小国開放経済とは、経済学の用語である。
小国開放経済とは、貿易や国際的資本移動の自由があり、国内実質利子率の決定の自由がない体制のことを指す。
小国開放経済は2種類の体制に分けられる。
1.の国は、固定相場制を採用する小国開放経済の国であり、国際金融のトリレンマによって発生する3種類の国のうちの1つである。
2.の国は、変動相場制を採用する小国開放経済の国であり、世界各地に見られ、経済学における考察対象となっている。
1.の国も2.の国もマンデル=フレミングモデルで経済を分析することができる。
19世紀から20世紀初頭にかけて金本位制を導入していた諸国もこの体制を採用する国の典型例である。金本位制は金塊を一種の外国通貨と見なしつつ金塊と自国通貨の名目為替レートを固定する制度であって、固定相場制の1つである。
自由貿易の長所の1つは、企業の費用を削減できるところである。自由貿易をすると安価な外国商品を購入することができ、企業が原材料費などを削減しやすくなる。また自由貿易をすると企業経営者が労働者に「人件費の安い外国に対抗するため賃下げを受け入れろ」と言いやすくなり、労働運動を押さえ込みやすくなり、企業が労働者に支払う人件費を削減しやすくなる。
自由貿易の長所の1つは、企業の収益を増加させることができる点である。自由貿易をすると企業が海外の巨大な市場に商品を売り込むようになり、企業の収益の増加が期待できる。
固定相場制を採用する小国開放経済の国は固定相場制の長所を確保できる。
固定相場制を採用しているので、名目為替レートが固定され、物価が一定である短期において実質為替レートが固定される。このため、貿易の確実性が高く、企業の経営の見通しが立ちやすく、企業が在庫投資や設備投資を行いやすく、国家の投資が増えやすい。また、純輸出がプラスの国はその状態を持続させやすく、国家の純輸出が一定になりやすい。
自由貿易の短所の1つは、国内農林水産業を保護できず国内の田舎において人口空白地域が発生することを防げず、草ぼうぼうの荒れ地が発生することを防げず、凶悪犯罪者が凶悪犯罪の証拠を隠滅しやすくなる状況を作り出して国内治安を悪化させて国家全体の生産技術を劣化させるところである。治安が悪くなると、人々は生命・身体・自由・名誉・財産に危害を加えられることにおびえながら生活するようになって労働に集中できなくなり、労働者が職務専念義務を果たせなくなり、労働強化の逆が起こり、同一の労働時間であっても以前よりも生産が減るようになり、国家全体の生産技術が劣化する。国家全体の生産技術が劣化すると実質GDPや実質賃金や実質資本レンタル料や労働生産性Y/Lや資本生産性Y/Kがすべて下落するが、そのことはコブ=ダグラス生産関数で計算すれば明白である。
自由貿易の短所の1つは、国内工業や国内サービス産業を保護できず国内企業が価格競争で敗北しやすいようにすることで労働者が賃上げを求めにくくなる状況を作り出し、労働運動を沈静化させ労働者の賃金の引き上げを抑制し、人口減少を促進して言語や文化の統一性を悪化させて国家全体の生産技術を劣化させるところである。労働者の賃金が下がると、結婚率と出生率が下落して少子化と人口減少が促進され、移民の流入に頼るようになり、国内の言語と文化の統一性が悪化し、国内において情報が流通しやすい社会が維持できなくなる。社会の中で情報が流通しにくくなれば同一の労働時間であっても以前よりも生産が減るようになり、国家全体の生産技術が劣化する。国家全体の生産技術が劣化すると実質GDPや実質賃金や実質資本レンタル料や労働生産性Y/Lや資本生産性Y/Kがすべて下落するが、そのことはコブ=ダグラス生産関数で計算すれば明白である。
固定相場制を採用する小国開放経済の国は固定相場制の短所に直面することになる。
固定相場制を採用しているので、名目為替レートが固定され、物価が一定である短期において実質為替レートが固定される。このため、貿易の確実性が高く、企業の経営の見通しが立ちやすく、企業が在庫投資や設備投資を行いやすく、国家の投資が増えやすい。投資の余地が少ない先進国でそのような状態になると、過剰投資になり、需要が無いのに需要が有るかのように見せかけて投資家から融資を騙し取る投資詐欺を行う知能犯罪者が増え、不良債権が増え、バブル景気とバブル崩壊が発生し、長期にわたる深刻な不景気が発生する。
固定相場制を採用しているので、名目為替レートが固定され、物価が一定である短期において実質為替レートが固定される。純輸出がプラスの状態の国はその状態が維持されやすくなる。産業の規模が大きい先進国でそのような状態になると、「あの国は近隣窮乏化政策を実行している」と厳しく批判されやすくなる。
小国開放経済の国は、政府が財政政策を実行して中央銀行が金融政策を行うことで国内の実質利子率を自由に決定するという体制ではなく、国内実質利子率を自由に決定できない体制である。
小国開放経済の国は、経済学の教科書の教えに従えば、国内実質利子率が世界共通実質利子率r*とその国固有のリスクプレミアムθの合計値に等しくなる。
そして小国開放経済の国は、現実的には、国内実質利子率が固定相場制の対象となる通貨を発行する国の実質利子率に等しくなる。その典型例は香港であり、香港は米ドルを対象とした固定相場制を採用していて、アメリカ合衆国と同じ実質利子率になっている。
投資が増えすぎたときは過剰投資が発生してバブル景気とバブル崩壊が発生して大量の不良債権が生まれて長期にわたる不景気を作り出すので国内実質利子率を引き上げて投資を抑制せねばならないが、そうした経済政策を実行できない。このため小国開放経済の国はバブル景気とバブル崩壊が起きやすい。
投資が減りすぎたときは将来の資本量が減って将来において国家の生産力が低下するので国内実質利子率を引き下げて投資を促進せねばならないが、そうした経済政策を実行できない。このため小国開放経済の国は、投資がなかなか増えず資本量が少ない発展途上国のままでいる国になる可能性がある。
