佐野る(さの-る)とは、2015年にインターネット上で誕生した造語(インターネットミーム)の動詞である。
意味は「盗作する」「その場しのぎの言い訳をする」といったところ。類義語に「アサヒる」があるが、こちらは専ら捏造について使われる。
以下、誕生に至った簡単な経緯を記す。
2020年の東京オリンピック公式エンブレムを作成したデザイナーは佐野研二郎氏という。
彼は2015年7月24日に同年8月28日の記事作成時点の現在知られる公式エンブレムを発表し、[1]その喪章のようなデザインが各所で批判を浴びた。
中には春風亭一之輔氏のように「昔ヘンだと思ってたデザインも見慣れればなれるだろう」といった好意的?な意見や国内外で多数のデザインを発表し、中には2010年に大ヒットした桑田佳祐氏のアルバム『MUSICMAN』などを手がけたことも紹介されていたことから、メディアの中でも擁護派が多数意見を占めていた。
だが、その栄光も僅か5日という砂上の楼閣の如き短い間であった・・・
東京五輪のエンブレムがベルギーの王立リエージュ劇場(Théâtre de Liège)のロゴに酷似していると、そのロゴをデザインした「Studio Debie」(ステュディオ・ドゥビー)からの抗議があったのである。[2]
そのベルギー劇場のロゴは円形でモノクロであるものの、角度や形状までもがほぼ一致するというインスパイアやオマージュとは到底言い難い、盗用と言ってほぼ差し支えないレベルの酷似した形状のものだった。とはいえ、著作権上はほぼ問題無いとする弁護士の見解もあり、[3]東京五輪大会組織委員会はこのエンブレムが正式な商標登録や意匠登録の審査を経ていることを理由に抗議に応じなかった。[4]また31日にTBS系列で放映された『ひるおびっ』では、八代英輝弁護士を初めとした出演者一同が、今回の抗議を「売名行為」と批判し茶化すような空気で発言を重ねていたことがベルギー側に伝わり、彼らを憤慨させている。[5]
当初、佐野氏サイドは黙殺していたが、翌30日にはTwitterやFacebookには鍵がかけられ、事務所の株式会社ミスターデザイン(MR_DESIGN)のサイトは一時的にアクセス不可、[6]本人は「海外出張中」になる。[7]更に事務所の取得していたサーバー名が「zyappu」(= JAP?)という日本人に対する侮蔑極まりないワードだったことからインターネットを中心に佐野氏に対しての風当たりが厳しくなる。なお、同日には五輪ボランティア制服が韓国王朝守衛の制服に酷似しているという声も上がったが、佐野氏の問題が大きくなりはじめていたためか、こちらは2日後にTwitterで無名デザイナーがオリジナルデザインの半被を発表した程度に留まり、あまり大きな騒動に発展していない。
さらに、このzyappu騒動では前述の『MUSICMAN』のデザインにも触れ、「日の丸が土下座しているではないか」と、同作の発売当時一部で聞かれた批判が再燃(2010年当時も言われてはいたが、アルバム自体の完成度がそれなりに高かったことや売り上げがよかったこと、翌年に発生した東日本大震災などでほぼ忘れられていた)。そして、五輪ロゴの件から在日認定する者まで現れる始末だった。
このような声を黙っていられるはずがなく、佐野氏は31日に出張先から組織委員会を通じて声明を発表、 [8]さらに8月4日に改めて釈明会見を行う。
その場で五輪マークの件について、「ベルギーに行ったことも、基とされるロゴを見たこと自体無い」「盗用ではないかと指摘されている事について非常に驚いているが、全くの事実無根だ」とインターネット上でよくあるデマの一種として説明。[9]
さらにこの場で自身がバリエーションとして製作したとするアルファベットバージョンの五輪ロゴまで持参するなど終止強気の態度であった。
