ブラック・フリート・クライシス三部作(The Black Fleet Crisis Trilogy)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説シリーズである。
「レジェンズ」作品群に属する。全3作。著者はマイケル・P・キュービー=マクドウェル。
「ブラック・フリート・クライシス・シリーズ」とも。銀河を統治する新たな超大国へと成長し、レイア・オーガナ・ソロの指導下で残虐な排外主義種族イェヴェサと対峙する新共和国を中心に、母親の足跡を追うルーク・スカイウォーカーのロマンスや未知の放浪船を探索するランド・カルリシアンの活躍を描いた長編小説シリーズ。1996年に全3作が発表された。
「スター・ウォーズ」サーガの小説作品でももっともミリタリーSF(あるいはポリティカル・フィクション)に振れた筆致が特徴。英雄としてのルークやハン・ソロの活躍よりも、政治家・国家元首としてのレイアの活動や、議員・軍人といった他の作品では脇を固める側のキャラクターの動きに焦点が当てられ、新共和国の政治体制や個々の艦艇の戦いの描写にも少なからぬ紙幅が割かれている。
このような特徴もあって、本作では全体的に新出のキャラクターが中心となってストーリーが展開されている。そうした本作初出キャラクターは後続作にはほとんど登場していないが、「ニュー・ジェダイ・オーダー」シリーズでは、ジェームズ・ルシーノによるAgents of Chaos二部作(『英雄の試練』・『ジェダイの失墜』)において本作初出の新共和国関係人物が集中的に再登場を果たした。
皇帝を倒したエンドアの戦いから13年。銀河帝国との戦いも半ば落ち着き、平和に拡大を続ける新共和国の首都コルスカントに、クーアナックト星団の原住種族イェヴェサ人の代表ニル・スパーが到着し、元首レイア・オーガナ・ソロの歓迎を受ける。いっぽう新共和国軍の情報部は、皇帝生前にクーアナックト星団を占領していた帝国軍ブラック・ソード部隊がまるごと行方不明だと発見。強大な帝国軍戦力の消息を危惧した新共和国軍は、第五艦隊と探査船を急派してクーアナックト星団の調査を試みる。
だが、ブラック・ソード部隊はイェヴェサの手に落ちていた。極端に自種族の純粋性を重んじるイェヴェサは、クーアナックト星団内の非イェヴェサ植民惑星を急襲して百万以上の市民を「害獣」として尽く虐殺し、彼らが故郷とみなす星団の「浄化」に着手する。スパーも、第五艦隊を送ったレイアを軍国主義的な侵略者と公然と非難し、新共和国政界に混乱を起こして去った。反レイア派の元老院議員はスパーの非難に同調し、レイアの政治生命は窮地に追い込まれてゆく。
それでもレイアは、星団外縁部の惑星の緊急加盟承認と第五艦隊による示威行動によってさらなる侵略の抑止を試み、占領地の放棄を求める最後通牒を送った。だがイェヴェサはこの最後通牒を黙殺。イェヴェサ占領惑星を封鎖すべく星団に進入した第五艦隊に対し、人質とした住民に通信で助けを求めさせる悪辣なやり口で挑んだ。戦意を喪失した第五艦隊は総崩れとなり、撤退を余儀なくされる。
コルスカントではレイア罷免の動きが始まるなか、新共和国軍は第五艦隊へ各艦隊から機動部隊を分遣増派。2個艦隊分・200隻超にのぼる大艦隊がクーアナックト星団方面に集結しつつあった。この大艦隊を指揮する新たな司令官として、ハン・ソロ准提督が赴任することとなる……。
そうした銀河の喧騒をよそに、銀河中に期待される生活に疲れ隠遁していたルーク・スカイウォーカーは、彼の母のことを知るというフォースの使い手「ファラナッシ」の女性アカナの訪問を受けていた。彼女とともに、ファラナッシと母の足跡を探す旅に出たルークは、ジェダイとは異なるファラナッシの教えを学びつつ、身分を隠してクーアナックト星団に近い辺境をめぐる。
いっぽうランド・カルリシアンも、秘密諜報部局「アルファ・ブルー」の責任者ハイラム・ドレイソン提督に頼まれ「テルジコンの放浪船」なる存在を追跡する艦隊に加わっていた。いよいよ放浪船に乗り込むランド一行だが、放浪船は直後にハイパースペースにジャンプしてしまう。強力な自衛火力を持つ放浪船に対応すべき艦隊がイェヴェサの危機で引き揚げられてしまう中、追跡部隊の指揮官パクペカット大佐は責任を果たすため、僅かな部下とともに放浪船を追うのだった。
