| 銀河英雄伝説の戦闘 | |
|---|---|
| レグニツァ上空遭遇戦 | |
| 基本情報 | |
| 時期 : 宇宙暦795年/帝国暦486年 9月4日 | |
| 地点 : イゼルローン回廊同盟側・惑星レグニツァ上空 | |
| 結果 : 銀河帝国軍の勝利 | |
| 詳細情報 | |
| 交戦勢力 | |
| 自由惑星同盟軍 | ゴールデンバウム朝銀河帝国軍 |
| 総指揮官 | |
| 第2艦隊司令官 パエッタ中将 |
ラインハルト・フォン・ミューゼル大将 |
| 戦力 | |
| 第2艦隊(パエッタ中将) | ミューゼル艦隊 艦艇総数12200隻 兵員総数134万7000名 |
| 損害 | |
| 多少 | 多少 |
| 帝国暦時代(帝国暦486年秋の出兵) | |
| レグニツァ上空遭遇戦 - 第四次ティアマト会戦 | |
| 前の戦闘 | 次の戦闘 |
| グランド・カナル事件 | 第四次ティアマト会戦 |
レグニツァ上空遭遇戦とは、「銀河英雄伝説」の戦闘の一つである。
宇宙暦795年/帝国暦486年9月4日、ガス状惑星レグニツァ周辺に進出した自由惑星同盟軍と、これを捜索・捕捉した銀河帝国軍とのあいだに発生した戦闘。レグニツァ上空の雲層で戦闘が行われたことから、”雲中の戦い”とも称される。
一週間後に生起することとなる第四次ティアマト会戦の前哨戦であり、両軍戦力の一部のみが投入される局地的遭遇戦となった。戦術的には帝国軍が勝利を得たものの、同盟軍も一定の戦力を保ったまま撤退しており、両軍ともに不満足の結果に終わった。
宇宙暦795年/帝国暦486年、この年初頭の第三次ティアマト会戦につづき、帝国軍はこの年二度目となる出兵を実施することを決定した。7月、銀河帝国軍遠征部隊は宇宙艦隊司令長官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥を総司令官として帝都オーディンを出立し、8月22日にイゼルローン要塞に入港する。
これを察知した同盟軍も迎撃部隊を出動させており、イゼルローン要塞近辺に両軍戦力が集結。偵察艇を派遣しての索敵の結果、帝国軍総司令部は惑星レグニツァ周辺宙域に同盟軍部隊が徘徊中との報を受けた。
9月1日、イゼルローン要塞内で行われた帝国軍の第六回最高作戦会議において、遠征部隊の一艦隊を指揮するラインハルト・フォン・ミューゼル大将と男爵フレーゲル中将とのあいだに深刻な対立が発生する。総司令官ミュッケンベルガー元帥は、この対立を穏健に収めるべくミューゼル大将に対して先の索敵情報の事実確認と同盟軍部隊存在時の排除を命じ、惑星レグニツァへと派遣した。
こうして帝国軍ミューゼル艦隊が赴いた惑星レグニツァには、実際に同盟軍第2艦隊が進出しており、レグニツァの上空において両軍のあいだに遭遇戦が発生することとなる。
戦場となった惑星レグニツァは、赤道半径7万3300km、質量2000兆*1兆t、平均密度1.29g/cm3、重金属と岩石により構成された直径6400kmの固核を圧縮された氷と水の層がとりまき、ヘリウムと水素の流動体をまとうガス状惑星である。公転軌道は母恒星より7億2000万km~7億6000万kmの楕円形を描き、公転周期は10万4000時間強と、典型的な恒星系外縁部ガス惑星であるとされる。
戦場となったのはレグニツァの上空、固体アンモニアからなる雲層であった。温度-140.6℃、気流速度2000km/h超におよぶ混沌とした雷雲の内部というこの特異な環境は、惑星そのものの高い重力とあわせ、計器類の正常な作動と統制のとれた艦隊運動を著しい困難事としており、戦闘に少なからず影響をもたらした。