会見では他にも「TwitterやFacebookは5月には閉鎖しており、その後アカウントを第三者に乗っ取られた」というささやかな燃料を投下したものの、本人の口から一通りの説明がなされたことで騒動が一旦収束するかに思えた矢先の8月9日、今度はセカンドライフ上のマーケットプレイスにて発表されていた「=BEACH⇒」というパーツ他が「サントリーオールフリー」の応募者全員景品のトートバッグにほぼそのまま転用されていることを発見した者が現れ、[10]さらに翌日には『元ネタ』の写真を撮影したブログ管理人もそれが自身の撮影した写真に間違いないことを認め、半ばあきれ気味のコメントを発表したことから、[11]テレビ番組などでも次第に大きく報じられるようになる。実はこのパンの件については道義上はともかく著作権上は微妙な所なのだが、[12]後日になって「『オールフリー』だけに版権フリーの素材を使えばよかったのに」とでも言うようにフランスパンのフリー画像素材を追加したストックフォトサービスサイトがあった。[13]
そして夏休みも半分が過ぎ、甲子園のラガーさん騒動で一部が盛り上がり、徳島の阿波踊りも3日目に入った8月13日、ついに佐野氏サイドに最初の一撃が加わる。
キャンペーンを行っていたサントリーがホームページ上で謝罪文を掲載し、佐野氏からの申し出により全30点のうち8点を賞品から取り下げる措置を採った。[14]
この対応には企画そのものを取り下げなかったことが一部からの批判を招いたが、真っ先に対応に臨んだ姿勢を評価する声も多かった。
この日、佐野氏の妻に直撃インタビューした記事がインターネット上で大きく拡散し、その内容は「トートバッグデザインの監修は佐野氏だが、実務は数人の部下が行った。部下は現在夏季休暇の為確認が取れない」というおおよそ一般企業勤めの社会人が持つコンプライアンス精神とはかけ離れた発言が猛烈な批判を招き、文字通り火に油を注いで大炎上した。
翌14日には事務所のサイトに佐野氏による謝罪文が掲載され、疑惑のトートバッグのデザインについて部下による剽窃であったことを初めて正式に認め、アートディレクターとしての自身の管理不行き届きを謝罪した。[15]また、五輪エンブレムを含む他の過去作品については一切の疑惑を否定するなど依然として強気の姿勢であったが、その後もストーンズTシャツ別人問題など、[16]新たな疑惑が次々と発掘され続けている。
さらにこの頃になると、佐野氏の周辺について調査を始める者が現れ、[17]次第にデザイナー界が「単なる少人数の賞の持ち回り」であり、「利権、コネに塗れた自浄不可能な構造」といった負の側面が大きく拡散された。また、当初から擁護に回っていたデザイナーの多くがいわゆる「佐野チルドレン」であったという指摘もある(但し、出典元が明らかでない情報も多く、鵜呑みにするのはやめ、あくまで参考程度に留めておくべきである)。
翌15日には安倍談話に対するテレビの批判的な対応も騒動な中、佐野氏に追い討ちをかけるかの如き事態が発生する。
元ネタにされた「=BEACH⇒」パーツのオーナーであるジョージア州のアメリカ人デザイナーのベン・ザリコー(Ben Zaricor, 報道によってはザラコー。星条旗収集で著名な同姓同名とは別人)氏が日本のテレビ局の取材によって「これは15年前に自分が製作したものではないか!」と大激怒。特に自分でわざと変えたとする「文字の間隔や太さまで同じである完全盗作」という点に憤慨し、法的手段も検討すると述べ、佐野氏に対して初めて裁判沙汰の危機が訪れた(ちなみに同じ取材では泳ぐ女性のデザインを制作したカリフォルニア州のジェフ・マクフェトリッジ(Geoff McFetridge)氏にも同様の問い合わせを行ったが、こちらは法的手段はとらないと述べていた)。その後、ザリコー氏は自身のFacebookで「ぼくのかんがえた東京五輪エンブレム」を発表したり(中には例の矢をモチーフにしたものも)、デザイナーらしいユーモアのある意趣返しを行っている。[18]
これでついに五輪エンブレム取り下げかと思われたが、8月17日に日本側はとんでもないことを世界中に発表する。
