リア王とは、
ここでは1について記述する。
ひとつ予言をいたしておきます ニコニコ動画がイベントよりもメンテナンスにうつつを抜かし |
シェイクスピアの四大悲劇の中でも、とりわけ救いのない物語として知られている。世間一般には「親不孝な娘に騙された父親の悲劇」とされているが、実際は「認知症の始まった暴君が自業自得で哀れな最期を遂げる悲劇」である。
そのあまりの救いのなさからか、初演から約70年後に別人物によって改変され、様々な要素を取り除いたハッピーエンドの喜劇として上演され、その後200年弱ほど日の目を見ることがなかった。
気まぐれで怒りっぽい性格のリア王の今回の我侭は、高齢による退位だった。引き継ぎもない突然の丸投げ、そして3人の娘へ国を分割して与えるから愛情を言葉で示せという。父王の思慮のない振る舞いとそれに追随する姉達に呆れながら、末娘のコーデリアは率直な言葉を述べる。たちまち癇癪を起こし、それまで一番可愛がっていた筈の末娘を勘当するリア。ふたりの姉、ゴネリルとリーガンは、次に父の癇癪が向けられるのは我々かもしれないと警戒する。
権力を手放し、後はふたりの娘の元で隠居を決め込もうとするリアだが、訪れた長女ゴネリルの城で早速トラブルを起こす。癇癪を起こしてゴネリルの使用人を殴る、王位を手放したと口では言いながら御付きの騎士100人を手放さず、その騎士達の振る舞いも粗暴。ブチ切れたゴネリルは騎士100人を50人にリストラする。
怒れるリアは、今度は次女リーガンを頼ろうとするが、彼女はゴネリルからの手紙を受け取り外出済。ようやく次女に会えたリアはゴネリルの処遇を愚痴るが、リーガンは姉の肩を持つ。姉妹はそれまでの鬱憤を晴らすかのように、更に騎士の数を25人に減らせ、5人でも多い、1人でも多い、と口々にリアをなじる。
実はゴネリルの夫とリーガンの夫は仲が悪く、いつ争いが始まってもおかしくない状態だった。そんな事にも気づかず、癇癪を起こしては騒動を引き起こす父に居座られてはたまらない。王位に就いていた頃は暴君だったリアも、現在は「王」ですらない、やっかいものの老人に過ぎなかった。
ショックを受けたリアは荒野を狂気のうちに徘徊する。それでも自分の所為だとは認めず、真実を皮肉る道化の言葉も耳に入らずに空を呪う。追放された忠臣ケントや、野心家のコンウォール(リーガンの夫)に追放された重臣グロスターが彼等を保護する。コーデリアの嫁いだフランスが、父を救いたいとする彼女の嘆願に応えて軍をドーバーまで進めていたのだ。
ようやくリアはコーデリアと再会を果たす。半ば正気を失いながらも、コーデリアにこれまでの仕打ちを詫びるリアだったが、フランス軍はブリテン軍に破れ、ふたりは捕虜となり、コーデリアは殺されてしまう。
失意のどん底の中で、リアもまた息を引き取る。
CORDELIA : [Aside] Then poor Cordelia! And yet not so; since, I am sure, my love's
More richer than my tongue.
領地をやるから愛情を示せ、という老いた父王の馬鹿げた提案に対し、結婚して自分の生活を持っている姉ふたりは世間に揉まれたのか、歯の浮くような美辞麗句をそつなく並べてみせる。しかし、まだ若いコーデリアはそんな老いらくの茶番を冷ややかな目で観察しているようにも見える。
King LEAR : So young, and so untender?
その若さで、そんなにも薄情なのか。
CORDELIA : So young, my lord, and true.
若いからこそ、真実を守っております。
コーデリアの番が来た。彼女は実直と言うよりも、むしろクールな対応を見せる。この後、怒り狂うリアのあんまりな言葉に忠臣ケントが彼女を庇いに入るのだが、コーデリアのセリフは退場間際まで一切ないのだ。弁明も嘆きも言い訳も涙も驚きもト書きもない。
そういう父親だということを最初から理解し、勘当すらされる可能性を考慮した上で「何もありません」と言ったならば、我々はコーデリアに対する認識を改めなければならないかもしれない。ワガママで横暴な父に「痛い目を見せる」役目、いわば汚れ役を姉二人に押し付け、父が懲りて弱ったところに素知らぬ顔でやってきて、救いの手を差し伸べて、美味しいところを持っていく悪女…とまでは言い過ぎだろうか?
ちなみに『リア王』の種本のひとつである『ブリタニア列王史』に描かれたレイアの末娘、コルデイラは復位したレイアの死後に王位を継いでいる。
GONERIL : You see how full of changes his age is. The observation we have made of it hath not been little. He always loved our sister most, and with what poor judgment he hath now cast her off appears too grossly.
父さんをずっと見てきたけど、年の所為で気まぐれが酷くなっているわ。いつもコーデリアを一番可愛がっていたのに見捨ててしまうなんてどんな判断かしら。
REGAN : 'Tis the infirmity of his age. Yet he hath ever but slenderly known himself.
年の所為よ。自分じゃ気がついていないみたいだけど。
GONERIL : The best and soundest of his time hath been but rash; then must we look to receive from his age, not alone the imperfections of long-engraffed condition, but therewithal the unruly waywardness that infirm and choleric years bring with them.
昔から何をするのも突然、そのまま年を取ってしまったから。私達は長年の間に接木のように凝り固まったいびつで頑固な性格と、年寄り特有のワガママにも対処しなければならないのよ?
REGAN : Such unconstant starts are we like to have from him as this of Kent's banishment.
突然追い出されたケントのように、私達もいつあの癇癪の犠牲になるか。
GONERIL : …Pray you, let's hit together: if our father carry authority with such dispositions as he bears, this last surrender of his will but offend us.
いいわね、協力しましょう。今後もあの調子で父さんが権力を振りかざすのなら、今回の件だって、私達に癇癪をぶつける材料にされるかもしれないわ。
コーデリアが勘当され、彼女を庇った忠臣ケントも追放された直後のゴネリルとリーガンの会話。彼女達は決して老いた父から財産を毟り取るだけの親不孝娘ではない。その裏には長く暴君であった父への不信と恐怖と鬱憤、今後の介護生活に対する不安が渦巻いている。
彼女達にとって重要なのは、自分達が財産を手にした事ではなく、父親が王位という財産をみすみす手放したことなのだ。
EDMUND : The younger rises when the old doth fall.
若者は上昇し、老いた連中は失墜する。
リアの重臣、グロスターの私生児であるエドマンド。世間から不当な扱いを受けることが気に入らない彼は兄と父とを陥れ、その領地を手に入れようという野心を実行に移す。コンウォールに召し抱えられたエドマンドは、さらなる野望の為、ゴネリルとリーガンを誑かす…。
EDGAR : When we our betters see bearing our woes, We scarcely think our miseries our foes.
身分の高い人々も我々と同じ悩みを抱えているのだと思うと、 自分の惨めさも敵のようには思えない。
エドマンドの姦計で追放されたグロスターの息子、エドガー。変装し、狂人のフリをして身を潜めていた彼は、荒野の小屋でリアと道化と出会う。自分と同じように身内に追放された王の惨めな姿に心の支えを得るとはなんとも現金な話だが、彼は追放された父を助け、エドマンドへの復讐もきっちりと果たしている。どこぞのハムレットとは大違いである。
The weight of this sad time we must obey; Speak what we feel, not what we ought to say.
The oldest hath borne most: we that are young. Shall never see so much, nor live so long.
裏を返せば、老人が残した教訓を目の当たりにした生き残り組からすれば、「これほどの目」を「多く経験する」ような愚行を犯すことはすまいとするだろうし、「悲しい時代の責務」を負うのならば、思うがままに「長く生きる」ことなど不可能だ。
掲示板
55 ななしのよっしん
2021/04/04(日) 08:50:50 ID: B3EQIqSK1l
擁護調な上の娘二人は普通に邪悪のクズじゃねーか。若いイケメンのエドマンドと不義を働いて夫他どうでも良い奴らを擁護する価値ねーよ。こいつら同士もエドマンドを独占するため出し抜こうとしてるのは笑止千万。都合の悪いそこには触れてない偏向記事でしかないよ。
56 ななしのよっしん
2021/06/08(火) 20:16:07 ID: rMLjWMb7uD
>>47
>シェイクスピア、とか言うと無条件で「くーだらない!」って言い出すヤツ、
トルストイかな?
まあ当の本人が娘と共に行き倒れの惨めな最期遂げてる辺り、単なる同族嫌悪に見えるけどね。
57 ななしのよっしん
2022/08/24(水) 21:02:47 ID: Kf0Fz/uKel
結局道化って何者だったんだ?
王に失礼なこと言っててもなんかスルーされてるし
いつのまにかいなくなってるし謎の存在すぎないか
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最終更新:2024/09/12(木) 02:00
最終更新:2024/09/12(木) 02:00
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