第五艦隊の新司令官となったハンだったが、着任途上で新共和国の軍国化を危惧する内通者の通報によりイェヴェサに捕えられてしまう。夫の身の心配と元首としての義務とのあいだでレイアが動揺するなか、第五艦隊に造船所をひとつ破壊され怒り狂ったスパーはその残虐性を遺憾なく発揮してハンを痛めつけ、脅迫とともにその映像を新共和国へと送りつけた。「すぐに、クーアナックトから出て行け」。
元老院ではついに元首の不信任審議が始まるが、多くの予想を裏切り最初に演台に立ったレイアは冷静に宣言する。新共和国はダスカン連盟に宣戦布告した。何十万もの市民の虐殺という罪を見過ごすならば、新共和国の理念に価値などない。邪悪には立ち向かわなければならない、と。万雷の拍手が彼女に応えたが、レイアにとっては、理想と正義のために愛する人を犠牲にする宣言だった。
だが、ハンは命をとりとめる。ちょうど故郷キャッシークに帰っていたチューバッカが、息子や仲間とともに<ミレニアム・ファルコン>でスパーのスーパー・スター・デストロイヤーに突入し、ハンを救い出したのだ。さらにクーアナックト星団外縁部でファラナッシたちを見つけ出したルークも第五艦隊に合流、ファラナッシの長はイェヴェサから身を守るため新共和国に支援を申し出る。フォースで実体のある影を作り出す技を持つ彼らが、新共和国艦隊の「影」を戦場に投影し、数を増やすというのである。
ファラナッシの協力あって、イェヴェサの母星ヌゾスの上空にイェヴェサ軍を圧倒する大艦隊を見せつけた新共和国は、堂々と降伏を要求する。むろんスパーは居丈高に拒否したが、その直後、イェヴェサ軍のうち帝国艦だけが急に艦首を転じはじめた。長年奴隷として扱われてきた元ブラック・ソード部隊の帝国軍将兵が、復讐の計画を実行に移したのだ。すべての帝国艦が戦場を去り、彼らの虜囚となったスパーはハイパースペースへと放り出された。
残されたイェヴェサ艦隊はそれでも執拗に戦い続けたが、新共和国軍の甚大な損害と引き換えに殲滅された。苦い勝利ののち、アカナはルークの母親の話はファラナッシを見つけるための嘘だったのだと明かし彼の前を去る。ドレイソン提督からランドの窮状を知らされたルークは、ファラナッシの教えを用いて放浪船からランドを救い出した。そして凍りついた故郷の星に辿り着いた放浪船は、種族復興のための「工具」という自らの役割を果たすため、ゆっくりと失われた民を再生しはじめるのだった。
原著は長篇小説全3作(ペーパーバック)。邦訳にあたっては全作が文庫版上下巻構成となり、1997年から1998年にかけ全6冊が出版された。邦訳書の表紙イラストは原著のものを使用し、日本語訳はすべて秋元克也による。
※英字表記は原著、日本語表記は邦訳を示す。邦訳書籍の「ブラック・フリート・クライシス・シリーズ」表記および巻数表記は表紙カバーにのみ配されている。
イェヴェサ(イェヴェサ人)は、銀河の地理的中心に近いコア・ワールドの辺境、ファーラックス宙域に位置するクーアナックト星団の惑星ヌゾスの原住種族。ヒューマノイドに近い外見をしており、手には鋭い鉤爪を隠している。きわめて優秀な技術者としての素養を持ついっぽう、上位者による下位者の殺戮を名誉とすらみなす、厳格かつ冷酷にして暴力的なヒエラルキーに基づいた社会を構成する。
星団に囲まれたヌゾスでは星々の光があまりにも明るく全天を覆っていたため、宇宙時代以前のイェヴェサは自らを銀河唯一の知的生命と信じ込み、異星生物の存在を想像もしていなかった。この経緯から、ヌゾスを含め星団内の12の惑星へと領域を広げた彼らイェヴェサは、自らの領域と「純粋性」を尊び、他の種族の一切を「害獣」とみなす、きわめて極端なイェヴェサ中心主義精神を養うようになる。
