↑左上の「WA」はワシントン州。右側にある小さな赤点が首都ワシントンD.C.。
ワシントンD.C.とは、アメリカ合衆国の首都である。ドットを抜いてワシントンDCと表記されていることもある。
正式名称はコロンビア特別区(District of Columbia)。アメリカ人がよく使う略称は「D.C.」、「Washington」、「The District」である。
漢字による当て字は華盛頓で、その略称は華府。明治時代の書に、そういう言い方が現れる。また、現代の中国語でもその当て字が用いられる。
アメリカ合衆国連邦政府直轄の都市であり、どこの州にも属していない。アメリカ合衆国大統領選挙になると、他の50州と同等の扱いを受ける。
アメリカ合衆国は政治機能と経済機能を別々に分ける「政経分離」のスタンスをとっており、アメリカの首都はワシントンD.C.だが、アメリカの最大経済都市はニューヨークである。
ワシントンD.C.の特徴としては、アメリカ大都市のシンボルともいえる、超高層ビルが一本も存在しない。これは100年以上前からの区画整備の決まりによって、高さ40m以上の建物が建てられないからである。日本の京都市や奈良市のような建物規制を敷いている。
したがって、ワシントンD.C.の市街地は平面に広く伸びていて、都市圏は西のヴァージニア州や東のメリーランド州にまたがっているのだが、これによって色々弊害も発生している。公共交通機関の整備が遅れていて中心部に行くのに時間がかかる、スラムが拡大されている、など。
似たような名前に「ワシントン州」があるが、こちらは西海岸にある州で、東海岸に位置するワシントンD.C.とは非常に遠く離れており、時差が3時間もある。最大都市としてシアトルが有名。
1700年代にイギリスが北米大陸に入植するときの中心地は、海沿いのこの場所にある貿易港のニューヨークだった。1775年から1783年までのアメリカ独立戦争の間のニューヨークは、初期にイギリス軍に占領され、終戦までずっと占領されっぱなしだった。
1783年になるとアメリカ合衆国政府はニューヨークに首都を置いたのだが、「ニューヨークは交通の便が良いけれど、戦争になったら防衛しにくく、敵軍に占領されてしまう」という不安と隣り合わせだった。
そのため、1790年に、内陸部のこの場所にあるフィラデルフィアに首都を移転した。それと同時に、初代大統領ジョージ・ワシントンは、「水運が良くてイギリス軍に攻め込まれにくいこの場所に、新しい都市を造り、そこに首都移転しよう」と号令をかけた。メリーランド州とヴァージニア州が割譲する10マイル四方の土地に新しく首都を建設することが決定され、1800年頃までに主要な建物が完成したので、連邦政府は首都機能を移転させた。
1801年、コロンビア特別区(District of Columbia)とワシントン市(City of Washington)が連邦政府の法律により正式に設立された。コロンビア特別区の中にワシントン市が入っているという形式だった。ゆえに、「コロンビア特別区の中のワシントン市」という意味でWashington, District of ColumbiaとかWashington D.C.と呼ばれていた。
1846年、ポトマック川より南部の地域がヴァージニア州に返還され、現在の形になった。
1871年、ワシントン市はコロンビア特別区に吸収されて消滅した。しかし、Washington D.C.という呼び名は残った。
以上の歴史を振り返っても分かるように、ワシントンD.C.は首都機能のために設計された計画都市である。もともと都市が栄えていたのではなく、なにもないところに初代大統領ジョージ・ワシントンの号令のもと新しく建設された都市である。
ワシントンD.C.の中心に、緑色の木々が植えられている区域があり、ナショナル・モールという。地図で見てみると、緑色で「凸」の形になっている区画がすぐに見つかる。
ナショナル・モール全体が国立公園として管理されている。また、博物館や美術館がとても多い。
西部のこの場所に、リンカーン記念堂がある。中にはリンカーンの彫像がある。夜は白さを強調するライトアップになる(画像)。
中心部のこの場所に、ワシントン記念塔がある。この街を象徴するオベリスク(obelisk 四角形の尖塔)。白い塔がニョキっと立っている。夜は白さを強調するライトアップになる(画像)。
北部のこの場所に、大統領の住宅であり職場であるホワイトハウスがある。夜は白さを強調するライトアップになる(画像)。
東部のこの場所に、連邦議会議事堂がある。夜は白さを強調するライトアップになる(画像)。
東の端のこの場所に、連邦最高裁がある。
アメリカの三権の全てがナショナル・モール周辺に位置している。
余談ながら、リンカーン記念堂もホワイトハウスも連邦議会議事堂も連邦最高裁も真っ白な建物で、ギリシア・ローマの古代建築にそっくりである。
