ヴェロキラプトルとは、白亜紀に生息していた恐竜の一種である。
名前の意味は「敏捷な強盗」。
目 | 竜盤目 |
亜目 | 獣脚亜目 |
下目 | コエルロサウルス下目 |
科 | ドロマエオサウルス科 |
属 | ヴェロキラプトル属 Velociraptor |
種 | V.モンゴリエンシス V.mongoliensis V.オスモルスカエ V.osmolskae |
中生代白亜紀後期のアジア(主にモンゴル)に生息していた、全長2m・推定体重15kg程度の小型肉食恐竜。
特に鳥に近い恐竜の一つでもあり、人によってはこのあたりから鳥類に含めている。
1922年にオズボーンらが発見。1971年にはプロトケラトプスと争うような状態のまま化石化した「闘争化石」が発見された。
ごく近縁な属にツァーガンがおり、イベントなどでそちらがヴェロキラプトルとして展示されていることがある。
国内の博物館ではあまり展示されておらず、常設では福井県立恐竜博物館や恐竜王国中里・神流町恐竜センターの闘争化石など。近縁種、特にデイノニクスは国立科学博物館など比較的多くの博物館で見ることができる。
全体的にほっそりと細長く、カプセルのような胴体を除いてどの部分も長くできていた。
頭骨には鋭く小さな歯の並んだ背が低く長い吻部と大きな眼窩、恐竜としてはかなり発達した脳函があった。さらに強膜骨という眼球を支える輪状の骨(大きな魚の目の周りを食べたときに残る輪っかと同じもの)の大きさによると、黒目と白目の比率が現生の夜行性動物に近いことが分かった。
知能・視覚どちらも発達しており、かなり複雑な行動や夜間の行動も可能だったとされる。首は細長く器用だった。
胴体は鳥類のように丸みを帯びてコンパクトで、肋骨同士が鉤状突起で連結されていてあまり曲がらなかった。生前は羽毛に覆われていたと考えられる。
前肢は獣脚類としては長く、また鳥の翼に非常に近い構造をしていた。肩は羽ばたくように上下に動かすことが可能だった。腕には風切羽の羽軸の基部である出っ張りが確認されており、外見も鳥の翼のようだったと考えられる。手首は手根骨が半月型をしており、翼をたたむように左右に曲げることができた。指は長く先端に鉤爪があった。
翼として飛行や滑空ができるほど大きくはなかったが、羽毛をディスプレイや保温に役立てたのではないかといわれている。手は獲物をつかんだり押さえつけることや、木に登ることに役立った。
後肢も細長いが中足骨(足の甲)より脛骨(すね)が長く、平地を走るより飛び跳ねるのに向いた長さの配分だった。
後肢第2指には深く曲がった大きな鉤爪があった。これは大型の獲物の肉を切り裂くためのものと考えられていたが、先端が鋭くとがっているのに反して内側には特に鋭い刃は付いておらず、物を切断できる形状にはなっていない。獲物の急所に突き刺したり、小型の獲物を押さえつけたり、木に登る際などの支えとして使ったと考えられる。
全長の半分を占める尾は骨化した腱でがっしりと固められており、根元近くでしか曲がらない竹竿のようなものだった。
「闘争化石」は単純にヴェロキラプトルがプロトケラトプスを襲って乱闘になった末に共倒れになったのだという解釈がなされてきたが、攻守が逆であるとか、一方がもう一方から卵を守ろうとしたのだとか、実は一方がすでに死んでいてもう一方がその死体を食べようとしたのだという解釈もある。
また、ある非常に保存状態の良い化石の胃に当たると考えられる位置から、大型の翼竜の骨が発見された。ヴェロキラプトルが捕えたにしては大きすぎることから、このヴェロキラプトルは翼竜の死体を食べたのだと考えられる。
以前は集団で大型の獲物を襲ったと考えられていたが、鉤爪があまり大型の獲物に対する有効打とならないことからそのような見方は分が悪くなってきた。
現在では当時の小さな哺乳類や鳥類、トカゲなど小型の獲物を捕らえたり、もっと大きな動物の死体をあさることもある、今でいうタカやキツネ、ジャッカルなどと同じポジションに位置する捕食者だったのではないかという考えが優勢。
