ムサイとは、アニメ「機動戦士ガンダム」およびそのシリーズに登場する架空の宇宙艦艇または艦級。
多数の姉妹艦が存在し、ジオン公国やその後継国家であるジオン共和国または残党たちによって運用されていた。ガンダムシリーズでは第一話から登場。
軽巡洋艦とされることが多く、他には単に巡洋艦と称されることもある。軽巡洋艦とは第一次世界大戦後の軍縮条約により生まれた艦種(もともとは小型の巡洋艦)であり、砲の口径により軽と重の分類がなされていた。作中ではチベが重巡洋艦とされているが、この分類の根拠は不明である。一応、武装そのものは先行して開発されたチベが上であるため、運用上の区別が生じ別艦種として認識されたとも思える。
ネームシップである「ムサイ」の名称については不明。旧日本海軍の武蔵であるとする説やギリシャ神話の神であるムサーイに由来すると言う説がある。外見がむさ苦しいからムサイとも。
0058年、ジオン共和国誕生と共に発足したジオン共和国国防隊(のちの公国軍)ではあったが、当然に軍隊としての質・量ともに連邦軍には劣っていたと推測される。ただし、連邦宇宙軍の発足も翌年の0059年であるため、そもそも両国とも宇宙軍についてのノウハウは存在しておらず、この段階では手探りの状態であったようだ。
0069年10月、まずジオン軍初の独自開発艦である「パプア」が竣工。「パプア」の戦艦時代の武装はいまだ不明であるが、従来の警備艇を拡大しミサイルや実弾砲を多数装備したものだったと思われる。しかし、皮肉なことに同年同月にはトレノフ・Y・ミノフスキー博士によりミノフスキー粒子が発見され、翌年3月には電磁波かく乱効果が実証。5月にはメガ粒子砲の開発も行われ、電子戦・実体弾戦を前提とした「パプア」は誕生とともに旧式化してしまう。
0070年6月、「チベ」級重巡洋艦が竣工。こちらも当初は実体弾を装備していたが、「パプア」よりは余裕のある設計でありメガ粒子砲に換装することで何とか第一線級に留まることができた。
0071年、ジオン公国軍は来るべきミノフスキー粒子散布下における戦闘に適した新兵器の開発に着手。これがのちのMSであり、0073年に第一号機が完成。0074年にはザクⅠ型としてロールアウトする。同時にMSを運用する専用艦も求められ、これが「ムサイ」の開発につながって行くことになる。
全長は234メートルであり、仮想敵である連邦のサラミス(228メートル)とはほぼ同サイズである。ただし、横幅は103.2メートルもあり、サラミスの62.2メートルはおろか、戦艦であるマゼランの94.5メートルより大きい。
エンジンは熱核ロケットを左右両舷に二基、艦橋と平行する形で下部に装備し典型的なブロック別設計となっている。これはダメージコントロールの面では優れており、後述するがのちの宇宙世紀の宇宙艦で主流となる配置である。
武装は竣工時期によって大幅に異なっており、主砲は初期型が連装メガ粒子砲3基。後期型が同5基。戦時量産型が2基である。前期型と戦時量産型は全門が前方に配置され死角が生じているが、これは火力を集中させる設計思想であったとされる(推測だが、連邦に数で劣ることを考慮した結果か。また、戦闘のイニシアティブは自軍が握ると言う戦略上の前提も影響しているのかもしれない)。後期型では艦橋後部と船底部に1基ずつ追加装備されており、死角を極力減らしている。
ミサイルランチャーは初期型が大型2基、小型10基。後期型が小型10基を装備している。
対空砲は初期型は装備されておらず、後期型でようやく連装10基の配備が確認できる。連邦のサラミスでさえ対戦闘艇用に単装6基の機関砲を装備していたのだから、有視界戦闘を前提にしていた艦としては疑問が残る設計である。これは連邦がMSを導入することを予測せず、または導入前に決着をつけることを目論んでいた証左かもしれない。セイバーフィッシュをはじめとした戦闘艇対策については、飛び立つ前に母艦を撃沈するドクトリンであった可能性はある。初期型は論外にしろ、後期型も非常に攻撃に対し脆弱であり搭載MSによる直掩や僚艦同士弾幕を張り合うことで対処するほかなかったようだ。
主兵装は言うまでもなくMS搭載・運用能力である。MSが宇宙で母艦を必要とするのはエンジンや機体を冷却する必要があるためであり、当然ながらこれらの機能を一通り備えていたと思われる。
また、のちに宇宙世紀のMS搭載艦で標準となるカタパルトを装備しておらず、近距離の場合は後方の射出口からそのまま放出し、遠距離の場合はコムサイと呼ばれたシャトルで輸送すると言う独特な運用がなされていた。概ね戦場にMSを放出した後、艦は後方に下がると言う戦術であったとされ、MS戦思想がまだ揺籃期にあったことをうかがわせる。