帝国軍はラインハルト・フォン・ミューゼル大将が指揮し、艦艇総数12200隻、兵員総数134万7000名。ウォルフガング・ミッターマイヤー少将が左翼集団指揮官として、オスカー・フォン・ロイエンタール少将が右翼集団指揮官として両翼を指揮し、艦隊参謀はエルネスト・メックリンガー准将が務めた。
同盟軍はパエッタ中将の指揮する第2艦隊であり、司令部には次席幕僚としてヤン・ウェンリー准将が所属していた。ただし、この戦闘において、ヤン准将の存在はなんら戦局に寄与していない。
雲層中にあって計器や索敵システムを著しく混乱させていた両軍が相互の接近を察知した時、両軍艦隊はすでに至近にまで接近しており、そのまま無計画な遭遇戦に突入することとなった。これは「経験と理論学習のおよぶ範囲においては」練達した用兵家であるとされる同盟軍司令官パエッタ中将の側に有利な状況といえた。
だが、戦場の過酷な環境ゆえに両軍の攻撃精度はきわめて低いものとならざるをえず、緒戦はその激烈さに対して非効果的な砲火の応酬となった。同盟軍はこの混乱からいち早く体勢を立て直すことに成功し、電磁波乱流や落雷の直撃による被害をしばしば被るなど不運もあったものの、艦隊の秩序をある程度取り戻した。くわえて大気乱流の風向も帝国軍の側に不利に働き、帝国軍は後退をしいられることとなる。
劣勢におちいった帝国軍は、ミューゼル大将の叱咤や両翼を守るロイエンタール少将とミッターマイヤー少将の必死の努力にもかかわらず崩壊寸前の状況下にあり、ほとんど完敗を喫しつつあった。しかしミューゼル大将はすでに起死回生の策を有しており、機を見計らって同盟軍直下の惑星表面へのミサイル集中斉射を命じる。ヘリウムと水素で構成された表面大気層はミサイルの爆発によって粉砕され、噴き上がった巨大なガス塊が同盟軍の艦列を瞬時に崩壊させた。
戦場環境を利用したこの策により、戦局は一挙に転換する。帝国軍は集中砲火によって同盟軍の掃滅にかかり、パエッタ中将は艦隊に上昇退避を命じなければならなかった。帝国軍はさらに半包囲体勢を整えて同盟軍に接近したため、その動きの迅速さから急進攻勢を受ける危機を察知したパエッタ中将は戦闘続行を断念。同盟軍は艦隊を上方へ脱出させ、戦域を離脱した。帝国軍も逆撃の恐れと戦闘そのものの戦略的重要性の低さから追撃を行わず、イゼルローン要塞へと帰還している。
レグニツァ上空遭遇戦は両軍が全精力を挙げた戦闘ではなく一個艦隊どうしの遭遇戦にすぎず、それも戦場の過酷な自然環境に翻弄されるところが大きかったこともあって、帝国軍と同盟軍はともに欲求不満と交戦意欲を高めることとなった。戦略的には、この戦闘から相互に敵主力の位置が推測され、両軍は総力決戦となる一週間後の第四次ティアマト会戦にむけて準備をかさねていくこととなる。
ミューゼル艦隊を派遣した帝国軍司令部では、もともとの派遣の原因となった政治的対立もあり、戦闘中盤に受けた形勢不利の報告を受けて援軍を増派すべきかミュッケンベルガー元帥が逡巡を重ねていたが、結局ミューゼル艦隊が独力で事態を解決して帰還したため杞憂に終わっている。いっぽう、この戦闘で一応の敗北を喫することとなった同盟軍第2艦隊は、その損害も少なくないものであったことから第四次ティアマト会戦では後衛へと配置された。
戦闘中盤、同盟軍戦艦<セントルシア>が核融合ミサイルを発射しようとした瞬間に落雷を受けて誘爆により破壊されたが、その隣に並んでいた戦艦<ユリシーズ>は一切の損傷を受けなかった。一方、帝国軍旗艦<ブリュンヒルト>は、乱気流の影響で同盟軍射程内に進入、二発のミサイルに同時に狙われたが、この二発が軌道の交錯によって衝突してしまったため無傷ですんだ。これは<ユリシーズ>と<ブリュンヒルト>という両軍二隻の戦艦が持つ強運を示すものであるといえる。
