ヨカヨカとは、2018年生まれの日本の競走馬である。
馬名の意味は、九州地方の方言で「いいよ、いいよ」。
多士済々の2021年クラシック世代に現れた、いろんな意味で異色の馬である。
父*スクワートルスクワート、母ハニーダンサー、母父Danehill Dancer。
血統だけ見ると、いろいろなんだこれ!?と突っ込みたくなる血統ではある。
まず、父スクワートルスクワートはアメリカ産馬で2001年のブリーダーズカップスプリントを制覇した馬で、引退後に日本軽種馬協会(JBBA)に種牡馬として購入され、JBBAの管理する種馬場を移動しながら種付けを行っているが、九州に来た際に九州産馬としては優秀な競走馬を多数出した[1]ことから、2016年から当時九州にいた*アラムシャーと交代で九州で移動することとなり、現在も九州にいる。
一方、母のハニーダンサーは競走馬としては未勝利であるが、血統をさかのぼってみると祖母ハニーバンのきょうだいにファインモーションや*ピルサドスキーがおり、さらに近親にはレッドキングダムがいるなど、隠れた良血馬であり、母父も相まって血統構成自体はだいぶファインモーションに近いものがある。
そんなハニーダンサーはもともとは生まれ故郷である大島牧場(北海道浦河町)で繁殖牝馬をしていたのだが、この馬の生産者である本田土寿氏の長男がハニーダンサーがいた大島牧場で獣医として勤務していた。
そして、熊本に帰郷した際にトゥザグローリーの種がついた状態のハニーダンサーを譲り受けたのち、スクワートルスクワートを種付けして、ヨカヨカが誕生したのである。
……ん?九州種馬場?熊本??
出てくるワードや地名に色々違和感を覚えた方もいるだろう。
競走馬の生産地に出てくるはずの北海道の地名がさっぱり出てこないどころか、そもそも熊本ってどういうことだ!?と思ったそこのあなた。
実は、この馬は九州産馬、その中でもさらにレアな、熊本県の本田土寿牧場で生産された熊本産馬なのである。
九州産馬の生産のメインは鹿児島や宮崎なのであるが、熊本でも「本田土寿牧場」と「ストームファーム」という2つの牧場が中心になって競走馬の生産を行っており、2018年に本田牧場で生まれた1頭がヨカヨカであった。
中央競馬において九州産馬は全体的に苦しい戦いを強いられているが、その中で気を吐いてるのが本田牧場である。
この馬の半姉であるローランダーは故障もあり既に引退し繁殖入りしたが、北海道の馬相手に1勝を挙げている。
ちなみにこのローランダーの父はトゥザグローリー。
つまり熊本に移動したときの最初の子供であった。
少し話が長くなったが、ヨカヨカは本田牧場で育った後、JRA宮崎育成牧場に移動し、ブリーズアップセールに上場されることとなった。
すると、ブリーズアップセール前の宮崎育成牧場で行われた公開調教育成馬展示会において、2ハロン23秒0、ラスト1ハロン11秒0という全体での1番時計を残すなど注目を集め、ブリーズアップセールにおいて1122万円でオーナーである岡浩二氏に落札され、谷潔厩舎に入厩し競走馬デビューを迎えることとなった。
さて、ヨカヨカもほかの九州産馬の例にもれず、小倉の九州産馬限定戦でデビュー……と思われたのが、その名前が出てきたのは6月の阪神の新馬戦であった。
このレースはヨカヨカ以外は北海道産馬が集まるレースであったのだが、スタートこそ後手を踏んだものの、直線で力強く伸びると、のちの京王杯2歳ステークス勝ち馬モントライゼを頭差抑え新馬勝ちをした。
九州産馬が九州産限定の新馬戦以外で新馬勝ちしたのは2017年のレグルドール以来であったが、レグルドールは九州産限定の新馬戦を除外されてそれ以外の新馬戦に出て勝っていた。つまり、ヨカヨカは北海道産の馬相手でも勝負になるとみて出走し勝ったのである。
その後、小倉に移動して、フェニックス賞に出走。ここでは前走で破ったモントライゼが次の未勝利戦で大差勝ちしたこともあり注目を集めた。
レースではスタートを決め、道中先頭を走るとそのまま押し切り2連勝。これで一気に小倉2歳ステークスの有力馬に上がる。
ところが、陣営が選んだのは九州産馬限定のひまわり賞(OP)。しかも斤量は2歳牝馬には厳しい57キロである。そんな重い斤量のレースに出してヨカヨカがぶっ壊れたらどうするんだといいたくなるレース選びである。
