レキシントン級航空母艦とは、アメリカ海軍が運用していた航空母艦の艦級である。
1920年代に巡洋戦艦として6隻が計画されたがワシントン海軍軍縮条約により4隻が建造中止、残りの2隻、即ち『レキシントン』、『サラトガ』が航空母艦に変更される形で就役して太平洋戦争に参加、『レキシントン』は珊瑚海海戦で自沈処分で戦没したが『サラトガ』は4度にわたる攻撃に耐え抜いて生き残ったが戦後に核実験の標的艦にされる形で沈没を遂げた数奇な艦級であった。
第1次世界大戦後の世界覇権を巡ってさらなる戦力増強を目指したアメリカ海軍は1917年度からの3か年計画の一環として1920年からレキシントン級巡洋戦艦の建造に取り掛かった。
しかし、その計画には紆余曲折もあった結果、以下の諸元になった。
だが、1922年に締結されたワシントン海軍軍縮条約の結果、この建造計画は中止され、6隻のうち『コンステレーション』、『レンジャー』、『コンスティチューション』、『ユナイテッド・ステーツ』が廃棄されたが残る『レキシントン』、『サラトガ』は航空母艦への変更が実施されることになった。
但し、アメリカ海軍内部では元々設計を流用した39,000t級航空母艦の建造計画が決定しており、仕様も軍縮条約の制限である33,000t級に絞る程度で済んだ。
本級の外観で一際目を引くのは右舷中央部にそびえる大型煙突である。これは巡洋戦艦からの改造艦故である。
前述のとおり、巡洋戦艦時代から30kt越えの最高速度を目指して建造された本級は当時の米大型艦の標準である蒸気タービンで発電した電気[1]でスクリューを回す『ターボ・エレクトリック推進』を採用していたがそれに構成するボイラーは16基、その出力は設計値で18万馬力、条件が許せば21万馬力を超える出力を出した。故に機関から出る排煙も膨大で巡洋戦艦時の設計時は2本だったが空母への改装で1本にまとめたが排煙を出し切るために大型化した。
一方、艦橋は後述の主砲の関係で巡洋艦規模の艦橋を煙突前に設け、後方視界に関しては煙突後部に見張所を設けることで解決しているが、『サラトガ』は戦時中の改装で煙突と艦橋を短くしている。
本級は当初から260mを越える上甲板を全通飛行甲板化し、その真下に1層の飛行機格納庫を設けていた。
格納庫から飛行甲板に艦載機を運ぶエレベーターは艦橋前と煙突と後部主砲群間に設けられた2つである。
なお、飛行甲板は建造当初、艦首に合わせて先端部が狭かったが1930年代に幅が統一されている。
また、格納庫は第2次世界大戦に投入されたアメリカ製航空母艦の中で唯一密閉式格納庫を採用している。これは艦載機を波浪や潮風から守る点では優れているが艦内で爆発が発生した場合、衝撃を外部に逃がしにくいデメリットがあり、これが『レキシントン』の命取りになっている。
ちなみに格納庫の長さは飛行甲板の長さを半分以上下回る120m弱に留まるがこれは前後のエレベーターに挟む形で配置されたからである。この結果、艦載機は70機から90機程度である。
更に飛行甲板には当初カタパルトが配置されたがこれは水上機用で1930年代に撤去され、艦載機はもっぱら前述の機関出力で実現した33kt、条件が合えば35ktの最高速度に由来する合成風力で自力発艦した。
しかし時代が下がると艦載機の性能向上に伴う重量増で厳しくなったため、『サラトガ』はあらためてカタパルトを2基装備した。
本級は建造当初から12.7㎝単装高角砲を舷側に総計12門装備していたが、それよりも特徴的なのは艦橋前と煙突後にそれぞれ背負式に20.8㎝連装砲を2基づつ=8門装備していたことである。
これは建造当時の艦載機の性能が大型艦船を撃沈する能力を有していないため、空母の運用は航空偵察を重視されていたが敵前衛部隊に配属されている重巡洋艦との交戦を想定した装備でワシントン軍縮条約でも認められており、日本の『赤城』、『加賀』とほぼ同様である。
ただし、日本では艦体ケースメイト配置+艦橋前甲板に旋回砲塔を並列配置[2]していたのに対し本級は飛行甲板上に配置したことで射界が広くとれ前後に4門、両舷に最大8門を志向することが出来た(艦載機との同時使用は当然不可)。
尤も、艦載機の性能が向上し、魚雷や大型爆弾の搭載可能=大型艦船の撃沈が可能になってくると20.8㎝砲は無用の長物となり、対空兵装の増設が実施されることになった。
結果的に『サラトガ』は20.8㎝砲及び12.7㎝高角砲を全て12.7㎝両用砲に換装し[3]、近接火力として28㎜4連装機銃+12.7㎜機銃を経て40㎜機関砲と20㎜機関砲を増載した。
一方、『レキシントン』は珊瑚海海戦直前に12.7㎝両用砲搭載までの繋ぎとして20.8㎝砲跡に28㎜4連装機銃を搭載した。
1941年12月の開戦時、『レキシントン』はミッドウェーに防衛用の航空機を輸送中で日本側の攻撃を受けなかったが、自身も開戦の一方を受けた際に日本艦隊を索敵したが空振りに終わっている。
