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副腎とは、腎臓に隣接して存在する内分泌器官の一つである。
解剖図などを見ると、2つある腎臓の上に何かがちょこんと乗っかっているように描かれているが、これが副腎である。副腎という名前ながら腎臓とは全く関係なく、独立した別の器官として、男性ホルモンやステロイドホルモンなど生体にとって重要なホルモンを分泌している。
組織系的には外側から球状層、束状層、網状層の3つに分けられるほか、ホルモン分泌の違いから副腎皮質と副腎髄質の2つに分けられる。
副腎皮質からは、糖のコントロールや炎症の抑制に関わる糖質コルチコイド、尿への電解質排泄をコントロールする鉱質コルチコイド、男性ホルモン(アンドロゲン)が放出される。糖質コルチコイドは全身に作用し、鉱質コルチコイドは腎臓の遠位尿細管に作用する。
副腎髄質では血圧や心拍数などを調節するアドレナリンやノルアドレナリン(+それらの原料であるドパミン)が作られて分泌されている。
これらのホルモンは身体へのストレス(精神的な負荷に限らず怪我や炎症も含まれる)に応じて分泌されるため、ストレスホルモンと呼んだりもする。
副腎皮質から糖質コルチコイドが分泌されまくっている状態。原因としては、副腎自体が腫瘍化している、脳の下垂体から出るACTH(副腎皮質からの糖質コルチコイド分泌を促すホルモン)が脳腫瘍によって分泌亢進している、変な場所に出来た腫瘍からACTHが分泌されてしまっている(異所性ACTH産生腫瘍)、などのパターンがある。
ホルモンは体内における郵便のような役割を果たしているため、何処かがおかしくなると、川の上流を汚すが如くその下流にあたる部分も巻き添えを食らってしまうのである。
症状としては糖のコントロールがおかしくなることによる糖尿病、タンパク質分解作用による筋萎縮や骨粗しょう症、電解質バランスが崩れて起こる高血圧や浮腫(むくみ)などがある。
病変部を手術で切除するのが主な治療法なので、どこがおかしくなってるかを判別することが肝要である。
糖質コルチコイドの産生を阻害する、メチラポンという薬を投与する試験。通常なら、糖質コルチコイドは脳に対して「もう糖質コルチコイドは十分だ」とACTH産生にストップをかけるため、そのストッパーがなくなって脳からのACTH産生が亢進されるはずである。
もし血中ACTH値が上昇する反応がなければ、そんなことはお構いなくACTHを出し続ける異所性ACTH産生腫瘍が存在していることになる。脳下垂体腫瘍は糖質コルチコイドへの反応性は残っているため、ACTH値は通常と同様に上昇する。
もし手術が不可能な症例だった場合は、このメチラポンを投与して糖質コルチコイドの産生を阻害する。
ヒドロコルチゾンを数十倍強力にしたデキサメタゾンという薬を投与してみる試験。通常なら、↑と同様に脳へストップがかかるため、血中のACTHとその下流にあたる糖質コルチコイドは低下するはずである。
副腎に腫瘍があれば、それに関係なくヒドロコルチゾンが出まくるため、血・尿中のヒドロコルチゾン値は変化しない。下垂体腫瘍なら多少ACTH産生をストップするくらいの機能は残っているため、ヒドロコルチゾン値は高容量を投与した段階で流石に下がる。ここから病変部を特定するのである。
副腎皮質が腺腫などの病変によって、鉱質コルチコイドのアルドステロンが過剰に分泌され、電解質のコントロールがおかしくなった状態。高血圧の原因としては多い部類に入る。高血圧のほか、低カリウム血症とそれによる代謝性アルカローシス(血がアルカリ性に傾く)、テタニー(カルシウムイオン低下による手足の震え)、腎障害などが起こる。
検査においては血中のアルドステロンを測定したり、血圧を上昇させるレニンという酵素が減っている(血圧上昇によるフィードバックがかかっている)かどうかを測定したりする。
基本的には手術で腫瘍を切除してしまうが、手術が難しい場合はアルドステロンの作用を邪魔するスピロノラクトンや、鉱質、糖質コルチコイドの産生を抑制するトリロスタンなどの薬で対症療法を行う。
漢方薬によく含まれている「甘草」という生薬はアルドステロンに似た効果があるため、漢方薬を多く服用しているとこれに似た症状が出ることがある(偽アルドステロン症)。
↑とは逆に、副腎からのホルモン分泌が低下した状態。つまり低血圧、低血糖、低ナトリウム血症、高カリウム血症など正反対の症状がみられる。また、足りないホルモンを補おうとACTHがたくさん出て、色素沈着を引き起こすことも。
初期は副腎機能がまだ残っているため、発症に気づかないことも多い。怪我や発熱などで強いストレスがかかると、後述する副腎クリーゼを引き起こすこともある。
結核菌による副腎への感染や、自己免疫疾患による副腎の萎縮、副腎への癌転移などが原因となる。
治療ではヒドロコルチゾンを補充したり、ACTH分泌を抑えるためにデキサメタゾンを投与したりする。薬を飲み続ければ症状は抑えられるが、副腎機能の回復は難しいため一生涯続ける必要がある。
手術や感染など、ストレスが原因で副腎皮質からのホルモン分泌が急に低下し、急激な低血圧、嘔吐、意識障害などを引き起こす病気。急性副腎不全とも言う。人体にとって必須なホルモンを出す副腎が急に弱まってしまうわけで、場合によっては死に至ることもある。
ヒドロコルチゾンを静注して対処する。なぜ静注かといえば、緊急性が高く、患者が気を失っていることが多いため。
副腎髄質に腫瘍ができ、アドレナリンなどを大量に分泌するようになってしまう病気。男女いずれの年代でもまれに発症する。褐色というのは副腎髄質の色に由来する。高血圧、頭痛、高血糖、代謝亢進による体重減少、発汗などの症状がみられる。高血圧、高血糖、代謝亢進という3つの症状を合わせて「Howard三徴」と呼ぶ。
血中のアドレナリン値やその代謝産物のバニリルマンデル酸を測定して検査する。また、アドレナリンなどの産生を間接的に抑えるクロニジンを投与して値が下がるかどうか見ることもある(褐色細胞腫では値が下がらない)
基本的には手術で腫瘍を切除してしまうが、手術が難しい場合はアドレナリンやノルアドレナリンの作用を邪魔する神経遮断薬を用いて対処する。
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最終更新:2024/04/20(土) 06:00
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