レイチェルアレクサンドラ(Rachel Alexandra)とは、2006年生まれのアメリカの競走馬である。鹿毛の牝馬。
85年ぶりの快挙を成し遂げ、2009年のアメリカ年度代表馬に輝いた名牝。
父は恵まれた体からクソ不器用なレースをして肝心なところで取り逃がし続けた銀メダリスト・ダートに進出したサドラーズウェルズ系のメダグリアドーロ、母はロッタキム、母の父は*フォーティナイナーがアメリカで残した産駒のロアーという血統。
血統的にはそこまで強調条件はなかった上に幼少期は見栄えが悪く、当歳セリに出されるところだったが、X線検査で発育が遅れていることが分かって取りやめになり、そうこうしているうちに素質を垣間見せたため、結局生産者が自分の孫娘の名前を付けて自分で所有することになった。筋肉ムキムキで大柄な恵まれた身体を持つ父に似て、牝馬に混ぜると、牡馬が混じってるんじゃないか? と思わせるほどの立派な馬体を持っていた。
2歳の5月にデビューするが、このデビュー戦は惨敗してしまう。2戦目で初勝利を挙げるがその後は一般競走を勝っては重賞で2着に負けるという詰め甘っぷりを見せる。
しかし年末のGIIゴールデンロッドステークスで後の主戦騎手となるカルヴィン・ボレルに乗り替わるといきなり5馬身近くぶっちぎって圧勝。このレースが彼女にとっての転機となった。
明けて3歳シーズン、初戦で8馬身ぶっちぎりからスタートするとほぼ危なげ無く3連勝を飾りケンタッキーオークスへ向かう。
2歳女王*スターダムバウンドが回避し、その他実績馬もおらず本命不在の中で単勝1.3倍の1番人気に推されると、直線グングングングングングン伸びて20馬身ぶっちぎり独走というわけがわからない勝ちっぷりで圧勝。一躍アメリカのスターホース候補として注目されることとなった。
この勝ちっぷりが評価され、カーリンを所有していた馬主グループとの間で総額1000万ドル以上とも言われる巨額のトレードが成立。
厩舎もカーリンを管理したスティーブ・アスムッセン厩舎に変わり、新体制に変わって牡馬三冠競走第2戦・プリークネスステークスへ追加登録して挑戦することになった。ボレル騎手はケンタッキーダービーで17番人気のマインザットバードを導いて大穴をぶち開けており、そのマインザットバードも二冠を目指し出走予定のため兼ね合いが注目されたが、マインザットバードの方はケンタッキーダービーの1回しか乗っていなかったためかボレルはレイチェルをチョイス。フーリッシュプレジャーの悲劇はまたも繰り返されてしまった。
レースでは果敢に逃げ、アレはフロックじゃねえんだぞ!!とばかりに追い込んできたマインザットバードを1馬身離し抑え込み優勝。85年ぶりの快挙を成し遂げた。
まあ、ちょくちょく牝馬も挑むケンタッキーダービーと比べると、牝馬路線が確立した後はケンタッキーダービー勝って三冠挑戦権を得た牝馬でもない限りわざわざ挑みに行かないレースであったのは確かである。牡馬でもケンタッキーダービー落としたらパスしてベルモントステークス直行、あるいは夏まで休養が多いし、レースの価値としても三冠かからないならどうなのよってところはあるしね。
しかし3歳春で牡馬を撃破しビッグタイトル獲得は近いところだと2007年日本ダービーのウオッカくらいしかなかった快挙には違いなく、なんとファッション雑誌の「Vogue」が見開き2ページで「Black Beauty」と銘打って彼女を特集するなど競馬サークルにとどまらない話題になった。
このあとはベルモントステークスで二冠挑戦も検討されたが、結局牝馬のマザーグースステークスへ。
牝馬相手に20馬身ぶっちぎり、牡馬相手にも逃げきった彼女が出てくるとあって、逃げ出されてわずか3頭立てとなる。オッズはニューヨーク州法上の下限である1.05倍。
もちろん19馬身ぶっちぎって圧勝。最後流していたのにレースレコードで駆け抜け、ラフィアンが作った最大着差記録も更新した。一応残りの2頭も後のGI馬なのだが、ここではレイチェルのワンサイドゲームに終わる結果となった。
その後、夏の名物レースであるハスケル招待ハンデへ向かい、ベルモントステークス馬*サマーバードを6馬身差つけて撃破。より声望を高めた。
この*サマーバード、このあと真夏のダービーと言われるトラヴァーズステークスと古馬相手のジョッキークラブゴールドカップを勝ったことで弱かったわけではないことが判明し、レイチェルの名声はより一層高まった。
そして、ウッドウォードステークスで古馬の牡馬に挑戦。またもハナを切っていくと今度はアタマ差まで迫られたが逃げ切り。
ウッドウォードステークスで牝馬が勝ったのはこれが初であり、ニューヨーク州管轄のGIレースで3歳牝馬が古馬牡馬を破って勝利したのも1973年のグレード制導入以降では史上初だった。
このレースを最後に疲労を理由に休養に入った。ちなみに、ブリーダーズカップは「オールウェザー馬場が気に入らん、化学物質の上走っておかしくならんわけないだろJK……」という馬主サイドの意向で回避は確定していた。
しかし年度表彰であるエクリプス賞では3歳牝馬チャンピオンの他、古馬牡馬で目立った存在もなく、年上の女傑でBCクラシックを取ったゼニヤッタとの一騎討ちとなった年度代表馬選考レースでも記録ラッシュを評価されレイチェルが勝利し、見事年度代表馬を獲得し二冠に輝く。
3歳牝馬の受賞はエクリプス賞になった後は初であり、記録ラッシュの2009年をさらなる記録で〆たレイチェルの評価はここで最高潮に達したのであった。
さて、ここまで卓越した成績を残すと競馬ファンの疑問はひとつ。同時期に無敗の快進撃を続けていたゼニヤッタとの勝負付けである。
