ベレッタ92とは、イタリアの老舗銃器メーカー、ピエトロベレッタ社製の自動拳銃である。バリエーションのひとつである92Fは1985年にM9という名称でアメリカ軍正式採用拳銃となる。
コルトガバメントと並び世界でも有名なハンドガンの1つに数えられる。
スライド部分を切り取って、丸出しになったバレルが特徴。こうした部分を指し示し「世界で最も美しい銃」と評される。
92FSはその存在感と見た目の美しさから多くの映画、漫画、小説、アニメ、ゲームで活躍している。書ききれない程多いよ!知りたい人はウィキぺタンに聞いてね!
対応弾薬は9mmパラベラム弾。装弾数は15+1発。セフティをかけるとトリガーがフリーになるだけでなくハンマーが落ち、ファイアリングピンリテイナーが上を向くという暴発の可能性を極力なくした安全性の高いハンドガンである。
一般的に92の問題点とされる耐久性についてだが現在一般的にはロッキングラグがおよそ5000発、スライドは2万発の射撃で亀裂が入ると言われており、一定の弾数を発射したら該当するパーツを交換するのが望ましいがそれほど膨大な数を撃たない通常の射撃ではまず問題はない。米軍では一定の射撃回数を超えるとパーツ交換が義務付けられている。
92FSは左右どちらの手でも同じように操作出来るアンビ仕様。その為映画「ダイハード」の主人公ジョンマクレーンを筆頭に左利きの愛用者からの支持が強い
現在一般的な92を日本では「92F」と呼ばれる事が多いが、この呼称は米軍制式採用当時のモデルであり現行モデルは92FSなので正確には間違いである。「92FS」又は「M9」という呼称が正しい。これは92Fと92FSの外観上の違いがグリップ左側上部にほんのちょっとだけのぞくハンマーピンの頭だけしかないため、有名になったときの92Fという名称のままで呼ばれ続けているものと思われる。
欧米の実銃のフォーラム等でもその分類は適当なことが多いので、あちらでもたいした違いはないと認識されているみたい。
※注意※ 膨大な量なので急いでる人は飛ばしてください
ベレッタ92は1970年のベレッタM1951の後継となるイタリア軍次期正式拳銃トライアルに参加するために製作された。ベレッタ1951はショートリコイルメカニズムにワルサーP38と同様のプロップアップ方式を採用している。ちなみにバレル上部が露出するデザインはM1951の更に前のモデルM1915から引き継いでいる。
このプロップアップ方式は92FSまで使用され続けることになるが、このプロップアップ方式はコルトガバメント等現在でも主流のティルティングバレル方式より明らかに耐久性で劣っている。このプロップアップ方式は米軍制式採用後も論争を呼ぶことになる。
何故耐久性の劣る方式を何十年も採用したのか?理由はイタリアという国のお国柄による。通常銃器は耐久性や命中精度を徹底的に考慮し、外見は後回しになる。要は外見なんて「スペックに合わせて作ったらこうなったよん☆」程度でしかない。
しかしイタリアではデザイン優先で物を作るのが当たり前で家具、車、服等あらゆるものデザインを優先して作るが銃器も例外ではない。外観の美しさを考慮し、銃を設計しその上で要求されたスペックを目指す実にイタリアらしい設計であった。プロップアップ方式じゃないとバレル上部を露出したデザインに出来ない為この方式が採用された。
M1951は92とは異なりシングルアクション、シングルカラムであった。当時はまだまだシングルアクションが主流だったのだ。しかしS&W M39等徐々にダブルアクションモデルのハンドガンが市場に出始めていた。
ダブルカラム(マガジン内の弾を交互に装填し2列に並べる方式。1列のシングルカラムより装弾数が多くなる)も存在していたブローニングハイパワー等である。しかしダブルアクションとダブルカラム両方を採用した銃はまだ存在していなかった。
1970年代は赤軍によるテロが横行していた。アサルトライフルやサブマシンガンで武装したテロリストに対抗するためにはダブルアクションで素早く発砲し、大容量のダブルカラムマガジンでマガジン交換なしに撃ちまくれる銃、つまりダブルアクションとダブルカラムの組み合わせの銃が主流になると見込んだベレッタは92を1975年に発表する。
92は一般的に知られる92Fや92FSとは大きく外見が異なる。マガジンキャッチ、セフティの位置が異なり、操作性が悪かった。その為92を採用したイタリア警察がベレッタ92の操作性の改良を求めた。デコッキングレバーとセフティの位置の変更である。この変更をしたモデルが92Sとなる。
