大国開放経済 単語

タイコクカイホウケイザイ

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大国開放経済とは、経済学の用語である。

概要

定義

大国開放経済とは、貿易や際的資本移動の自由があり、変動相場制を採用し、実質利子率の決定の自由がある体制のことをす。

性質

国際金融のトリレンマによって3種類のが発生する。大国開放経済のはそのうちの1つである。

採用国

2024年現在において、アメリカ合衆国日本など多くのが大国開放経済のである。

2種類に分けることができる

大国開放経済のは、閉鎖経済小国開放経済の中間に位置していて、両者の性質を併せ持っている[1]

このため、「閉鎖経済の要素が濃い大国開放経済の」と、「小国開放経済の要素が濃い大国開放経済の」の2種類に分けることができる。

閉鎖経済の要素が濃い大国開放経済の」の代表例は2017年以降のアメリカ合衆国である。2017年ドナルド・トランプ政権になってTPPを離脱して中国向けの関税を高くしてバイアメリカン(米国製品を買おう)の制度を次々と導入し、保護貿易を切った。そして2021年発足のジョー・バイデン政権でもそれらの保護貿易の政策が引き継がれた。

小国開放経済の要素が濃い大国開放経済の」の代表例は1980年代以降の日本である。TPPなど様々な自由貿易経済協定を結び、自由貿易を推進している。

大国開放経済の国をIS-LMモデルなどで考察する

物価が一定の短期において財政政策の拡大で実質GDPが増える

物価が一定の短期において大国開放経済ので財政政策を拡大し、政府国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、投資と純輸出が減るが、実質GDPが増える。

物価が一定の短期において大国開放経済の政府国債を発行して、長期金融市場からお金を借り入れ、その資金を使って政府購入を増やして実質GDPを増やしたり、もしくはその資金を埋め合わせに使いつつ減税して民の可処分所得Y-Tを増やして消費を増やして実質GDPを増やしたりしたとする。実質GDPが増えたので実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて名目利子率が上昇し[2]、短期で期待インフレ率が一定なので実質利子率も上昇する。

実質利子率が上昇したのでクラウディングアウトが起こって投資が減り、実質GDPが減る。また、実質利子率が上昇したので外発のキャリートレードが発生し、際的投資が自通貨買い・外通貨売りを行い、自通貨高・外通貨安になって名目為替レートが下落する。短期で物価が硬直的なので実質為替レートも下落し、純輸出が減り、実質GDPが減る。

政府購入または消費の増加による実質GDPの増加幅」と「投資や純輸出の減少による実質GDPの減少幅」をべると、前者が多くて実質GDPが増える。このため名目利子率実質利子率は以前よりも上昇したままになる。

物価が一定の短期において大国開放経済の政府国債を借り入れて政府購入や消費を増やして実質GDPをAだけ増やすと、投資と純輸出が減って実質GDPがBだけ減り、A-Bの数値だけ実質GDPが増える。

一方で物価が一定の短期において閉鎖経済政府国債を借り入れて政府購入や消費を増やして実質GDPをAだけ増やすと、投資が減って実質GDPがCだけ減り、A-Cの数値だけ実質GDPが増える。

BとCをべるとBの方がCより大きい。A-BとA-CをべるとA-Bの方がA-Cよりも小さい。ゆえに大国開放経済のは、財政政策による実質GDP引き上げの力が閉鎖経済よりも弱い[3]

タテ軸名目利子率・ヨコ軸実質GDPIS-LMモデルで説明すると次のようになる[4]政府が財政政策を拡大し、国債を発行してお金を借り入れ、そのお金政府購入を増やすとIS曲線が右に行移動し、LM曲線との均衡点が右上に移動して、名目利子率の上昇と実質GDPの増加を生む。ただし、大国開放経済のにおけるIS曲線閉鎖経済におけるIS曲線よりもに近い。大国開放経済のにおいてIS曲線を右にXだけ移動するときの実質GDPの増加量と、閉鎖経済においてIS曲線を右にXだけ移動するときの実質GDPの増加量をべると、前者の方が小さい。