そして年が明けた1942年2月、『レキシントン』は日本が制圧したばかりのラバウル攻撃へ向かったところ察知した一式陸上攻撃機部隊の単独攻撃を撃退したものの撤退を余儀なくされた。そして翌3月、再びラバウル攻撃のため後輩艦『ヨークタウン』と共に向かった際、ニューギニア島北部に日本軍上陸の急報を受け計画を変更しラエ、サラモアに展開した上陸部隊を乗せた輸送船団と軽巡洋艦『夕張』を旗艦とする護衛部隊を攻撃し、特設艦船+輸送船4隻を撃沈、『夕張』以下艦船6隻を損傷させる戦果を挙げた。
そして、真珠湾での改修を経た5月、『レキシントン』は『ヨークタウン』と共に再びニューギニアへ向かった。今度は南部の要衝、ポートモレスビー攻略を日本が狙っていることを掴んだためである。
そして5月7日午前、『レキシントン』と『ヨークタウン』の航空隊は輸送艦隊の護衛に就いていた軽空母『祥鳳』を撃沈する。
翌5月8日午前、『レキシントン』、『ヨークタウン』は日本の基幹である第5航空戦隊=正規空母『翔鶴』、『瑞鶴』と対決することになる。早い段階で『翔鶴』を大破させた矢先、『レキシントン』は航空爆弾2発、魚雷2発が命中、この結果艦内の航空燃料タンクが損傷、燃料が漏洩して気化した。これとは別に火災も発生したがダメージコントロールが成功して戦闘に復帰した矢先に、電気関係のトラブルによって気化燃料に引火、前述の密閉式格納庫が災いして爆発が艦内各所に及び航行不能に陥る。そして夜になって味方駆逐艦の雷撃による自沈処分でその生涯に幕を下ろした。
そして2018年3月、ポール・アレン氏の探検隊が3200mの海底で眠りにつく『レキシントン』を発見したと公表した。
1941年12月の開戦時、『サラトガ』はアメリカ本土サンディエゴにいて開戦の急報を受け、日本軍の攻撃を受けたウェーク島の救援へ向かったが到着前に大勢が決したため撤退している。
そして年が明けた1942年1月、太平洋上で日本の潜水艦『伊6号』の雷撃を受けて損傷、本土へ撤退を余儀なくされる。この修理と共に前述の対空兵装を強化する改装を施されたが5月までかかり更に搭載していた航空隊は配置換えになり戦力として機能しなかったため、練習艦を初めとする裏方に徹し、ミッドウェー海戦に参加できなかった。
そして8月になりガダルカナル島攻防戦が開始され、『サラトガ』の航空隊は第2次ソロモン海戦で日本の軽空母『龍驤』を撃沈する戦功を立てるがその1週間後に今度は『伊26号』の雷撃で航行不能に陥るが味方に曳航されて撤退し応急修理を経て真珠湾に帰還している。その後11月から翌1943年10月まではアメリカ海軍が空母戦力の再編を実施したため、消極的な動きになっている。
1943年11月、かつて『レキシントン』が攻撃したブナ、ラバウルに加えマーシャル諸島を新造のインディペンデンス級軽空母『プリンストン』と共に攻撃し、とりわけラバウルでは撃沈にこそ至らなかったが反攻のため集結していた日本の巡洋艦隊に損傷を与えて結果的に撤退に追い込んでいる。
その後1944年3月から4月にかけてインドネシア方面に移動し欧州からやってきたイギリス艦隊と合流、イギリス正規空母『イラストリアス』と合同で航空攻撃を実施している。但しこの周辺には有力な日本艦隊はおらず、専ら港湾施設と石油施設に打撃を与えただけにとどまった。
そして1945年、『サラトガ』は硫黄島攻略作戦の支援に参加した。しかし2月に日本軍の特攻機4機の突撃と爆弾2発を受け大破、本土に撤退を余儀なくされた。5月に修理は完了したがドイツが降伏し、日本降伏も時間の問題と判断されており、『サラトガ』は正式に練習空母とされた。そして日本降伏後は米復員兵輸送に参加した。
戦争が終わって1年近くたった1946年7月、『サラトガ』はビキニ環礁に曳航されていた。就役から17年、延べ9万8549機の艦載機を着艦させた彼女の最後の任務はクロスロード作戦=水上艦に対する原子爆弾の威力実験の標的艦だった。
7月1日の空中爆発では損傷は軽微だったが25日の水中爆発において沈没した。実験から70年がたち放射能による汚染も落ち着いたことから後述の動画の様に民間人でもダイビングで見に行くことが出来る。
掲示板
15 ななしのよっしん
2018/03/08(木) 19:46:48 ID: 8elsAmIZk9
日本がやることは必ず無計画で行き当たりばったりでなければならないからな
16 ななしのよっしん
2018/04/04(水) 15:33:36 ID: NEPFlfi+Bt
>>9
鳳翔の設計と空母乗りの教育にはイギリスが関与してますので……(日英同盟失効前ギリギリの時期に技術供与を受けている。)
─────
レキシントン級はモダンな見た目に後進30ノットだの水上機用カタパルトだの、黎明期特有のオモシロ機能が乗っかってるあたりがチャームポイントだと思う。
17 ななしのよっしん
2020/08/23(日) 10:55:25 ID: St0tBQan1t
飲みに行って店で「レキシントンクーラー」を頼んでしまった。
カクテルの名前で混乱してしまう。
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最終更新:2024/03/29(金) 18:00
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