太陽の征服 単語

タイヨウノセイフク

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出来損通帳
この世に生まれいまだこの世を去らぬ紳士淑女諸君、見世物小屋なるは瞑想館に急ぎお入りなされ。

――『太陽の征服』ヴェリミール・フレーブニコフの前口上
亀山郁夫訳

太陽の征服とは、ミハイル・マチューシンらによるオペラ作品である。

概要

1913年に発表された、ロシア未来演劇の一種であり、この作品および同年の『悲劇マヤコフスキー』をピークに、以後ロシア未来が衰退していく分嶺となった存在。担当は以下となっている。

経緯

未来詩人グループ「ギレヤ」とマチューシン夫妻に結成された「青年同盟」の合同委員会が、未来舞台を上演することにした。当初のダヴィド・ブルリュークを中心とした「ダイヤジャック」は、ミハイル・ラリオーノフ、ナタリヤ・ゴンチャローヴァらの「ロバ尻尾」の論んだ演劇に対抗して、この企画を進め、結局「ロバ尻尾」の演劇が実現しなかったため、こちらの営の劇だけが上演された形となる。

かくして、「青年同盟」のスポンサーだったレヴキー・ジェヴェルジェエフが資を出し、マチューシン7月フィンランドウシキルコの別荘に他の3人を呼び出す。が、フレーブニコフは結局来ず、3人で打ち合わせをした結果、打ち合わせ後にブルリュークやフレーブニコフらに加えて以下のような報告をする。

々は世界を敵に回すために集ったのだ!手打ちの時代は終わった。爆音と威嚇の彫刻が芸術のこれからの一年を湧き立たせることだろう!

――「新しい音楽について」ミハイル・マチューシン
高橋健一郎訳

かくして、未来演劇は、この年の内に『太陽の征服』と『悲劇マヤコフスキー』に結実した。のだが、公園の実現までに素人集団の動員と、リハーサルの少なさに、マチューシンらが辟易している記録が見られる。このように、最悪の環境だったのだが、チケットは売し、行的には成功した。

実際の内容

2幕6からなっており、大きく分けて35世紀の世界で太陽の征服が行われる第1幕、その後の新世界「第十」を舞台にした第2幕の構成で、科学技術の勝利をひっくり返すカタストロフィーが生じるフィナーレに向かうあらすじがあるような気がするが、ほとんど見世物小屋のような登場人物が支離滅裂なセリフを発しては去っていくだけの全体の流れであり、当時の評判としてナンセンスで突拍子もないというものがあるのが最たる例である。

なお、この太陽モチーフに、日露戦争や後の第一次世界大戦の予期を見て取るもあるが、マチューシンたちの意識では、コンスタンチン・バリモントといった前代の詩人たちのような、「太陽」を「世界徴」、「美」、従来の「芸術的価値」といったように見て取る意識を、攻撃するライトモチーフであったのは確実である。

い話、このオペラは、自然や美を格下げし、科学技術や宇宙的要素と結びついた世界観を新秩序として描くのである。この点、ミヒャエラ・ベーミヒが簡単にまとめているのを引用する。

世界を支配する時間の法則論理的因果から逃れる高次の現実についてのウスペンスキー幻想メタフォリックな見方に対して、具体的な芸術的形式を与えようとする試み

Michaela Bohmig, “The Russian Cubo-Futurist Opera Victory over the Sun - Aleksei Kruchenykh’s Alogical Creation”
高橋健一郎訳

なお、フレーブニコフとクルチョーヌィフが物語を仕立て上げていることからも分かる通り、台詞や歌には意味言「ザーウミ」が多用されている。また、舞台美術マレーヴィチからも分かる通り、彼の「正方形」が、舞台の中心に据えられている。なお、マレーヴィチやマチューシンの関心は、割と照明要素にも大きく点が置かれていた。

ユー ユー ユーク
ユー ユー ユーク
グル グル グル
     ブム
     ブム
ドゥル ドゥル ルドゥ ルドゥ
    ウー  ウー  ウー

ク ン ク ン ルク ム
    パー パー パー パー

――『太陽の征服』第六
亀山郁夫訳

マチューシン音楽観は4つくらいの断片しか楽譜が残っていないため分からないことも多い。しかし、ピアノを用いながらも、オーケストレーションを意識した楽曲は、「アンチオペラ」をしたものであり、後期ロマンや「の時代」の作曲たちをパロディ的に描くものである。全体的に不協和音的で、騒音音楽を意識した要素もあり、トーン・クラスターめいた複雑な動きすら描写しているのである。

一方で実際の楽譜微分音は見られず、たまたま調の狂った楽器を使っていたために、微分音的なきになった、という可性が高い。

ただし、作家演劇ではなく画演劇を標榜したペテルブルクでの初演は、素人にわか作り同前のものであった。この。「アンチオペラ」ともいうべき作品は一躍スキャンダルとなったものの、1920年に再演されて以後、ロシア・アヴァンギャルドソ連タブーとなったこともあり、1976年に至るまで、ほぼ忘れ去られた。

以後、この演劇の復元が行われ、度々各で再演されているが、マチューシンが碌な楽譜を残さなかったせいで、音楽に関しては子の残したとされる復元楽譜がもっぱら使われるが、これも問題が多く、最近の再演では割とバリアントが多数存在する。

登場人物

怪力1
怪力2
太っちょ
けんかっい男
ネロ
臆病者
古老
新しい人
カリギュラ
旅行
悪意を抱く男
注意深い労働者
労働者
運搬人
饒舌
朗読
スポーツ選手
見物人
多くの者にして一人

関連商品

劇の台本は以下の本ですべて和訳されている。

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