宇都宮興綱とは (ウツノミヤオキツナとは) [単語記事]

宇都宮興綱（うつのみや・おきつな）とは、下野国の戦国大名である。

概要

下野宇都宮家19代当主。従来は「甥から家督を奪い取った野心家」と言われていたが、近年は異説もある。

新説は江田郁夫氏によって2013年 3月に発表された『シリーズ・中世関東武士の研究第四巻下野宇都宮氏』に拠るもの。

生涯（新旧比較）

	旧説	新説
生没年	1475 ～ 1536	1514 ～ 1536
家族関係	宇都宮正綱（16代）の次男。兄に宇都宮成綱（17代）。子に宇都宮尚綱（20代）。	宇都宮成綱（17代）の三男。兄に宇都宮忠綱（18代）・宇都宮尚綱（20代）。
家督継承まで	最初は父・正綱の実家である芳賀氏に養子入りして跡を継いでいた。1523年の猿山合戦で甥・宇都宮忠綱が敗れると、興綱は結城政朝や壬生綱房らと共謀して忠綱を追放。家督を奪い取り、宇都宮氏当主となった。	1523年の猿山合戦で結城政朝が宇都宮忠綱を破り宇都宮城から追放。政朝は芳賀高経ら反忠綱派の家臣と共謀して、忠綱の弟・興綱を傀儡の当主として擁立した。この時の興綱はわずか10歳であった。
最期	家臣・芳賀高経と対立し、主家乗っ取りの咎で強引に隠居させられ、のち自害を強要された。	興綱が成人して独自の行動を取るようになると、あくまで傀儡として扱いたいと考えていた芳賀高経らと対立するようになる。やがて争いに敗れた興綱は強引に隠居させられ、のち自害を強要された。

補足

『群書系図部集』所収「宇都宮系図別本」・『系図纂要』所収「宇都宮系図」などでは、宇都宮氏の系譜は忠綱・尚綱・興綱を兄弟としている。
1524年に古河公方・足利高基から上総武田家臣・長南三河守に充てた書状に「宇都宮事、名代若輩故、しかゞゝ共無之様候之間」と記されている。これは宇都宮家の当主が若年の誰かに変わったことを示している。
- 前述の通り、その前年の猿山合戦において忠綱は宇都宮城から追放されており、弟の興綱が当主の座に据えられている事を示していると考えられる。
しかし日光輪王寺の帳簿には、興綱について「享年61歳」と記録されている。
また、宇都宮忠綱の息子とする説まで存在する。

宇都宮氏ここまでの状況 … 宇都宮錯乱について

そもそも、興綱が当主となるまでの経緯を説明するためには、この頃の宇都宮氏と芳賀氏の複雑な事情を知っておく必要があるため、補足する。

下野宇都宮氏は15代当主・明綱に後継の男子がなく、重臣の芳賀氏から養子（16代・正綱。母は13代・持綱の娘）を迎えていた（※この箇所についても新説が唱えられているので注意が必要）。その為、必然的に外戚の芳賀氏の発言力がかなり大きくなっていた。

正綱の子である17代・宇都宮成綱は宇都宮氏中興の祖と称される、宇都宮氏を戦国大名へと成長させた人物である。その中で、家中の実権を握る芳賀氏はどうしても弱体化させる必要がある存在だった。そして1512年、成綱は芳賀高勝（高経の兄）を謀殺する。芳賀高経などの芳賀一族が挙兵するも、1514年までには鎮圧された。この宇都宮対芳賀の内紛を「宇都宮錯乱」と呼ぶ。