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フルチカゾン(Fluticasone)とは、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の治療薬である。
フルチカゾンは、副腎皮質ステロイド薬の一種。炎症やアレルギーを抑える作用をもち、慢性的な気道の炎症に起因する気管支喘息や、過剰な免疫反応に起因するアレルギー性鼻炎(花粉症など)の治療に用いられる。
副腎皮質ステロイド薬とは、副腎皮質(腎臓近傍に位置する副腎の外側の部分)より分泌されるステロイドホルモンや、それに類似した構造をもつ物質のこと。電解質を調節する鉱質コルチコイドと、糖代謝を調節する糖質コルチコイドに大別される。糖質コルチコイドには強力な抗炎症作用、免疫抑制作用があるため、炎症性疾患やアレルギー性疾患の治療に用いられている。
一般に副腎皮質ステロイド薬は、経口投与や静脈内投与によって全身に分布すると、多彩かつ重い副作用を発現することがある。しかし、本邦でのフルチカゾン製剤はいずれも吸入剤や点鼻剤であり、気管支、肺、鼻粘膜に局所的に作用するため重い副作用は出にくい。それでも、高用量を長期投与するような場合は注意を要する。
フルチカゾンの副作用として、免疫系の抑制による口腔カンジダ症(口腔の常在菌カンジダの日和見感染)、嗄声(声のかすれ)、咽喉の不快感などがある。こうした副作用を予防するため、フルチカゾン吸入剤を使用したあとはうがいをする(うがいが困難な場合は口をすすぐ)ことが必要。
免疫抑制作用があるため、有効な抗菌薬のない感染症、深在性真菌症の患者への投与は症状を悪化させるおそれがあり禁忌。フルチカゾンに対する過敏症の既往歴のある患者への投与も禁忌。
なお、アメリカ合衆国などの海外では皮膚科用外用薬としてアトピーを含めた各種の皮膚炎への治療にも用いられているが、日本国内ではその剤形・用法では発売されていない。
フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)単剤、フルチカゾンフランカルボン酸エステル(FF)単剤、FPまたはFFに交感神経β2受容体作動薬を配合した2成分の合剤、FFおよびβ2作動薬にムスカリン受容体拮抗薬を加えた3成分の合剤が臨床で用いられている。以下に先発医薬品名を併せて記載する。気管支喘息に適応のあるものは実線で、アレルギー性鼻炎に適応のあるものは破線で、それぞれ下線を付す。
気管支喘息は、気道に慢性的な炎症が生じて気道が狭窄している状態である。気道過敏性が亢進しており、アレルギー反応を引き起こすと気道が閉塞し呼吸困難をきたす。症状はほかに咳や喘鳴(気道が狭まっているために、呼吸をするとぜいぜい、ひゅうひゅうとした音を伴う呼吸)がある。長期化すると、リモデリング(気管支の線維化や平滑筋肥厚)により不可逆的に気道が狭窄する。
気管支喘息の治療薬は、発作が起きないよう予防するための長期管理薬(コントローラー)と、発作が起きたときにそれを止めるための発作治療薬(リリーバー)の2つに大別される。副腎皮質ステロイド薬は、気管支喘息が軽症であっても使用が推奨されており、コントローラーとして吸入剤や経口剤が、リリーバーとして経口剤や注射剤が使われている。気管支喘息に適応のあるフルチカゾン製剤はすべて吸入剤であり、コントローラーとして発作を予防するために用いられる。
先発医薬品はフルタイド®、アニュイティ®、アドエア®、フルティフォーム®、レルベア®、テリルジー®が該当する。このうち、アドエア®、フルティフォーム®、レルベア®には気管支を拡張させる作用のあるβ2作動薬が、テリルジー®にはβ2作動薬と抗ムスカリン薬が配合されている。また、アドエア®やテリルジー®は慢性閉塞性肺疾患(COPD)にも適応がある。フルタイド®もCOPDに適応外使用される。
アレルギー性鼻炎は、鼻に入った異物を排除しようとして過剰な免疫反応を起こしている状態である。ハウスダストやダニが原因となって起こる通年性アレルギー性鼻炎と、花粉が原因となって起こる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)に分類される。症状としては、くしゃみ、鼻漏(鼻水)、鼻閉(鼻づまり)などがある。
フルチカゾンなどの副腎皮質ステロイド薬は、噴霧用の点鼻液として、中等症以上の通年性アレルギー性鼻炎、軽症以上の季節性アレルギー性鼻炎に用いられる。必要に応じて、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬などと併用する。
先発医薬品としてはフルナーゼ®、アラミスト®が該当する。このうち、フルナーゼ®は血管運動性鼻炎にも適応がある。
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最終更新:2024/04/19(金) 11:00
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