このナショナル・モール周辺は、何かの祝賀行事があるとパレードの舞台になる。
7月4日の独立記念日でパレード、戦争に勝ったらここで軍事パレード、ローマ法王が来たらパレード、ワシントンD.C.を本拠地にするNHLのチーム(ワシントンキャピタルズ)やMLBのチーム(ワシントン・ナショナルズ)が優勝したらここでパレード。
独立記念日のパレードは見応えがある(画像)。
1991年の湾岸戦争で勝利したあとには軍事パレードが行われた(画像)。
この動画はローマ法王・フランシスコがパレードしたときのもの。
ワシントン・キャピタルズのチームカラーは赤なので、優勝パレード時にはナショナル・モールが真っ赤に染まる(画像)。
ワシントン・ナショナルズのチームカラーは赤と紺色である。こちらの優勝パレードは赤一色ではなく、紺が混じっている(画像)。
4年に一度の大統領就任式は連邦議会議事堂で行われ、そのあと大統領一行が西に向かってパレードを行い、ホワイトハウスまで移動していく。このパレードは途中まで車で移動して、途中から徒歩で行われる。こんな感じに大統領がテクテク歩いて観衆に手を振る。ちなみに、途中で下車して歩くことを定着させたのはジミー・カーター大統領である。
こちらの動画は大統領就任式の人出を映している。東の連邦議会議事堂から、西に向かって、ワシントン記念塔を眺める構図。
7月4日の独立記念日ではナショナル・モールで花火を繰り返し打ち上げ、盛大にお祝いする。
画像検索すると、ワシントン記念塔や連邦議会議事堂を背景に色鮮やかな花火が打ち上がっている画像がいくつも出てくる。白い建物と色とりどりの花火の対比が見物となっている。
余談ながら、独立記念日の花火の画像を見ていると、ワシントンD.C.の当局が高層建築物を規制している理由がよく分かる。花火と白い建物の対比が綺麗なのに、その白い建物よりも背の高い高層ビルが写真に入ってしまっては、風情も何もあったものではない。
ワシントンD.C.の直前を流れる川がポトマック川で、この川がヴァージニア州との境界になっている。この領域がヴァージニア州。
ヴァージニア州は1861年発足のアメリカ連合国に加盟していた。この当時は、ワシントンD.C.から川を1つ渡るとすぐに敵国だった。
ちなみにアメリカ連合国の首都はリッチモンドで、この街は現在ヴァージニア州の州都である。リッチモンドとワシントンD.C.の間は155kmしか離れていない。地図で見るとこんなに近い。南北戦争ではワシントンD.C.とリッチモンドの間で何度も激しい首都攻防戦が展開された。
南北戦争の首都攻防戦を東部戦線というのだが、東部戦線の北軍をポトマック軍、南軍をヴァージニア軍という。
1904~1905年の日露戦争の際、アメリカ合衆国は調停役として立ち回った。
当時の日本には、米国に対して恩義を感じる人が多かった。そんな中で「日本を旅行して川の桜並木に感激して、ワシントンのポトマック川に桜を植えたがっている人がいる」という情報を掴んだ人がいて、その人が主導して日本の東京の荒川にある桜を贈呈することになった。
東京・荒川堤の桜を穂木にして、兵庫県伊丹市の桜を台木にし、そうやって苗木を作った。
1912年1月に苗木3020本を積んだ船が横浜港を出港し、西海岸のシアトル港で陸揚げしてから大陸横断鉄道で運ばれて、3月にワシントンD.C.に到着した。植樹の式典にはタフト大統領夫人を招いた。
この桜が現在も元気に咲いており、春のワシントンD.C.の名物になっている。画像検索するときれいな桜の画像が多くヒットする。
3月最終土曜日から全米桜祭りが開催され、日米友好の証として様々な日本物品が紹介される。人出は70万人ほどで、寿司や日本酒や落語や着物といった、日本文化を代表するものが紹介される。中心となるのはタイダル・ベースン(Tidal Basin 干満のある入り江)で、この場所にある。ホワイトハウスやワシントン記念塔がすぐ近くにある。
ワシントンD.C.はポトマック川の川沿いにあり、川向こうがヴァージニア州アーリントンである。アーリントンには国防総省やアーリントン墓地がある。
国防総省は、五角形(Pentagon ペンタゴン)の形をした広大な建物である。この場所にある。
アーリントン墓地は国立の戦没者追悼施設であり、墓石がずらっと並んでいる。
ワシントンD.C.は周囲をぐるりとメリーランド州に囲まれている。こんな感じに囲まれている。
メリーランド州最大の都市がボルティモアで、全米でも最古の都市の一つである。アメリカ国歌やアメリカ国旗はこのボルティモアで生まれた。ワシントンD.C.とボルティモアの距離は56kmで、まさに隣同士の近所の街となっている。
ワシントンD.C.とニューヨーク州ニューヨークの距離は330kmとかなり離れている。京都と東京の距離が370kmなので、それと同じぐらい。飛行機、電車(アムトラック)、バス、といった交通手段があるが、行き来するのは結構面倒である。