帝国軍では、この年春に発生したクロプシュトック事件中、軍規違反の咎でミッターマイヤー少将に弟を射殺されたコルプト子爵が戦艦<アルトマルク>艦長として配属されていた。戦闘終盤、コルプト子爵はミッターマイヤー少将に復讐すべくその乗艦への攻撃を命じたが破壊を果たせず、逆に苛烈ながら精密に狙点を艦から外した砲撃を返される。<アルトマルク>はこの砲撃を回避した結果、ミッターマイヤー少将の思惑通りに撤退中の同盟軍前面へと突入し、敵軍の集中砲火を浴びて撃沈されることとなった。
石黒監督版アニメでは、アニメシリーズの最初の作品としてレグニツァ上空遭遇戦と第四次ティアマト会戦をあわせて一個の長篇「わが征くは星の大海」として再構成したが、この際レグニツァ上空遭遇戦の展開に少なからぬ変更が生じている。
戦闘までの経緯は、帝国本土からイゼルローン要塞に遠征してきたミューゼル艦隊が、ミュッケンベルガーの指示で要塞入港前にそのまま同盟軍迎撃に派遣される流れに変更された。戦闘中盤までの同盟軍の優勢も省略されており、戦闘のエネルギーが上昇気流を生むことを予測して事前に上空へと移動していた帝国軍が、上昇気流を受け雲海に退避した同盟軍の直下へとミサイルを撃ち込むかたちとなっている。同盟軍はこのミサイルによって下方に生じたガス爆発そのものに飲み込まれ、全軍の五分の四に達する損害を受けて撤退を余儀なくされた。
その他、原作では主砲の制御センターに勤務していたダスティ・アッテンボローは艦橋配置に変更され、ヤンの示唆を受けたアッテンボローが戦闘中に旗艦<パトロクロス>の操縦に干渉してガス爆発の中から脱出する描写が追加されるなど、ヤンが原作に比して若干ながら戦局に関与している。また、原作ではジャン・ロベール・ラップも第2艦隊旗艦に配置されていたとみなせる描写があるが、「わが征くは~」ではラップは登場せず、「新たなる戦いの序曲」では第四次ティアマト会戦後にハイネセンに帰投したヤンを出迎えているため、石黒監督版アニメにおけるラップは第2艦隊には配属されなかったものとみられる。
原作では外伝一巻『星を砕く者』第八章「惑星レグニツァ」、石黒監督版アニメでは長篇「わが征くは星の大海」でレグニツァ上空遭遇戦を描く。
掲示板
8 ななしのよっしん
2019/12/03(火) 01:22:52 ID: +0k1iUJB6E
9 ななしのよっしん
2020/02/06(木) 18:16:08 ID: 2QQtdMdFjp
銀英伝アニメ初の戦闘っていうだけあって、劇場版の改変は商業的には必要なものだった。原作だとただの外伝に過ぎないが、アニメだとラインハルトとヤンが主人公であることを示さねばならない。パエッタを無能化し、ラインハルトの大技とヤンのその場凌ぎの姑息な手を演出するために、レグニッツァ遭遇戦が起きた。
10 ななしのよっしん
2020/08/08(土) 20:14:00 ID: 2TQSP1HXwo
音楽が非常に良かったですね(カール・ニールセンの交響曲第4番「不滅」)。これでニールセンを知った人も多いんではないかと。私も、銀英伝サントラ盤の後に、ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団演奏の盤を買いました。
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最終更新:2025/12/07(日) 13:00
最終更新:2025/12/07(日) 13:00
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