マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレとは (マグダレーナフォンヴェストパーレとは) [単語記事]

マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ（Mag da lena von Westpfale）とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。

概要

ゴールデンバウム朝銀河帝国の貴族、男爵夫人。帝国暦485年に25歳、「男爵夫人」を称するが独身で、女子ながら自らヴェストパーレ男爵家の当主を務めている。「黒い髪と黒い瞳、象牙色の肌をした、こちらは歴然たる美女」と描写される、才色を兼備した女傑。_{なお「こちらは」の比較対象は「容姿からいえばかろうじて美人と言えるかどうか」ことシャフハウゼン子爵夫人ドロテーア。}

外伝「星を砕く者」および「千億の星、千億の星」において、グリューネワルト伯爵夫人アンネローゼの数少ない友人のひとりとして登場する人物で、後ろ楯をもたないアンネローゼの宮廷における庇護者といえる。

人物

才気と闘争心をふんだんにもちあわせ、ゴールデンバウム朝の貴族らしからぬ明朗さと強靭な精神を持つ女丈夫。機智に富み弁舌にもすぐれた開放的な女性であり、男性に生まれていれば帝国貴族界における英才として名を成したであろうと語られている。貴族の、それも女性でありながら地上車を自ら運転する技術を有しており、平然とオーディン市街をドライブすることもある。とはいえ、あくまでマグダレーナ自身は軍人のような鉄火場に慣れたものではなく一般の女貴族であり、テロに巻き込まれた際など危地にあっては呆然とすることもあった。

独身かつ妙齢の美女であり、その恋愛はきわめて多彩なもの。女性としての強烈な保護欲の持ち主であるとともに芸術にもおおいに理解をしめし、彼女の7人の愛人は、建築家から陶芸家、劇作家から作曲家まで各分野の芸術家で構成されている。彼女はどれもいまだ無名の若き才能である彼らのパトローネともなることで精神と物質の両面から援助することを好んでおり、すでに名声を確立した芸術家は女性としての好みからは外れるようだ。こうした人物像から、“歩く博物館”との異名をとるが、「曜日ごとに愛人をとりかえている」などと揶揄されるようなこともある。

こうした彼女の気風は帝国宮廷界の女性としては異端に属しており、孤立したアンネローゼとの友人関係もあって、他の貴族から面と向かって「女のくせに横紙やぶりな」と批判されたこともある。この時マグダレーナは相手の惰弱さを敢然と論難し、それが広まったために相手もしばらく社交界に顔を出せないほどだったという。帝国騎士出のアンネローゼに対して、他の貴族が蔭口をたたく程度のことしかできていないのも、こうしたマグダレーナの迫力に圧倒されてのことが大きいとされる。

交友関係

グリューネワルト伯爵夫人アンネローゼに対しては、彼女が門閥貴族に忌避され宮廷界で孤立していたところ、自らが同様に孤立する危険もかえりみず平然と接近して友人となった。アンネローゼを通してラインハルト・フォン・ミューゼルやジークフリード・キルヒアイスとも知り合っており、アンネローゼともどもマグダレーナの誘いにのって芸術鑑賞など外出することもある。

そのラインハルトとキルヒアイスからすれば、アンネローゼをなにかと支えているマグダレーナは頭が上がらない相手であり、アンネローゼの安全を気にしたラインハルトがわざわざマグダレーナに連絡を入れるなど信頼している様子である。双方とも美男子であっても芸術家（一般的な意味で）ではないのだが、どうやらマグダレーナはキルヒアイスを気に入ったらしく、意味深な視線を受けるキルヒアイスのほうは「いささか鬼門めいた」と評されるほどには彼女を苦手としている。

自身の芸術趣味から、軍籍にあるエルネスト・メックリンガーを芸術家として遇し、知己となっているが、彼はすでに多才な芸術家として名声を博しているために一線を引き、愛人とまではしていない模様。メックリンガーがラインハルトに接近するにあたっては、中継機としてあいだを取り持った。

その他、マグダレーナの所有する学校でマリーンドルフ伯爵夫人が古典音楽の講師を務めていた縁から、その娘であるヒルデガルド・フォン・マリーンドルフとも顔馴染みであり、17歳のヒルダに対して「いずれ国務尚書くらい簡単に務まる」と評するなど、ごく若い頃からその才を高く評価している。

石黒監督版OVAでの登場

石黒監督版OVAでは、オリジナル回や外伝からの時系列変更回が多かった本伝第一期前半において初登場。時系列を変更して本伝時間軸に編入されたベーネミュンデ侯爵夫人によるグリューネワルト伯爵夫人暗殺未遂事件のほか、原作「星を砕く者」では関わらなかったクロプシュトック事件（こちらも時系列変更）にも顔を見せ、女傑ぶりをみせつけている。アスターテ会戦をリメイクした「新たなる戦いの序曲」にも、アンネローゼとのシーンで登場。

外伝では原作通り「千億の星、千億の光」に登場したほか、OVA オリジナル三部作のひとつ「決闘者」では、シャフハウゼン子爵家とヘルクスハイマー伯爵家との間の決闘事件において、ラインハルトからの決闘者代行の申し出に大喜びで乗り、決闘者としてのラインハルトのお膳立てをした。本来命に関わらないはずの”決闘”が策謀により危険なものとなったときには、相手方の決闘者がラインハルトの命を狙っていることをいち早く見抜いており、決闘の結果ラインハルトに怪我をさせてしまったことについても多少負い目を感じたようである。