ここで少し昔の話をしよう。1945年、第二次世界大戦が終結。この時アメリカ軍は戦時の大量調達により100万丁以上のコルトガバメントを所有していた。軍上層部はこれ以上ハンドガンは必要ないとしてこの年以降、パーツ以外は一切新規でハンドガンの調達をしなかった。(これは現在も同じで有名な海兵隊が使用しているMEUピストルもパーツ調達された部品から製作されている。)
そこから約30年の月日が経ち、幾度の戦闘を経験したコルトガバメントは3度も全ての銃の修理を行い、何度も何度もパーツ交換しそれでも直らない場合は破棄された。もうボロボロの状態であった。
※余段だがそんな状態なのに現在でも状態の良い物は前線で使用されている。状態の良いものですら刻印がすり減って見えない程酷使されているが問題なく作動する。これはコルトガバメントが優れた名銃である証拠に他ならない。※
1978年、米空軍が新型ピストル採用トライアルを検討した。発砲の少ない空軍では重くて大きく装弾数の少ないアメリカ軍しか採用していない45口径より多少威力が少なくても小さくて軽く装弾数の多いNATO標準装備の9mm弾を求めたからである。
コルト、S&W、FN社等大手銃器メーカーが参加する中この空軍トライアルでは92が最も優れているという結論に至った。
だが!まだ戦争は終わっていなかった!
トライアルは規模を拡大し米軍全軍がコルトガバメントに変わるピストルを選定する事になりこの空軍のトライアルは白紙化。
またこのトライアルで92Sは暴発しやすいという指摘を受けたそして暴発の可能性を下げる為改良したモデル92SBを発表し次のトライアルに挑む。
そして2回目のトライアル。この2回目で最後までライバルとなるSIGP226が登場する。ベレッタ、SIGを初め、ステアー、ワルサー、コルト、H&K、S&W、FN、と超メジャーメーカーが次々と参加した。
口径:9mm×19(9mm Parabellum)
全長:8.7inch(221mm)以下
全高:5.8inch(147mm)以下
重量:2.77lbs.(1.26kg)以下 フルロードマガジン込み
バレル:4inch(101.6mm)以下
チャンバー及びボアはハードクローム・プレーティッド
ライフリング・ツイスト:1-20”以下
マニュアル・セフティ:ファイアリング・ピンを確実にロックし、デコッキングメカニズムを備え、左右どちらの手でも、片手で容易に操作ができること
マガジン・セフティ:なし
トリガープル:シングル 4lbs.(1.82kg)以上、5lbs.(2.27kg)以下
ダブル 8lbs.(3.63kg)以上、14lbs.(6.36kg)以下
マガジン:10発以上装填可能であること。できれば15発以上が望ましい。マガジン・キャッチを押すと、マガジンが自重で落下すること。
スライド:全弾発射後、スライドは開いたまま停止すること、スライドストップレバーはマニュアル操作可能であるか、あるいはアモを装填したマガジンを挿入 したら自動的に閉鎖するかのいずれかの機能を有すること。
精度:50mで10発射撃した時のグループサイズは1.4inch(35.5mm)以下であること。
その他:ロックタイトなど緩み防止剤を使用せずに5000発を発射して、パーツ等の緩みがないこと。
フィールド・ストリッピングはツールを使用しないで容易にできること。
外装パーツは防錆処理がなされていること。
5000発以上、トラブルなく機能すること。10万発ノントラブルであることが望ましい。
チャンバーロード・インジケーターを有すること。トリガーガード前面に指掛けを設けることレストを設けること。
トライアルテスト用として銃本体を30挺を提出すること。なおマガジンは360個用意のこと。
…とまあ、無茶な要求であった。この為この要求を満たしたのはS&Wとベレッタだけでトライアルは一時延期される。
そして3回目のトライアル。これも要求を満たすモデルがないとして延期。この間にベレッタは要求に沿う形で92Fを開発する。
4回目のトライアル。次々と各社の銃が脱落していく中最終的に残ったのはベレッタとSIGだけであった。
そして1985年に92Fはやっとの事で米軍制式採用拳銃となる。
だがしかし!まだまだ戦いは終わらない!