うん、全然違う。
映画「ジュラシックパーク」では全長4m以上はある、現在のトラに匹敵する捕食者として描かれていた。体形も細長くはない。実はこの姿は、近縁のデイノニクスやユタラプトルに近いものである。
「ジュラシックパーク」撮影当時、全長3.5mとヴェロキラプトルの倍近いデイノニクスをヴェロキラプトル属に含める案がグレゴリー・ポールから出されていた。結局これは学術的に採用されることはなかったが、小説「ジュラシックパーク」ではヴェロキラプトルをより恐ろしいものとして演出するために採用された。しかし映画の画面上ではヴェロキラプトルはそれ以上にデカい。
そして映画公開とほぼ同時に全長6mというドロマエオサウルス科では例外的な巨体を誇るユタラプトルが発見され、映画のラプトルはこれと考えれば丁度いいということで「スピルバーグズ・ラプター」などと呼ばれるようになった。
しかし「ジュラシックパーク」のアピール効果は絶大で、ヴェロキラプトルも映画のとおりの恐竜だという間違った認識が一般に広まってしまった。フィギュアなどのグッズや「ディノクライシス」などのゲームでも、デイノニクスやユタラプトルが羽毛のない姿でヴェロキラプトルと名乗って登場するようになってしまっている。だ、誰か本物の骨格どおりの小さくてシャープなヴェロキのフィギュアを!
分類:コンプソグナトゥス科 全長:1m 時代:白亜紀前期 地域:中国
コエルロサウルス類としては原始的で体形にも尾がとても長い以外変わったところはないが、初めて羽毛の痕跡が確認された恐竜として有名。背筋から尾にかけて枝分かれしていない毛髪状の羽毛が見つかり、メラニン色素を作る細胞メラノソームの痕跡によると赤ないし橙色に近い明るめの褐色をしていた。近縁の大型種シノカリオプテリクスはヴェロキラプトルに近縁な小型種シノルニトサウルスや原始的な鳥類の孔子鳥も捕食していた。
分類:オルニトミムス科 全長:3.5m 時代:白亜紀後期 地域:北米
「ダチョウ恐竜」。後肢は走行に適応して長く発達していた。首や前肢も細長く、口は歯のないクチバシになっていた。手で木の枝を引き寄せて木の葉を食べたという説と、クチバシの内側にあるスリットで湖水からプランクトンを濾し取って食べたという説がある。
分類:オヴィラプトル科 全長:2m 時代:白亜紀後期 地域:モンゴル
高さのあるクチバシや短めの尾骨などは鳥に似ていたが、これらは鳥のものと独立に進化したものである。骨の通ったトサカが印象的。プロトケラトプスのものと思われた卵とともに発掘されて卵強盗と名付けられたが、後にオヴィラプトル自身の卵を守っていたのだと判明した。雑食、果実食、貝食などの説がある。
分類:テリジノサウルス科 全長:不明(10m前後) 時代:白亜紀後期 地域:モンゴル
70cmもの長さがある、最も大きな爪を持つ恐竜。最初は爪しか見つかっておらず様々な想像図が描かれたが、近縁種の発見によりどっしりした上向きの胴体にクチバシのある小さな頭と長い首、短い後肢を持つ特異な体形の獣脚類と判明した。地上性ナマケモノやゴリラ、パンダのような植物食性と考えられる。
分類:アルヴァレスサウルス科 全長:2m 時代:白亜紀後期 地域:南米(アルゼンチン)
後肢がとても長く走行に適していた反面前肢は非常に太短く、その先端の手は第一指の爪だけが大きく発達していて第二・第三指は痕跡程度だった。爪で朽木やアリ塚を砕いて中の虫を食べたとも言われる。
分類:エウマニラプトラ・スカンソリオプテリクス科 全長:15cm(幼体) 時代:ジュラ紀後期 地域:中国(内モンゴル自治区)
幼体しか見つかっていないが、恐竜の中で最も樹上生活に適応した形態がみられる。腕や手が長く、他の恐竜と違って第3指が第2指の倍もあった。
