ヴェラアズールとは (ヴェラアズールとは) [単語記事]

ヴェラアズール(Vela Azul)とは、2017年生まれの日本の競走馬である。青毛の牡馬。

馬名の意味はスペイン語で「青い帆」。馬主は一口馬主クラブの(有)キャロットファーム。

主な勝ち鞍
 2022年:ジャパンカップ(GI)、京都大賞典(GII)

概要

父は鋭い末脚と「完璧」と評された馬体で名を馳せ、2012年天皇賞(秋)でのミルコ・デムーロの最敬礼でも知られる2010年のダービー馬。ドイツ色の強い日本では異色の血統ではあるが、その産駒は中央重賞馬は本馬以前には2022年の京成杯を勝ったオニャンコポン1頭のみと、成績はあまり上がっていなかった。
母は主にダートを走り7戦2勝。祖母アドマイヤサンデーの産駒にはオークス馬トールポピーや秋華賞馬アヴェンチュラなどがいる。
母父は2001年に芝ダートでGI2勝、特にダート2戦の圧勝で伝説となった米国産馬。種牡馬としても芝短距離～マイル戦線を中心に多数の活躍馬を送り出す大種牡馬となった。

2017年 1月19日、社台コーポレーション白老ファームで誕生。キャロットファームの募集馬はノーザンファーム生産馬が中心なので、言うなれば生まれからして傍流である。
血統的にも、父の産駒にも兄弟にもこれといった活躍馬がいないこともあり、一口募集価格も4万円×400口(＝1600万円)と格安であった。

青き帆を広げ栄光へ進め

3歳～4歳(2020～2021年):怪我から砂地への船出

デビュー前はトラブル続きであった。1歳の9月、北海道胆振東部地震に巻き込まれ、安否確認時に球節に骨片が見つかり摘出手術を受ける。キャロットの出資者にはこの時点でキャンセル案内が届くほどだった。さらに2歳の3月には骨瘤を発症、7月には歩様に違和感が出て静養となり、ろくに運動すらできない。

結果、同期が続々とデビューする2歳秋には600kg近くまで太ってしまう有様で、栗東の渡辺薫彦厩舎に入厩したのは3歳になってから。ようやく初出走にこぎ着けたのは3歳3月。体質の弱さを見越して阪神のダート 1800mでデビューし、2着に敗れる。
ちなみにデビュー時の馬体重は514kg。その後もほぼ510kg前後である。

その後も同じダート 1800mの未勝利戦を使うが2着→2着→3着と惜敗が続き、6月の5戦目でようやくの初勝利を挙げる。1勝クラスを抜け出すにも3戦を要し、年が明けた4歳1月に2勝目を挙げ突破。しかし2勝クラスではさらに厳しくなり、年内に7戦を戦うが3着が精一杯。

ゲートがやや遅く、位置をとると折り合わなくなるという噛み合わない面があり、結局2勝クラスを突破できずに4歳を終えてしまう。

5歳(2022年):芝の大海原へ

2022年初戦もダートで7着と惨敗。しかし体質は徐々に改善されており、ここでかねてからタイミングを見計らっていた渡辺薫彦調教師が転向を決断、ヴェラアズールは17戦目にして初の芝レース、淡路特別(2勝クラス、阪神・芝2600m)に参戦する。すると中団から上がり最速の末脚を叩き出し、直線の競り合いも制して2着に半馬身差、3着はさらにそこから7馬身突き放す快勝。芝初戦で勝ち星を手にした。とはいえこのときは渡辺師も「正直芝で勝つとは……という気持ちです」と驚いていた。

これで潮目が変わったか体調も上向き、3勝クラスでは2戦連続3着と足踏みしたが、どちらも上がり最速を記録する好内容。6月に東京・芝2400mのジューンSを快勝し、オープンに昇格する。

夏場を休養に充て、秋初戦は初の重賞挑戦となるGII京都大賞典に出走。メンバーがやや小粒だったこともあって2番人気に支持され、中団後方から1頭だけ33秒前半という凄まじい末脚で2馬身半突き抜け完勝。年明けまでダートの2勝クラスでもがいていた馬が、芝の重賞タイトルを手にする。

勢いに乗って挑んだGIジャパンカップ。激戦だった天皇賞(秋)から3着ダノンベルーガと5着シャフリヤール、エリザベス女王杯から三冠牝馬デアリングタクトが中1週で出走し、さらに海外からは仏 GI パリ大賞の勝ち馬オネスト、GII ニエル賞でドウデュースを破ったシムカミル、前走GI10馬身差勝利のドイツ馬テュネス、前年JC5着のグランドグローリーと実績馬が参戦。しかしそれぞれに不安要素を抱えてもおりオッズは混戦模様、ヴェラアズールは前走の勝ちっぷりや5戦連続上がり最速が評価され、シャフリヤール(3.4倍)、ダノンベルーガ(4.2倍)と人気を分け合う形で4.5倍の3番人気に支持される。

