回転焼き(回転焼)は、小麦粉からなる生地にあんこを入れて円筒形ないし分厚い円盤状に焼成したあの和菓子の呼称の一つ。大阪府・和歌山県とその周辺や、九州の一部に多い呼び名である。
この呼び名の歴史は古く、大阪市出身の小説家織田作之助の「六白金星」(1946年、作中に「香櫨園のわが家」とあるので舞台は兵庫県西宮市)には「授業中に回転焼をいくつ食へるか実験してみたところ、相手の教師によつて違ふが、まづ八個は大丈夫だ」という一節があり、当時から関西の学生が大量に買ってパクパク食べられるような地位の食べ物であったことがうかがい知れる。
また兵庫県姫路市に本社を置く株式会社御座候も、1950年の創業当初は自社の商品を「回転焼」としており、商売を続けるうち「御座候」の店名が商品名のように客から呼ばれるようになった、という歴史がある。現在でも同社HPでは、自社の調理販売する回転焼の商品名が「御座候」だ、というスタンスを取っている[1][2]。
「回転」の名称は製法に由来しており、円盤形の型を彫った鉄板2枚を蝶番でつないだものをコンロの上に設置し、鉄板を回転させながら焼き上げるため。
ただし、回転式の鉄板は同じ材料のたい焼きでは現在でも一般的だが、この円筒形の菓子においては(「回転焼き」の名称を用いる店まで含めて)少数派である。形が複雑で凹凸の多いたい焼きでは、人の手で何度も鉄板からはがしたりひっくり返したりすると破れや形崩れの原因となるため、鉄板ごと回転できる機構は便利なのだが、いっぽう回転焼きは形がシンプルなので、円形の焼き型で半面ずつ2枚焼き、半焼けの段階で餡を入れたら千枚通しと職人の手でひっくり返してもう1枚とサンドして仕上げ焼きする、それで十分なのだ。
実際、後述の『じゃりン子チエ』や『カムカムエヴリバディ』でも、劇中で確認できるのは回転しないタイプの鉄板である。
回転焼きの出てくる作品例その1。
はるき悦巳による漫画。舞台は大阪市内の架空の下町「頓馬区西萩」だが、モデルは作者の出身地である西成区、年代は作者の少年時代である昭和30年代の影響が強いと思われる。
回転焼きは主人公竹本チエ(チエちゃん)の好物のひとつである。その他にも、持ち合わせのないテツにヒラメちゃんが小遣いで回転焼き1つを買ってテツと半分こにしてあげたり、小銭を拾った猫の小鉄が「これで回転焼でも食お」と話したり、日常的で庶民的なファストフードとして何度も登場する。
回転焼きの出てくる作品例その2。
NHK連続テレビ小説第105作(2021年度後期)。藤本有紀脚本。物語中盤、ヒロイン[3]・るい(深津絵里)とその恋人大月錠一郎(オダギリジョー)が、結婚を機に京都市へ移住し、回転焼屋「大月」を開業する。
京都市は関西圏のため「今川焼き」よりは「大判焼き」が優勢の地だが、大阪に近いことで「回転焼き」の勢力も強く(現代では「御座候」の店舗も複数ある)、また「天輪焼き」などその他の名称の店もある混在地帯である。少なくとも「回転焼き」一強の土地柄ではないが、劇中で2人が北野天満宮の縁日で見かけた屋台が「回転焼」だったことと、るいは幼少期より大阪暮らしの時期が長かったことから、大阪で強い「回転焼」の呼び名を選択したことに違和感のない演出となっている。
なお、「大月」の回転焼きは焼き上げた後に店名の焼き印を入れるのが特徴であった。


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最終更新:2025/12/09(火) 11:00
最終更新:2025/12/09(火) 10:00
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