なんと東京五輪大会組織委は提訴を行ったベルギーの劇場ロゴのデザイナー側を批難する声明を発表したのである。
この明らかな開きなおりとも取れる行為には日本中が呆れ返り、「早くエンブレムを取り下げろ」「国際社会の恥だ」「オリンピック自体やめてしまえ!」といった声がますます大きくなっていった。
18日には写真共有サイトのPinterest(ピンタレスト)に佐野氏のアドレス、アカウントが登録されていることが発覚。
ここに掲載されているデザインの多くがその「餌食」となっていたことから「仕入れ元ではないのか?」との疑惑があっての調査だったが、このことが発覚した佐野氏サイドは手早くアカウントを削除。
Pinterestは「見ていないし、登録もしていない」としていたが、これが嘘であることが白日の下に曝され、その発言の信憑性が疑われていた佐野氏の虚言癖の噂がより真実味を帯びることになってしまう結果となった。
同日、過去に佐野氏がロゴをデザインしたヨシヅヤ[19]東山動植物園[20]、おおたBITO 太田市美術館・図書館[21]が相次いで盗用疑惑を調査している(この両者も既にネット上で盗用疑惑が囁かれていた案件である)。後者は米コロラド州のイラストレーター・デザイナーのジョッシュ・ディヴァイン(Josh Divine)氏が法的手段を検討中 [22]だが、清水聖義市長はこのロゴの使用を継続すると公表している[23])。
19日にはPinterest疑惑について釈明会見の発言と矛盾することを問いただされ、「TAMABIの広告シリーズを画像検索する目的で2014年11月13日にアカウントを取得したが、個人利用目的ではない」と広報の説明があったが、頑なに盗作の事実については認めようとしなかった。
20日には尾木直樹氏(尾木ママ)が公式ブログにて「推定で200億円以上の利益が佐野氏の周辺に舞い込む」という試算を展開し、[24]これも大きく支持を集めた(しかし後に「200億というのはどこから出てきた数字なのか? デマではないか?」という意見も出ている → 22日に訂正・謝罪[25]。そもそも尾木ママは騒動当初は「デザイン類似は選考委員会のリサーチ不足」という観点から佐野氏擁護に回っていたのだが、[26]実体が次々と明るみになるにつれ持論をあっさり翻して批判に転じたが、[27]どうやらよほど腹に据えかねていたらしく、[28]批判は順調にエスカレートしている。[29]
また、騒動に便乗したセブンイレブンのいち店長が悪ノリし、エンブレムに似せたおでんPOPを作成するなど[30](店長自らが問い合わせたところ、商業利用に当たると指摘されてやむなく撤去、[31]しかし店長全然懲りておらず[32])、最早完全にネタ扱いされる始末だった。
ネタといえば、早くから11日にはある日本人デザイナーが戯れに1時間で考えたという「桜の花に東京の銀杏と日の丸を隠し持たせた」デザインを、[33]18日には田辺誠一画伯がそれぞれtwitterで公開し(後に削除)、[34]21日にはスペイン在住の日本人デザイナーが代案として「日の丸と末広がりの意味を持つ扇」のデザインを私的に公開、[35]9月1日にはキングコングの西野亮廣氏が和柄のスケッチを公開。[36]いずれも大きな注目を集めるなど、五輪エンブレム変更の機運はさらに過熱していった。
8月22日、堀北真希が山本耕史のストーカー紛いのプロポーズを承諾して電撃結婚したニュースで世間は持ちきりだった頃、佐野氏はその日の会見で
「一定の要件を満たすデザインはたくさんある」
「その要件を満たすデザインは、今、名乗りを上げておられるデザイナー以外にも、制作されている方は、世の中にたくさんいらっしゃると思います」
「それが、誰か特定の人のアイデアとして認められ、ほかの人が使えないということであれば、デザインの世界では、できないことがほとんどになってしまうと思いますし、わたしはそうではなく、ほかの誰が使っても、問題のないものだと思います」
「わたしから、使用しないよう、お願いすることは考えておりません」
