令和の化学者・鷹司耀子の帝都転生とは (レイワノガガクシャタカツカサヨウコノテイトテンセイとは) [単語記事]

令和の化学者・鷹司耀子の帝都転生(れいわのかがくしゃたかつかさようこのていとてんせい)とは、雨堤俊次(旧名:コモンレール)による小説である。

概要

書籍版の正式タイトルは、サブタイトルも含めて『令和の化学者・鷹司耀子の帝都転生～プラスチック素材で日本を救う～』である。

宝島社より宝島社文庫レーベルで刊行された。カバーイラストは漫画家の野上武志が担当。歴史小説というカテゴリーのためか挿絵や口絵は無い(一般文芸扱い)が改稿のほか、書き下ろしエピソードが収録されている。本書の特徴として、化学知識や歴史用語の解説のための脚注が設けられている。日露戦争を経て第一次世界大戦までの話を収録し、歴史上の軍人、政治家や経営者、科学者が登場し、架空戦記の側面もある(Web版はそれ以降も続いている)。

元々は小説家になろうに旧題名『鷹は瑞穂の空を飛ぶ』で連載されていたが、2021年秋の第9回『ネット小説大賞』にの小説賞を受賞し1年間余りの書籍化作業を経て改題された。小説家になろうの歴史カテゴリにおいて一位を獲得したこともある。

外伝として『チベットの砂狐～日本とイギリスに超絶強化されたチベットの凄腕女戦車兵～【鷹司耀子の帝都転生外伝】』がある。

あらすじ

藤原氏の一族で五摂家と呼ばれる名家であり公爵家でもある鷹司家の史実には存在しない次女として生まれた耀子は、前世は令侘の時代で有機化学のうち、プラスチックなどを扱う高分子屋系の化学者としての記憶を持っていた。

優しい父からねだった化学実験道具や素材を用いてその時代にない新素材66ナイロンを完成させる。父親の信頼を得て未来の出来事を打ち明け、特許を申請する。

66ナイロンの有用さを認識した政府が半官半民のを国策会社『帝国人造繊維』が設立され、耀子は特別顧問に就任し、引き続きプラスチックを開発していく。ナイロンストッキングは海外で爆発的人気を得て発展の躍進に繋がっていた。一方陸軍は父の行動から、脚気対策や戦術改革が進む、日露戦争も、ロシア第2艦隊が日本海に到着する前に戦争が終わってしまうほどの快進撃をもたらしていた。

登場人物

鷹司耀子(たかつかさようこ): 鷹司公爵家の次女(末娘)として明治30年(1897年)に生まれる。(史実には次女は存在しないため架空)。実は令和の時代に高分子化学者として生きていた男性化学者が逆行転生していた。生まれた時から思考力はそのままであり、4歳の時に史実に先行して合成繊維『66ナイロン』の生成に成功させ、自分の言動を父に信じさせる。父から紹介された人脈から『帝国人造繊維株式会社』を設立することになり特別顧問に就任する。開発兼アドバイザーとして活躍しつつ、ナイロンストッキングを海外で先行して流通させ大ヒットさせる。大学は東北帝国大学に進学している。
鷹司煕通(たかつかさひろみち): 鷹司公爵家当主で耀子の父。陸軍軍人。四男二女の父(史実では四男一女)。子供を深く愛しており買い与える。耀子が化学用品を求めた際にもドイツ留学時のつてを頼り入手している。耀子が『66ナイロン』生成を成功した際に、耀子の未来知識を信じる。耀子から打ち明けられた知識を用いて陸軍の戦術ドクトリンが変化していく。
鷹司順子(たかつかさじゅんこ): 耀子の母。子供達を深く愛している。耀子がなかなか甘えず早熟なのを恐怖したこともあるが、耀子が仕事で疲れた際に甘え出すのを喜ばしく思っている。
鷹司房子(たかつかさふさこ): 鷹司家長女。米沢上杉伯爵家に嫁ぐ。登場しないが、言及はされている。
鷹司信輔(たかつかさのぶすけ): 鷹司家や長男で耀子の兄。鳥類について強い関心を持ち鳥類学者になりたい願望を持つ。その関係で皇族である山階家と知己がある。
鷹司信煕(たかつかさのぶひろ): 鷹司家の次男で耀子の兄。後に父と同じく陸軍に入り砲兵少尉となる。東北帝国大学に入学する際に耀子を仙台まで送る際に耀子に言葉を投げ掛ける。
高橋是清(たかはしこれきよ): 日本銀行副総裁。元特許局局長だったため、66ナイロンの特許申請の折に父から紹介される。産業振興に役立つことから強い興味を持った。政府に働きたためか、これをきっかけに帝国人造繊維株式会社が設立される。
金子直吉(かねこなおきち): 鈴木商店の大番頭。帝国人造繊維でも辣腕を奮う。ただ海外でのナイロンストッキングの大ヒットは読めなかった。
千坂文子(ちさかふみこ): 帝国人造繊維株式会社米沢工場長(千坂高節)の子女(架空の人物)。耀子の姉房子が嫁いだ上杉侯爵家の家臣千坂家の家柄。耀子が東北帝国大学に進学する際に護衛兼手伝いとして付けられた。小さい頃から武術訓練をしており免許皆伝。高等小学校卒の14歳だったが、耀子の大学卒業後の18歳の後も耀子に付くことになる。