ミラクルユートピアとは (ミラクルユートピアとは) [単語記事]

ミラクルユートピア（Miracle Utopia）とは、1931年生まれの日本の競走馬。栗毛の牡馬。

キャリア3戦全てレコードを記録した、現代競馬黎明期の「幻のダービー馬」。やべー産駒が2頭いることでも知られる。

主な勝ち鞍
 1934年：帝室御賞典(東京)

概要

父*クラックマンナン、母*エミール、母父 Maori Kingという血統。
古すぎてわかんない？　大丈夫、本記事作成者もぶっちゃけよくわかってない。

父は「天下無双」と呼ばれ母としても一大牝系を作りあげたイギリスの牝馬三冠馬Pretty Pollyの産駒。競走成績は不詳だが、1926年にイギリスから5万円で輸入されたらしい。
母は豪州産馬で、ミラクルユートピアが第2仔。牝系子孫にはスピードシンボリとのエピソードも知られる名牝ハクセツなどがいる。
母父マオリキングはニュージーランドの馬らしいが詳細はよくわからない。

1歳上の愛しの半姉に、1933年のダービー2着などの活躍を見せたメリーユートピアがいるほか、1歳下の半弟に農林省賞典(橫濱)勝ち馬ハツピーユートピア、2歳下の半妹にダービー5着で安田記念馬フソウの母マリーユートピア、7歳下の半妹に前述のハクセツの祖母で桜花賞2着のリリアンなどがいる。

1931年、室蘭のユートピア牧場で誕生。オーナーはそのユートピア牧場の代表・小林國威。ユートピア牧場は現在、ライスシャワーの生産牧場として知られているが、もともとは小林オーナーが創業した牧場で、1938年に栗林家が小林オーナーから買収したのだそうである。

楽園の奇蹟

姉と同じ京都競馬場の中村一雄厩舎に預けられたミラクルユートピア。当時は今でいう2歳戦は存在せず、4歳（現3歳）となった1934年 1月6日、この年の競馬開催2日目の阪神・芝1800mの新呼馬（現在の新馬戦）で騎手兼任の中村一雄を鞍上にデビューすると、前年のダービー2着馬メリーユートピアの弟ということで1番人気に支持され、1:54.0の驚異的なレコードタイムで7馬身差の圧勝。
さらに8日後の阪神・芝2000mの新呼馬優勝戦も2:06.0のレコード9馬身で大圧勝。当時としては破格もいいところのとてつもない時計で、比較の一例として前年のダービー馬カブトヤマがダービー勝利の2戦後に同じ阪神・芝2000m・良馬場の古馬戦を勝ったときの時計が2:08.4である。もうこの時点でミラクルユートピアはこの年のダービーの絶対的な大本命となった。

ダービーを目指して一路東上したミラクルユートピアは、3戦目としてダービーの前週、古馬相手の東京・芝2000m戦、帝室御賞典(東京)に乗りこんだ。今の天皇賞の前身のひとつとなったレースである。5頭立てのこのレースには、誰あろう前年のダービー馬カブトヤマも参戦していた。しかしそのカブトヤマを抑えて堂々1番人気に支持されたミラクルユートピアは、ダービー馬を蹴散らして2:07.2のレコードで完勝（カブトヤマは3着。2着は後のダービー2着馬で、天皇賞馬オーエンスの母・菊花賞馬セントオーの祖母となる同期牝馬テーモア）。

これはもはやダービーはミラクルユートピア確勝である。興味はいったい何馬身差をつけて勝つのか、どんなレコードが出るのか。第3回日本ダービーはこの不世出の天才の独り舞台となる……はずだった。

だが。
ダービー当日、4月22日の朝。
レース前の最後の調教で、内馬場を軽く一周していたミラクルユートピアは、4コーナーで躓いた。
中村騎手が慌てて飛び降りると、ミラクルユートピアは前脚を地面につけられないほど痛がっている。
真っ青になって駆けつけた厩舎スタッフによって東京競馬場の治療室に運ばれたが、獣医の診断は球節の捻挫脱臼、および骨折。
レース出走はどう足掻いても不可能だった。

