フレデリック・ジャスパーとは (フレデリックマーチジャスパーとは) [単語記事]

フレデリック・"マーチ"・ジャスパー（Frederick "March" Jasper）とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。

概要

外伝「螺旋迷宮」に登場する自由惑星同盟軍人で、”七三〇年マフィア”の一員。陽に灼けた黒っぽい髪を持つ、闘志と生気にみちた精悍で鋭敏で直線的な男で、兵士にも好かれる愛嬌の持ち主。石黒監督版OVAでは癖っ毛の黒髪を持つ黒人として描かれ、旗艦は＜ブリジット＞。

「中途半端は、おれの主義じゃない」というその言に違わず、勝つときは必ず見事に勝ち、負けるときは必ずとことん負けるというそのダイナミックな用兵ぶりを見せ、このことから”行進曲^{（マーチ）}ジャスパー”の異名を持っていた。また戦闘ごとに勝勝敗勝勝敗を（むろん勝敗どちらも派手に）繰り返すジンクスを持っており、部下は負けの回のたびに慄いたという逸話がある。

ちなみに、「行進曲（マーチ）」の異名は「勝ちも負けも派手」なことに由来するのであって、勝勝敗勝勝敗のパターンに由来するものではないので注意。というかマーチは基本2拍子である。

経歴

宇宙暦730年に同盟軍士官学校を卒業。多くの戦いに出征して勝勝敗を繰り返し^[1]、738年のファイアザード星域会戦では、ブルース・アッシュビー以下”七三〇年マフィア”の僚友とともに一級指揮官（石黒監督版OVAでは大佐）を務め勇戦。砲撃と機動攻撃を絶妙に組み合わせて優勢を確立し、アッシュビーによる完全勝利のきっかけを作った。

宇宙暦745年ごろ中将・第4艦隊司令官となり、12月、勝ちの回となった第二次ティアマト会戦でも活躍。
戦闘中盤、第5艦隊司令官ウォリス・ウォーリックとの巧妙な連係によって「ナイフでチーズを切るように」帝国軍中央を分断し、カイト艦隊を崩壊せしめた。

その後の会戦終盤では、突出した帝国軍部隊をみごとな反転攻勢で叩きカルテンボルン中将を戦死させたものの、アッシュビーの戦力引き抜きと帝国軍の繞回運動のために同盟軍は劣勢に立たされた。この時ジャスパーは味方を救援するため帝国軍を側撃したが、多数の敵によってしたたかな反撃を蒙り、上官であるアッシュビーを「ブルース」と呼び捨て怒号するほどであった。しかしその怒号から30秒をまたぬうちに、アッシュビー直率の別働隊により戦局は一挙に転換する。ジャスパーは再びウォーリックと連係し、帝国軍コーゼル大将を戦死させる功績を挙げた。

この戦いの最終盤においてブルース・アッシュビーが戦死したため、以後”七三〇年マフィア”は離散した。ジャスパーは宇宙暦749年に大将に昇進し、同盟防衛の最前線に立って勝勝敗を続けた。751年、パランティア会戦では宇宙艦隊副司令長官ジョン・ドリンカー・コープ大将の救援に駆けつけるも間に合わず、コープを戦死させる形となった。

宇宙暦 753年、宇宙艦隊司令長官ウォーリック大将の退役に伴って後任に任じられ、764年に元帥に昇進するもなお勝勝敗を重ねる。770年、歴代最長の在任記録を打ち立てた司令長官職から統合作戦本部長に転任したが、こちらは勝勝敗を繰り返すわけにもいかず無難にこなした。

翌771年、”七三〇年マフィア”では最後まで軍に留まる形で61歳で退役。その直後、5歳年下の妻とともに向かった旧婚旅行中、宇宙船の事故で死亡。”七三〇年マフィア”の多分にもれず、天寿をまっとうすることは出来なかった。

人物関係

ファイアザード星域会戦では自身の勇戦が勝利のきっかけを作ることとなったが、立役者として注目されたのは優勢を一挙拡大し完全勝利に導いたアッシュビーであった。ジャスパーはこのことを内心わずかながら苦々しく思っていたようで、6年後に酒席でアッシュビーに「おれたちはお前のひきたて役ではないぞ」と怒鳴りつけ、僚友たちに制止されている。ただし、さほど本気で引きずっていたわけではないらしく、この怒号でストレスを発散した後は素直にアッシュビーに謝罪した。

パランティア会戦の際は、コープを戦死させて凱旋する帝国軍を撃って僅かに仇を討ったが、このことが後に「ジャスパーが功績を独り占めするためにコープを見殺しにした」という心無い噂を生むこととなる。コープの妻もそれを信じてジャスパーを詰問するほどで、彼は最期までこの中傷で受けた失意から立ち直ることが出来なかった。

ファン・チューリンとは宇宙暦751年から761年にかけて宇宙艦隊司令長官と統合作戦本部長としてタッグを組んだが、公的にはともかく私的に交友することは無くなっていた。

その他、バーナビー・コステアは彼が第二次ティアマト会戦で第4艦隊司令官として率いた将兵のうちのひとりである。コステアは後にエコニアの捕虜収容所所長となった時も、執務室にジャスパーの肖像写真を飾っていた。