「誤解もあるようですので、丁寧な説明を今後もしていきたい」
とまるで反省の色を見せず、むしろ盗作を悪びれる様子の欠片も無い発言に、あるネット住人が発した、
パクる=佐野る
という言葉がこの後から加速的に使用されるようになり、[37]さらに2日の8月24日には「佐野チルドレン」とされる中島英樹氏、松家利絵氏、植原亮輔氏、森本千絵氏、荒川サトシ氏らデザイナー仲間がFacebook上で先述の賞賛を集めた扇マークを一斉に批判。特に中島氏は「汚い」と一蹴し、更に「この扇子が蛾にみるころが、ポイントかも。自分が、自殺の名所に立っている事もわかない不思議な感覚(スロッピング・グリッスルかよ!)」(※原文ママ)と独特な感性で一刀両断するなど、素人と本職の視点の違いというものを考慮してもおよそ批評とは呼べない言葉で大きく佐野氏を擁護する姿勢をとった。[38]中島氏はその後もFB上で「もう、オリンピックの個人攻撃、辞めましょうよ」(※原文ママ)等と火消しを続けていたが、後に原案の元ネタが発覚すると、擁護しきれないとみたのか、掌をひっくり返して佐野氏を攻撃する姿勢に移った。あたかも数日前の誤字混じりの発言は誤字でも火消しでもなくて、実は佐野氏に向けた「(公式エンブレムのデザイナーを)辞めましょうよ」というメッセージであったのでは、と想わせるほど見事な豹変であった。[39]その他多くのクリエイター仲間も同様の対応を採ったが、時すでに遅く、ネット民は彼ら佐野チルドレンをもターゲットと定め、かくして彼らからも次々と疑惑が浮上し炎上は拡大している。[40]
騒動が留まることを知らないことを重く見た五輪委員会もようやく取材に応じるようになり、8月26日、朝日新聞の取材に際してエンブレム審査委員代表の永井一正氏が「現在公表されているものは別のロゴと似ていた応募案に、パーツの位置をずらすなど一部修正を施したもの」「本元のデザインは劇場のロゴとは似ていないので、盗作には当たらない」と明かした。[41]
が、それでは佐野氏が会見で述べた「Tと円が当初の発想コンセプト」という説明と矛盾が生じる可能性が出てくるし、「ベルギーのロゴがPinterestに登録されたのは五輪ロゴ締切より後」という理屈も全く意味を為さなくなる。そもそもこの種の審査において、他に類似する作品があることが判明したのに落選あるいは採用取消が行われないという事は常識的に考えられず、「それはそれでヘンじゃないのか?」という声が相次いだ。[42]
原案を公表するなら提訴を取り下げるとまで譲歩していたベルギー側だったが、27日に五輪委員会は原案公表予定は無いことを世間に告げる。
しかし、これは猛烈なバッシングとなり、即日で姿勢を180度変えて非公表のままという意見も撤回、翌28日に急遽記者会見を開いて原案を公表した。[43]が、アルファベット表と大きな矛盾が生じていたこと、展開案や二次修正案など[44]もどんどん発言に対しての矛盾部分が膨らむばかりであった。[45]この審査への参加条件の少し異常な厳しさ等の不審な諸要素も相まり、ここにきて疑惑は委員会にも波及して「世紀の談合事件」へと発展した。
特に、採用の決め手になったという展開例に使用された写真が、東京在住経験もあるアジア系外国人「SLEEPWALKING IN TOKYO」氏の同名ブログの2012年5月31日エントリ「[Japan] Haneda Airport, Tokyo」のトップに使われていたフィルム撮影の写真と、東京在住のイギリス人デジタルプロダクションデザイナーの「David」(デイヴィッド)氏のブログ「randomwire.com」の2010年10月13日エントリ「Shibuya Scramble Crossing」のトップ写真、さらにベルギーの音楽フェス「Tomorrowland」公式サイトの「The Gathering」コーナーの画像と完全に一致した上、原盤に存在したコピーライト表記をトリミングで消去するというクリエイターとして道義上許されない行為を行っていたことまで突き止められる。