ペニーワイズとは、スティーヴン・キングのホラー小説『IT』及びそれを原作とした映画に登場する謎の存在である。決して変な作品を布教するおじさんではない。
この項目では、1990年の映画版と共に、再映画化となった2017年およびその続編の2019年の映画版のペニーワイズについても述べる。
※物語の結末等、重大なネタバレには触れませんがキャラクターの性質上、編集者基準の軽微なネタバレが記事内に含まれますのでご注意下さい。
※登場作品についての解説は「IT(映画)」の記事を参照して下さい。
※初版制作者は1990年の映画版を基に執筆をしております。原作小説との相違点や世界観を共有するスティーヴン・キングの他作品との関連について、どなたか執筆をお願いいたします。
作中世界のアメリカ合衆国メイン州デリーの町に、古来より27~30年周期で現れる謎の殺人ピエロとされている。
相手が恐怖と感じる物の姿に変化し、その超常的な能力を持って町に住む人々を恐怖に陥れた。
作中では児童をターゲットとした連続殺人鬼のような猟奇的な行動が確認されている。曰く「怖がるヤツほど、味がいい」らしい。想像が豊かで思春期の子供達はペニーワイズの超常的な能力に影響されやすいからなのだろうか?
1960年の少年時代の主人公達(弱虫クラブ/ラッキー7)をターゲットとして様々な嫌がらせを仕掛け、映画前半のラストは彼らとの対決で幕を閉める。
映画後半では30年後(1990年)に活動周期のため、復活を果たした。打倒ペニーワイズのために町へ再集結した主人公達を町から追い返すため、あらゆる嫌がらせを仕掛ける。
性格は見た目通り非常にひょうきん。子供達と話す時も道化師らしく凝った演出や言動を行うが、当然これは子供達を油断させるもしくは恐怖に陥れるための物である。
後述する通り神出鬼没の存在であるが、排水溝や地下といった場所を拠点にしている可能性が高いとされ、作中でも主人公達はそこを攻める事となる。
キービジュアルとなっているボサボサの赤い髪に赤い鼻といった不気味なピエロの姿は、あくまで作中の登場人物達がこの「IT(ヤツ)」という存在を認知する際の一つの姿でしかない。
が、作中ではこの踊れるピエロのペニーワイズ(Pennywise the Dancing Clown)という形で登場する事がほとんどで、作中の登場人物にも作品を見ている我々のような人間にも強烈なインパクトとトラウマを残した。少なからぬ人々が抱え持つ「道化恐怖症(コルロフォビア)」に繋がる一因として非常に有名。
具体的にいつ頃から町に現れるようになったかは定かではないが、少なくとも18世紀頃の町の写真をまとめた文献に「Pennywise the Clown」という題名で子供達へジャグリングを披露しているピエロのイラストが掲載されていた事が判明しており、この頃からペニーワイズとして活動をしていたのではないかと思われる。
そして作中でわかっているだけでも町では「1900年に給水塔近くで約300人の移民が突然姿を消す」「1930年に製鉄所で原因不明の爆発事故が起き多数の死者が出る」「1957-1960年にかけて児童の連続失踪もしくは殺害事件が立て続けに起きている」などの事象が一定周期で起きており、いずれもペニーワイズの仕業だと示唆がされた。
こういった観点から主人公達がペニーワイズ=ITという存在の起源や正体などを追い求めていくのも物語の特徴の一つである。
ちなみに道化師、即ちクラウンの発祥となったのは18世紀のイギリスとされており、時期も一致する。
キャラクター自体のモデルは明確にはなっていないが、実在の猟奇殺人犯である「キラークラウン」ことジョン・ウェイン・ゲイシーなのではないかという一説も。
2017年映画版では1989年の子供時代の主人公達(負け犬クラブ)に、続編にあたる2019年映画版では前作から27年後となる2016年の大人になった主人公達に襲い掛かる。
大まかな所は一緒であるが、ペニーワイズの造形や性格など1990年版よりひょうきんさは抑えられ、より邪悪・凶悪になっている。
赤い髪は頭頂部にも生えているが、口から目にかけて赤い線が走り、反り目でカラフルな服だった1990年版に比べて薄汚れた白い服を着ている。彼がよく使う風船も多様な色ではなく赤一色に変わっている。
尖った歯も一列だけでなく、喉にかけて幾重にも生え揃っている。他にも、両目を外側に向ける、高速で左右に揺れながらこちらへ向けて走ってくるなど行動も恐怖心をより煽るものとなっている。
主人公達に対しても執念深くなっており何度も脅かしたり、大人となっても隙有らば危害を加えようとする。
地球には元はいなかった異界のもので、18世紀の先住民が生活していた頃には既に存在し、先住民達が排除しようとしていた。
ペニーワイズによるものだとされる事件も、「1719年に町の創立した時の91人の住民がその年の冬に姿を消す」「1908年に鉄工所で復活祭の卵ハント中に爆発事故が起こり子供88人死亡」「1935年にギャング惨殺」「1962年にナイトクラブ『黒酒場』」へ放火」と27年周期に変わっている。
『IT』のインスピレーションを最初にキングが感じたのは、コロラドに在住していた1978年だという。
