伝説の名馬リアルスティール とは、伝説の名馬の父であり、自らも伝説の名馬を父に持つ「伝説の名馬」に、砂漠の国から送られた怪文書心からの賛辞である。
2025年度サウジカップ。1000万ドルの賞金と栄誉を求める数々の強豪競走馬が集結したこのサウジアラビア競馬の祭典では、Racing TVの中継中、有力馬の紹介を兼ねた2分程度のPVが順次放送された。
この年のトリを飾ったのは日本から出走したフォーエバーヤング(通称エバヤン。リアルスティール産駒)だったが、なんと彼のPVは実写ハイライトの他馬とは違い、全編アニメーション(日本語音声・英語字幕)という力作であった。アニメ制作はロンドンのMyth Studio、日本語ナレーションはイギリスで活動する日本人俳優・田淵大が担当している(後述の新バージョンで判明)。
エバヤンの前評判もさることながら、彼が昨年度のサウジダービー優勝馬であり、その後もアメリカと日本で活躍を続けてきたが故の、サウジ競馬関係者からの高評価も相まっての待遇だったのだろう。
……が、このアニメPVは当の日本の競馬ファンからすればツッコミどころ満載のカットばかりで、良くも悪くも笑いの種になった。
北の大地・ノーザンファームの緑豊かな牧草地で、1頭の特別な牡馬が誕生した
その名はフォーエバーヤング
優雅なるフォエヴァーダーリングの息子であり
伝説の名馬リアルスティールを父に持つ
二つの名門血統が交わり 偉大なる未来を宿した存在だった1歳馬の彼は、JRHAセレクトセールにて
調教師・矢作芳人の目に留まり、9800万円で落札された
「大地が彼のキャンバスとなる」と矢作は語った
その名伯楽の下で、フォーエバーヤングはダートの才能を開花させ
2歳時は無敗のまま未来のスターとして輝きを放った3歳馬となった彼に、矢作は新たな挑戦の場を求め中東へと視線を向ける
砂漠の星の下、彼はダービー二冠を成し遂げた
まずはリヤド、英雄の歌が響き渡る走りで勝利を収め、そしてドバイへ
そして名高きケンタッキーダービーの舞台でフォーエバーヤングの名は世界へ轟いた
惜しくも敗れはしたが、その勇気と闘志は誰の目にも明らかだった
帰国後、彼はダートクラシック(JDC)を制し、東京大賞典で堂々と1年を締めくくる
こうして 彼は王者としての地位を確立したのだったそして今、4歳を迎えたフォーエバーヤングに父の影が重くのしかかる
リアルスティールの最高の栄光は、4歳時に手にしたグレード1・ドバイターフでの勝利だった
だがフォーエバーヤングは更に大きな夢を見る
彼が目指すのは、世界最高賞金レースの頂点
父を讃えるだけでなく、父を超えるために。己の伝説を築くために
勇猛な者が、運命を手にできることを証明するために
※以上ニコ百編集者によるリスニング書き起こし。ネット上でコピペされている文章には細部が違うものもあるので、読者の皆様もご自分の耳でご確認いただきたい。※
作画の質は悪いものではなく、ナレーションも真っ当に感動できる。レース部分には実際の実況音声をかぶせたり、「The Man in the Hat」の異名通り矢作調教師の帽子をカットごとに変更するこだわりもある。何より、中東ホースマン達のエバヤンとその関係者に対する敬意と愛情は物凄く伝わってくるPVであった。
が、それはそれとして、目に入るカットや構図は、取材や監修を放棄したとしか思えない、色々とぶっ飛んだ代物だった……。
その中でも特にネタにされたのが、エバヤンの父にして「伝説の名馬」と謳われたリアルスティール(以下リアステ)についての描写であった。
劇中でも語られる通り、リアステは現役4歳時にGI・ドバイターフを制し、他に重賞を2勝している実績がある。血統面から見ても、優雅なるラヴズオンリーミーの息子であり、伝説の名馬ディープインパクトを父に持つ、非の打ちどころのない良血が流れている。彼がまぎれもない名馬であることは、競馬ファンの間でも異論はないだろう(ここ重要)。
……とはいえ、リアステより多くのGIを制している馬は大勢居るし、なんならドバイターフ(ドバイデューティーフリー)を含めて複数のGIを制した馬だっている。そもそも現役時代のリアステは、3歳時は同期のドゥラメンテやキタサンブラックに中々かなわず、4歳時はドバイターフ以外勝利無し、5歳後はGIIの1勝しかできなかった。GIでも2着・3着は結構とっているのだが、どうにもあと一歩届かない。「実力があるのは確かだが何とも惜しいヤツ」というのが、現役時代の彼を知るファンの総意であろう。
競走実績が大したことなくても、種牡馬として優れた産駒を多数送りだし、伝説と化した馬もいる。だがこの視点から鑑みても、リアステはまだ特筆した実績を残していない。何しろエバヤンが第2世代産駒なので、まだ種牡馬評価を行いようがない。更にリアステは、日本の最上級種牡馬牧場である社台スタリオンステーションから別牧場へ出向中の身であり、社台SS専属の他種牡馬よりも下に見られる風潮があった[3]。