[46]これは前日に点字ブロックを占拠してハンガーストライキを行った左翼学生団体がTwitter上にアップロードした写真において自分たちが腰を下ろしていた点字ブロックをトリミングで消去したことと同レベルだとさらなる批判を招く結果に終わった(当の SLEEPWALKING TOKYO 氏は「無許可あるいは自分への繋がりを絶っての利用は禁止」(原文は英語)と明記しており、9月1日のエントリ「To Whom It May Concern」では日本語で「東京オリンピックのような国際的なイベントのプレゼンテーションに使われて嬉しい気持ちもありました」としつつも「私の写真を使用するに当たって、許可をとって欲しかったです。私が写真につけたコピーライトのスカシまで削除したことは道義に反した行為だと思います」と複雑な心境を吐露している。また David 氏は8月30日のエントリ「Copycat Olympics」で「許可を取らなかったのはスタッフのうっかりミスだろう」「私は佐野氏のエンブレムのデザインを気に入っていたのだけど」(原文は英語)と鷹揚にコメントしているが、同じ記事の中で写真については「非商業目的に限りクリエイティヴコモンに遵って利用可能で、しかも著作者を示さなくてはいけない」(同)と明言している)。[47]
そして、とうとうこのエンブレムの原案にすら『元ネタ』があったことが8月30日に発覚。
この元ネタとされるものはドイツのタイポカリグラファー、ヤン・チヒョルト(Jan Tschichold)氏のタイポグラフィデザインのひとつで、佐野氏自身もこの展覧会へ2013年に足を運んだことを自ら明かしており、比率や形状なども例のごとくピッタリ一致していた。[48]
ほぼ同じタイミングで多摩美術大学、[49]横手市[50]と新たな疑惑が次々と浮上し、誰にも手のつけようがない状況にまで追い込まれていた。特に多摩美は佐野氏の母校であり、[51]「多摩美は盗作を推奨するのか」という意見も多く見られ、ここに来て「佐野厄寄せ大師」[52]「ファイアー(炎上)エムブレム」[53]なる異名まで誕生する始末であった。
夏休みが終わり、新学期や下半期がスタートした人々も多い防災の日の9月1日
ようやく五輪委員会は重い腰を上げ、佐野氏による五輪エンブレムの使用中止と新たな公募の実施を表明した。[54]
この使用中止を表明した会見に佐野氏は出席せず、武藤敏郎専務理事・事務総長により謝罪と事のあらましの説明が為された。[55]
当日の午前中に武藤事務総長と永井一正審査委員長と他数名で佐野氏に聴き取りを行ったところ、展開例での写真無断流用については「あくまでも内部資料に留まるものと想っていた」(だがコピーライトをわざわざ消した件などの説明にはならない)、またヤン・チヒョルトのポスターについては「記憶にない」の一点張りであったという。
また武藤事務総長は一貫してデザイン業界の外にいる人間を「一般国民」と呼び、デザイン感覚における業界人との相違を繰り返し強調していたが、これは視聴者の大半である多くの「一般国民」から「じゃあお前らは『上級国民』なのか」などと無用な反感を抱かせることになった。
そして最終的な責任の所在は「(佐野氏と組織委と審査委の)三者三様」と曖昧な言い回しに終始し、結局誰一人ほとんど頭を下げることもなく幕を閉じたこの会見によって、わだかまりは何一つ解消されなかった。[56]
また今回の使用中止は「国民からの支援が無い」との認識から佐野氏側から取り下げを申し出たということだが、「取り下げたんだからもうお前ら満足だろ」と言わんばかりの適当さを感じさせる対応がやはり批難の対象となった。
なお、当然のことだが賞金の100万円も取り消しとなった。[57]