物価が一定の短期において金融政策の拡大で実質GDPが増える

物価が一定の短期において大国開放経済ので金融政策を拡大し、中央銀行国債買いオペしてマネーサプライMを増やすと、投資と純輸出が増えて実質GDPが増える。

物価が一定の短期において大国開放経済の中央銀行国債買いオペして、マネーサプライMの供給を増やし、短期において物価Pが一定なので実質貨幣残高M/Pの供給を増やし、名目利子率を下げる[5]。短期で期待インフレ率が一定なので実質利子率が下がる。

実質利子率が下落したので投資が増え、実質GDPが増える。また、実質利子率が下落したので自発のキャリートレードが発生し、際的投資が自通貨売り・外通貨買いを行い、自通貨安・外通貨高になって名目為替レートが上昇する。短期で物価が硬直的なので実質為替レートも上昇し、純輸出が増え、実質GDPが増える。

投資や純輸出が増えて実質GDPが増えるので実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて名目利子率が上がり、短期で期待インフレ率が一定なので実質利子率も上がるのだが、実質利子率を元通りにするほどではない。

以上をまとめると、物価が一定の短期において大国開放経済の中央銀行国債買いオペすると、投資と純輸出が増えて実質GDPが増える。

物価が一定の短期において大国開放経済の中央銀行国債買いオペすると、投資と純輸出を増やして実質GDPをAだけ増やす。一方で物価が一定の短期において閉鎖経済中央銀行国債買いオペすると、投資を増やして実質GDPをBだけ増やす。Aの方がBよりも大きい。ゆえに、ゆえに大国開放経済のは、金融政策による実質GDP引き上げの力が閉鎖経済よりも強い。

タテ軸名目利子率・ヨコ軸実質GDPIS-LMモデルで説明すると次のようになる[6]中央銀行が金融政策を拡大し、国債買いオペするとLM曲線が右に行移動し、IS曲線との均衡点が右下に移動して、名目利子率の下落と実質GDPの増加を生む。ただし、大国開放経済のにおけるIS曲線閉鎖経済におけるIS曲線よりもに近い。大国開放経済のにおいてLM曲線を右にXだけ移動するときの実質GDPの増加量と、閉鎖経済においてLM曲線を右にXだけ移動するときの実質GDPの増加量をべると、前者の方が大きい。

物価が変動する長期において財政政策の拡大で実質利子率が上昇して実質為替レートが下落する

物価が変動する長期において大国開放経済ので財政政策を拡大し、政府国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、実質利子率が上昇し、実質為替レートが下落し、クラウディングアウトが起こって投資が減り、純輸出が減る[7]

「長期において実質GDPが一定を保つ」という自然率仮説を採用するのなら、政府購入や消費の増加幅は投資や純輸出の減少幅と一致する。

関連項目

脚注

  1. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー201~202ページ、399~400ページ404ページ
  2. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー315317ページでタテ軸実質利子率r・ヨコ軸実質貨幣残高M/Pの図があり、実質GDPが増えると実質貨幣残高M/Pへの需要が増え、右肩下がりの需要曲線が右に行移動して垂直線の供給曲線との交点が上に移動する様子が示されている。ちなみにその図はタテ軸名目利子率iとするのが本来の形である。
  3. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』406ページ
  4. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー324326ページ、405~406ページ
  5. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー315317ページでタテ軸実質利子率r・ヨコ軸実質貨幣残高M/Pの図があり、実質貨幣残高M/Pの供給が増えると垂直線の供給曲線が右に行移動して右肩下がりの需要曲線との交点が右下に移動する様子が示されている。ちなみにその図はタテ軸名目利子率iとするのが本来の形である。
  6. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー407~408ページ
  7. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー212214ページ
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