なお、結果は他の九州産馬とはレベルが違うといわんばかりに、ムチも使わずに3馬身半ぶっちぎった。
一方で、この翌週に行われた小倉2歳ステークスには別の九州産馬が2頭出走していた。1頭(鹿児島産)は案の定棒にも箸にもかからない惨敗だったのだが、もう1頭の小さな牝馬は直線で末脚を伸ばして4着に突っ込んできた。
その馬の名はルクシオン。
彼女は先述したストームファームで生産された熊本県生まれの馬であった。
ちなみにルクシオンもデビュー前に見初めた岡田牧雄氏が「九州産馬のレースを取ろうとしたわけではなく、たまたま見つけた馬が九州産馬だっただけ」と評価していた。
また、実際に福島2歳ステークスを勝利しており、並みの九州産馬とはわけが違ったようである。
その後休養を挟み、ファンタジーステークスに出走。
ここでとうとう北海道産の馬の壁にぶち当たり、メイケイエールの5着と敗れて連勝がストップすることとなる。
だが、陣営は続く阪神ジュベナイルフィリーズに出走。このレースでは道中は果敢にハナを奪い、直線半ばまでは先頭を走るなど見せ場たっぷりの走りを見せたが、ソダシやサトノレイナス、ユーバーレーベンなどに差されて5着に敗れた。
それでも、このレースでルクシオン(10着)とともに熊本県産馬初のGI出走を達成し、九州産馬がGIの掲示板に入るのも初という快挙を成し遂げた。
年が明け、ヨカヨカは桜花賞トライアルである、G2・フィリーズレビューから始動することとなった。
だが、この復帰前に悲しい知らせが入っていた。
1月にルクシオンが調教中の事故で予後不良になっていたのである。
しかもその事故というのが、他馬に驚いて放馬した際に地下馬道で壁に激突し骨折というルクシオン陣営にとってもやりきれないものであった。
友がいなくなったヨカヨカであったが、この年の始動戦となったフィリーズレビューでは直線で堂々と先頭に立ち、熊本産馬重賞初制覇か!と思われたところで、シゲルピンクルビーに差されて2着。
ちなみにシゲルピンクルビーを所有する森中蕃氏にとってはこれが悲願のJRAサラ系平地重賞初制覇であった。
その後トライアルで権利を得た桜花賞に出走したが、桜花賞前に目の外傷を負った影響かはたまた距離の壁か、初めて掲示板も外す17着と惨敗してしまう。
続いて、得意の1200メートル戦でもある葵ステークス(重賞・中京1200m)に出走。ここではスタートに失敗してしまい、中段からの競馬となったが直線で追い込みを見せたものの、惜しくもレイハリアにハナ差及ばず2着だった。
夏競馬は小倉競馬場での開催となるG3、CBC賞(小倉芝1200m)に出走。九州凱旋レースともあり1番人気に推される。前走と同じく中段からのスタート。先日にJRAレコードが2つ出た高速馬場の小倉、先攻有利の展開となり、前日にプリモダルクが出したレコードタイムを更新したファストフォースやピクシーナイトらを捉え切れずに5着となった。なおタイムは1:06.4。プリモダルクが出した前レコードと同じ時計なので、そのポテンシャルの高さを地元ファンに発揮できたレースとなる。
次走は8月のG3北九州記念(小倉芝1200mハンデ戦)。同じ小倉競馬場での開催であり、昨年高松宮記念を勝ったモズスーパーフレアとの対決や因縁のシゲルピンクルビー・ファストフォースらとの再戦に注目が集まった。レースでは道中3~4番手につけ、最終直線で外から伸び、逃げるモズスーパーフレアを捉えきり勝利。最軽量ハンデ51kgも味方に付けての殊勲となった。2着には共に追い込んだ前走のCBC賞の勝者ファストフォース(負担重量55kg)が入り、3着にはモズスーパーフレア(負担重量56.5kg)が逃げ粘って入線。因縁のシゲルピンクルビー(負担重量52kg)は4着だった。この中央競馬重賞勝利は、熊本県産馬では史上初、九州産馬としては2005年のアイビスサマーダッシュ勝馬テイエムチュラサン以来、16年ぶり10頭目である。
次走にかねてから大目標としてきたスプリンターズステークスを選択していたが、その直前、調教後に地下馬道で暴れてしまい、左第1指節種子骨々折を発症、競走能力を喪失してしまった。