そしてその日の夜にMR_DESIGNはホームページ上に謝罪文を掲載して済ますという明らかに誠意を欠いた対応で使用中止を要請した経緯を説明した。[58]しかし、当の佐野氏はこの期に及んで「自分は盗作をしていない」の一点張りで最後の最後までエンブレムが自作のオリジナルであるというスタンスを変えることは無かったほか、「人間として限界」などと、あたかも自分が被害者であるかのような文面が余計に一般国民の感情を逆撫でする結果に終わった。
ただ、一連の騒動によって佐野氏の家族があらぬ誹謗中傷の対象となっていることも伝えられたが、これは本当に気の毒であり残念であるという他無い。彼らは一連の騒動で最大の被害を蒙っている第三者なのだから。
一般ピープルが求めていたのは盗用を認める認めないに係らず、誠意ある「申し訳ありませんでした」の一言であり、「我々の浅はかな考えと業界全体の悪しき慣例がこのような事態を招いたことを深く反省いたします」という謝罪の表明だったはずであろうが、委員会や元首相[59]共々まるで国民や権利者を嘲笑うように尽く真逆の対応をしてしまったのであった。「佐野氏はまず初めに、ベルギーに赴いて相手方と何らかのコンタクトを取って誠心誠意話し合い、ウェブサイトなりSNSなりに彼らと握手した写真を載せるぐらいはすべきだった」という元同業の中川淳一郎氏の意見も存在している。[60]が、こうした対応を取らなかった(取れなかった)のは恐らく初めから佐野氏側の最大の興味が訴訟による決着にあったからかも知れない。盗用を認めていなくても何らかの謝罪を行ったり、会見で下手にボロを出してしまった場合、それらが法廷で不利な証拠として働く可能性は低くないからである。もし裁判で盗用が認められてしまった場合、現状すらマシに想える位の危機的状況に陥る可能性が高いので尚更である。[61]また盗用が認められた場合、委員会にも多額の損害賠償発生する惧れがある。[62]
なお、ベルギー側のデザイナー、オリヴィエ・ドゥビー(Olivier Debie)氏は取り下げについて一定の評価は下したものの、やはりきちんと謝罪を行わなかった点や盗用を最後まで認めなかった点に遺憾を表明し、訴訟も継続する方針を明らかにしている。[63]
ともあれ、自己表現の苦手な現代日本人の病気がここでも存分に発揮されてしまうこととなった。かくして12月に発売予定であった佐野氏の著書『伝わらなければデザインじゃない』も無期限の発売延期が決定している。[64]
なお、この中止会見後に公募に敗れた応募者が「コンペそのものに問題があった」=「佐野氏ありきの選考だった」ということも明かしており、仮に再公募が行われたとしても、その体質が変わらない限りは何度やっても同じ結果に終わるのではないかという懸念も残されている。よって、この問題は盗作事件であると同時にオリンピックを舞台とした官製談合事件としても注目されている。
掲示板
208 ななしのよっしん
2024/04/19(金) 13:00:14 ID: n6/DrIs+bW
この問題
2Dの表現の限界とも見受けられる
もしも新規性として3Dで作成した場合、影の形など
正面以外からの視点があれば、十分に新しいデザインのエンブレムとして迎え入れられたとも思う
とはいえ偏向報道はいつの時代も猿い…猿展開…
209 ななしのよっしん
2024/04/19(金) 13:03:10 ID: n6/DrIs+bW
例えば材質の違いや立地、イベントとの兼ね合いを踏まえて
一塊で捉えた場合、充分に異なっていることの証明になる
要素を分解すれば、そりゃ最終的には現実にあるものの最小単位の図形のどれかには当て嵌まる
とはいえ信書の秘密は守られるべきだけど…
210 ななしのよっしん
2024/04/19(金) 13:33:10 ID: OyL/WgJNf8
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/26(金) 02:00
最終更新:2024/04/26(金) 02:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。