ブロードアピール(Broad Appeal)とは、アメリカ生産、日本調教の元競走馬・繁殖牝馬である。
動画投稿サイトも満足にない中、今で言う「バズ動画」を競馬動画にもたらした黎明期の一頭。重賞はGIII止まりであるがそのGIIIを現役時代後半で荒らし回り、インターネットの進歩に伴ってその鬼脚が世界中で伝説となった名牝。
GI馬でないからかニコニコ大百科の記事化は遅れたが、名前を知らなくとも動画を見たら「ああ、この馬か」という人は競馬ファンならずとも多いだろう。
主な勝ち鞍
2000年:シルクロードステークス(GIII)、根岸ステークス(GIII)
2001年:かきつばた記念(GIII)、プロキオンステークス(GIII)、シリウスステークス(GIII)
2002年:ガーネットステークス(GIII)
父はColinという15戦15勝という成績を挙げながら81頭しか産駒を残せなかった名馬の末裔で、27戦14勝とタフな走りをし、種牡馬としても1994年に北米リーディングサイヤーとなったBroad Brush、母は41戦3勝とまたタフな走りをしながらも重賞で結果を残せなかったValid Allure、母父は36戦8勝で主な勝ち鞍がドゥワイアH(GII)という二流馬のValid Appealという血統。
父や母父はマイナー感があるが、母系はアメリカの本流におり、日本馬ではサクセスブロッケン!!!!!!が近親に当たる。
そして馬主は金子真人氏。まだディープインパクトもキングカメハメハも産まれていなかった当時、ブラックホークと共に馬主として動き始めた頃の同氏の所有馬である。
同期にはメジロドーベルやシーキングザパール、キョウエイマーチがいるのだが体が弱くデビューは遅れに遅れ、なんと4歳の秋、札幌開催の終わり頃にひっそりデビュー。2戦目で勝ち上がる。
ちなみにやっとこさ彼女が1勝を挙げた頃にはメジロドーベルはすでにGI3勝馬、シーキングザパールは海外GIウイナー、キョウエイマーチは牡馬とガチンコでやりあうマイルの名牝となっていた。
その後もこつこつ出走していき、勝ちグセがつくと怒涛の勢いで勝ち上がりオープンに到達。京都牝馬特別に1番人気で挑むがマルカコマチに差され3着に敗れる。
彼女の動画を知る方は疑問に思われるだろうが、当時の彼女は差しや先行で走っていたのである。
その後もかつてひ弱だったのがウソのように重賞を中心に出走するが、2着はあれど勝ちきれず。そうこうしている内に彼女は6歳になっていた。そろそろ引退の二文字が浮かぶ頃になっていた。
そして6歳の年始。この頃からマイルですら長くなり始めたのかマイル重賞ではいいところがなくなっていく。年始はマイル重賞で連敗を喫する。
それでも、武幸四郎の手綱でシルクロードステークスを追い込みで勝利し重賞初勝利を飾る。
これで何か一皮むけたのか、栗東ステークス(OP)もダートの短距離という凄まじく不利な条件を末脚一閃切り裂き快勝。2着となったエイシンサンルイスと鞍上太宰啓介も目を丸くしたことであろう。
その後GI制覇を狙い、芝のスプリント路線を歩むが本番のスプリンターズステークスで4着に敗れるなど3連敗。スプリンターズステークス後のスワンステークス(GII)も敗れ4連敗。さすがに衰えたのであろうか……と思われたが、彼女の伝説はここからであった。
エイシンサンルイスが逃げ切る勢いで後続を2馬身ほど突き放していたのに、最終直線、カメラにも映らないほど最後方から上がり3ハロン34.3秒という猛烈な勢いで突っ込んでくるオレンジの帽子があった。
前3頭の体勢です
1番外ベラミロード、内に3枠2頭エイシンサンルイス、ゴールデンチェリーです公営2頭が先行する形になった。内からエイシンサンルイス
この前3頭で直線を向いた根岸ステークス後ろから攻めてくるのはノボジャックの黒い帽子か
不気味に前に迫ってきて400標識を通過した前4頭。後続勢、まだなかなか追ってこないぞ
ワシントンカラー、懸命に叩いているがちょっと前との差は詰まってこないか―――外から飛んできたブロードアピール!
外からブロードアピール、オレンジの帽子が飛んできた!
しかし前にはまだ5、6馬身以上ある!
200を通過した! 先頭エイシンサンルイス突き抜けた!2番手は、すごい脚! ブロードアピール!
3番手! 2番手!前に! 届くか! 届くか! 届くか! 届くか! 届いた! 届いた!
差し切り勝ち、すごい脚だ!
ブロードアピール、ダート3戦3勝快勝!