MSは4機の搭載が可能。また、艦首下部に前述のコムサイを搭載している。
船型は先端が靴型であり、後部にかけて上向きに傾斜し艦橋がその頂点にあると言う独特なもの。エンジンが本体船底部より下に独立して存在すると言う特徴もあり、連邦軍の間では「ハイヒール」とあだ名されていた。
史上初のミノフスキー粒子散布下戦闘を前提にした艦船である。本艦の竣工をもってMSの量産が決定しており、ギレンや軍上層部の期待がうかがえる。また、ジオン公国の艦艇の中では最大に生産され、一年戦争における宇宙戦ではほぼ全てに参加したと言っても過言ではない。MSの活躍に比して目立たないが、ブリティッシュ作戦やルウム戦役での勝利の立役者である。その後も後半までジオンがほぼ宇宙での優勢を確保しており、本級がその宇宙軍の中核をなしていた。劇中初期でも連邦のV作戦を捕捉しホワイトベース追跡に成功し、後期も本級が中軸であったキャメル隊がパトロール任務についているなど運用面でも非常に使い勝手が良かったようだ。
ただし、ルウム戦役では連邦軍の抵抗に苦戦し、参加艦艇の三分の一を喪失したと言う説がある。純粋な軍艦として見た場合、砲術戦能力では連邦のマゼランには対抗できず、ほぼ同等性能のサラミスには数で勝てないため、MSなしの戦術はまずあり得ない割り切った建艦思想の上に成り立っている。
そのMS戦能力も前項で指摘したように、敵MSを迎え討つと言う点では性能が不足しており、後半はやや旧式化している。粗悪な戦時量産型の存在もこの傾向に拍車をかけたようだ。
また、カタパルトを使用せず、コムサイで運ぶと言う運用思想も陳腐化が見られた(手間が煩雑で即応性にかける。戦域にまで運ぶこと自体が危険。艦に収容していることでデッドウェイトと化す等)。皮肉なことに旧型であるチベが改良によりカタパルトと大量の機関砲を手にし、MSも本級の倍の9機を搭載できたため単艦としては格下とする評価も多い。ただし、サラミスを中心とした連邦の急造MS搭載艦は軒並み露天つなぎ止めであり、格納庫があるだけでも第一線級であったとは言える。
ジオン軍による地球降下作戦の際には、迎撃に現れたサラミス級三隻とムサイ三隻が交戦。反航戦から急制動で強引に丁字有利に持っていく姿が描かれ、撃ち合いでサラミス一隻を撃沈している。また第603技術試験隊が連邦軍部隊と交戦していると聞き、救援に駆けつける。残っていたジムに向けてビーム砲を撃ちかけ、正確に撃墜する活躍を見せた……のだが、そのジムはジオン製MSゲム・カモフで同士討ちを演じてしまっている。
ネームシップであるムサイは劇中では登場しない。全ては姉妹艦である。
ジオン宇宙軍の中核を担うムサイには幾つかの派生艦が造られている。
『機動戦士ガンダム0083』にて初登場した、ジオン残党「デラーズフリート」が使用したムサイの派生艦。一年戦争時に生産されたムサイの後期型をデラーズフリートが使い続けていた。ムサイと比べて船体が太くなっており、後方を睨むメガ粒子砲も設置された。これによりムサイの弱点であった後方の死角が改善された。また対空砲を10門増設し、泣き所の対空能力の低さを改善。
ムサイの時点でMS運用能力を有していたが、カタパルトを持っていなかったため発進に時間が掛かっていた。 そこでカタパルトを有した後期生産型が造られた。モビルスーツデッキの両側に備え付けられたカタパルトにより迅速なMS展開が可能。
戦争後期、ムサイはこの後期生産型で統一される予定だったが通常のムサイと比べて製造工程が複雑だったため簡略化した最終生産型が造られる事となる。
『機動戦士ガンダム0080』に初登場したムサイの派生艦。洗練された、鋭角的な艦へと変化している。再設計と生産が終戦間際だった事から、後期生産型と比べて就役した艦が少ない。ネームシップの艦名からジークフリート級、もしくはムサイ最終型とも呼ばれる。
前期生産型のムサイをベースに、機動性と航続距離を増やすために簡素化したタイプ。3基あった前面のメガ粒子砲は2基に減らされ、代わりに艦前部には推進剤が増設された。後期生産型と違って対空砲が一つも装備されておらず、しかも武装は2門のメガ粒子砲だけという、攻撃面ではベースとなった前期ムサイに劣ってしまっている上、あまつさえカタパルトも付いていない。一方で後部ハッチが下に開く改良が施されており、MS発着の際の足場として利用されている。搭載機としてザクⅡ改とリック・ドムⅡを運用する。『0080』劇中では1番艦ジークフリート、2番艦ワルキューレのみが確認され、両艦ともグラナダ艦隊に所属。
