奇書 単語

47件

キショ

2.6千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE

奇書とは、しい書物のこと。

限定的な使い方だが「発行部数が少ないなどの理由で入手・閲覧の機会が限られる」しい書物は、通常「稀書」または「稀覯書」と呼ばれる。

概要

日本においては、奇抜・不可思議なアイディアや設定を取り入れた異端文学というニュアンスの傾向が強い。

日本の三大奇書は、夢野久作ドグラ・マグラ1935年)、小栗太郎黒死館殺人事件1935年)、中井英夫『虚無への供物1964年)とされる。これに竹本健治匣の中の失楽1978年)を加えて四大奇書ともいう。
『匣』は入らないという見解もあるらしいが、それに関しては後述。

中国では「面い・優れた書物」というニュアンスで使われ、中国三大奇書には水滸伝』『三国志演義』『西遊記があげられる。四大奇書の場合はこれにが加わる。

日本三大奇書

『ドグラ・マグラ』

構想・執筆に10年以上の歳をかけ、作者する前年の1935年に刊行。探偵小説家夢野久作の代表作。

あらすじ

蜜蜂が唸るような機械音の中、狭い部屋ベッドの上で『私』は覚めた。
しかし磨硝子に映る顔に見覚えはなく、自分の名前すら忘れている事に気づいて恐慌状態に陥る。許嫁を名乗る女が隣室から泣きながら「お兄さま」と呼びかけるが、それとても覚えがなく、そのまま『私』は気絶してしまった。

、突如として若林教授と名乗る男が訪れ、ここは九州大学精神病科の病室だと説明する。そして『私』はある事件の重要なを握る人物である事、若林教授研究完成させるためにも失われた記憶が重要だと告げるのだった。
研究室に連れていかれた『私』は、記憶に関わるとされる膨大な資料を読まされることになる。しかし資料を読むほど混乱していき、徐々に『私』は自分自身のことが分からなくなっていく……

『黒死館殺人事件』

読者を限定する難読書と評される壮大な知識の集大成から、「推理小説の一大神殿」と称される。

あらすじ

ボスフォラス以東にただひとつしかないという降矢木(ふりやぎ)ケルトルネサンス式の大城館。
かつて黒死病ペスト)の死者を詰め込んだ館に似ていると評された為に「死館」と称されるこの屋敷で、弦楽四重奏団のひとりダンベルク夫人が不可解な形で殺された。
探偵・法太郎はこのを解く為に依頼を受け、死館を訪れる。

降矢木はかつて正遣欧少年使節の一員・千々石ミゲルが「妖妃」と呼ばれるトスカーナ大公ビアンカ・カペルロと関係を持った結果生まれた私生児を祖とする。そして四重奏団の4人は幼くして降矢木13代・降矢木算哲によって連れてこられ、以来40年間一度も館を出た事のない西洋人の男女だった。
昨年算哲が自殺したばかりの死館において、ダンベルク夫人に端を発した恐ろしい見立て殺人が繰り返される。法は膨大な知識を駆使し、この事件に当たるが……

『虚無への供物』

1954年青函航路で起こった「洞爺丸事故」をきっかけに構想された、中井英夫の代表作にしてアンチミステリ傑作

あらすじ

宝石商として財をなした氷沼
かしこでは祖光太郎函館大火、長女・朱美が広島原爆により死亡。更に洞爺丸事故長男郎と三男・三郎死と、立て続けに変死が相次いでいた。

洞爺丸事故から3ヶ後、下町のゲイバー田亜利夫は友人探偵小説家志望の奈々久生に「アイちゃん」こと氷沼と引き合わせる。郎の長男で氷沼の現当従弟だった。
久生はこれから氷沼で起こる殺人事件の被害者犯人殺人方法を推理してみせると言い放つが、やがて本当に家族が『病死』する。客人の藤木田老人も交えて三者三様の犯人と殺方法を推理する一行だったが、やがて第二の『事故死体』が発見され……

豆知識

匣の中の失楽』を「第四の奇書」と認定するか否かという問題について、ひとつ事実関係を述べておくと、実はこの三作が「三大奇書」と呼ばれるようになったのは、第四の奇書とされる『匣の中の失楽』が出た後のことである。

もっとも、この三作を日本探偵小説史上における特異な作品として、一括りにして別格扱いする潮は『匣の中の失楽』が出る前から存在した(埴雄高がこの三作を日本探偵小説ベストスリーに挙げて「脈」と呼んだ、とか言われているが、これは確定ソースがなく、わりと怪しい)。
少なくとも『匣の中の失楽』が「幻影城」で連載開始した際、編集長の島崎博がこの三作(と、なぜか半良の『石の血脈』)を列挙して、これらに「匹敵する大長編」と予告したのは事実である。

でもって『匣の中の失楽』の連載が終了し、単行本として刊行された際に、新刊評で評論家の二上洋一がこの三作をまとめて「三大奇書」といい、『匣の中の失楽』を「第四の奇書」と呼んだ(「幻影城1978年10月号)のが、この三作をまとめて「三大奇書」と称した文章の(現在確認されている限り)最初のものである。

というわけで、「三大奇書」が既にあったところに『匣の中の失楽』が出てきて「第四の奇書」と認定されたわけではなく、「第四の奇書」である『匣の中の失楽』が出てきたことによって「三大奇書」が規定されたのである。実際、竹本健治も「三大奇書」という呼称は聞いたことがなかったという。

なので、『匣』が奇書に入るかどうかという議論はこの経緯を踏まえるとあんまり意味がなかったりする。『匣』がなければこの三作が「三大奇書」と呼ばれること自体なかったかもしれないからだ。

舞城王太郎の『ディスコ探偵水曜日』がミステリ評論家の千晶之によって五大奇書と評され、また山口也の『奇偶』、古野まほろの『天帝のはしたなき果実』など「第五の奇書」を名乗る作品はいくつか書かれている。しかし上記の「四大奇書」成立経緯を踏まえると、四大奇書に続く「第五の奇書」が新しく誕生することは考えにくい。

関連動画

関連商品

関連項目

この記事を編集する

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2024/04/20(土) 11:00

ほめられた記事

最終更新:2024/04/20(土) 11:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP