ル・マン・ハイパーカーとは (ルマンハイパーカーとは) [単語記事]

ル・マン・ハイパーカー（Le Mans Hypercar、以下LMH）とは、ル・マン24時間レースおよびFIA 世界耐久選手権（WEC）にて2021年から採用されている車両規格である。

IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権（WTSC）にて2023年から採用予定のル・マン・デイトナ・ハイブリッド（Le Mans Daytona hybrid、以下LMDh）規格に関しても、本記事にて取り扱う。

概要

LMHについて

2010年代までル・マンやWECの最上位クラスにはル・マン・プロトタイプ1（LMP1）規格が採用されていた。しかし、フォルクスワーゲングループの排出ガス規制不正問題を受けて傘下のアウディ、ポルシェが相次いで撤退し、2018年以降はワークス参戦がトヨタ1社のみになってしまった。LMP1はワークスとプライベーターの戦力差と比例するように、ハイブリッド搭載車と非搭載車の性能差が顕著になる一方だったことから、参戦数を増やすべくフランス西部自動車クラブ（ACO）と世界自動車連盟（FIA）が共同で、コストダウンを目的としたハイパーカーベースの新規格を策定した。

シーズン9（2021年シーズン）から、LMP1に代わる最上位クラスとして導入した。クラス移行の経過措置として、LMH クラスにおけるLMP1ノンハイブリッド車両の使用が認められた。この経過措置は当初シーズン9の1年限定だったが、世界モータースポーツ評議会はシーズン10（2022年シーズン）への継続適用を認める決定を下した（FIAの報告）。

LMDhについて

WTSCの最上位クラスであるデイトナ・プロトタイプ・インターナショナル（DPi）規格に代わる新規格として、ACOとIMSAが共同で策定した。LMHと比較して共通部品の数が多く、ワークスにとっては開発範囲が少ない一方で参戦コストが低く抑えられる。

当初は2022年から導入予定だったが、新型コロナウィルスの影響により1年遅れて2023年から最上位クラス「GTP」に導入する。

相互乗り入れについて

タイヤ、加速プロファイル、ブレーキ性能、空力の4エリアで性能調整を行うことにより、2023年からWECとWTSCの間で相互乗り入れが可能になる。これにより、LMDh車両がWECやルマン 24時間に参戦したり、LMH 車両がWTSCやデイトナ 24時間レースに参戦することも可能になる。

比較表

規格	LMH	LMDh
最低車重	1,030kg
全長	5,000mm	5,100mm
全幅	2,000mm
全高	1,150mm
ホイールベース	3,150mm
シャシー	独自開発	認定4社から購入
駆動方式	ノンハイブリッド：後輪ハイブリッド：四輪	後輪

参加ワークス（メーカー）一覧

国	メーカー名	規格	参戦レース・年度	車両名	備考
日	トヨタ	H	WEC(2021-22)	GR010ハイブリッド
仏	アルピーヌ	P1	WEC(2021-22)	A480(下記参照)	ノンハイブリッドシャシー：オレカ
仏	アルピーヌ	Dh	WEC(2024-27)		シャシー：オレカ
米	グリッケンハウス	H	WEC(2021-22)	007 LMH	ノンハイブリッド
仏	プジョー	H	WEC(2022)	9X8
墺	バイコレス	H	WEC(2023)	ヴァンウォール・ヴァンダーヴェルLMH
伊	フェラーリ	H	WEC(2023)	499P
独	BMW	Dh	WTSC(2023) WEC(2024)	M ハイブリッド V8	シャシー：ダラーラ
独	ポルシェ	Dh	WTSC(2023) WEC(2023)	963	シャシー：マルチマチック
日	アキュラ	Dh	WTSC(2023)	ARX-06	シャシー：オレカ
米	キャデラック	Dh	WTSC(2023) ルマン24h(2023)	V-LMDh	シャシー：ダラーラ
伊	ランボルギーニ	Dh	WTSC(2024) WEC(2024)		シャシー：リジェ

アストンマーティンがWEC・LMH クラスに参戦予定だったが、2020年 2月にプロジェクトを延期した。
2019-20シーズンまでWEC・LMP1クラスに参戦していたバイコレスがLMH クラス参戦を計画していたが、2021年は年間エントリーを見送り不参戦。2022年は主催者に参戦申請を却下された。バイコレスは保有ブランド「ヴァンウォール」の名を使用した「ヴァンウォール・ヴァンダーヴェルLMH」を公開しており、2023年の参戦を計画している。
アルピーヌに関して、2021年はWECのLMP1→LMH移行に伴う特例措置を利用し、前年までレベリオン・レーシングが使用していたP1 車両・R13を転用し、車両名を「A480」とリバッジしてLMH クラスに参戦した。2022年は特例措置の1年間延長によりA480を継続使用する。2023年はLMP2クラスに参戦し、24年から4年間の計画で、LMDh車両を使用してLMH クラスに参戦予定。
プジョーは2022年 WEC第4戦モンツァ 6時間からWEC・LMH クラスに参戦を開始した。当初は開幕戦から参戦予定だったが、車両開発の長期化により第1戦セブリンク1,000マイル～第3戦ル・マン 24時間を欠場した。
アウディはLMDh車両を開発して2023年にWTSC・GTPクラスに参戦する計画を表明していたが、2022年 3月から計画を休止。2022年 8月にLMDh計画の中止を表明した。