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プラバスタチン(Pravastatin)とは、脂質異常症の治療薬である。先発医薬品名はメバロチン®。
プラバスタチンは、高LDLコレステロール血症の治療薬であり、HMG-CoA(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA)還元酵素阻害薬である。HMG-CoA還元酵素阻害薬は「~バスタチン(-vastatin)」という共通の語幹(ステム)をもつことから、一般に「スタチン(Statin)」と総称される。1970年代、最初のスタチン系薬であるメバスタチンが農芸化学者の遠藤章氏によってアオカビから単離され、そのコレステロール低下作用が発見された。プラバスタチンはメバスタチンの誘導体であり、三共株式会社(現在の第一三共株式会社)によって創製されると、1989年にメバロチン®錠・細粒が上市された。現在は錠剤のジェネリック医薬品も製造販売されている。
俗に悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールが多い状態(高LDLコレステロール血症)は動脈硬化を招き、心筋梗塞や脳梗塞などの発症リスクを上昇させる。治療は食事療法や運動療法が中心となるが、それで改善しない場合、薬物による治療を検討する。スタチンは、高LDLコレステロール血症に対する第一選択薬である。プラバスタチンの場合、1日10~20mgを1日1回または2回に分けて内服する。コレステロールの合成は夜間に亢進するため、プラバスタチンは夕食後の投与が望ましい。通常は錠剤を経口投与するが、嚥下機能の低下した患者など細粒剤が適するケースもある。
スタチンは、家族性高コレステロール血症の治療にも用いられる。家族性高コレステロール血症とは、LDL受容体の欠損ないし発現低下に起因する高LDLコレステロール血症であり、急激に動脈硬化が進行し、若くして心筋梗塞などを合併しうる。LDLアフェレーシス(体外循環装置を用いて血漿中のLDLコレステロールを除去する治療法)やスタチンによる適切な治療で、動脈硬化に起因する疾患の発症や進展を遅らせることができる。
スタチンは、コレステロール生合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を特異的かつ強力に競合阻害し、HMG-CoAからメバロン酸への還元反応を抑制する。肝臓のコレステロール生合成の抑制により、コレステロール代謝を制御する転写因子SREBP-2が活性化され肝細胞膜のLDL受容体数が増加し、血中から肝細胞内へのLDLコレステロールの取り込みが促進され、血清コレステロール値が低下する。ほかの脂質異常症治療薬と比較してLDLコレステロール低下作用に優れるスタチンは、その作用の強さからスタンダードスタチンとストロングスタチンに分類され、プラバスタチンはLDLコレステロールを15~20%低下させるスタンダードスタチンの一つである。スタンダードスタチンにはシンバスタチン(リポバス®)、フルバスタチン(ローコール®)もあるが、プラバスタチンは使用経験が豊富で、重篤な肝障害の患者に対して禁忌ではなく薬物相互作用も少ないため、比較的使いやすい。ただし、妊婦・授乳婦に対して禁忌なのは共通。
スタチンの主な副作用は、胃の不快感や腹痛などの消化器症状、発疹や掻痒(かゆみ)などの皮膚症状だが軽微なものが多い。しかし、注意すべき重篤な副作用として横紋筋融解症がある。頻度はまれ[1]だが、腎機能の急激な悪化を招くおそれがある。前駆症状として筋肉痛、脱力感、四肢の痛みがあり、赤褐色の尿(ミオグロビン尿)が認められる。また、障害を受けた筋細胞よりクレアチンキナーゼ(CK)が血中へと逸脱し、CK値が上昇する。脂質異常症治療薬のフィブラート系薬や免疫抑制薬のシクロスポリンなどとの併用により、横紋筋融解症の発現頻度が高まるため、併用には注意を要する。
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最終更新:2024/04/23(火) 16:00
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