仮面ライダーZOとは、1993年に劇場公開された仮面ライダーシリーズの14作品目にあたる特撮映画である。
「真・仮面ライダー 序章」「仮面ライダーJ」と合わせて、劇場版ライダーや劇場三部作などまとめて扱われることが多い。
概要
本作は仮面ライダー誕生20周年を記念して作られた作品である。
名称は20という字を崩すとZOに見えるところから来ており、それに仮面ライダーZX、BLACK RX等と共通する命名法則を交えて「Zは究極、Oは原点」という説明がなされている。
前の作品が化け物で次の作品がウルトラマンだったため、どうしても特徴の薄い地味な印象を受けることが多いが、「仮面ライダー」の原点を捉えた、陰のある正統派ヒーローらしさや、48分という時間に詰め込まれた(監督を務めた雨宮慶太曰く「尺が短いからこそ幕の内弁当のようにギッシリ詰め込みたかった」とのこと)目まぐるしい展開、ラストシーンの印象深さなどから、実際に観た人間からの評価は概して高い。キックがダサいってみんな言うけど。
ライダーが武器はおろか、マフラーやベルトといった装身具を一切装備していない、いわゆる「悪の組織」が存在せず、少年と周囲のごくわずかな人間だけで世界観が構成されているなど、ライダーシリーズを通しても異色の作品であり、「変身」の発声はするが大げさなポーズを取らない、必殺キックの技名を叫ばないなど、今日のライダーシリーズにも見られる独自要素が多い。
あまりにも時代を先取りしすぎていた「真」の成分を調整した作品、ひいては後の平成ライダーシリーズに繋がるプロトタイプとして観ると、また新たな楽しみがあるかもしれない。
また、劇場本編は「親子愛」に、島本和彦による漫画版では「改造人間の悲哀」にそれぞれスポットが当てられている。
その関係上、映画では主人公・麻生勝は己を改造した博士への憎しみを秘めた寡黙な青年、望月博士は狂気の野望に囚われたことを悔悟する人物、宿敵ドラスは子どものように無垢な悪として描かれており、最後は「親子の愛情」が勝利の決め手となる。
一方、島本版では麻生は感情をダイレクトに表現する熱血漢、望月博士は完璧な生命体を作る野望を捨てきれないマッドサイエンティストとして描かれている。宏少年の出番はほとんどカットされ、代わりにオリジナルヒロイン「ナオミ」との修行によってライダーパンチ・ライダーキックを習得するエピソードが盛り込まれており、勝利につながるのは「ライダーの魂」である。また、麻生に助けを求める巨大バッタの動作や描き文字でBGM表現などギャグ・コミカルな描写もある。
余談だが、本作は製作当初から続編制作を考えていたようで、雨宮監督による画稿やストーリーボードが数点存在している。
ZOがプロテクターやマフラー(感情に反応して七色に変色するらしい)、ベルトを装着した姿が描かれたもので、当初の構想では「真・仮面ライダー」と同様に徐々に武装化していくようにするつもりだったのかもしれない。
あらすじ
両親を失って祖父と共に暮らす少年・宏の前に異形の怪人・ドラスが現れた。
ドラスは失踪した宏の父・望月博士が創り出したネオ生命体であり、製造者の意志を超えて暴走、宏を人質にして己にさらなる強化改造を施させようとしていた。その目的は不完全な生命体である人類を淘汰し、己が生態系の頂点に君臨することである。
ドラスの魔手に晒される宏少年を救ったのは、バイクを乗りこなすもう一人の怪人。
彼の名は麻生勝。 四年前に望月博士の手でその身体を作り変えられた、改造人間であった。
登場人物
- 麻生勝(あそう まさる)/仮面ライダーZO 演:土門廣、スーツアクター:岡元次郎
- 本作の主人公。25歳。
- 元は望月博士の助手として完全生物(ネオ生命体)を生み出す研究を手伝っていたが、博士によってそのプロトタイプとしてバッタの遺伝子を組み込んだ改造人間にされてしまった。