3枠6番から発走したヴェラアズール。初コンビの鞍上ライアン・ムーアはスッと下げてちょうど馬群の中央にポジションを取る。ペースは1000m61秒1とそれほど流れず、馬群もひとかたまりのまま進行。そのまま団子状態で直線に突入する。馬群の中にいたヴェラアズールの前には先行馬が重なっていたが、隙間を縫うようにじわりじわりと押し上げていく。そして残り200mをすぎた瞬間に開いた進路を突いて一気に進出。内で粘るヴェルトライゼンデ、外から突っ込んできたシャフリヤールを力強くねじ伏せてゴール。芝に転向してからわずか6戦でGI 馬まで駆け上がった。

管理する渡辺薫彦調教師は開業7年目でGI初勝利。そして父エイシンフラッシュにとっても待望の産駒 GI初制覇となった。
このJCではヴェラアズールの他にも3着に屈腱炎から復活したヴェルトライゼンデ、4着には先述の繋靭帯炎を乗り越え牝馬戦線で戦うデアリングタクトがそれぞれ入線。掲示板圏内に大きな怪我を乗り越えた5歳馬三頭が顔を揃え、2020年クラシック世代の存在を力強く示したレースとなった。

JCの直後は「直線の短い中山は向かない」と消極的な様子だったが、陣営はJCでの末脚のキレ味なら中山でもいける、と考え直したようで、3日後には一転してGI有馬記念参戦を表明。ダミアン・レーンの短期免許は12月11日までで騎乗できないため、鞍上は松山弘平に戻った。
年度代表馬を争う1歳下のタイトルホルダーと2歳下のイクイノックスに、遅れてきた5歳世代代表として挑むことになった。JCと同じ3枠6番に入り、当日の人気は10.0倍の4番人気。
レースは中団後ろの方で1番人気イクイノックスを見ながら進めたが、道中はずっと外から三浦皇成のラストドラフトに蓋をされる格好に。4コーナーで持ったまま進出するイクイノックスに完全に置いていかれてしまい、直線でも末脚不発、何の見せ場もなく10着に撃沈。松山騎手は「最後には苦しくなって、力を出すことができませんでした」と肩を落とした。

6歳(2023年):世界への船出

明けて6歳となった2023年はなんとドバイワールドカップに登録。無事に選出され、ドバイの地へと赴くことになった。

日本のダートでは2勝クラスでもがいていたヴェラアズールだが、メイダン競馬場のダートは日本の砂のダートとはやや性質が違うので、適性はどうかは一概には言えない。ジャパンカップ勝ち馬は同じ芝2400mのドバイシーマクラシックで好走する傾向があるが、そちらではなくドバイワールドカップを選んだ選択も含め、果たしてどうなるか、楽しみにしつつ見守りたい。

やっぱりダメでした。同世代のウシュバテソーロが勝つ中、はるか後方で13着に終わった。

その後、宝塚記念8着、京都大賞典も7着とした後、連覇がかかるジャパンカップへ乗り込んだ。だが、前年覇者とは思えぬ人気のなさ。1番人気のイクイノックスが1.3倍なのはまあわかる。まさかの9番人気であり、オッズも単勝99.7倍。結果もGI複数勝組が掲示板を独占する中7着。

その後、屈腱炎を発症し引退。今後は優駿スタリオンステーションにて種牡馬になる予定。エイシンフラッシュの数少ない後継種牡馬として、血が広がることを期待したい。

血統表

エイシンフラッシュ 2007 黒鹿毛	*キングズベスト 1997 鹿毛	Kingmambo	Mr. Prospector
			Miesque
		Allegretta	Lom bard
			Anatev ka
	*ムーンレディ 1997 黒鹿毛	*プラティニ	Surumu
			Prairie Darling
		Mi dn ight Fever	Sure Blade
			Major it at
ヴェラブランカ 2007 芦毛 FNo.1-p	クロフネ 1998 芦毛	*フレンチデピュティ	Dep uty Mini ster
			Mi tt erand
		*ブルーアヴェニュー	Classic Go Go
			Eliza Blue
	アドマイヤサンデー 1995 鹿毛	*サンデーサイレンス	Halo
			Wishing Well
		*ムーンインディゴ	El Gran Senor
			Madelia
競走馬の4代血統表