地下馬道でのアクシデントによる故障という、奇しくもルクシオンと似たような形になってしまったが、友のような最悪の結果に至らなかったのが不幸中の幸いと言うべきか。
その後、10月22日に競走馬登録を抹消された。その後、岡オーナーが北海道・新ひだか町に所有する牧場・サンデーヒルズで繁殖牝馬となった。
重賞戦線でついに勝利を果たし、並みの九州産馬とは違うところを見せつけたヨカヨカ。今後の活躍に期待がかかる中の悲報であったが、繁殖牝馬として活躍する子がでることを期待したい。最初の交配相手にはキズナが選ばれ、2023年3月27日に、無事に第1子となる産駒(牡)が誕生した。
彼女のふるさと熊本県には競馬場がない(荒尾競馬は廃止されてしまった)こともあって競馬人気はそこまでではなかったが、本馬の活躍で在熊メディアが牧場に取材に訪れるなど、注目度はうなぎ登りであった。さらには九州産馬自体の人気向上にもつながっているようで、2021年の九州産馬1歳セリ市場は昨年を大きく上回る取引額・売却率を達成した。また、2022年には同市場にて、ヨカヨカの活躍を記念し、九州馬主協会から関係者一同(岡オーナー、生産者・本田土寿氏、谷調教師、主戦の幸騎手)への表彰も行われた。
熊本地震からの復興の道半ばで生まれ育った「火の国乙女」。
自身もまた道半ばで夢を絶たれることになってしまったが、志半ばで逝った友の分まで、血を繋ぎ夢を広げていって欲しいと願うばかりである。
*スクワートルスクワート 1998 黒鹿毛 |
Marquetry 1987 栗毛 |
Conguistador Ciero | Mr. Prospector |
K D princess | |||
Regent's Walk | Vice Regent | ||
Lover's Walk | |||
Lost the Code 1990 鹿毛 |
Lost Code | Codex | |
Loss or Gain | |||
Smarter by the Day | Smarten | ||
Tentamara | |||
ハニーダンサー 2004 栗毛 FNo.11 |
Danehill Dancer 1993 鹿毛 |
*デインヒル | Danzig |
Razyana | |||
Mira Adonde | Sharpen Up | ||
Lettre d'Amour | |||
*ハニーバン 1991 鹿毛 |
Unfuwain | Northern Dancer | |
Height of Fashion | |||
Cocotte | Troy | ||
Gay Milly |
クロス:Northern Dancer 5×5・4(12.50%)
母ハニーダンサーの半姉プラウドビューティー(父*デインヒル)の子に中山大障害を制したレッドキングダム(父ディープインパクト)がいる。
また、祖母ハニーバンの兄弟にピルサドスキー・ファインモーション兄妹がいる。
掲示板
147 ななしのよっしん
2023/03/27(月) 15:30:51 ID: Epz1bhHd7K
ご出産おめでとうございます!
かわいい長男ですね〜
https://
148 ななしのよっしん
2023/03/27(月) 16:11:08 ID: Mtl6SPWPPf
ヨカちゃんママになったか、感慨深いな
とねっこちゃんきゃわえー
149 ななしのよっしん
2023/04/15(土) 21:14:15 ID: GYl0rGqdnp
同牧場の先輩・イロゴトシが中山グランドジャンプ=G1を制覇
ヨカちゃんも喜んでくれるといいな
本田さん、一時は牧場を失って、数頭残った馬達を連れて伝手の牧場を放浪していた日々があったそうだけど、そこからよくぞここまでやってきたものだなぁ
熊本の英雄の一人でしょ
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最終更新:2023/06/05(月) 15:00
最終更新:2023/06/05(月) 15:00
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