この時の「鬼脚」とも称される末脚をダート短距離、しかも(2000年当時の)牝馬が発揮したというのは競馬界では大ニュースとなった。
のみならず、インターネットでも世界中に転載され、「伝説の追い込み」として競馬に興味のない人たちからも話題となった。2001年頃からインターネットも常時接続が中心となり、低解像度なら動画投稿もなんとか可能になったこと、その少し前からおもしろFlashサイトなどが隆盛したこと(そして当時は著作権の意識が今より薄かったこと)などが彼女の活躍と重なった格好である。特にトルコで有名になったらしく、現在残っている動画にトルコ語字幕が多いのもこの影響と思われる。SNSが発展した現在だと、World Horse Racingの公式アカウントにおける世界の追い込み馬を取り上げた投稿でブロードアピールはその名を連ねている。
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https://twitter.com/WHR/status/1696324555478798473
また、短距離を超絶早口で全馬解説し、先行勢の様子を伝えながらも最後方から動き出したブロードアピールを素早く捉えてその伸びを余すところなく実況した、青嶋達也アナウンサーの名実況としてもよく挙げられるレースの一つである。
かわいそうなのは差しきられたエイシンサンルイスと鞍上の太宰啓介で、結局このコンビで重賞を勝つことはなかった。太宰も重賞を勝てないまま引退かと思われたが、フミノイマージンとのコンビで4つも勝った。フミノイマージンはサンルイスをボコボコにしたブロードアピール同様、遅咲きの牝馬である。
その後は交流重賞などダートの短距離を中心に走り、JBCスプリントこそ勝てなかったが圧倒的末脚で重賞勝利を3つ積み上げた。
国内最終戦のガーネットステークス(GIII)を勝ったとき、彼女は8歳であった。 当時の牝馬による重賞勝利最年長記録で、今でも中央平地重賞に絞れば牝馬最年長勝利である(障害競走を含めるとコウエイトライ、また地方交流を含めるとメイショウバトラーの9歳が最年長)。
その後、ドバイゴールデンシャヒーンに遠征。ここでも先頭には離されたが5着に入り存在感を見せつけ引退。繁殖牝馬となった。
ダートの追い込み馬という安定性の無さそうな脚質にも関わらず、ダートでの連対率はなんと81%にもなるなど破天荒さと安定性を兼ね備えていた。今後、中々見られないであろう超個性派である。
通算成績は36戦13勝(うち重賞6勝)。獲得賞金は地方中央合わせて5億円を超えている。
繁殖牝馬としては、子出しは抜群だが怪物性が受け継がれた産駒はまだいない。
3番仔カイゼリンの娘イイナヅケは、その名の通りジャスタウェイの「許嫁」となり、1番仔ジャスコが現役。
4番仔ミスアンコールからはワグネリアンという切れ味自慢が登場し、日本ダービーを制覇するという快挙を成し遂げる(先行策での勝利だったが)。鞍上福永祐一に念願のダービーをプレゼントするというおまけ付きで。
のちにブロードアピールはノーザンファームから売却されたものの、父ビービーガルダンのビービーアピールが地方で勝ち上がったり、ノーザンファーム時代最後の産駒ブロードアリュールも3勝とはいえ勝ち上がるなど、それなりの成績を見せた。
今のところ子孫のGI馬はワグネリアンだけだが、血統表に名を残す馬は2022年も続々デビューを控えており、数十年後には一大牝系として日本に根づいているのかもしれない。
2019年に繁殖牝馬を引退、ヴェルサイユファームで余生を過ごすことになった。
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https://twitter.com/Versailles_Farm/status/1435445445631741960
TwitterやYouTube動画で元気な様子を見せていたが、現役時代の鬼脚からは想像できないほどおとなしく、また独りでいることが多かったという。2021年9月8日、老衰により死去。27歳だった。
Broad Brush 1983 鹿毛 |
Ack Ack 1966 鹿毛 |
Battle Joined | Armageddon |
Ethel Walker | |||
Fast Turn | Turn-to | ||
Cherokee Rose | |||
Hay Patcher 1973 鹿毛 |
Hoist the Flag | Tom Rolfe | |
Wavy Navy | |||
Turn to Talent | Turn-to | ||
Hidden Talent | |||
Valid Allure 1985 黒鹿毛 FNo.4-r |
Valid Appeal 1972 鹿毛 |
In Reality | Intentionally |
My Dear Girl | |||
Desert Trial | Moslem Chief | ||
Scotch Verdict | |||
Alluring Girl 1980 黒鹿毛 |
Secretariat | Bold Ruler | |
Somethingroyal | |||
Water Cress | Hail to Reason | ||
Hillbrook | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Turn-to 4×4×5(15.63%)、Alsab 5×5(6.25%)、Princequillo 5×5(6.25%)
ニコニコ動画(γ)時代に投稿された、これらの動画を見た古参ユーザーもいるかもしれない。
根岸ステークス以上とも言われるものもあるのでご覧あれ。
根岸ステークスはレースの余韻がわかるものと青嶋アナが苦手な人用のグリチャ版を紹介。
掲示板
47 ななしのよっしん
2023/03/29(水) 00:20:08 ID: SYA74Ncz9t
48 ななしのよっしん
2023/06/18(日) 06:20:22 ID: +MaA9fckiJ
珍名馬かと思ってみたらヒヒーンも母母母がブロードアピールで驚いたわ(ジャスコの全妹)。繫殖牝馬が多くて本当にあちこち見えるな…
49 ななしのよっしん
2023/07/23(日) 22:41:48 ID: ZG96jKXhuq
よくステイゴールドが世代の果てと言われるが、
97世代の最後の重賞勝ちは実はこの子なんだよね。
まあ外国馬含めるとセントスティーヴンが中山GJ勝ったのが最後だけど。
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最終更新:2024/10/15(火) 08:00
最終更新:2024/10/15(火) 08:00
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