車の故障をきっかけに徒歩で帰宅する途中、木の橋に差し掛かったキングは不意に「三びきのやぎのがらがらどん(The Three Billy Goats Gruff)」を想起した。
「三びきのやぎのがらがらどん」はノルウェーの童話で、小・中・大のヤギがエサを探しに山に向かう途中、橋の下に住む怪物・トロールに食われそうになる。だが小・中のヤギは「後からもっと大きなヤギが来るよ」と言って見逃してもらい、最後にやって来た大きなヤギがトロールを退治し、三匹揃って山へ向かうというもの。
自分が今歩いている橋の下から恐ろしい怪物が出てくるさまを夢想したキングは、そこから大人(=大きな山羊)と子供(=小さな山羊)の物語について着想を得た。そうして「子供から大人へとなる過渡期に登場する怪物」を膨らませた結果誕生したのが、『IT(ヤツ)』ことペニーワイズなのである。
目的は不明だが、子供を精神的に追い詰めた上で殺人を行う事がほとんどのため、精神的な作用の強い超常的な物が多い。
能力によって発現した事象は現実に起こっている物なのか、それとも対象となった人間達(ターゲット)視点の幻覚でしかないのかはハッキリしていない。作中の描写を見るにターゲットが子供でも大人でも一応能力の行使は可能のようだ。
能力の幅は非常に広いが、以下に主要な物をカテゴライズして列挙し、1990年映画版と2017・19年映画版で相違点がある場合には双方について記述する。
ペニーワイズ自身やそれによって起こされる後述の超常現象は、ターゲットとした人間にしか認識する事ができない。
例えばペニーワイズが公共の場で血みどろドクドクのドッキリを仕掛けたとしても、ターゲットとなった人間以外の人達はペニーワイズ自身の姿を含め、それらに気づかずに何事もなかったかのように生活をしている。
立て続けに堂々と児童を殺害しているにも関わらず、警察や住人に見つからないのもこの能力が一因かと思われる。
作中ではターゲットとなった子供達にしか見えていないが、例外として一度ペニーワイズを見た主人公達が大人に成長後、町に戻って来た時にはその姿を捉える事ができた。実のところペニーワイズ自身が精神的に追い詰めやすい(もしくは追い詰める必要がある)相手を選んで可視化させているだけの可能性は指摘されている。
ターゲットとなった人間に合わせて(自身のサイズ含め)姿を変える事ができる。
そもそもお馴染みのピエロ自体が不定形の存在とされる「IT」の変身後の姿である。
また精神的に追い詰めるために相手が恐れていたり嫌悪感を示す物に姿を変える事もある。例として作中では主人公の一人であるビルの前で自分が手にかけたジョージー(ビルの弟)の姿になり、ビルのトラウマを掘り起こさせようとした。故人の生首(※もちろん喋る)となって主人公達を追い詰めるシーンもかなりのトラウマ物である。
なお「IT」を複数のターゲットが同時に目にした場合、それぞれ違う姿が見えているという描写があるため、あくまで精神的に干渉しているだけの可能性が高そうだ。
ターゲットの人間に強力な幻覚を見せる事ができる。ペニーワイズがターゲットを追い詰めるために使う常套手段。
わりと何でもできるらしく、血入りの風船を大量に出現させたり、グロテスクな見た目の胎児で生きている鶏や目玉を食卓に出現させたり、ターゲットが読んでいる本を『ハリー・ポッターシリーズ』みたいな動画にしたり…。
しかもこの幻覚は嗅覚や触覚といった五感にも及ぶので、上述した透明性との合わせ技はターゲットにとってかなりヤバい代物である。他の人に事情を話しても理解されないため、孤独感を煽る形となる。
少なくともデリーの町の中ならどこでも瞬時に現れる事ができるし、ターゲットがそれまでに行ってきた事も把握しているようだ。
1990年映画版では、大人になった主人公達が車で町に入った後すぐに姿を現しているので、その検知率は中々の物。少なくとも町にいる間はペニーワイズの観測下にあるといっていいだろう。
2019年版では、大人になった主人公達が互いに再会した後、一人になって街に出ていた時に姿を現していた。
ターゲットの行動を操って制御下に置いたり、心理的な影響を与える事ができる。
また、町に住む住人達が一連の事件を外に持ち出さないよう無意識的な行動を取ったり、一度町を出た主人公達が小さい頃に体験したペニーワイズに関する事象を忘却しているのも、この能力の影響の可能性が高い。
作中で確認できたのは、目を発光させそれを見たターゲットを洗脳し思いのまま動かす等だろうか。例としては、主人公の一人であるビルの妻がこれで魂を抜かれたような被害に遭ったり、少年時代の主人公達をいじめていたヘンリー(収監中)はペニーワイズからテレパシーという形で復讐の暗示をかけられ脱獄を果たした。
1990年映画版に出たような「光」は前編の2017年映画版では1シーンしか使われず、後編の2019年映画版では「死の光」として形容されていた。「光」は1990年映画版のような効果があるが、ペニーワイズの命令を間接的に受けたヘンリーは劇中の描写では「光」には一度もあてられておらず、「光」なしでもマインドコントロールを受ける可能性がある。