小国開放経済の国では、国際的資本移動を自由化するので、自国の企業が外国の企業を買収して傘下に収めることや、外国の企業が自国の企業を買収して傘下に収めることが発生しやすい。このため多国籍企業が発生しやすい。
先進国の企業が発展途上国の企業を買収して多国籍企業に成長していく現象は新植民地主義とか新帝国主義などと呼ばれる。
物価が一定の短期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で財政政策を拡大し、政府が国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、投資や純輸出が一定となり、政府購入または消費が増えた分だけ実質GDPが増え、中央銀行の外貨準備高が増える。
物価が一定の短期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で政府が国債を発行して、長期金融市場からお金を借り入れ、その資金を使って政府購入を増やして実質GDPを増やしたり、もしくはその資金を埋め合わせに使いつつ減税して国民の可処分所得Y-Tを増やして消費を増やして実質GDPを増やしたりしたとする。実質GDPが増えたので実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて国内名目利子率が上昇し[1]、短期で期待インフレ率が一定なので国内実質利子率も上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りを行う。固定相場制を維持する中央銀行が自国通貨売り・外国通貨買いを行うが、自国通貨売りによってマネーサプライMの供給が増え、短期で物価が硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給も増え、国内名目利子率が下がり[2]、短期で期待インフレ率が硬直的なので国内実質利子率も下がり、元通りの水準に戻る。こうして国内実質利子率と投資が維持される。また物価が一定の短期における固定相場制なので名目為替レートと実質為替レートと純輸出が維持される。このため政府購入や消費の増加によって発生した実質GDPの増加が打ち消されない。また、中央銀行が外国通貨買いをするので中央銀行の外貨準備高が増える。
タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルで説明すると次のようになる[3]。政府が財政政策を拡大して政府購入を増やすとIS*曲線が右に平行移動して名目為替レートが下落するが、固定相場制を維持することを課せられている中央銀行が自国通貨売り・外国通貨買いを行って名目為替レートを上昇させ、名目為替レートを維持する。中央銀行が自国通貨売りをするときはマネーサプライMの供給が増えるので、LM*曲線が右に平行移動する。また、中央銀行が外国通貨買いを行うので外貨準備高が増加する。以上から、国債発行で資金を調達して政府購入を増やすと、実質GDPが増え、中央銀行の外貨準備高が増える。
物価が一定の短期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で金融政策を拡大し、中央銀行が国債を買いオペしてマネーサプライMを増やすことがある。それを行うたびに中央銀行の外貨準備高が減っていく。つまり、中央銀行が政府の国債を買いオペすることは、中央銀行の外貨準備高が底を付くまでの間でしか行えない。また、そうした金融政策を実行したとき、国内実質利子率や投資や実質GDPが一定を保つ。
物価が一定の短期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で中央銀行が国債を買いオペすると、中央銀行がマネーサプライMの供給を増やすことになり、短期において価格Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給を増やすことになる。それにより国内名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので国内実質利子率も下落する。それに合わせて自国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨売り・外国通貨買いを行う。固定相場制を維持する中央銀行が自国通貨買い・外国通貨売りを行うが、自国通貨買いによってマネーサプライMの供給が減り、短期において価格Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給を減らすことになり、国内名目利子率が上昇し、短期において期待インフレ率が硬直的なので国内実質利子率も上昇し、元通りの水準に戻る。国内実質利子率が一定なので投資が一定になり、実質GDPも一定になる。そして中央銀行が外国通貨売りをするので中央銀行の外貨準備高が減っていく。
タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルで説明すると次のようになる[4]。中央銀行が市場に流通する国債を買いオペしてマネーサプライMの供給を増やすとLM*曲線が右に平行移動して名目為替レートが上昇するが、固定相場制を維持することを課せられている中央銀行が自国通貨買い・外国通貨売りを行って名目為替レートを下落させる。中央銀行が自国通貨買いをするときはマネーサプライMの供給が減るので、LM*曲線が左に平行移動する。また、中央銀行が外国通貨売りを行うので外貨準備高が減少する。以上から、中央銀行が国債を肩代わりすると、マネーサプライMや実質GDPが一定を保ち、外貨準備高が減少していく。
前項目と本項目を合わせると次のようになる。物価が一定の短期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で政府が国債を発行してお金を借り入れて政府購入を増やすと、実質GDPが上がっていったんは中央銀行の外貨準備高が増える。その国債を中央銀行に肩代わりさせて返済するときに実質GDPが一定となり、中央銀行の外貨準備高が減る。