制式採用後もベレッタへの批判はかなりあった。SIGのP226の方が優秀だという意見だ。
そんな中1987年に射撃中にスライドが破損しパーツが射手の顔面に向かって飛ぶという事故が14件も発生した。
イタリアで製造されたスライドの中にスライドの熱処理に問題のある個体が混じっていたのが原因だとされた。
この事故によりベレッタへの不満が爆発し再度トライアルが行われた1978年のトライアルから数えて5回目である。
ベレッタは既に結果は出ているとして提出を拒否した。しかし制式採用後のトライアルなので倉庫には山ほどの92Fがありその中から数丁選んでそれを米軍がトライアルに出した。トライアルにはSIGとS&W、ルガーの3社がトライアルに参加。SIGとルガーはトライアルの要求を満たしたが92から変える程の価値はないとして不採用になった。
これも余談になるがルガーが提出したP85は最初のトライアルに間に合あっていたら採用される可能性が十分あった。(´・ω・)カワイソス
前述の事故によりM9の製造はアメリカ本国のみとしスライド事故防止の処理を施したモデル、92FSを発表。以後M9は全てこの92FS仕様になる。
これでやっと長い長いベレッタの苦難は終了した。
スライド破損事故のせいで「ベレッタは貧弱な銃で数年で制式採用の座から降りる」と言われていたがソマリア、湾岸.イラク、アフガン等幾つもの戦闘を経験したが、特に問題は起きておらず、総生産数は350万丁、米軍に納入されたM9は52万丁という膨大な数になっている。一方米海兵隊は現代戦に対応出来るようにアンダーレイルを標準装備したM9A1を追加採用した。このモデルが米軍が採用している中では最新のモデルとなっている。
2009年にはアメリカと45万丁の追加契約がされ米軍を初め様々な機関に納入された、今後も92FSは制式採用の座を譲らないであろう。
2015年頃から米軍ではM9の後継となる次期正式採用拳銃のトライアルが行われており、2017年に国防総省が次期正式拳銃にSIGのP320を採用すると発表した。これは現在軍で使用されている多くのM9が製品寿命に達しており、これらのパーツ交換or新規調達にかかる費用が馬鹿にならないこと、設計が古く性能的にも現在の要求を満たすには至らずとの判断である。ベレッタもM9を改修したM9A3を提出していたものの、採用には至らなかった。ちなみに惜しいところまでいったのはグロックであるらしい。P320はハンマー式ではなくストライカー式を採用しており、ダブルアクションオンリーである。また制式採用モデルはP320そのままではなく、マニュアルセーフティを追加したカスタムモデルとなる。
次期制式拳銃にモジュラー式を採用した背景には、近頃は米国軍人にも女性兵士が増えたことが理由の一つではないかとされている、P320は手のサイズにあわせてグリップサイズを3種類の中から交換できる。また銃本体のサイズもフルサイズだけでなくコンパクトも併せて調達されることになっている(命名はフルサイズがM17、コンパクトがM18となる)。
SIGP226と最後まで争った92だったが両方とも要求スペックを満たしていた。では何故92が選ばれたのか?