- その後研究所を脱走するが、山奥で雷に打たれ昏睡状態に陥る。その四年後、謎の巨大バッタからの『宏を守れ』というテレパシーを受け覚醒し、ネオ生命体と戦うことになる。
- 劇中では説明されていないが「山中で眠っていた間に大自然のエネルギーを吸収して当初よりもパワーアップした」という設定があり、最新型のネオ生命体であるドラスと対等に戦っている姿がこれを裏付けているといえる。しかし島本版では特訓前の戦闘では対等とは言えず、隙をついて攻撃したことで一時的に動きを止めるのが精いっぱいだった(特訓後はライダーパンチでダメージを与え、蹴ってダウンしたドラスを踏みつけるなど圧倒)。
- 変身プロセスはいたってシンプルであり、変身ポーズも簡単なものであるほか感情の高ぶりや精神集中だけでポーズを取ることなく変身することも可能。
- 感情が高まると後頭部にある穴から「気(白い蒸気のようなもの)」を放出するほか、口の部分から「ブレイクトゥーサー」と呼ばれる牙のような器官がせり出す。
- 必殺技は『ダサいZOキック』(ただし技名は言わない)。
- 望月博士 演:ささきいさお(クレジットは「佐々木功」)
- フルネームは『望月敏郎(もちづき としろう)』(小説版にて判明)。遺伝子工学の権威で、完全生物・ネオ生命体を生み出す研究を行っていた。
- もとは音楽を愛し、息子・宏にその素晴らしさを教えるようなよき父親であったが、研究が進むと徐々に狂気にとりつかれて行き、助手である麻生をその実験体として改造するなどマッドサイエンティストになっていく。
- しかし自らが生み出したネオ生命体の驚異的な成長に恐れをなし実験を中断しようとするが、既に自我を持っていたネオ生命体によって廃工場の機械と融合させられてしまい、更なる強化改造を迫られることに。
- ZOと一体化したドラスによって機械から引きずり出されるが、最期の力を振り絞って生命維持用プールを破壊する。しかし、体は既に機械との融合なしでは生命を維持できなくなっており、そのまま爆発する廃工場と運命を共にした。
- 島本版では自分の予測を超え圧倒的に強くなったZOを見て、ドラスを完全にしようという思いが再燃してしまう。しかしドラスに取り込まれかけたZOが精神で圧倒、ドラスが倒されたことで「自分が目指した「完全」は、自分の「限界」にすぎなかった」と悟った。
- 望月宏(もちづき ひろし) 演:柴田翔平
- 望月博士の息子。生まれてすぐに母を亡くし、父も研究の日々を送っていたため祖父・清吉と2人暮らし同然に育つ。狂気に走る前の父から贈られたオルゴール時計を宝物としていつも持ち歩いている。
- ネオ生命体によって人質として誘拐され、父と再会。
- その後ネオ生命体に殺されかけるが、オルゴールの音がネオ生命体の精神をかき乱し、これがZOの勝利に繋がった。
- 島本版ではオルゴール時計が登場せず、それに伴い出番も減っている。
- 望月清吉(もちづき せいきち) 演:犬塚弘
- 宏の祖父で、育ての親同然の人物。
- 妙な発明品を作っては失敗を繰り返すヘンテコ博士として街のちょっとした有名人であるが、その陰で失踪した望月博士の行方を追っていた。
- 玲子(れいこ) 演:森永奈緒美
- 黒田(くろだ) 演:大葉健二
- 西村(にしむら) 演:山下優
- 宮崎(みやざき) 演:榊原伊織
- 宏が通う武術道場の仲間たち。玲子は師範代。家族の少ない宏の兄弟分であるともいえる。
- ナオミ
- 島本版のみの登場。劇場版の玲子に相当する。「試作段階の自分では完全体には勝てない」と弱気になる麻生を「あなたの計算には心が入っていない」と叱咤、ライダーパンチを身に着けさせるべく特訓する。
ネオ生命体
望月博士が生み出した完全生物。組織としては非常にコンパクトである。
