偏西風とは、中緯度(北/南緯30~65度)において西から東に吹く恒常風である。中緯度偏西風とも呼ばれる。
偏西風そのものについて説明する前に、まず地球の大気循環について説明する。
赤道付近(低緯度)の地域は太陽光を大量に浴びやすく、高温な気候となる。地表の空気は太陽によって熱せられ膨張。その結果密度が低くなり、どんどん上昇していく。これは熱気球の仕組みを想像するとイメージしやすい。暖められて上昇した空気は中緯度(北/南緯30度)上空まで移動するが、その間に熱をどんどん放出していき、冷却される。冷却された空気は収縮し密度が高くなるため、今度は地表まで下降していき、赤道近辺まで戻っていく(貿易風)。このような赤道近辺から北/南緯30度前後で起きている大気の循環を、モデルを考案したイギリスの気象学者の名前から、ハドレー循環と呼ぶ。
一方で極(北極/南極)付近の地域は太陽光を浴びづらく、寒冷な気候となる。冷却され収縮した空気は密度が低くなるため、地表付近に集まる。その空気は極から高緯度(北/南緯65度)地表を移動するが、その間に熱せられて膨張するため、今度は上空まで上昇して再び極付近まで戻っていく。このような極近辺から北/南緯65度で起きている大気の循環を極循環と呼ぶ。
「文字だけじゃよくわからん!」という方は、こちらの画像を参照のこと(Wikipediaコモンズへ飛びます)。
赤道から北/南緯30度前後で起きているのがハドレー循環、極近辺から北/南緯60度前後で起きているのが極循環というのがここまでの話だが、ではその間の中緯度(北/南緯30~65度)地域ではどのような大気の循環が起きているのだろうか。
答えは、中緯度地域の低緯度側(北/南緯30度)ではハドレー循環の下降気流(高気圧)、中緯度地域の高緯度側(北/南緯65度)では極循環の上昇気流(低気圧)が発達しており、風は気圧の高い方から低い方に吹くという性質から、北/南緯30度から北/南緯65度にかけて大気が循環している。もっと簡単にいうと、温暖な低緯度地域と寒冷な高緯度地域との寒暖差を緩めるべく、低緯度地域の熱が風によって高緯度地域まで運ばれている。このような大気の循環を、理論を提唱したアメリカの気象学者の名前から、フェレル循環と呼ばれ、そこで吹いている風が偏西風である。
ではなぜ偏西風が西から東に吹くのかというと、これは地球の自転による。地球は東側へ自転しているが、低緯度と高緯度では自転速度が異なり、低緯度ほど速く、高緯度ほど遅い。したがって、低緯度から高緯度に吹く偏西風は東向きに曲がる(コリオリ力)。
以上により、偏西風は北半球では南西から北東、南半球では北西から南東へ吹く。
ただし、偏西風はいつも北東/南東に向かっているわけではなく、波のように、大きく南北に蛇行しながら東へ吹くこともある。その場合、より高緯度の地域に暖かい空気が運ばれたり、より低緯度の地域に冷たい空気が運ばれたりする。また南北に大きく蛇行した偏西風は、ほかの低気圧・高気圧の進路を妨げる可能性があり、長期間に渡って同じ低気圧・高気圧が停滞するために、日照りや長雨などの異常気象に繋がりやすい。気象庁ではこの南北への蛇行を「東西指数」というもので指標化しており、中長期的な気象予報に活用している。
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最終更新:2025/04/13(日) 05:00
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