当初は米軍がイタリアにミサイル基地を作りたかったという憶測もあったが流石にそんな理由では採用されない。
確実な理由は2つある。1つは92の方が1丁あたりの100ドル程値段がP226より安かった事。
何万丁もの銃を調達する軍ではやはり値段が安い事は非常に重要になってくるのは当然だ。
2つ目は安全性の高さである。SIG P226はセフティがない。その代わりにデコッキングレバーがありハンマーの重さで暴発を防いでいる構造だ。特殊部隊等練度が高い兵士には素早い射撃が出来るので好まれるが新兵や女性兵士の様な銃の扱いに慣れてない兵士にはリスクが伴う。全兵士が使う銃なのでこの点は考慮すべき事である。
以上の理由から92が制式採用されたと考えるのが妥当である。
ちなみに一般的にはP226の方が命中精度が高いと言われているが月刊GUN誌2009年9月号のキャプテン中井氏の記事の実験では92FSがP226の命中精度(グルーピング)を上回っており一概にどちらが上とは言えない、もちろん個体差もあるだろう。
数はわずかだが3点バーストモデルが存在する。対テロ用のM93Rである。詳しくはM93Rの項目を参照。その他に過去アメリカ軍によって何点かのマシンピストルがテストされたが、機密事項である事が多く、詳しい内容はあまり知られていない。マルシン工業から出ているモデルガン・M9 ドルフィンは、アメリカ海軍の依頼でカリフォルニアのPhrobis社にて試作された実在の強化スライドに、マルシンが独自のフルオート機構を組み込んだ架空のものである。
有名な銃であるためエアガンは各社がラインナップしているが、ウェスタンアームズ社がベレッタの商標を世界独占契約しており他のメーカーはベレッタの名前、刻印、ロゴを使う事が出来なかった(現在は独占ではなくなった)。
ウエスタンアームズでも契約以前にさんざん無断で使っていたのに、独占契約したとたんに代理人面してマルイ、KSC、マルゼンを訴えたりもした。
もっとも、最終的には実銃の市場のない日本において、模型に実銃メーカーの商標を使用することは商標権の侵害に当たらないという判決が出たが、他のメーカーはトラウマになってしまったのか輸出仕様を別に用意したくないのか、現在でも基本的にベレッタの商標は使用されない(が、最近はKSCがホットスタンプ刻印のみ限定仕様でおそるおそる使い始めたりしている)。
ウエスタンアームズの現行品には許諾についての刻印は一切ない。そのため、現在ウエスタンアームズとベレッタが何らかの契約を結んでいるのかは不明である。ちなみに、現在Umarexの販売している正規ライセンス品には以前のウエスタンアームズ製品のように許諾云々の長い刻印がついている。
スライドが破損しやすい事を受けスライドを肉厚にし耐久性を高めたブルガディアスライドを発売したが2006年に生産中止された。これはスライドを強化しても肝心のロッキングラグが先に壊れてしまうので過剰性能になったからである。
M9が制式採用されたことでベレッタにがっぽがっぽ金が入りその資金でM8000クーガーを製作。現在ベレッタ最新オートのPx4ストームはクーガーをベースとしている。
M9は前述の通り米軍での採用名だがアメリカ市場では92FSとは別に流通している。違いは名前と刻印のみで特に規制の差もない。米軍が採用しているというネームバリューからM9をあえて購入する人も多い。州にもよるがアメリカではどのバリエーションも新品でも600ドル程で購入可能。
掲示板
63 ななしのよっしん
2023/06/10(土) 09:32:00 ID: tGOJv93Qea
>>61
そもそも弾数制限そのものが、やってますよアピールに過ぎなかったんだから。アメリカ政府の本気度などマスコミと選挙対策のアリバイ行為レベル。政治家が銃所持を許可制にすると言った時点で、あちらでは即日首が飛ぶ。
だいたい、「どのようにやれ」という具体策を法律が示してない。結果抜け穴が生じるのは法律の側の手落ち。
64 ななしのよっしん
2023/09/29(金) 17:26:02 ID: jNQKlVxJwQ
いつのまにかwikipediaの92シリーズの装弾数の項目が14発に書き換えられてる…
65 ななしのよっしん
2023/11/07(火) 16:00:34 ID: gGmWJApfGA
あまり知られていない弊害として、スライド上部が大きく開いている構造上、火薬の燃えカスなどが多めに出るらしく
男たちの挽歌シリーズの主役だったものの、元々銃などが好きではなかったチョウ・ユンファは熱い発射ガスとともにそれらが自分の顔に飛んでくるのが嫌で顔から銃を離すような動きをしてしまっていたらしい。
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最終更新:2024/04/24(水) 08:00
最終更新:2024/04/24(水) 08:00
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