孫亮とは (ソンリョウとは) [単語記事]

孫亮とは、三国時代の孫呉の第2代皇帝である。字は子明、初代皇帝である孫権の七男。
243年生まれ、260年没。

即位するまで

孫権には皇太子として孫登がいたが、孫登が241年に早世するとその弟の孫和が皇太子となる。しかし孫和の弟の孫覇にも同じ待遇で接したため、孫和派と孫覇派をめぐり呉国は二宮の変と呼ばれる派閥闘争に明け暮れることとなる。

孫権は孫和や孫覇よりも、243年（赤烏6年）に生まれた末子の孫亮を可愛がるようになった。
そして250年（赤烏13年）、孫権は二宮の変の幕引きを図るため、皇太子孫和を廃し、孫覇には自殺を命じ、新しい皇太子には孫亮を立てた。孫亮の異母姉である孫魯班（大虎）は二宮の変では孫覇派だったが、自分の夫の全琮の甥に当たる全尚の娘を孫亮の妃につけた。

252年（太元2年）に孫権は71歳で崩御し、わずか10歳の孫亮が皇帝に即位した。臨終の床で孫権は諸葛恪（諸葛瑾の子）と滕胤に孫亮の輔弼を依頼した。

その統治

『三国志』の著者、陳寿は孫亮を「幼かったのに優れた補佐を得ることができず、その位を全うできなかった。当然といえよう」と評している。

諸葛恪は孫権の死に乗じて攻めてきた魏軍を撃退するが、翌253年（建興2年）の魏討伐に失敗し、専横を極めた挙句に孫峻（孫堅の弟、孫静の曾孫）に殺される。

しかし孫峻は諸葛恪と同じく専横がひどく、幼君の孫亮には為す術もなかった。256年（太平元年）孫峻が急死するもその従弟である孫綝とその兄弟が政権を牛耳るだけで状況は変わらず、滕胤ら歯向かった者はことごとく誅殺された。

257年（太平2年）16歳になった孫亮は親政を開始し、孫綝の意に反する行動を取るようになる。その翌258年（太平3年）、孫亮は舅の全尚や異母姉の孫魯班らと孫綝を排除する計画を立てる。だが孫綝はこの動きを察し、クーデターを起こして全尚や孫魯班を流罪に処し孫亮を廃してその異母兄である孫休を擁立した。

不遇の死

廃帝となった孫亮は会稽王となる（会稽は今の浙江省紹興市）。孫綝を滅ぼした新皇帝の孫休は、2年後の260年（永安3年）、孫亮が再び皇帝になるという流言と孫亮が巫に祈祷を行わせ呪言を吐いているという誣告を理由に、孫亮を侯官侯に落とし（侯官は今の福建省福州市）、任地に向かわせた。その途上で孫亮は自殺し、護衛の担当者が誅殺されたが、三国志の注に引く『呉録』には孫休による毒殺があったと述べている。

孫亮の家族

孫権 - 父
潘夫人 - 母。
孫登、孫和、孫覇、孫休 - 異母兄
孫魯班（大虎）、孫魯育（小虎） - 異母姉
全皇后 - 正妻、全琮の甥に当たる全尚の娘。孫亮が廃された後も侯官に住み、呉の滅亡後は内地に戻り、西晋の永寧年間（301～302年）まで生きていたという

エピソード

潘夫人

孫亮の母、潘夫人（名は不明）は、役人だった父親が法に触れて死罪になった時、姉と共に宮中の織室（織物をするため奴隷を収容した部屋）に入れられた。そこを孫権に見初められ、孫亮を産む。妊娠した時、人から竜の頭をもらいそれを蔽膝（エプロン）で受けたという夢を見たという。

孫亮が立太子された時、奴隷だった姉を解放して嫁がせて欲しいと孫権に言っている。その翌251年（太元元年）、皇后となった。

彼女は陰湿で媚を売るのがうまく、袁姫（袁術の娘、孫権の側室）らを讒言で死に追いやっていた。やがて孫権が死の床につくと前漢の呂后が劉邦死後に政権を握った前例を中書令の孫弘に調べさせたが、孫権の看病疲れで病臥に伏していたところを彼女に恨みを持つ官女らに襲われ縊り殺された。

孫権死後、潘夫人は孫権の墓（蒋陵）に合葬された。

蜜の中の糞

皇帝だったある日、孫亮は梅の実を食べようとして梅にかける蜜を宦官に持ってこさせた。その宦官は宮中の倉庫の管理役人を恨んで、その不始末に見せかけるためネズミの糞を蜜に入れ持ってきて、その役人の不始末を孫亮に言上した。孫亮はそれを訝しんで宦官の仕業であることを推測し、ネズミの糞を割って中が乾いていることを証拠として（糞を蜜に入れてまだ時間が経っていない）その宦官を断罪した。