地球平面説 単語

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フラットアース

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地球平面説 (ちきゅうへいめんせつ、英:Flat Earth Theory)とは、地球面であるという学説ないし信仰である。

古代々の先祖たちは地球面状・あるいは円盤状であると信じてきた。しかし、欧州では14世紀頃にはこの学説は覆されており、コロンブスマゼランを待つことなく知識人の間では地球は球形であるというのはもはや定説であった (マゼラン地球一周航はこの実践的明となった) 。日本では16世紀頃、中国では17世紀頃には地球は球形であるというのは知られている。

だが21世紀になり、地球宇宙から撮した写真が当たり前のように教科書に載る現代、世界中で地球平面説を支持する者が多数現れ始めた。ここでは、この地球平面説を巡る歴史をまとめていくものとする。

古代の地球平面説

ユダヤ人エジプト人たちは異なる信仰から、しかし地面は面状であると考えていた。まあ、地球宇宙から見るわけでもなければ、当初こそそう考えるのがごくごく普通ではあったろう。ユダヤ人の場合は、大地円盤状でらであり、天蓋ベール幕のように覆いかぶさっていて、その頂点にの御座をいただいていると考えていたことが旧約聖書の記述から確認できる。エジプト人の場合は、大海々を取り囲んでいると信じていたことがピラミッドの文書から確認できる。他にも、古代日本中国インドゲルマンなどの各文明でもやはり地球球体説よりも地球平面説のほうが優勢であった。

ギリシャホメロスやヘシオドスといった詩人たちは信仰にもとづく大地しるしている。これらは大海大地がぷかぷかういているという、エジプトと近い考え方をしていた。

ギリシャ哲学者の一人、ミレトスのタレスはやはり大地大海にぷかぷか浮いていると考えていた。一方、タレスの考え方であると、『大地を支える下の部分は何なのか?』という問いに答えを出すことが出来ない。そこで、ミレトスのアナクシマンドロスは別の回答を思いつく。それは、地球宇宙の中心にあり、大地中に浮く円筒であるとしたのである。これは地球を中心とした同心円構造を最初に導入した宇宙観であり、後のピタゴラス中世の人々の宇宙観 (天動説) に多大なを及ぼした。また、紀元前450年頃のアナクサゴラスも地球平面説に同意しており、紀元前5世紀までは地球平面説はスタンダードであったといえよう。

ピタゴラス地球球形説を最初に唱えた哲学者であったかは定かではない――古代ギリシャではあらゆる発見を古代賢者に帰そうとする慣習があったためである。また、幾人かのギリシャ哲学者には地球球形説を曖昧ながら唱える者もいないわけではなかった。しかし、少なくとも彼の学地球を球形であると唱えた。彼らの数学を学んだプラトンは熱心な地球球形説信者となった。このプラトンが学院を開き、地球球形説を唱えると、その随一の子、アリストテレスは彼に同意し、「エジプトキプロスでは見えるにも関わらず、北寄りの地方では見えないがある。これは大地が湾曲していて、あまり大きくない球であることを示す」としたのである (『体論』より)。

後にエラトステネスは、シエネでは夏至太陽上に昇るのに対し、自身の住むアレクサンドリアでは太陽が南に7.2度のところを通過することから、地球を球と見なして地球の直径をも計算してみせた。

こうして、「ならばどうして地球の裏の人たちは逆さまに歩けるのか」などの疑問を残しつつも、地球平面説の支持は失われていった。

中世の地球平面説

本節の内容についてより詳しく知りたい方は、平面説神話の項を参照してください。

中世ヨーロッパでは古代ギリシャとことなり地球平面説が再び強く支持されていた――という『地球平面説神話』がまことしやかにられ、信じられている。実際には、マゼランコロンブスを待つことなく、地球球体説のほうが優勢であったにも関わらずマゼラン地球一周航地球球体説の実践的明としての価値こそあったが、既に知識人の間では聖書の記載にかかわらず、地球球体説を支持していた。

マゼランより前、コロンブス地球を西ルートで航し、インドに向かおうとしたときに、地球面であると見ていた人々からは支援を得られなかった――という偽史を信じている者もいるが、史実ではない。支持を得られなかった大きな要因は、当時の学者の計算では西ルートインドに向かうには東ルートよりも距離が長くなり、積んだ食糧が底をつくからであり、コロンブスインドまでの距離を計算間違いしているからであった、とする[1]。当時の知識人は無知頑迷だったのではなく、コロンブスの計算間違いを摘し、彼の航計画に反対したのである。結果として、その当時欧州では知られていなかったアメリカ大陸がなければ、実際コロンブス団は餓死していただろう。

この神話が信じられている背景には、ワシントン・アーヴィングの『クリストファーコロンブスの生涯と航』における「地球は丸い」というコロンブスに、人々が聖書の内容を引き合いに出して反論したという描写を信じ込んだ人たちが20世紀頃に多く現れたからというのがある。ジャンアントワーヌレトロンヌウィリアム・ヒューウェルもこの説を反宗教的な観点から支持したが、後の歴史研究で「中世ヨーロッパではむしろ知識人には地球平面説よりも地球球体説のほうが正しいと信じられていた」と認めざるを得なくなっていく。しかし、大衆の中ではこの「中世ヨーロッパでは地球平面説こそが支持されていた」という神話漫画ドラえもん』や世界教科書にさえ史実であったかのように記されており、ディズニー映画アメリカポップスでさえ、コロンブスを嘲笑う中世の人々の姿を描いている。

