大鵬

『大鵬』とは、大相撲の元力士である。最高位は横綱。

概要

1940年（昭和15年）樺太（当時の樺太は日本領）に生まれる。
ウクライナ系ロシア人の父と日本人の母の間に生まれたハーフであり、若い頃は大変な美男子であった。
そのため子供や女性のファンが非常に多く、大鵬の取り組みの際は銭湯ががら空きになると言われた。

入門以降、それ以前の最年少記録を次々と塗り替え、順調に出世してゆく。
新入幕となった1960年初場所では初日から11連勝し、12日目に後のライバルとなる小結柏戸に敗れ幕内初黒星を喫するが、12勝3敗で敢闘賞を受賞。同年11月には幕内初優勝。
この優勝以降、入幕から引退まで全ての年で「年１回以上優勝」という記録を達成する。
これは後の大横綱達も誰も達成していない記録である。

1961年７月、９月と連続優勝し、ライバル柏戸と同時に横綱昇進。この時21歳3ヶ月であり、当時の最年少横綱昇進記録であった。横綱昇進直後も連続優勝し、その後も極めて高い成績を連続。
1962年７月から1963年５月にかけて史上初の６連覇を達成。その後1966年３月から1967年１月まで再び６連覇を達成。これは2005年に朝青龍が7連覇を達成するまで約40年間も破られなかった記録である。
1968年１月から７月まで４場所連続休場で限界説も流れたが、９月場所は14勝1敗で復活優勝、翌11月も15戦全勝で連覇を達成。1969年１月も全勝優勝。翌３月までに45連勝を達成する。
しかし46連勝がかかった戸田との一番では、初め大鵬に軍配が上がったが物言いがつき、協議の結果行事差し違えで戸田の勝利となった。しかしビデオ映像を確認すると明らかに戸田の足が先に土俵の外に出ており「誤審」と問題になり、後に相撲協会がビデオ判定を導入するきっかけとなった。ただし大鵬自身はこの一番について「物言いがつくような相撲を取った自分が横綱として弱い」と生涯異議を唱えたことはなかった。
1971年１月には32回目の優勝を果たす。これは2015年1月に白鵬が33回目の優勝を達成するまで40年以上破られなかった記録である。
翌３月も、優勝は逃すものの12勝を挙げ健在ぶりを見せたが、翌５月場所５日目に新鋭の小結貴ノ花に破れた一番を最後に現役を引退する。

「相撲の神様」と称えられた双葉山と並ぶ大横綱の代名詞的存在であり、当時の子供（を含む一般大衆）の好きなものを並べた「巨人、大鵬、玉子焼き」という流行語も生まれた。
ただし、本人はこの言葉を嫌っており、理由は、団体競技である野球と個人競技である相撲を比べてくれるなということ、本人がアンチ巨人であったことなどが挙げられる。ただし同時代に国民的人気を誇った巨人軍の王貞治とは同い年で親友の間柄であり、一緒に酒を飲むことも多かったと語っている。酒豪で知られる王貞治が飲み比べをして唯一勝てなかったのが大鵬であるとも言われる。

取り口は非常に堅実で盤石であり、胸を合わせず、前屈みで腰を引く姿勢で相手の攻めを防ぎ、横へ回りながら自分得意の体勢に持っていき、投げで崩すか寄るというのが勝ちパターン。左四つに組み止めて寄るか投げるのが定石であったが、右四つや押し相撲でも取れた。大柄でなおかつ非常に柔らかい身体の持ち主で、真綿やスポンジに例えられるように相手の攻撃を吸収してしまう上手さを持っていた。つまり良く言えばどんな相手でも捕まえられるオールラウンダーであり、悪く言えば絶対的な型が無かったとも言える。右四つの絶対の型を持っていた双葉山との評価の最大の違いがそこであると言える。横綱昇進後初期にはそのような相撲は横綱の相撲ではないと批判もされたが、実績を重ねるにつれその内容も評価されていく。
どんな相手でも捕まえてしまう上手さから「天才」と評されることが多かったが、本人は「ワシは天才ではなく努力家。他人より稽古したから横綱になれた」と常に言っていた。

引退後はその実績を称えられ一代年寄りを授与される。
2005年、日本相撲協会を停年退職。
2013年1月19日、横綱時代に在籍し初場所後に閉鎖が決定していた二所ノ関部屋の消滅を見る事なく東京都内の病院で死去。72歳。
同年2月、圧倒的な成績と多くの国民に愛され、社会に明るい夢と希望を与えた功績を称えられ、内閣府より国民栄誉賞を授与される。相撲界では千代の富士以来二人目の受賞である。授与式には遺族として夫人と現役力士代表として白鵬が出席した。

■主な記録

・優勝…32回（2位）
・全勝優勝…8回（2位）
・連覇…6連覇を2回（2位）
・連勝…45（昭和以後4位）
・幕内勝率…83.8％（取り直し制度導入後1位）
・横綱勝率…85.8％（取り直し制度導入後3位）
・横綱在位…58場所（3位）

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関連項目

• 横綱
• 柏戸
• 巨人、大鵬、卵焼き
• 大相撲力士一覧