主人公と最も親密であった女性の、主人公への意外な評価で終わるところも一致している。

主要登場人物

大兄太子（おおえたいし）
- 「それは、乳房であった」
- 本作の主人公。天才理論物理学者であり、人類史を塗り替えるはずであった「質量傾斜理論」を創始した。院生の頃まではひたすら科学の探求に打ち込む人生を送っていたが、遠智の一言によりその冥い内面を見透かされ、愕然とする。ある事件をきっかけとして、川越研究所の研究機関Y-omeに移り、その生涯と才能と研究成果の全てを「理想の女性〈ファンタジスタドール〉」の完成に捧げることになる。
- モデルは日本という国を塗り替えた中大兄皇子（なかのおおえのみこ）、後の天智天皇。
遠智要（おちいらず）
- 「帰りたまえ。彼が、残された右腕で触れる乳房が、こんな陳腐でありふれた、そこいら辺の、誰にでも手に入る乳房でいいはずがない」
- 本作の副主人公。複雑系科学および情報科学の専門家。夢想家な大兄とは対照的に、徹底した現実主義者。恐ろしく鋭い観察眼と理解力を持ち、大兄の理論を即座に理解した上で簡潔にまとめてみせ、さらに大兄の心の底まで見抜いた。博士課程在籍中にある事件を起こし、それが元となって大兄と共にドール開発プロジェクトの中心人物となる。
- モデルは天智天皇の側室の遠智娘（おちのいらつめ）：その娘が鵜野讃良（うののささら）、後の持統天皇。
中砥生美（なかとうみ）
- 「人並みに女性が好きで、人並みに嫌いな、……ただそれだけの、普通の人だったんですよ」
- 大兄の後輩。大兄や遠知ほどではないが優秀な才媛であり、大兄とは口に出さずともお互いに惹かれ合う仲であったが…。
- モデルは天智天皇の腹心であり藤原氏を創氏した中臣鎌足（なかとみのかまたり）。