宗教法人法に従って法人格を取得した宗教団体のことを宗教法人という。
公益法人の1つであり、私益のために存在するのではなく公益(社会全体の利益)のために存在するとされる。
非営利団体の1つであり、代表権を持つ個人による持分が全くない。このため、宗教法人が当期純利益を出したとしても代表権を持っている個人に配当が支払われることがないし、宗教法人が解散したときも代表権を持つ個人に残余財産が分配されることがない。残余財産は他の宗教団体や公益法人に対して処分されたり、国庫に帰属したりする(資料)。
非営利団体の反対は株式会社である。株主には持分があり、株主が会社を所有する。株式会社が当期純利益を出したら株主へ配当金が払われることが多い。株式会社が解散するときは株主に残余財産が分配される。
宗教団体が宗教法人法に基づいて申請を行い、「法人格を有する宗教団体(宗教法人)」になると、大きな税制優遇を受ける。
最も顕著なものは法人税で、「宗教活動」で得られる法人所得に対して法人税を課税されず、「収益事業」で得られる法人所得に対してのみ法人税を課税されるようになる。さらに、「収益事業」に掛けられる法人税の税率は一般的な企業よりも安い税率となる。
ちなみに「宗教活動」と「収益事業」の区別はやや曖昧で、おみくじの販売は「宗教活動」となり、絵葉書の販売は「収益事業」となる。結婚式の挙式料は「宗教活動」となり、結婚式のついでに行われる披露宴の飲食サービス提供は「収益事業」となる(国税庁資料14~15ページ)。
その他にも、宗教法人は、境内建物及び境内地(宗教施設が立地する不動産)に関する不動産取得税、登録免許税、固定資産税、都市計画税などの租税が非課税になる。
さらに、宗教法人は法人名義で財産を所有することができる。「法人格を有していない宗教団体」が財産を所有する場合にはその団体に所属する個人が財産を所有する形態をとるが、財産の名義人になっている個人が死亡した場合に相続税をかけられてしまい、相続税で団体が弱体化することが多い。
宗教法人が信者から財産の生前贈与や死後遺贈を受けた場合、宗教法人は贈与税や相続税を支払う義務がない。
宗教法人に対して財産の生前贈与(無償譲渡)を行った信者には、本来ならば「その財産の時価で有償譲渡を行った」と見なされて譲渡所得税が掛かるが、国税庁長官により「その財産が宗教法人の公益事業に使われて公益の増進に寄与する。相続税・贈与税を不正に逃れる意図もない」と認められたら譲渡所得税が非課税になる。
※この項目の資料・・・記事1、記事2
、記事3
1つの都道府県の中に拠点を置く宗教法人は、その都道府県知事が所轄する。
複数の都道府県に拠点を持つ宗教法人は、文部科学大臣が所轄する。ただし文部科学省には直接的に宗教法人を所轄する部署が存在しないので、文部科学省の外局である文化庁の宗務課が所轄することになる。
宗教法人は、宗教法人法第43条に基づいて自発的に解散することができる。
宗教法人は、宗教法人法第81条に基づいて強制的に解散させられることがある。所轄庁(都道府県知事または文化庁長官)または利害関係人もしくは検察官の請求により、あるいは裁判所自体の職権により、裁判所が宗教法人に対して解散命令を発することができる。
解散した宗教法人は、「法人格をもたない宗教団体」になり、税制面での大きな優遇を受けられなくなる。
2022年9月の時点で、問題行動を起こした末に強制的に解散させられた宗教法人の例は、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教と霊感商法を繰り返した明覚寺(本覚寺)の2つに限られる(記事)。このことについては信教の自由の記事の「信教の自由の分類」の項目の『宗教的結社の自由の制約例』も参照のこと。
宗教家というものはだいたいにおいて教育熱心であり、宗教法人を運営する宗教家も例外ではない。
日本各地で宗教系の私立幼稚園や私立学校が設立されている。その中には宗教法人の名前を幼稚園名や学校名に付けている例も多い。
宗教法人は直接的に学校を運営することができない。学校教育法第2条により、学校を運営できるのは政府と地方公共団体と学校法人の3つのみに限られている。宗教法人を運営する宗教家が学校を運営したくなったら、学校法人を新たに設立する必要がある。
宗教法人を運営する宗教家が学校法人に対して影響を与えるためには、宗教法人から学校法人に出資するなどの手段を用いる必要がある。
宗教法人は幼稚園を直接的に運営することができる。宗教法人が運営する幼稚園を102条園[1]とか附則6条園[2]という。
ただし、1979年の時点で、宗教法人が新たに幼稚園を設立することが難しくなっている(資料244ページ)。
掲示板
5 ななしのよっしん
2023/10/20(金) 18:13:45 ID: 8FTlAIVQ/n
宗教法人へ課税すべきという声もあるがそれでも数十億円程度の税収にしかならない気もする。宗教法人に課税する場合だと一般的な法人税の税率・固定資産税から引き下げなければならないため
それでも靖国神社のような都心の一等地にある所だと、かなり重い税が課せられるため、税負担は容易ではない
6 ななしのよっしん
2024/08/05(月) 21:35:05 ID: zZSqZ9p0Em
だって、それ税収的に意味があるかじゃなくて、単なる反宗教的雰囲気による扇動で言われ続けてる話でしかないからな。
本堂とかに固定資産税賦課したら零細寺院はガンガン潰れるし、文化財保護に思いっきり反している上に、墓地が失われる危険性もある
法人税を全所得課税にしても元々法人税は赤字なら税額は出ないから税収的にどれほどの意味があるか不明だしなあ。
7 ななしのよっしん
2024/12/08(日) 00:01:57 ID: RtvFavqFIE
「その他にも、宗教法人は、境内建物及び境内地(宗教施設が立地する不動産)に関する不動産取得税、登録免許税、固定資産税、都市計画税などの租税が非課税になる。」
実際そうなんだけど、『無条件でそうなるものではない』ことは
説明したほうがいいかもしれない。
非課税を認められる条件として「純然たる宗教活動以外の用件に使わない」があり、
そうであることを証明する書類を法人から所轄庁に提出して
実地調査も受ける。
所轄庁から認定を受けるより前に登記しちゃったら、登記と同時に納付が必要な登録免許税を遡及で還付してもらうことはできない。
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最終更新:2025/03/27(木) 06:00
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