三笘の1mmとは、2022年12月1日に行われた2022 FIFAワールドカップのグループステージ(グループE)第3戦のサッカー日本代表とサッカースペイン代表の試合にて、日本の2点目における一連のシーンを指す。
この試合までに1勝1敗の勝ち点3で迎えた日本は決勝トーナメント進出を賭けて1勝1分のスペインと対戦することになった。しかし日本は前の試合でコスタリカに0-1と敗れたのに対し、スペインはそのコスタリカ相手に7-0と大勝しており、実力差は歴然としていた。
日本が決勝トーナメントに進出するには(1)スペインに勝利(2)スペインに引き分けたうえでドイツとコスタリカが引き分け、またはドイツが1点差でコスタリカに勝利という条件であったが、先述の通りスペイン相手には引き分けすら難易度が高く、大方の予想ではグループステージ敗退で諦めムードが漂っていた。
試合早々、スペインが日本に襲い掛かり、前半11分にアルバロ・モラタのヘッドが決まり先制されてしまう。しかしその後はリードすればよいとしたスペインの攻撃の手が緩み、日本も前半終盤にイエローカードを3枚貰いつつも守り切り、このまま前半を1-0で終える。
後半開始時、森保一監督は堂安律と三笘薫を投入すると後半3分、堂安律のミドルシュートがスペインゴールに突き刺さり同点に追いつく。そしてスタジアムが歓喜に沸く中、3分後にそのシーンが訪れた。
後半6分、堂安律がスペインの守備をかいくぐり右側からシュートを放つも転がったボールは左へ逸れてエリア外へ出ようとしていた。そこへ前田大然と三笘薫が必死に追いかけ、前田大然のスライディングは届かなかったもののボールがラインを超えたかどうかのタイミングで三笘薫の足がボールに追いつく。すると当たったボールが浮き上がって前田大然を超えてエリア内のゴール前に戻り、そこへ走ってきた田中碧がゴールに押し込んだ。
しかし三笘薫が追い付く前にボールがエリア外に出たとしてスペインが得点無効でゴールキックを主張。一方線審の旗は上がっておらず、このシーンについてVARで判定されることになった。日本で本大会全試合を配信しているAbemaTVではこのシーンが繰り返され、実況の寺川俊平(テレビ朝日アナウンサー)と解説の本田圭佑、槙野智章が動画を見ながら以下のやりとりをしている。
寺川「副審はフラッグは上げませんでした、ただゴールキーパーはゴールキックを主張しています」
本田「いやいやいやいや」
槙野「ラインは割ってなかったですよ?」
寺川「ゴールが認められるかどうかというところです、ボールがラインからすべて出なければ」
本田「(左斜めからの動画を見て)出てたっぽいで槙野…」
槙野「ノオオオオオウ!!…これ出てるの!?」
本田「これ出てるかもしれへん…」寺川「ボールが全部と考えればかなりきわどい所」
本田「(上からの角度からの動画を見て)ええっ!?出てないかも!どお!?」
槙野「出てないでしょ」
動画を見る限りだとボールの接地点はラインからは明らかに出ているが、端面がラインから外に出ているか非常に微妙なところで、実況席でも見る角度によって意見が分かれる状態であった。
VARでも時間がかかり、焦らされたスペインのセルヒオ・ブスケツが尋ねようとして主審に遮られるという光景があったが、無線で結果を聞いた主審が笛を吹きながらVARのジェスチャーをした直後にセンターサークルを指し(無効ならゴールキックなのでスペイン側のゴールエリアを指す)、田中碧のゴールが認められて2-1と逆転した。
この結果にAbemaTVの実況席は以下の通り興奮が冷めやまぬ状況となった。
寺川「ゴールが!!認められました!!田中碧のゴールになりました!!」
槙野「出てないんです!!」
寺川「スペインに!!日本逆転!!」
本田「でもここから長いよ!」
寺川「ここから長い!!あまりに長い!!まだ前半10分と経過していません!!」
本田「ただ森保さんは冷静ですね」
その後日本はスペインの反撃を耐えて試合終了のホイッスルが鳴り、グループステージを首位で突破した。
このようにVARの結果は「エリア内に残っている」であったが、イギリスやオーストリアのメディアから「誤審ではないか」「VARを過信しすぎている」という記事が散見された。一方でブラジルのメディア「TNT SPORTS」は動画を検証のうえ「明らかにインだ」として判定が正しかったと主張し、グループリーグで敗退したドイツのメディアも「この判定はOK」と述べて受け入れている。
日本でも外に出ていたという意見があり、特にボールの接地点がライン外だからアウトという主張も見られるが、サッカーの場合は接地していない端面が白線上に残っているかであり、接地点がどうとかは関係ない。テニス、卓球、バレーボール、バスケットボールなど、ボールの接地位置が判定基準になるスポーツも多数あるため混同したものと思われる。これらのスポーツでは逆に「ボールが空中でエリア外に出たけど接地前に押し戻したからセーフ」というプレーが行われることがあるが、サッカーは空中も含めたボールの位置で判定する為、空中でラインを超えた時点でボールはアウトした事になる。
「本当に1mmであったか」については誤差はあるだろうが、以下「TNT SPORTS」のツィートの画像を見る限り1mmという表現は大げさではなく、本当に際どいところであった。ただ確かに言えることは「ボールの端面と白線の間に緑色の芝が見えないので、(画像を見る限りでは)インの状態」ということである。
12月3日にFIFAの公式Twitterアカウントが当該シーンを真横から撮影した動画を添えて「ゴールラインのカメラ画像を使用して、ボールがまだ部分的にライン上にあるかどうかを確認した。」とツィートし、改めてVARの判断が正しかったことを追認している。
2018 FIFAワールドカップから導入されたVAR(ビデオアシスタントレフェリー)は2022 FIFAワールドカップでさらに強化され、各方面からのカメラ画像だけでなくボールに埋め込まれたチップによってオフサイドやラインを超えたかどうかの判断がされるようになり、これまでの際どい判定がさらに厳しくなったとされている。
主な例としてアルゼンチンとサウジアラビアの試合ではアルゼンチンが先制したもののその後3度の追加点チャンスをオフサイド判定で取り消され、その後サウジアラビアに逆転負けを喫する「ルサイルの奇跡」が起きている。日本も初戦のドイツ戦で先制ののちあわや追加点を決められたに思われたが、VARによってオフサイドの判定がされて助けられ、後半逆転し勝利という「ドーハの歓喜」の一因になった。
このような状況の中今回の事象が発生したことで、改めてVARの介入への適応が求められることになったが、特に目視ではプレーが止まると思ってもVARによってインプレーのままの裁定が下ることがあることから、ダメだと思って諦めてはいけないということである。
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最終更新:2024/11/30(土) 01:00
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