他陣営がミラクルユートピアにおそれをなして、未だダービー史上最少頭数である僅か10頭立てとなったこの年のダービーは、1番人気となった秋田産馬フレーモアが完勝。絶対的大本命ミラクルユートピアの名は、このレースの着順表の一番下に、「取消」の文字とともに記されるのみとなった。

そしてミラクルユートピアはこの故障により、競走能力喪失。
史上最強のダービー馬となるはずだった天才は、あまりにもあっけなくターフを去った。
『日本ダービー25年史』ではこれを「世界のダービー史でもかつてない不幸な出来ごとだった」と記している。

楽園の家族愛……？

さて、引退後は故郷のユートピア牧場で種牡馬入りしたミラクルユートピア。牧場が栗林家に買収されたあとには母や姉とともに千葉に移ったそうである。
種牡馬としては橫濱記念を勝ったフアンタスト（後の皐月賞馬ファンタストとは当然ながら別の馬）、1948年の目黒記念(春)を勝ったミツカゼなどを輩出した。ダービーにも1947年の1番人気馬アヤニシキなど5頭の産駒を送りこんだが、残念ながら産駒によるリベンジはならなかった。
母父としては川崎競馬場の誇るオークス馬、現在もエンプレス杯の副題に名を残す名牝キヨフジを出している。

とまあ、それだけならぼちぼちの種牡馬なのだが……。黎明期故なのか、それとも生産者が2年続けてダービーを獲り逃しておかしくなったのか、ミラクルユートピアにはちょっと信じられない産駒が2頭いるので紹介しておきたい。

1頭目はミラユートピア(1936年産、牡)。初年度産駒であり、半姉メリーユートピアの初仔である。
つまり、血統表で表すとこう。

ミラクルユートピア 1931 栗毛	*クラツクマンナン
	*エミール
メリーユートピア 1930 青毛	*クイツケロ
	*エミール

……お前は何を言っているんだ。FANZAでやれ。
ちなみにミラクルユートピアの初年度の種付け頭数は1頭。つまりこの年、ミラクルユートピアは姉としか交配していない。純愛か。

しかし、こんなもので驚いてはいけない。2×2のインブリードは現代でも全兄弟クロスでならたまに見るのであるし。マイネルレオーネとか。さすがに同一馬での2×2はまず見ないが……。

では、上が霞むほどのもっとヤバいもう1頭の産駒、マイユートピア(1937年産、牡)の血統表をご覧いただこう。

ミラクルユートピア 1931 栗毛	*クラツクマンナン
	*エミール
*エミール 1925 青毛	Maori King
	Enileme

……つまり、産駒であり半弟である。近親ハーレムもののエロ同人を現実でやるんじゃない。
当時の種牡馬名簿には「本馬ハ父ミラクルユートピアナルヲ以て弟馬ニシテ且産駒ナリ」とある。ガチの1×2のインブリードなんて牧場の手違いでつけてしまったというリトルジャスミンの1994以外に存在したんだ……。
いやあ、黎明期の馬産っておそろしいね。

没年は不詳である。ミラクルユートピア産駒は確認できる限りは1945年産が最後なので、1949年没の愛する姉メリーユートピアに先立ったのかもしれない。

ちなみに現在もミラクルユートピアの血は僅かながら残っている。キヨフジを輩出したリガーユートピアの牝系が繋がっており、21世紀になってからも2009年のターコイズSを勝ち芝ダート重賞馬券内4回などの戦績を残したウェディングフジコなどが出ている。

血統表

*クラツクマンナン 1919 鹿毛	Lomond 1909 鹿毛	Des mond	St. Simon
			L'Abb esse de Jou arre
		Lowland Ag gie	Alloway
			Agnes Sa rum
	Pretty Polly 1901 栗毛	Gallinule	Isonomy
			Moorhen
		Adm iration	Sara band
			Gaze
*エミール 1925 青毛 FNo.C1	Maori King 1906 黒鹿毛	Merriwee	Bill of Portland
			Etra Weenie
		Indian Queen	Step niak
			Ranee Nuna
	Enileme 1909 鹿毛	Gauleon	Gozo
			Industry
		Em eline	Os cul ator
			Em eline