ラム(Lam) 単語

ラム

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ラム(Lam)とは、以下をす。

  1. アレイスター・クロウリーの描いた奇妙な肖像画の一つに関連付けられている用
  2. ドールズフロントライン』の戦術人形LWMMGの称「拉姆」のこと。外伝ゲームニューラルクラウド』 には本名がラムメンタル人形が登場する。

ここでは1.について述べる。

肖像画の概要

「Aleister Crowley Lam」で画像検索するとトップに出てくる大頭のヒューマノイドが問題の絵で、ニューヨークグリニッジ・ヴィレッジで1919年に催された"Dead Souls"という展覧会に出品されたもの。
同年、ヘレナ・ペトロヴナ・ブラヴァツキーの『沈黙の』がアレイスター・クロウリーの注釈付きで出版された。クロウリーはこの本にこの肖像画を載せ、以下のような解説を記した。

THE WAY

LAM is the Tibetan word for Way or Path, and LAMA is He who Goeth, the specific title of the Gods of Egypt, the Treader of the Path, in Buddhistic phraseology. Its numerical value is 71, the number of this book.

(

LAMとはチベットの言葉で歩みや筋を意味します。そしてLAMAとは「行く者」(という意味)で、エジプト々に特有の称号です。仏教では「を踏み歩む者」となります。その数値は 71、これがこの本の数なのです。)

(ブラヴァツキー&クロウリー『Liber LXXI, The Voice of the Silence』exit Scribd版、4ページ)

これが、クロウリーの子にして後継者を自任するケネスグラントの解説では、こうなる。

1919年にクロウリーが的に接触した地球外の「知性」である「子(ラム)」。(後略)

(ケネスグラント『魔術の復活/The Magical Revivalexit日本語版94ページより。原書1972年植松靖夫による邦訳は1983年)

クロウリー本人が「この絵はラムさんという地球外知性を描いたものですよ」と直接書き残した文章は存在しない。少なくとも現存してはいない。
まさかとは思いますが、この、地球外の「知性」とは、ケネス氏の想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか
いや、地球外知性体というのは大抵が想像上の存在のはずだけど、このラムってのがクロウリーのしたかったことと違う解釈をされてるんじゃないかって意味で!

いずれにせよ、この 設定 解釈は「クロウリーはグレイ宇宙人と接触していた」という形でUFO論者達の間で発展・拡散していくことになる。

ケネス・グラントという男

イギリスの現代魔術師ネスグラント (Kenneth Grant) (1924-2011)は、クロウリーの魔術信仰の系譜に連なるオカルティストとしてはかなりぶっ飛んだ人物で、余人にはついて行けないようなを堂々と唱えた。
その中で最もが強かったのは、H・P・ラヴクラフト意識のうちにアレイスター・クロウリーと同じ魔術的・オカルト真実に近づいていたというもの。

ラヴクラフトクロウリーの名前も著書も知らなかったが、しかし彼の幻想の中にはクロウリーの信仰の中の顕著な題がゆがんだ形で反映しているものがある。次に挙げた表でその関係が如何に密接なものであるかが分る。

(『魔術の復活/The Magical Revivalexit日本語124ページより)

この後に続く表では、『法の書』がアル・アジフ(ネクロノミコンの原書名)と対応しているとか、ラヴクラフトヨグ=ソトートクロウリーのスト=トート、スト=テュフォン[1]であるとか、五形の(エルダーサイン)はヌイトの[2]だとか、アザトート錬金術アゾートとトートからだとかの与太話が箇条書きマジック並みの強引さで並んでいる。

クトゥルフ神話作家研究者であるロバート・M・プライスは、「クロウリーとラヴクラフトを関連付けようとした人もいたが、上手くいかなかったように思う。」と1982年に述べている[3]
しかし、ケネスグラントの しでかした やった事は確かにエレガントとは言いがたいが、クトゥルフ神話の発展に寄与したのは確かだ。何よりこれを二次創作ネタのために作成したフィクション設定としてではなく本気でし、しかもそれなりの賛同者を獲得しているのが色々な意味ですごい

なお、いわゆる「ビリーバー」のオカルトコミュニティ創作者達の作品が相互作用を起こしてクトゥルフ神話の成立と発展に寄与した例というのはいくつか存在する。
日本では『ムー』別冊ムックで特集が組まれたのもその一つだし、『アロンソ・タイパーの日記』をラヴクラフトに添削してもらったウィリアムラムリーは、ラヴクラフトの怪奇小説にはなにがしかの真実が秘められていると信じていたとされる。まぁ本気で言っていたのかどうかは分からないが。
この辺の事情は『秘神界 -現代編-exit』に収録された原田実のエッセイ『現代オカルティズムとラヴクラフト』に詳しい。

ゲームの設定としての発展

ダニエルハームズは『エンサイクロペディア・クトゥルフ/The encyclopedia Cthulhiana』で、ケネスグラントのボラ解釈に基づき、ラムグレートオールド・ワンとして紹介した。その縁で、『クトゥルフ神話TRPG』(第6版)のモンスター資料『マレウスモンストロルム』では、クトゥルフ神話世界における旧支配者ラム(=グレイエイリアン)のゲームデータを用意していた。
ただし、第7版に対応した『新クトゥルフ神話TRPG マレウス・モンストロルム Vol.1/2exit』(原著2020)からは削除されている。

火星の暗部に棲んでいる」「動植物を標本にするために誘拐する」という設定や、その姿は1947年ロズウェル事件で有名になったグレイ宇宙人そのままで、出現時に一条から降り注ぎ、地上のものを混乱させる惑を振り撒くという描写も遭遇事例を再現したものと言える。こんなものを実際に見てしまったら地球外生命体へ思いを馳せ、崇拝するものがいてもおかしくないと思われる。

アブダクション体験談を再現するために強洗脳を持つと設定されており、銃器火力で物事を解決するタイプ探索者達にぶつけてやると、それはそれは楽しいことになる。

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関連項目

脚注

  1. *Sut-Thoth、Sut-Typhonクロウリーはこれらの守護天使セト同一視した、とケネスグラントは述べている
    ヘレナブラヴァツキーは『ベールをとったイシスexitIsis Unveiled』で、プルタルコスがセトとテュフォンを同一視したとかexitセトの別りはSutehあるいはSat-anでサタンに関係があるとかいったをしており、その流れをくんだ話らしい
  2. *ヌイト(Nuit)はエジプト神話女神ヌートの『法の書』における呼び名
  3. *St. Toad's Hagiography - by Alonzo Hasbrouch Typerexit』、ファンジン『Crypt of Cthulhu』誌 #9 (Vol. 2 No. 1)に掲載された
    訳してくださったかたがいらっしゃるので日本語で読むことができる→ 聖トウド伝 - 海星プロポーザル | pixivexit
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