分類:エウマニラプトラ・デイノニコサウルス類トロオドン科 全長:34cm 時代:ジュラ紀後期 地域:中国
始祖鳥より古い時代から見つかった羽毛恐竜の一つで、トロオドン科としても原始的。四肢すべてに風切羽が生えていた。全身の羽毛からメラニン色素を作る細胞メラノソームの痕跡が見つかっており、頭部の冠羽は赤、胴体や四肢は白黒ツートンであったことが判明している。
分類:エウマニラプトラ・デイノニコサウルス類トロオドン科 全長:推定2m 時代:白亜紀後期 地域:北米
かつてはステノニコサウルスと呼ばれていた。近縁のサウロルニトイデスなどと同様細長い体形で、目が前を向いていた。体の大きさに対する脳の容量は恐竜の中でも特に大きく、鳥類のレベルに達していた。「恐竜人類」の発想の元ネタ。
分類:エウマニラプトラ・デイノニコサウルス類ドロマエオサウルス科 全長:3.5m 時代:白亜紀前期 地域:北米
ドロマエオサウルス科の中でも比較的大型で、早くから名前が広まった。恐竜は活発な動物であったとする見方の広まった「恐竜ルネッサンス」の中心的恐竜。頭部はヴェロキラプトルと比べ大きくて背が高く、顎の力も強かったと考えられる。ヴェロキラプトルはキツネにあたると書いたが、デイノニクスはオオカミのようなものだっただろう。
分類:エウマニラプトラ・デイノニコサウルス類ドロマエオサウルス科 全長:90cm 時代:白亜紀前期 地域:中国
遼寧省からいくつも見つかっている羽毛恐竜を代表する恐竜。四肢すべてが発達した翼になっており樹上から滑空したと考えられているが、後肢の翼をどのように用いたかは不明である(以前は後肢を左右に広げる復元が多く見られたが、股関節の構造上それは非常に難しい)。こちらもメラノソームの配列の観察により、黒系の色に構造色による青系の光沢が加わっていたのではないかと言われる。
コエルロサウルス類(ティラノサウルス類を除く)を原始的な方から順に示す。
シノサウロプテリクスとシノカリオプテリクス(コンプソグナトゥス類)、オヴィラプトル、テリジノサウルス、スカンソリオプテリクス類、アンキオルニス2つ(トロオドン類)、トロオドン(羽毛なし)、ドロマエオサウルス類(羽毛なし)。
以前までは上記のとおりジュラシックパーク風の実際のヴェロキラプトルと異なる姿をしたフィギュアが多かったが、骨格フィギュアを中心に化石どおりのものも増えつつある。
こちらの書籍では夜行性で樹上から小動物を狙うフクロウのような生態として描かれている。雄の色彩はキジからだろうか。穏やかに暮らす姿は従来のイメージとかなり異なるが、とても活き活きとしてる。
掲示板
43 ななしのよっしん
2022/04/04(月) 00:38:01 ID: WxHzfdDKZC
ヴェロキラプトル(某ハリウッド映画)やデイノニクス(集団化石で発見)の影響で、コイツらドロマエオサウルス科の恐竜は総じて現生のオオカミやリカオンみたく集団で高度に統制された狩りをするイメージが定着してるっぽいけど、別に根拠はあんまり無いんだっけ。
44 ななしのよっしん
2022/04/04(月) 00:50:38 ID: mssekNVsRp
そりゃまあ骨と皮膚の痕跡だけだからね
身体に対してこんだけ脳が大きかったら賢いし
そういう狩りしたかも程度
45 ななしのよっしん
2022/07/19(火) 09:10:41 ID: x30m1vTXfy
ジュラシックワールド最新作でも準主役。
そう言えば牝だったっけ。
やはり、一作目ででかくて獰猛で強い、恐ろしい存在として描いたのは正解にして偉業だった。
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最終更新:2024/04/23(火) 15:00
最終更新:2024/04/23(火) 15:00
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