ワシントン・ダレス国際空港は世界各国からの国際線を受け入れる玄関口になっている。
この場所にあり、ホワイトハウスから西に37km離れていて、ちょっと不便である。
ワシントンという名前が空港名に入っているが、場所はヴァージニア州にある。
名前の由来は1953年から1959年まで国務長官を務めたジョン・フォスター・ダレス。彼が国務長官だった1950年代は第二次世界大戦を勝った直後で、アメリカ合衆国の栄光の絶頂期として語られる。
国際空港との名前が付いているが、実際は国内線の発着が大半を占める。
この場所にあり、ホワイトハウスから北東に45km離れていて、これもちょっと不便である。
ワシントンという名前が空港名に入っているが、場所はメリーランド州にある。
ワシントンD.C.の中心街からポトマック川を越えたこの場所にある。ホワイトハウスから僅か5kmしか離れていない。地下鉄でワシントンD.C.とつながっている。
国内線の発着がほとんどである。
ワシントンの名前を冠しているが位置しているのはヴァージニア州アーリントンである。
利用客にとっては便利なのだが、運転するパイロットにとっては大変な場所にある。ホワイトハウスや国防総省のすぐ隣で、それらの上空は飛行禁止区域に指定されている。
このため、北から飛来して着陸するには、北西からポトマック川に沿って飛び、空港の直前になって一気に右にカーブして、そして着陸しなければならない。
北へ向かって飛び立つときは一気に加速して一気に高度を上げ、いきなり左に進路を曲げ、ポトマック川に沿って北西に飛ばねばならない。
英語版Wikipediaのこの画像を見ると、パイロットや誘導員の気苦労が伝わってくる。ポトマック川に沿って正確に飛び、ホワイトハウスの目の前でしっかり右に曲がって着陸する。
ホワイトハウスから東南に16km離れたこの場所にある。
大統領専用機であるエアフォース・ワンが常駐している。大統領や副大統領が飛行機に乗るときは、メリーランド州の中にあるこの空軍基地に行く。
日本の総理大臣が政府専用機でワシントンD.C.を訪れるときは、この空軍基地に降り立つ。
ホワイトハウスから北西に4kmほど離れたこの場所に、ワシントン大聖堂がある。
とても格式が高く、元・大統領の葬儀が行われる。ロナルド・レーガンの国葬もここで行われた。
ワシントン大聖堂は、聖公会や、米国聖公会に属する。聖公会は英国国教会の流れを汲んでいて、「カトリックとプロテスタントの中間」などと紹介される。米国聖公会は、アメリカ合衆国の北東部を地盤としており、富裕層の信者が多い。歴代大統領の1/4がこの教派の信者である。
ワシントンD.C.(コロンビア特別区)にはメイヤー(Mayor)がいる。区長と翻訳され、州知事と同格の存在とされる。区議会と攻防を繰り広げながら、行政指導をする。2020年2月現在のメイヤーはミュリアル・バウザーで、黒人女性である。
また、ワシントンD.C.(コロンビア特別区)にはセクレタリー(Secretary)がいる。この役職の名前を敢えて翻訳するのなら「文書管理部門長」となるだろう。州務長官と同格の存在とされる。州務長官というのは、選挙管理や企業登録や自動車登録といった文書管理の責任者である。2020年2月現在のセクレタリーはキンバリー・バセットで、この人も黒人女性である。
掲示板
23 ななしのよっしん
2023/12/06(水) 12:57:21 ID: GyEbo/rvrA
米ワシントンDC近郊で住宅が爆発・崩壊…韓国系と推定される容疑者死亡
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24 ななしのよっしん
2024/05/08(水) 22:57:53 ID: hF6b+MwEkb
>>20
現状の正式名称が「コロンビア特別区」だから「コロンビア州」にしてワシントンの名称は愛称として残すか、「ワシントン・コロンビア州」みたいにするのが無難かなぁ。
ドミニカ国とドミニカ共和国みたいなことにはならないと思う。
25 ななしのよっしん
2024/11/07(木) 17:24:40 ID: i7Vrk3u3QT
>>24
悪くはないと思う
ワシントンDCは筋金入りの民主党支持だけど今回の大統領選でも10倍以上(ハリス25万票 トランプ1万8000票)の差をつけてハリスが勝利してる。
軒並み民主党の州でも票を落としたハリスだけど、カリフォルニアと並んで得票を伸ばした数少ない地域でもある。
まあ金持ちやインテリがたくさん住んでいるところだから、そいつらの支持しか集められなかったことを指し示す指標だね
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/12(木) 04:00
最終更新:2024/12/12(木) 04:00
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