一票の格差 単語

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一票の格差とは、選挙に関する言葉の1つである。議員定数不均衡ともいう。

本記事では日本選挙における議論を取り上げる。

概要

定義

一票の格差とは、居住地を原因とする不平等選挙で生じる投票価値の格差のことである。

一票の格差とは、同一の選挙選挙区ごとに「議員1人に対応する有権者の数」が異なるため一票の投票価値が高い選挙区と一票の投票価値が低い選挙区に分かれることを言う。

解説

日本はすべての地域の人口密度が一定ではなく、田舎と呼ばれる人口過疎地域と、都会と呼ばれる人口過密地域に分かれている。

そんな日本で全ての選挙区の面積を同じぐらいにすると、人口過疎地域の選挙区は少ない有権者から1人の国会議員を送り出し、人口過密地域の選挙区は多い有権者から1人の国会議員を送り出すことになるので、有権者の1票の投票価値が選挙区ごとに異なることになる。

こうした事態を問題視し、「日本国憲法第14条または日本国憲法第44条に従って有権者の1票の投票価値を等にすべきであり、そのために人口過疎地域の選挙区の面積を広くしたり、人口過密地域の選挙区を狭くしたりするべきである」とするのが「一票の格差の是正をめる政治運動」である。

一票の格差を是正することの長所

一票の格差を是正することの長所は、一民同士で投票価値が等になり、日本国憲法第14条で保障される等権を尊重することができる点である。

一票の格差が極めて極端になると、「人口過疎地域は3千人の有権者を含む選挙区から1人の国会議員を選出し、人口過密地域は30万人の有権者を含む選挙区から1人の国会議員を選出する」といったことになる。これは日本国憲法第14条で保障される等権を尊重していない状態と言える。

一票の格差を是正することの短所

一票の格差を是正することの短所は、次のことが挙げられる。

  1. 人口過疎地域の選挙区の面積が広くなりすぎるので、そこの議員の負担が過度に大きくなり、そこの有権者の「議員に要望を伝える権利(表現の自由)」が過度に小さくなる。
  2. 人口過疎地域の選挙区に住むと「議員に要望を伝える権利(表現の自由)」が過度に小さくなるので、そこを脱出して人口過密地域に移住する流れが加速する。人口過疎地域がさらに過疎化して、人口空白地域が生まれるようになり、犯罪者犯罪拠品を隠滅しやすい場所が増え、治安の悪化が懸念される。

この中で注すべきなのは1.である。一票の格差を是正して投票価値を等にして日本国憲法第14条で保障される等権を尊重したはずなのに、「議員に要望を伝える権利(表現の自由)」に格差が発生して日本国憲法第14条で保障される等権を破壊してしまうのである。

人口密度が一定ではない国家において、投票価値の等と「議員に要望を伝える権利(表現の自由)」の等を同時に達成することができず、両者はトレードオフの関係にある。

人口528万人の北海道を1つの選挙区にしたとする。それに合わせるため、東京千代田区中央区港区新宿区文京区台東区墨田区江東区豊島区北区荒川区板橋区足立区葛飾区江戸川区をすべて合計して人口530万人の選挙区を作り出すことにする。この2つの選挙区は、有権者の投票価値が等である。しかし、有権者の「議員に要望を伝える権利(表現の自由)」に大きな格差がある。

北海道選挙区では議員が札幌市事務所を構えるとする。議員に要望を伝えるために北海道の東端から札幌市まで行くには7時間も掛かってしまう(Googleマップexit)。一方で東京合区は非常に狭く、西端から東端まで移動するのに1時間弱しかからない(Googleマップexit)。このように、「議員に要望を伝える権利(表現の自由)」に巨大な格差が生まれてしまう。

仮に、東京都を1つの選挙区にしつつ一票の格差を等にしたら、人口過疎地域の選挙区は極めて広大になり、そこの国会議員の負担が極めて大きくなり、そこの有権者の「議員に要望を伝える権利(表現の自由)」が極めて小さくなる。『都道府県を東京都レベルの人口に再編してみたexit_nicovideo』という動画を見てみると、そのことがよく分かる。

表現の自由というのは、個人の人格の形成と展開(個人の自己実現)にとって不可欠であり、立民主制の維持・運営民の自己統治)にとっても不可欠であり、この不可欠性の故に表現の自由の優越性」が帰結される[1]。そのような表現の自由に大きな格差を生じさせるのだから、「一票の格差の等化」は極めて深刻な権利侵と言える。

2.も注すべきである。人口過疎地域の過疎化がさらに進行すると、人口空白地域が発生し、ぼうぼうの荒れ地が一面に広がり、犯罪者が「犯罪拠品を隠滅しても絶対にバレないだろう」と確信するようになり、犯罪者が思いきって犯罪をするようになり、治安一気に悪化する。

議員定数不均衡訴訟

国政選挙の直後に訴訟が起こる

一票の格差の等化をす人々は、衆院選参院選が終わるたびに全各地の地方裁判所で議員定数不均衡訴訟を起こし、「1票の重みが選挙区ごとに異なるのは日本国憲法第14条に違反している。あの選挙効である」といったをする。

ちなみに、この議員定数不均衡訴訟の原告になるような人には、弁護士が多い。

一票の格差を許容する判決

1964年昭和39年2月5日最高裁は「議員定数を人口に応じて配分すべきことを積極的に命じている憲法の規定は存在しない。議員定数の配分は立法府である国会の権限に属する立法政策の問題である。参議院選挙における投票価値のが1対4.09程度では極端な不等であるとは言えない」という判決を下した(資料exit)。

一票の格差を批判する判決

1976年昭和51年4月14日最高裁は「選挙人投票の価値の等もまた憲法の要するところである。衆議院選挙における投票価値1対4.99は一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない」という判決を下した(資料exit)。この判決は「一票の格差の是正をめる政治運動」の出発点となる判決である。

一票の格差を批判する判決は、①違状態判決と、②「違だが選挙効としない判決」と、③「違で、格差が最も著しい選挙区における選挙結果を効とする判決」と、④「違で、すべての選挙区における選挙結果を効とする判決」の4種類がある。

①の違状態判決は、「憲法に違反している状態であるが、その状態が始まってからまだ十分な時間が経っておらず、国会責任を負わせられない」という意味である。

②の「違だが選挙効としない判決」は、違判決の1つである。違判決は「憲法に違反している状態で、その状態が始まってから十分な時間が経っており、国会責任を負わせられる」という意味である(資料exit)。つまり、②の方が①よりも国会批判する度合いが強い。

③や④は、日本裁判所がまだ出したことがない種類の判決である。

「○増×減法」

裁判所で違状態判決や「違だが選挙効としない判決」が出ると、選挙区の区割りを見直す内容の公職選挙法の法案が国会で審議されて可決されるようになる。選挙区の区割りを見直す内容の公職選挙法のことを「○増×減法」などと呼ぶ。

2022年11月18日には10増10減法が国会で可決された。衆議院の小選挙区を増やしたり減らしたりするもので、東京神奈川千葉埼玉愛知という5つの都県で10増やし、宮城新潟福島滋賀和歌山岡山広島山口愛媛長崎といった10の県で10減らす内容である(記事exit)。

このように、一票の格差を批判する判決のあとは、人口過密地域で選挙区の面積を減らして選挙区の数を増やし、人口過疎地域で選挙区の面積を増やして選挙区の数を減らすような法律が可決される。

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *日本国憲法論 法学書7 2011年4月20日初版(成文堂)佐藤幸治』249ページ
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