日本においても、16世紀頃には地球球体説はイエズス会の宣教師を通じて伝わっている。これはイエズス会がキリスト教仏教に優越することを示すために、仏教の地説 (地球平面説) 批判の一環として地球儀を持ってきたからである。ただし実際に日本人に膾していくのは、中国清朝期、游子六が西洋学問について著した『問』が日本に伝わってからである。地球という単自体も、西洋の概念である「まるい大地」を示すために中国人が生みだした訳ではないかと見られている。仏教からは明治初期になってもなお地球説は反発を受けていたが、江戸幕府文方の渋川や、学者の本居宣長など地球説を支持する者もいた。

その後の地球平面説

近代においても地球平面説を信じるものは散発的に現れるが、いずれも科学というよりは宗教的なとみなされていた。例えば、イングランド作家サミュエルロウボタンは地球平面説をし、が遠ざかるにつれて線の下へと消えていく現人間視点法則で説明がつくと述べた。彼のはいくらかの支持者を集めたが、科学的に大きく取り扱われることはない。

リノイ州ザイオンにあったクリスチャンカトリック使徒教会ウィルバーグレン・ボリヴァは、ザイオン地球球形説を教えることを禁じていたほか、大本出口王仁三郎ナイジェリアボコハラムの導者モハメド・ユスフも地球平面説を支持していた。

一番大きいムーブメントは地球面協会であろうか。この団体を催したサミュエルシェートン、彼は地球円盤北極が中心、円の外周は45mの氷で覆われ、太陽と月は直径52kmの同じくらいの大きさのものとした。これは国際連合旗と同じようなものであり、すなわち国際連合旗は地球平面説の根拠であるとされていた。このムーブメントは当時の催者のが焼けたことで会員名簿が焼失してしまい、衰退した。


さて、こうして地球平面説は20世紀には衰退するのだが、それでもする側も (ベース宗教とはいえ) 科学的態度のもとこれをしようとしていた。しかし21世紀にうつると、世界中で「地球平面説をはじめとした『科学』」という権威を「世界的な陰謀」であるとして、地球平面説を再び見直そうという動きが始まっている。

SNS時代の地球平面説

現在地球平面説を信じる人達は『フラットアーサー (Flat-Earther)』と呼ばれ、彼らは地球面である理由として、そもそもの根底である宇宙を否定するところからスタートしている。太陽天蓋についていて、地球の上をぐるぐる回ることでとを作り出しているのだ、というである。

さて、ここで気になるのは、宇宙を否定したいのならば、当然南極ってどうなってるのかを説明してもらう必要がある。しかし、ここでフラットアーサーは、古代人のようにになっているだとか、あるいは氷だとかマグマだとか、そういうことを議論したりはしない。

南極条約があるから、一般人には入れない。陰謀だからね、仕方ないね

これでフラットアーサーは片付けてしまうのだ。地球の端という、地球平面説をる上で重要なポイントを、彼らは「条約違反になるから、そんなことはできない。それもこれも世界の陰謀だから、々にはどうにもできないから」とするのである。そのくせ、彼らは「々が観察した結果、地球はどうやら面であるようだ」とのみするのである。アリストテレスエラトステネスが聞いたら噴飯ものであろう。

これに限らず、観察を重視しているとしながらも、彼らのにはおかしな点は多い。

「じゃあ、なぜ160キロ先まで行かなかったのですか」
えっ?
160キロ先ですよ。そこまで離れたら、蜃気楼も見えなくなるはずだ。それでも見えたら、あなたが正しいことを決定的に明できる」
船長がそこまで出たがらなかった」

今度は私が失笑する番だった。

「これを実するために全てを懸けてきたあなたが、もう少しで決定的拠が手に入るのに、諦めた、と?」


「地球平面説」が笑いごとではない理由|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイトexit, 2023/04/18閲覧

地球平面説論者は大地球球体説を陰謀だと信じて疑わず、その論拠たる上位蜃気楼効果もただ「信じられない」と切って捨てた、フラットアース会議の発表者であるが、その根拠がもう少しそこまでいけば手に入るという所で、彼はなんと船長のせいにして諦めたという。

こんな、科学的態度さえかなぐり捨てた、中世ヨーロッパはもとより古代ギリシャ前の科学的態度に回帰したような彼らであるが、彼らをただ笑っているだけではまずい、とボストン大学哲学科学センター研究員のリー・マッキンタイヤは警鐘を鳴らす。地球平面説を通して、科学的態度への理解を得られなくなれば、予防接種のワクチンの安全性もまた同様にただ非科学的態度のもとに否定されうる、と。

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脚注

  1. *そもそもコロンブス的は「地球が丸いことを示す」ことではなく、「当時高い価値を持っていた香辛料の産出インドまでの最短航路を探すこと」であり、むしろコロンブス自身も距離を短く見積もって援助を受けようとしていたと言われている。
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