共通一次試験

共通一次試験とは、日本の大学入試センターが1月中旬に行っていた、国公立大学への入学条件となる学力テストのことである。

概要

正式名称「大学共通第1次学力試験」、略称では「共通一次」。1979年に開始され、1990年以降は「大学入試センター試験」、2021年以降は「大学入学共通テスト」に引き継がれた。

それまでは各大学が独自に入試問題を作成していたが、高校範囲を越えた難問・奇問の出題が少なくなかったという。これを改善するため、全国一斉に同一問題で試験を実施することで高校範囲の基礎的な学力を判断できるように設けられたのが共通一次試験である。

この制度には全ての国公立大学が参加し、共通一次試験の結果と各大学独自の二次試験を組み合わせた合否判定が行われた。共通一次試験の導入によって各大学の独自試験は科目数を削減できるため、きめ細やかな入試の実現が目指された。また私立大学からは唯一、産業医科大学が参加していた。

後のセンター試験や共通テストとは異なり、受験科目を選択することはできず、5教科7科目すべての受験が必須であった（のちに5教科5科目に変更）。各大学の試験科目が横並びになったことで、国公立大学の序列化が進んでしまったという批判もある。

試験はマークシート方式で行われ、ヤマカンで全問正解できる可能性があることに対しては批判も多かった。センター試験・共通テスト対策として知られる消去法などのテクニックはこのときから使われている。

数学では0から9の数字・マイナス・一部英字の他に「＊」（アスタリスク、通称「米印」）のマーク欄があり、解答の文字数と解答欄の数が合わない場合に＊で残りの欄を埋めることになっていた（例えば解答が「12」で解答欄が「アイウ」の場合「12＊」をマークする）。
最初の6年間は＊を用いる問題が全く出題されず「米印が必要になったら自分の解答を疑え」というのが常識になっていたが、1985年に初めて、しかも大量に出現。多くの受験生がパニックとなったこの出来事は「米騒動」として現在まで語り継がれている。結局、センター試験への移行とともに＊は廃止された。

試験の解答は翌日の新聞などに掲載され、受験生が自己採点を行って予備校が集計することで自身が合格圏内にいるのかを判断した上で、各大学への出願を行うことが可能であった。1987年のみ、共通一次試験の出願と同時に二次試験の出願を行うこととなったが、受験動向が読めない中での事前出願は受験産業にも出願倍率にも大きな混乱を招いたため、たった1年で元に戻された。

下記の試験科目内容には誤りを含んでいる可能性があります。 過去のデータについては「センター試験」記事掲示板>>984に記載がある通り大学入試センター年報から確認できるため、図書館等でのご確認を願います。

試験科目(1979年～1984年)

社会では「地理A」と「地理B」の組み合わせは不可。1980年からは「倫理・社会」と「政治・経済」の組み合わせも不可となった。

教科	選択可能科目	時間	配点
1日目（1月10～16日の土曜日）
国語	「現代国語と古典I甲」	100分	200点
理科	「基礎理科」の1科目 または「物理I」「化学I」「生物I」「地学I」から2科目選択	120分	200点
2日目（1月11～17日の日曜日）
社会	「倫理・社会」「政治・経済」「日本史」「世界史」「地理A」「地理B」 から2科目選択	120分	200点
数学	「数学一般」「数学I」から1科目選択	100分	200点
外国語	「英語A」「英語B」「ドイツ語」「フランス語」から1科目選択	100分	200点

試験科目(1985年・1986年)

1982年の学習指導要領改定に伴い、1985年から試験科目が変更された。

教科	選択可能科目	時間	配点
1日目（1月25～26日の土曜日）
国語	『「国語I」・「国語II」』	100分	200点
理科	「理科I」を必答 および「物理」「化学」「生物」「地学」から1科目選択	120分	200点
2日目（1月26～27日の日曜日）
社会	「現代社会」『「倫理」・「政治・経済」』から1科目選択 および「日本史」「世界史」「地理」から1科目選択 (合計2科目選択)	120分	200点
数学	「数学I」を必答 および「数学II」「工業数理」「簿記会計I・II」から1科目選択	100分	200点
外国語	『「英語I」・「英語II」』「ドイツ語」「フランス語」から1科目選択	100分	200点

試験科目(1987年～1989年)

1987年から、理科と社会が100点満点に変更された。

教科	選択可能科目	時間	配点
1日目（1月21～24日の土曜日）
国語	『「国語I」・「国語II」』	100分	200点
理科	「理科I」「物理」「化学」「生物」「地学」から1科目選択	60分	100点
2日目（1月22～25日の日曜日）
数学	「数学I」を必答 および「数学II」「工業数理」「簿記会計I・II」から1科目選択	100分	200点
外国語	『「英語I」・「英語II」』「ドイツ語」「フランス語」から1科目選択	100分	200点
社会	「現代社会」「日本史」「世界史」「地理」『「倫理」・「政治・経済」』 から1科目選択	60分	100点

関連リンク

• 文部省『学制百二十年史』より「共通第一次学力試験の導入」
• 大学入試センター

関連項目

• 大学
• 入学試験
• 大学入試センター試験
• 大学入学共通テスト