物体に触れずとも物を動かしたり操作する事ができる。
具体的には浴室のシャワーヘッドを自在に動かしたり、ドアをロックしたり、電気系統を操作したり。もちろんターゲットを恐怖に陥れるためである。
ひょっとしたらこれもターゲットが見ている幻覚の一種かもしれないが、ハッキリしない。
だが無くしたはずのヘンリーのナイフを病院内に持ち込んでいたりしているため、全てが幻覚とも言えないようだ。
ダメージを負ってもすぐに傷が治癒する。
そもそも肉体的な存在なのか、精神的な存在なのか曖昧な存在のため、ダメージを与えたとしてもそれはペニーワイズがターゲットに見せている幻覚の可能性もある。あるいはターゲットがそう思い込んでいるだけなのかもしれない。
1990年映画版では、ジョージーを沼に引きずり込み誑かし、彼の腕を掴んで引きちぎった。
2017年映画版では、ジョージーを誑かした上で左腕を歯で食いちぎり、逃げようとした彼を下水道を引きずり込んでいる。
ハチャメチャな能力を持ち到底敵うとは思えないペニーワイズだが、作中の描写を見るに本体の肉体的な強さはかなりターゲットの精神に依存するらしく、主人公達のグループはその絆や精神的な強さを持って町に巣食うこの怪物へ立ち向かう事となる。
上述した幻覚なども「これは現実ではない」と強い信念を持つ事で消え、同じく信念を持って物理的な攻撃を与える事で少なくともその周期は活動ができなくなってしまうような描写が見られる。
事実、少年時代の主人公達を一方的にいたぶっていたペニーワイズだが、大人になり精神的にも成長した彼らが町に来た時は必死に追い返そうとしていた。
元々人の精神的な弱さにつけ込む怪物として描かれているが故だろうか…。
弱点は一部1990年映画版と共通し、2017年映画版の子供時代の主人公達は何とかその弱点を見つけ追い詰めたが、その方法ではとどめまで刺せなかった。
とどめを刺す方法を主人公達が分からなかったためか、2019年映画版では大人になった主人公達に戻ってくるようにメッセージを残している。
彼を倒す方法はどうやら別にあるようだ。
当初は同じピエロ姿の有名キャラを題材にしたドナルドMADで、ドナルドのホラーな側面や猟奇性をネタにするために不意打ちで使われる事が多かった。連続殺人鬼の悪魔と一緒にされるんだからとんだ風評被害である。
稀に排水溝から出てくるピエロのインパクトのある映像を本当にドナルドと勘違いする人も見受けられた。(要出典)
しかし2018年にかけて「ペニーワイズがオススメするシリーズ」と称した、よくわからない変な作品などをペニーワイズが主人公の一人であるビルの弟・ジョージに布教する嘘字幕動画が急速的に流行り始める。詳しい内容は当該記事を参照。
これにより、本来恐怖の対象とされるペニーワイズは、日本ではすっかりオモシロおじさんと化してしまった。はい、調子いい?
ある意味ではペニーワイズ自身も先述したドナルドと同じように風評被害を受ける事となった。これで恐怖を糧にしているペニーワイズに我々が遭遇しても安心。まぁピエロ以外の相手が恐怖する姿になればいいんだけど。
なおブームの火付け役となった動画は「メタルマンの人」こと「知的風ハット」氏によって、2017年12月にニコニコ動画に投稿された動画とされている(現在は視聴不可)。
これとは別に、「こっぴー」氏によってTwitterに2017年11月に投稿された以下の動画が確認できる最初のペニーワイズ風評被害動画らしい。
ニコニコ動画にも、こっぴー氏本人によって、この動画を含む総集編動画が投稿されている。
2019年11月1日、プラモデル・フィギュアメーカーのコトブキヤの「BISHOUJOシリーズ」の最新作として、「HORROR美少女 ペニーワイズ」の製作が発表。そして2020年10月に発売された。
2023年6月には同じくコトブキヤから「HORROR美少女 ペニーワイズ(2017)モノクロームVer.」の制作が発表。2023年11月発売予定となっている。
掲示板
249 ななしのよっしん
2023/10/06(金) 21:03:03 ID: iw28tkrMmM
>>247
好物が二次性徴前の子供の恐怖心なので
本体であるグラマラスな女郎蜘蛛ボディだと子供ウケが悪いんだ
だからピエロに扮装して下位世界まで堕天している
もしアメコミユニバースに参戦するなら中つ国のシェロブみたいな
エキゾチック美人になるやもしれん
250 ななしのよっしん
2024/02/16(金) 17:56:52 ID: dQt2RvqPUv
251 ななしのよっしん
2024/03/11(月) 19:11:17 ID: UcJl0wJzKP
原作者つながりでキャリーvsペニーワイズとかジョン・コーフィーvsペニーワイズとか作られないかな
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/23(火) 20:00
最終更新:2024/04/23(火) 20:00
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