まぎれも無い名馬ではあるが「伝説級か」と聞かれれば「さぁどうだろう……」な存在。それがいきなりサウジアラビアから「伝説の名馬」呼ばわりされたインパクトたるや……いろんな意味で噴き出した競馬ファンは多かったはずである。
後半部、「父の影が重くのしかかる」と読み上げられている最中に星座になったリアステが映るカットも中々可笑しい所。リアステが死んでるみたいな描かれ方だぁ……。
エバヤンが「父を超えるため」というのもちょっとずれている感がある。この時点でドバイターフを勝ったリアステと同い年のエバヤンは、国際GIを1勝、Jpn1を2勝、サウジ・UAEダービーを2連続制覇、KYダービー/BCクラシックで日本馬最先着の3位入賞という戦績を辿っていた。実績だけなら既に父を超えていたと評しても過言ではない。むしろ現役時代に「父の影が重くのしかかって」いたのは優雅なる(中略)伝説の名馬ディープインパクトを父に持つリアステの方だったはず。
最大のツッコミどころは、このPVがサウジカップ本番の発走直前に放映されたという点だろう。これでエバヤンが負けたらどうなっていたのだろうか……。
幸いにも(?)エバヤンは、これまで幾多の日本馬を蹴散らしてきた香港の勇者・ロマンチックウォリアー(以下ロマウォ)と壮絶な一騎打ちを演じ、見事アタマ差で先着。リアステと同じく4歳で海外GIタイトルを手に入れた。伝説の名馬ディープインパクトの息子、「伝説の名馬」リアルスティールは、伝説の名馬フォーエバーヤングの父になったことで、真に伝説の名馬となったと言えるだろう。……たぶん。
この激闘を讃えてか、エバヤンが出走するドバイワールドカップを目前に控えた2025年4月4日には、なんとMyth StudioのInstagramアカウントにて、サウジカップの内容を反映した新バージョンが公開された。上述の動画の「彼が目指すのは、世界最高賞金レースの頂点」以降が新規カットとなる。
リヤドの砂漠にて、銀色に輝く2月の月の下、勇敢なる王者が立ちはだかった
香港の英雄、ロマンチックウォリアー
計り知れぬ富をもたらし、競馬史上最高の栄誉を手にした覇者
「最大の試練が待ち受けている」過去の戦いの知恵を宿した矢作師が静かにそう呟いたそして、運命の決戦が幕を開ける
世界が息を飲む中、その壮大な物語が紡がれていった伝説が刻まれた
歴史に残る名勝負、永遠に輝く瞬間
フォーエバーヤングは、父の名誉を称えるだけでなく、それを超えた
運命は、勇敢なる者の手にあることを証明して
非常に格好いいロマウォの紹介と、日本中の競馬ファンが熱狂したエバヤンvsロマウォの激闘をしっかりと再現した新規アニメーションもさることながら、
と、既存カットにもいくつか修正が加えられている。ただし、アルプスにしか見えないノーザンファームや昼間の全日本2歳優駿、富士山が見える桜満開の東京大賞典などはそのまま、更に追加カットでは
と新たなツッコミポイントも生まれてしまった。
そしてラストはサウジの夜空にリアステ座二度撃ち。だからリアステはまだ生きてるってば。
そんなツッコミどころをさておけば、サウジカップの競馬史に残る一騎打ちの再現度は高く、抜群の手応えで4角先頭に立つロマウォや、直線で最初はインにいたエバヤンがロマウォの外に切り返すところもしっかり描写されている。ナレーションではなく英語実況とともに描かれる演出も、あの熱狂を思い出させるに充分な仕上がり。
気合いを入れたアニメPVを制作したら、実際のレースで期待をさらに上回る名勝負を繰り広げたフォーエバーヤングとその父リアルスティールに対する溢れんばかりの賛意を感じずにはいられない。
いずれにせよ、それまで「怪物に蹂躙された善戦マン」「種牡馬入り後も何かと苦労してるやつ」という認識だったリアルスティールは、一夜にして「伝説の名馬」として愛されるようになった。発端がリアルスティールをバカにした意味合いではなく、むしろ敬意の表れだったことが、この(いささか盛りすぎな)称号を笑えるネタとした要因だろう。
思えば現役時代のリアルスティールは、己の伝説を築くために走り続け、父が手に入れられなかった海外GⅠタイトルを獲得し、矢作師が「世界のYAHAGI」として躍進するきっかけも作った。彼が「運命を手にした勇猛な者」であったことは、現役時代の彼を知る競馬ファンには周知の事実だったのである。
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最終更新:2025/04/10(木) 15:00
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