拠点が違うということもあり、交わることのなかった二頭であったがファンや評論家などからは早く戦ってくれという声が相次いでいた。
しかしレイチェル陣営は「オールウェザーはやだ、西海岸から出てこい」の一点張りだったし、ブリーダーズカップ後にレイチェル陣営から対戦申し入れがされたりもしたのだが
ゼニヤッタがブリーダーズカップ・クラシック優勝を手土産に引退ということになっていたので、結局これも立ち消えになってしまった。
しかし、前述の通りエクリプス賞年度代表馬がレイチェルに授与されたからなのか、風向きは大きく変わることになるのである……。
レイチェルは規定路線通り現役続行であり、ゆっくり休んで2010年、ダートのチャーチルダウンズで開催されるブリーダーズカップを大目標に始動する予定だったのだが、なんとゼニヤッタが引退を撤回し現役続行を表明。
更にダート馬場を採用している競馬場であるオークローンパークが、通常はハンデ戦の4月の牝馬限定GIアップルブロッサムハンデを定量戦にした上、ゼニヤッタとレイチェルが揃い踏みしたら賞金大増額するという条件を付加しアップルブロッサム招待として開催すると発表。これによりレイチェルは予定よりもかなり早めの帰厩を余儀なくされてしまう。
これが、彼女の凋落の始まりになってしまうとは誰も思ってはいなかった。
疲れからかトップフォームにはなかなか戻らず一回は回避を表明したが、オークローンパークが「じゃあ開催日一週間遅らすから調整してね!」と配慮を示し、結局逃げ道が絶たれる形で復帰予定を組むこととなった。そのせいで歯車が狂ったか、始動戦に選んだリステッド競走でなんと2着(僅差ではあるが)に敗れてしまう。陣営はこの敗戦を理由に結局回避。ゼニヤッタとの対決は実現しなかった。
この一連の流れで、レイチェルの名声に著しく傷がついたのは否めない。捲土重来を期し重賞に挑むがまたも僅差の2着に敗れる。
もう終わったのか……そう思われたが、2ヶ月開けて挑んだ重賞でまたも10馬身半ぶっちぎり圧勝。続くリステッド競走でも快勝劇を見せて復活したかに見えたが、GIのパーソナルエンスンハンデでまたも2着。陣営はこのレース限りで引退を表明し繁殖入りとなった。
しかしこのレースで勝った*パーシステントリーはレイチェルより6ポンド(約3kg)軽斤量だったし、彼女に10馬身ちぎられた3着ライフアットテンは次走のGIを快勝していたため、やや見切りが早いとも思える引退であった。
ブリーダーズカップ・レディーズクラシックなら十分勝負になったとは思うが……とはいえ、すでに牡馬相手にクラシックを取りに行くべき馬ではあったため、このタイミングがベストともいえなくもない。ともかく、古馬になってからは巡り合わせが悪かったとしか言いようがない。
2012年、同じ馬主のカーリンとの間に牡馬が生まれたが陣痛が収まらず緊急入院するハメになったりとやっぱり運が向いておらず、2013年に牝馬のレイチェルズヴァレンティナを産んだ際のダメージが大きかったことから、それ以降は事実上の繁殖引退状態にある。
2016年にはアメリカ競馬の殿堂入りも果たしている。
Medaglia d'Oro 1999 黒鹿毛 |
El Prado 1989 芦毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer |
Fairy Bridge | |||
Lady Capulet | Sir Ivor | ||
Cap and Bells | |||
Cappucino Bay 1989 鹿毛 |
Bailjumper | Damascus | |
Court Circuit | |||
Dubbed In | Silent Screen | ||
Society Singer | |||
Lotta Kim 2001 鹿毛 FNo.1-o |
Roar 1993 鹿毛 |
*フォーティナイナー | Mr. Prospector |
File | |||
Wild Applause | Northern Dancer | ||
Glowing Tribute | |||
Kim's Blues 1993 鹿毛 |
Cure the Blues | Stop the Music | |
Quick Cure | |||
Early Decision | Lord Gaylord | ||
Biscayne Missy | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×4(12.5%)、Sir Gaylord 5×5(6.25%)
掲示板
2 ななしのよっしん
2015/11/20(金) 16:00:33 ID: Dal7gaHU/J
アメリカでもこっちのウオッカとダスカみたいに煽り合いしてんのかな
3 ななしのよっしん
2015/12/18(金) 18:59:23 ID: pFcF4YSJ2G
今年は娘(2番仔)のレイチェルズヴァレンティナがGⅠ制覇。
おめでとうございます。
4 ななしのよっしん
2016/04/01(金) 11:43:15 ID: Dal7gaHU/J
折角産駒からG1馬が出たのに
同じ時期にソングバードという化け物牝馬が出て
2歳G1とは言え5馬身差で完敗とは世知辛いな
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/26(金) 02:00
最終更新:2024/04/26(金) 02:00
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