中嶋悟とは (ナカジマサトルとは) [単語記事]

中嶋悟（なかじまさとる）とは、日本の元F1 ドライバーであり、レースチーム監督である。長男の中嶋一貴、次男の中嶋大祐ともにレースドライバーである。

概要

1977年にヒーローズレーシングに加入、全日本F2000（翌年より全日本F2）とFJ1 300に参戦、FJ1 300では全戦ポール・トゥ・フィニッシュ、さらに全周回ラップリーダーという無敵の強さでチャンピオンを獲得した。
翌年には海外進出もかねてイギリス F3にも参戦した（下記に関連動画あり）。

1979年にi&iレーシングに移籍、その年の富士グランチャンピオンレースでチャンピオンを手にする。
1981年にはF2用のホンダ V6 エンジンを手に入れ、1982年の2年間で全日本F2でチャンピオンを手にした。
しかし、ヨーロッパ遠征でチームオーナーと確執が生まれ、1982年で袂を分かち、中嶋企画を設立した。

1984年にヒーローズレーシングに復帰、中嶋企画とのコラボレーション体制となった。ここから1986年まで3年連続で全日本F2 チャンピオンを獲得し、無敵の存在となった。
一方で1986年には国際F3000にもフル参戦し、過密スケジュールながら最高位4位入賞を果たしている。

国内においては、星野一義と全日本F2、富士 GCで幾多のバトルを展開し、最大のライバルとして注目を集めていた。中嶋がF1へ転向すると、星野は人目をはばからず悔しさをあらわにし、彼の参戦するF1を見ず、オファーがあっても断っていた。

1987年には、アジア人として二人目、日本人として初のF1 レギュラードライバーとしてデビューを果たした。所属はチーム・ロータスで、チームメイトはアイルトン・セナであった。
最初のマシン、ロータス・99Tは、アクティブサスペンションを搭載した意欲的なマシンだったものの、ハードウェアが未熟で十分なグリップを得られなかったが、入賞4回を記録した。特にイギリスGPでは、ウィリアムズ、ロータスのホンダエンジンユーザーが1-2-3-4フィニッシュを飾っている。

1988年はセナに代わって、3度のワールドチャンピオンに輝いているネルソン・ピケが加入した（イギリス F3時代にともに戦っている）。
この年のマシン、ロータス・100Tは、デザインを改めてサスペンションもコイルスプリングに戻したものの、性能は他チームよりも落ちてしまい、中嶋はブラジルGPでの6位のみの入賞に終わった。

ターボエンジンが禁止された1989年になると、ホンダエンジンがマクラーレンのみに注力することとなり、チームは非力なジャッドエンジンを選ばざるを得なかった。
さらにロータス・101も空力面で劣ったもので信頼性も低く、リタイヤ、予選落ちは珍しくなかった。
しかし最終戦のオーストラリアGPで、雨の悪天候の中で中嶋はファステストラップを記録、3位まで後一歩の4位でレースを終えた。その後ファステストラップを記録した日本人は、2012年の小林可夢偉まで存在しない。

1990年にはティレルに移籍、エンジンこそそれほどのパワーのないコスワースDFR エンジンであったが、史上初のハイノーズデザインを採用したティレル019により、予選では昨年以上のグリッドを手にしたものの、信頼性が低く、ほとんどのレースでリタイヤとなっていた。それでも3レースで入賞を果たしている。

1991年にはホンダ V10 エンジンが供給され、表彰台に上がるチャンスを再び手にするが、ティレル020との相性が悪く、また信頼性も足を引っ張ってしまい、開幕戦の5位を最後に入賞することはなかった。
また、この年のドイツGPで引退を発表し、レースドライバー人生にピリオドを打った。

1992年からは、元々国内で活動を続けていた中嶋企画の監督として本格的に力を入れることとなった。全日本F3000（現：スーパーフォーミュラ）、全日本GT選手権（現：SUPER GT）を中心に活動をしている。

1997年には、日本からのスポンサー獲得や中嶋のレース経験を活用するため、ティレルから提携のオファーがかかり、ティレル復活のために尽力を始めた。しかし翌年にBAR（後のホンダ F1、ブラウンGP、メルセデスAMG）がチームを買収、ティレルとしての活動はその年で終わってしまった。

2004年には日本レースプロモーション（JRP）の会長に就任し、スーパーフォーミュラの活性化や新人育成にも力を注いでいる。

国内レース、F1ともに、ウェットレースでの速さは抜群で、「雨のナカジマ」という異名を持った。
後にインタビューで、「雨だと車が滑るけど、その分ハンドルが軽くなって操縦しやすくなるから、腕力が無い自分にとって雨のレースはチャンスだった」と述懐している。

F1では体力面のハンデに加えて30代後半とピークを過ぎた年齢もあり、国内レースでの圧倒的な速さはなりを潜め、決勝で粘って上位に付ける戦術が目立つようになった。当時F1の実況を担当していた古舘伊知郎は「きざみ納豆走法」と称した。
しかし国内の古くからのファンには悔しさを与えていた。