やがて銀河帝国がクーアナックト星団を占領すると、イェヴェサは帝国軍に奴隷化された。皇帝の死後、彼らは蜂起して占領者を追い出し、帝国軍が残したハイパースペース航行から超光速通信に至る各種の高等技術を中核にイェヴェサ国家ダスカン連盟(リーグ)を樹立した彼らは、ニル・スパーの指導のもとで帝国から奪った技術の導入と軍備の増強に励み、ついには帝国時代に星団内に作られた非イェヴェサ入植地の「浄化」に着手する。
エンドアの戦いで皇帝を斃した反乱同盟軍が樹立した新たな国家。
以来12年にわたり帝国軍の残党と戦い続けてきたが、帝国軍の大規模な反攻は終息しつつあり、いまだ各所で中小の生き残りの軍閥との紛争が続くものの小康状態といえる。新規に加盟する惑星が増え続けるなか、元老院を中心として大小さまざまの面倒な政治対立や混乱が生じており、建国以来の理想の完全な実現は日増しに難しくなりつつある。
物語時点の元首は引退したモン・モスマから地位を引き継いだレイア・オーガナ・ソロ。国務大臣はモッカ・ファランサス、主席執政官はナナオッド・エン。元老院議長・国防理事会理事長はベーン=キール=ナームが務める。
新共和国防衛軍の最新鋭戦力。従来の艦隊は反乱同盟軍以来の各惑星の宇宙軍艦艇や寄せ集めの改造宇宙船が多くを占めていたが、第五艦隊の新設にあたっては大きな予算投下が行われ、新共和国になってから新たに開発した各種艦艇をまる一個艦隊分建造して編成された。新共和国軍では反乱同盟軍以来の将兵の退役により叩き上げのベテラン士官不足が生じつつあるが、新規編成の第五艦隊ではもっとも顕著である。
旗艦はエンデュランス級宇宙空母<イントレピッド>。エンデュランス級のほかネビュラ級スター・デストロイヤー、各種巡航艦、砲艦、哨戒艦、停止艦(インターディクター)などあわせて大小106隻・5個機動部隊から編成される。司令官はエターン・アバート将軍、作戦参謀長にコーガン大佐。
エンドアの戦い当時、ファーラックス宙域などの辺境方面の警備に配備されていた帝国軍部隊が「ブラック・ソード部隊」である。エンドアの戦いの数ヶ月後、中央から命令を受けて急遽出撃しようとしたところにニル・スパーらイェヴェサの反乱に遭い、全ての艦艇がイェヴェサの手に落ちた。
クーアナックト星団に複数の大規模な造船所を構えており、惑星ヌゾス軌道上のブラック15造船所で最終艤装中だったスーパー・スター・デストロイヤー<インティミデイター>をはじめ、多数のスター・デストロイヤーや試験艦<EX-F>など艦艇44隻にのぼる強大な戦力を有していたが、その戦力の詳細はこれまで新共和国にはまったく知られていなかった。
イェヴェサに鹵獲されてからは、<インティミデイター>が<プライド・オブ・イェヴェサ>と改められ、ニル・スパー総督の旗艦となっている。
人名・種族名・役職名など固有名詞の日本語表記は基本的に本書の邦訳に基づく。なお、訳出の変更などにより、特に後年の各作品における翻訳とは食い違う場合がある。
この他、モッカ・ファランサス(人間。国務大臣)、ナナオッド・エン(人間。主席執政官)、クラル・プラゲット(元老院議員(エダーサ選出)・公安情報理事会理事長)、ラタガゲック(エロミン。元老院議員(エロム選出)・科学技術理事会理事長)、ドーマン・ベルース(人間。元老院議員(イロディア選出)・省庁監査理事会理事長。レイアの亡義父ベイルの親友)、ベレザボス・オーン(パクウェ人。パクァポリ臨時領事)など、多様な政治家が登場する。
その他の新共和国軍人として、モラノ(男性。大佐・第五艦隊旗艦<イントレピッド>艦長)、ブランド(男性。准将・巡航艦<インドミダブル>艦長兼アスター機動部隊指揮官)、ファーリィ・カーソン(男性。准将・第四艦隊から増派されたエイペックス機動部隊指揮官)、イスィーギ・トゥケトゥ(第五艦隊所属のKウイング爆撃機パイロット)、ボウマン・ギャヴィン(男性。大佐・第五艦隊戦闘航空総軍司令(艦隊航空隊長))など、多くの第五艦隊所属キャラクターが登場する。
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最終更新:2025/12/07(日) 17:00
最終更新:2025/12/07(日) 16:00
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