- ドラス スーツアクター:横山一敏、高岩成二、声:湯沢真伍
- ネオ生命体が金属などを取り込んで作り上げた戦闘形態。
- 右肩から発射するマリキュレーザー、伸縮自在の尻尾、ロケットパンチのように射出可能な右手など、多数の武器を全身に内蔵している。移動のときは球状または液体状になる。
- また再生能力を持ち劇中ではZOに切断された腕を瞬時に再生させたり、腹に風穴を開けられても同じように瞬時に再生させている。他にも自らの分身を生み出すことも可能。
- ドラス以外にもネオ生命体はさまざまな形態を持ち、劇中では輪の中から赤い目と緑色の肌をした少年の上体を突き出したような姿、小説版では色白で中性的な少年の姿(望月博士がある2人の人物に似せて作ったという)も持つ。
- 狂気に染まった望月博士に「人間は感情に左右される未熟な生き物」と教わり、それに従って人類を淘汰し自らが生態系の頂点に立とうとするも、その成長を恐れた望月博士によって成長を止められたため定期的に生命維持用プールに浸からないと生命を維持できない弱点が残ったため、それを克服するべく望月博士を脅迫、彼を機械と融合させ、さらに宏を襲う。
- 作り出されて間もないためか見た目と高い知能に反して精神年齢は幼く、一人称は『ボク』、望月博士を『パパ』、ZOを『おにいちゃん』、宏を『宏くん』と呼ぶ他、子供のような甲高い声で話す。
- 最終的にZOを吸収して強化形態となるが宏の持っていたオルゴールの音で精神をかき乱され、さらに生命維持用プールを望月博士に破壊される。その後、宏の呼びかけで意識を取り戻したZOと分離。続けざまにZOキックを受け力尽きる。
- 深層心理では「父親」にあたる望月博士の愛情に飢えており、劇中での行動も全てそれに基づくものであった。小説版でははっきりと「家族」というものに羨望を抱いていたと吐露する等、さらに詳しく描写されている。
- ドラスの外見はZOに似ている部分があるが、これは初期のデザインコンセプトが「邪悪な仮面ライダー」であることから、また設定上ではZOがネオ生命体のプロトタイプであることを考えれば納得できるといえる。
- ドラス強化形態(レッドドラス)
- ZOを取り込んでパワーアップした形態。
- 体の色が薄緑から血のような赤い色に変わっているほか、小さいバイオレットの目が巨大な黒い目に変化している、触角が縮んでいるなどの違いがある。
- ZOを取り込んだ影響なのか、外見はより仮面ライダーに近くなっている。
- クモ女
- ドラスの分身。長い手足と怪力を持ち、また暗闇に壊れた石柱が無造作に並ぶように見える異空間を作り出す能力も持つ。小さなクモの姿になることも可能。
- 宏と玲子を異空間へ引きずり込み襲うが、突入してきたZOに阻止されそのまま戦闘に突入。手足の多さと怪力でZOを苦しめるが手(足?)の1本を折られ、それを腹部に突き刺されて死亡。
- なお、ドラスやコウモリ男と違いスーツではなくストップモーションと操演のみで撮影されている。
- 島本版では麻生の彼女が、小説版では宏が通う学校の先生がドラスの細胞から生み出されたクモにとりつかれて生まれた改造人間として描かれている。
- コウモリ男 スーツアクター:中川清人
- ドラスの分身。普通サイズのコウモリに変身する能力を持つ。移動の際は巨大な翼を広げて飛ぶ。
- 宏を追って道場を襲うが、直後に現れたZOに苦戦し逃亡。その後クモ女を倒したZOの前に現れ宏をさらおうとするが失敗。
- 最後は望月博士に化けて宏を誘拐。救助のため駆けつけたZOに対し宏に化けてだまし討ちしようとするが正体を見破られ、腹をパンチでブチ抜かれて死亡。
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