マリネスク(フェザーン) 単語

マリネスク

2.8千文字の記事

マリネスクMarinesk、Marinescu[1])とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。

CV.緒方賢一石黒監督OVA)、望月健一Die Neue These

※同名の自由惑星同盟少将については「マリネスク」を参照。

概要

フェザーン自治領公民独立“ベリョースカ”号、および“不孝(アンデューティネス)”号の事務(オフィサー)帝国456年(宇宙765年)の生まれ。帝国488年(宇宙797年)4月当時に32歳という年齢のわりに、たるんだ身体、気苦労のために薄くなった頭髪、闊達さの欠けた老け顔が生活に疲れた中年男という印を与えるが、にはまだ年齢相応の活力と若々しさを残している。

船長である商乗りボリス・コーネフの信頼厚い部下として、商業国家フェザーンらしい如才ない人物でありつつも堅実な事務・経理力をあわせもち、言動の割に浪漫義な船長ボリスのもとで不景気細商の経営を支えた。なかでも、ボリスが自治領府の命で自由惑星同盟首都ハイネセンに赴任していた間は揮をとり、ユリアン・ミンツ一行を手助けするなど少なからぬ役割を果たした。

なお、同名のキャラクターとして、先んじて1巻明篇で登場した同盟軍少将マリネスクもいるが、(別人だとは実はどこにも書かれていないけども名前以外に同一人物だと考える理由もないしたぶんも考えていないので)別の記事としている。

経歴

“ベリョースカ”号事務長

初登場は2巻野望篇、帝国488年/宇宙797年4月ごろ。地球へ巡礼者をはこぶベリョースカ号の事務長としてボリス・コーネフ船長を補佐し、当時リップシュタット戦役にて辺を計略中に遭遇したジークフリード・キルヒアイスとも通信越しに対面している。フェザーンに戻り、ボリスハイネセンの弁務官事務所に赴任させられてからは、船長代理としてベリョースカ号の揮にあたる。

次の登場は4巻策謀篇、帝国489年/宇宙798年末に銀河帝国軍の“神々の黄昏”作戦が発動されフェザーン侵攻が起きると、封鎖されたフェザーン回廊から同盟方面への密航を企て、航宙士としてカーレ・ウィロックリクルート帝国軍に追われる身となったフェザーン駐在同盟弁務官事務所ユリアン・ミンツルイ・マシュンゴヘンスローの3人や地球教デグスビイを乗客とし、つづく5巻風雲篇では帝国領方面に限って封鎖が解かれた直後のフェザーンを出航した。

密航にあたっては様々な工夫を施したものの、代理総督府が同じフェザーン人を摘発に協力させたこともあってうまくいかず、途上で帝国軍の駆逐艦メル4号に発見される。そこでマリネスクユリアンの大胆な策を容れ逆にハメル4号を乗っ取って危地を脱したが、帝国軍の疑念を避けるためその場でベリョースカ号を破壊せざるをえなかった。その後、ハメル4号ランテマリオ星域会戦直後の同盟軍ヤン艦隊に保護され、ともにハイネセンに到着してボリスに合流する。

“親不孝”号事務長

やむなく“ベリョースカ”号を失ったことから、彼は奪った駆逐艦の所有権がベリョースカ号の乗員にあると強くした。最終的にはバーラトの和約後、ヤン・ウェンリーの手配で同盟軍の輸送が引き渡され、宇宙に舞い戻ったボリスのもと彼も“不孝”号と名付けられた新事務長に復帰した。

6巻飛翔篇ではユリアンらを乗せて地球に赴くが、地球上では地球教本部への潜入メンバーに加わらず、ウィロックとともに“不孝”号で船長留守を守った。その後も、はじめはヤンに協力し、彼が暗殺されたのちには遺志を継いだイゼルローン共和政府のため情報収集を自らの任としたボリスとともに、しばしば帝国軍統治下のハイネセンに潜入し、本伝の完結までボリスの堅実で忠実な部下でありつづけた。

人物・能力

本伝時期に30代前半~半ばと、老けた外見よりずっと年若いが、4歳下の船長ボリスに対しては年長者らしくなだめたり忠告することが多く、ボリスの女房役といった情。ボリス相手に「一攫千金のを捨てたときにの大商人へのが開ける」と諭すなど、心のコンパスに従い地上から遊離しがちなボリスを(可なかぎり穏便に)引きずり下ろす役割を担っていた。

勤勉と実利義をこそ宗旨とするフェザーン人にして、力面でも人格面でも「堅実がを着たような」と評される手がたい人物であるが、そんな人物がいかなる経緯で夢追い人なところのあるボリス事務長として活躍しているのかは明らかでない。ただ、「うちの船長は、必要もないところでかっこうのよい台詞を言いたがるさえなければ」とさして不満らしい不満もないらしいあたりは、単に堅実一辺倒の人物とも言い切れないところがある。

フェザーン人らしく、金銭と想を友としざとくざとい一面も持っており、地の文にも「万事いきとどいた男」と表現されている。本伝終盤、あたらしい時代にふさわしい情報を売買する商人になる、などと言い出したボリスに返した「なんにしても、良質の製品を売って信用をえて事業を拡大するのは、いいことです」という彼の言葉は、ごく一般論的ではあるが良性堅実な商売人である彼らしい言であろう。

このほか、フェザーンで客としたユリアンには、ボリスとヤン経由の縁やユリアンが(ヘンスローからむしった金で)乗代を払ったといった経緯はあるにしてもかなり好意的な様子であり、年若いユリアンがまだ知らない、機を見るに敏だが義理は果たすフェザーン商人的な思考のありようを教える役割も果たしている。いっぽうで、度量に欠けたヘンスロー相手にはからかって楽しむようなところもあった。

能力

事務・経理に通じており、運送業務の受注をはじめ、堅実な手腕でベリョースカ号の運航を支えている。ベリョースカ号が細ながら大資本の下に収まらず独立でありつづけていられるのも、彼の力あってのこととされる。彼自身、自分は乗りではなく事務屋であると認めており、ベリョースカ号の船長代理としても操はウィロックのような専門に任せていた。

いっぽう、フェザーンからの密航にあたっては、密航を企てる一団ありと官にあえて通報してみせたり、偽造通行を用意する、航行中にも他のから極秘情報を集めて情勢を検討するなど、フェザーン乗りらしくその方面の手管に精通しているところを見せた。しかし代理総督府が積極的にフェザーン人を協力させることまでは予測できず、危うく失敗におわりかけている。

関連動画

関連項目

脚注

  1. *銀河英雄伝説事典』所収の人物事典ではMarinesk、『銀河英雄伝説 Die Neue These 公式設定資料集2』ではMarinescu。
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