フレッチャー級 単語

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 フレッチャー級

 

 フレッチャー級とは、第二次世界大戦中にアメリカ海軍において運用された駆逐艦の艦級名である。
 

 名称の由来は第一次世界大戦にて多くの功績を収めたアメリカ海軍フランク・F・フレッチャー提督(1855-1928)

 

 

DD-445フレッチャー

概要

フレッチャー級は1939年アメリカ海軍における排水量1,600トンの新駆逐艦として計画・設計された。
 しかし、かねてよりアメリカ海軍ではより大かつ強武装で、航洋性に秀でた体強度のより高い大駆逐艦の必要性が叫ばれており、また軍縮条約失効を受けて排水量2,000トンの大駆逐艦として、これを建造することが決定された。

ネームシップである「フレッチャー(DD-445)」は1941年10月2日ニュージャージー州フェデラル・シップビルディング・アンド・ドライドック社において起工、翌年5月3日

全長114.8メートル、満載排水量2,500トン、速36.5ノット。武装は5インチ単装5基及び21インチ魚雷発射管2基などであった。

以降、アメリカ海軍駆逐艦スタンダードとして同175が建造され第二次世界大戦を戦い抜き、一部の艦は多くの近代修を受け1960年代まで活躍した。
更に兵装のバランスが良く数も多かったため、退役後も当時の西側諸国を始めとした世界海軍に引き渡されており、1959年には「ヘイウッド・L・エドワーズ」「リチャード・P・リアリー」が明期の海上自衛隊護衛艦ありあ」として貸与された。
ちなみに最後まで生き残ったのはメキシコ海軍で運用された「クィトラワク」(「ジョンロジャース」)で、何と2002年まで現役で運用されていた。
またアメリカに3隻[1]ギリシアに1隻[2]の計4隻の保存艦が現存している。

175隻の妹達

フレッチャー級自体は傑作駆逐艦として評価は高いものの、抜きん出た性が別段あるわけではない。
カウンターパートされる陽炎型(日)と較すると12.7cmは1門少ないが両用魚雷陽炎型の61cm4連装×2=8射線×2(予備魚雷)にして、53.3cm5連装×2=10射線×1。対兵装こそ25mm機関4門のみの陽炎型べて圧倒的に多いが、水上戦闘は一歩譲ると言わざるをえない。
また用兵思想の違いなどから航続陽炎型べると劣っており、長期間の作戦行動を行うには給油艦や戦艦のような大艦からの燃料補給を必要とする。
だがその一方で戦に特化した陽炎型と違って対・対潜・対艦全てをそつなくこなせる優等生的な性質を持っており、また戦後の兵装進化に対応できた拡性の高さも持ちあわせるなど、汎用駆逐艦としては非常に優秀な艦である。

そして着すべきはその建造数である。

 175隻!

これは、大日本帝国海軍がその70年あまりの歴史の中で保有したすべての駆逐艦の数(292隻)の6割、開戦時の大日本帝国海軍潜水艦から戦艦までを含んだ総保有艦艇数(236隻)の3/4に匹敵する。

恐ろしいことにこの建造数は米国の本気というわけではない。フレッチャー級の建造は1941年10月に最初の「フレッチャー」の建造がスタートし、最後となった「ルークス」の工が44年9月。わずか3年弱のうちにこれほどの建造を行っているのである。わけがわからないよ

一体いつから駆逐艦がフレッチャー級だけだと錯覚していた?

駆逐艦群の脅威はこれに留まらない。なんとこのフレッチャー級、拡大発展版(第2形態・最終形態)が存在しておりそれぞれ・・・

アレン・M・サムナー級(第2形態) 58隻(計画では100隻):

ギアリング級(最終形態)  98隻(計画では156隻)

                                       ・・・都合、329妹達が建造されたことになる。

もちろん、アメリカ海軍駆逐艦はフレッチャー級だけではない。

1930年ロンドン条約を受けて建造が開始されたファラガット級からフレッチャー級の前級であるクリブス(リバモア)級の8艦種までで169隻の駆逐艦が存在しており、そのほとんどはWW2で実戦に参加している。さらにそれ以前、WW1とその後には「」と通称される急造駆逐艦シリーズをあわせて273建造、これらのうち半数近くはWW2でも健在であり、英国に供与されて護衛駆逐艦となったり、一部は「高速輸送艦」に改造され南方々での速な米軍の展開を支える立役者として活躍した。持ちクセに有ったら有ったでとことんまで使い倒すんだよアイツら。
ちなみにフレッチャー級は戦後すぐ退役した艦が多いが、サムナー級とギアリング級はベトナム戦争の時代まで普通アメリカ海軍で使われていたりする。

戦時急造艦としてのフレッチャー級

フレッチャー級は戦時急造艦として、各部品の共通化及び標準化が推し進められ、以降のアメリカ海軍駆逐艦においてもこのデザインがしばらく踏襲されている。前記の拡大発展版がこれにあたる。端的に言うとシャーマン戦車といったところだろうか。

ところで、大日本帝国海軍も戦時急造艦として松型駆逐艦を多数建造している。同駆逐艦は性こそ劣るものの1944年~1945年の間に32隻が建造され、5ヶ間という同海軍史上最も短い工期で完成した。(これだけの時間があれば何処かのなら、本気出したら正規空母を作っちゃいそうで恐ろしい...)

チート国家と言わしめる工業力

さて、アメリカは何もフレッチャー級を175隻作っていただけではない。

彼らは、4年間で24隻のエセックス級航空母艦を、艦上戦闘機1機種だけでも12,000機以上(F6F)とセットで作りつつ、週に一度はカサブランカ級護衛空母出版建造しながら、M4シャーマン戦車50,000輌を戦場に送りつつ、ちゃんと陸軍向けにP-47P-51などの陸上戦闘機30,000機以上を大空高く舞い上がらせ、B-17B-24などの大爆撃機もしっかり同じくらい作りつつ、輸送機であるC-4710000機以上を生産したりしている。更にはトラック機関車弾薬食料etcといった軍需物資も大量に生産し連合レンリースとして数千~数万トン単位でばらまいたり・・・

もしかしなくてもリアルチート 

 ともかく、フレッチャー級はアメリカ合衆国の高い工業に裏打ちされた傑作駆逐艦といえよう

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関連項目

脚注

  1. *DD-537「ザ・サリヴァンズ」(ニューヨークバッファローに保存)、DD-661「キッド」(ルイジアナバトンルージュに保存)、DD-793「カッシンヤング」(マサチューセッツボストンに保存)
  2. *ギリシャ海軍「ヴェロス」:旧DD-581「チャレット」(パレオ・ファリロ
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