ゲーム『ギレンの野望』シリーズではジオン独立戦争記から登場。前期ムサイの運用データを基に設計の見直しを行い、生産性を維持しつつ性能の向上を図った改良型と説明されている。このため最終型を生産するには後期型の生産が条件となっている。初登場した独立戦争記ではムサイの中で最高の性能を誇っていたが、近年の作品だと弱体化を受け、わざわざ生産するほどのものではない扱いとなっている。それでもムサイ後期型より射程や搭載能力が強化された。また『0080』劇中では登場しなかったミサイル兵装や、専用のコムサイも装備している。高性能化を図る事でエンドラになる。
一年戦争も終わりが近付いた0079年12月14日、サイクロプス隊による新型MS・NT-1アレックスの奪取または破壊を行うルビコン作戦に参加。フォン・ベルシング中佐が座乗するティベ級2番艦グラーフ・ツェッペリンに率いられ、ジークフリートとワルキューレはグラナダを出撃。翌15日、サイド6宙域に進出し、サイクロプス隊補充要員のバーナード・ワイズマン伍長を乗せた小型シャトルを先行させる。そしてコロニー「リボー」に駐留する連邦軍部隊の注意を引くためグラーフ・ツェッペリンとともにザクⅡ改とリック・ドムⅡを発進し、陽動を実施。伍長が乗ったシャトルを偶然戦闘に巻き込まれたかのように見せかけ、連邦軍の目を欺いて入港に成功。無事任務を達成したヘルシング艦隊は、グラナダへと引き上げた。
ところがルビコン作戦は失敗し、サイクロプス隊はワイズマン伍長を除いて全滅。キリング中佐はクリスマスの夜までにNT-1を始末出来なかった場合、サイド6へ核攻撃を行ってコロニーごと葬る凶行に出る。反対したグラナダ基地司令ルーゲンスは射殺された。12月25日午前0時、ヘルシング艦隊はグラナダを出撃。核を搭載したグラーフ・ツェッペリンを護衛していたが、同日午前10時に連邦軍第14戦隊のサラミス級2隻と遭遇。交戦のすえサラミス1隻を撃沈するが、ムサイも1隻沈められる(艦名不明)。元々南極条約違反の核攻撃に反対していたヘルシング大佐は大した抵抗を見せずに投降、生き残ったムサイも投降したと思われる。ちなみに作中では一度も発砲する場面が描かれていない。
キャメルパトロール艦隊が用いていたムサイは作画のミスでメガ粒子砲が2門になっていた。このムサイに改修を加えたのが最終生産型とする説がある。
一年戦争後もジオン共和国やネオ・ジオン(アクシズから袖付きまで)で改修を続けて運用がなされている。改修・改良艦の中でもアクシズのエンドラは特徴的であり、410メートルの巨体にカタパルトとミノフスキークラフトを装備し、当時の量産艦の中でも最高水準の艦艇であった。
また、艦の設計は連邦でも取り入れられ、アレキサンドリア級巡洋艦には本級のエンジン配置の影響が見られる。この系譜はラー・カイラムにも受け継がれており、大変革新的であったようだ。
掲示板
21 ななしのよっしん
2023/08/18(金) 16:10:29 ID: ZmGmVIeCUw
見るたびに思うのが、船室がある(と思われる)前半分とブリッジ・格納庫区画との往来に難儀しそうだなと
砲塔の裏を通ってると思われるエレベーターか動く手すりが登り降りで分かれてはいるんだろうが
22 ななしのよっしん
2023/09/07(木) 15:43:53 ID: NLKGCWOVLm
>>21
船室と格納庫の配置が逆だったらその点に関してはマシだったかもね
もっとも、自分が思いつかないだけで別の問題が出てくるかもしれないけど
23 ななしのよっしん
2023/12/06(水) 16:31:05 ID: MEY7bDIIcl
船尾方向へMSを発艦させる仕様について、YouTubeの解説動画だったかそれへのコメントだったかで、「ムサイは兵員輸送車や歩兵戦闘車に相当するんじゃないか?」って指摘もあったな。
確かにそう考えると、歩兵=MSの安全な発進を考慮した設計だったとは言えるのか。
ただ、「MSとは戦闘機である」という認識が広まったことで、ムサイ式は自然と廃れていったんだろうな。
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最終更新:2025/04/09(水) 22:00
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