物価が一定の短期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で貿易政策を拡大し、関税を高めて輸入を減らすと、純輸出と実質GDPが増える。
物価が一定の短期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で政府が関税を引き上げ、輸入を減らす。純輸出が増えて実質GDPが増え、実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて名目利子率が上昇し、短期で期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りを行う。固定相場制を維持する中央銀行が自国通貨売り・外国通貨買いを行うが、自国通貨売りによってマネーサプライMの供給が増え、短期で物価が硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給も増え、国内名目利子率が下がり、短期において期待インフレ率が硬直的なので国内実質利子率も下がり、元通りの水準に戻る。こうして国内実質利子率と投資が維持される。また、中央銀行が外国通貨買いをするので中央銀行の外貨準備高が増える。以上をまとめると、貿易政策を拡大して関税を高めて輸入を減らすと、純輸出と実質GDPが増え、外貨準備高が増える。
タテ軸実質為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミング・モデルで考えると次のようになる[5]。政府が関税を高くして輸入を減らすと純輸出が増えるのでIS*曲線が右に平行移動し、名目為替レートに下落圧力がかかる。名目為替レートに上昇圧力を掛けて名目為替レートを維持するため、中央銀行がマネーサプライMの供給を増やして自国通貨売り・外国通貨買いをして、LM*曲線を右に平行移動させる。こうして純輸出と実質GDPが増加し、外貨準備高が増える。
この政策を追求していくと、自由貿易を支持せず保護貿易を支持するようになるため、小国開放経済の国の要素が薄れて閉鎖経済の国の要素が濃くなっていく。
物価が変動する長期において固定相場制を採用する小国開放経済の国で財政政策を拡大し、政府が国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、実質利子率が一定を保って投資が一定を保つが、実質為替レートが下落して純輸出が減少する[6]。
「長期において実質GDPが一定を保つ」という自然率仮説を採用するのなら、政府購入や消費の増加幅は純輸出の減少幅と一致する。
固定相場制を採用する小国開放経済の国であっても、外貨準備高が底を付いたので通貨切り下げ(自国通貨安への誘導すなわち名目為替レートの上昇への誘導)をすることがあるし、国内物価の上昇を抑制するために通貨切り上げ(自国通貨高への誘導すなわち名目為替レートの下落への誘導)をすることがある。
19世紀から20世紀初頭にかけて金本位制を導入していた諸国は、固定相場制を採用する小国開放経済の国である。そうした国でもしばしば自国通貨と金塊の交換レートを変更していた。たとえば1930年代の世界恐慌のとき、デンマーク・フィンランド・ノルウェー・スウェーデン・イギリスは金本位制を維持しつつ、自国通貨1単位に対して支払う金塊の量を50%も減らし、自国通貨を金塊に対して切り下げした[7]。
固定相場制を採用する小国開放経済の国がそうしたことを行った場合、固定相場制をあきらめて変動相場制を導入したことと似たような状況になる。
「固定相場制を採用する小国開放経済の国」と「変動相場制を採用する小国開放経済の国」の違いは、さほど厳密なものではない[8]。
物価が一定の短期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で財政政策を拡大し、政府が国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、それと同じだけ純輸出が減り、実質GDPが一定を保つ。
物価が一定の短期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で政府が国債を発行して、長期金融市場からお金を借り入れ、その資金を使って政府購入を増やして実質GDPを増やしたり、もしくはその資金を埋め合わせに使いつつ減税して国民の可処分所得Y-Tを増やして消費を増やして実質GDPを増やしたりしたとする。実質GDPが増えたので実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて国内名目利子率が上昇し、短期で期待インフレ率が一定なので国内実質利子率も上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りを行い、自国通貨高・外国通貨安になって名目為替レートが下落する。短期で物価が硬直的なので実質為替レートも下落し、純輸出が減り、実質GDPが減る。実質GDPが減るので実質貨幣残高M/Pへの需要が減って国内名目利子率が下がり、短期で期待インフレ率が一定なので国内実質利子率も下がり、元通りの水準に戻る。政府購入または消費の増加による実質GDPの増加幅と純輸出の減少による実質GDPの減少幅がぴったり一致し、実質GDPが一定を保つ。
タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルで説明すると次のようになる[9]。政府が財政政策を拡大して政府購入を増やすとIS*曲線が右に平行移動し、名目為替レートが下落し、短期において物価が硬直的なので実質為替レートも下落し、純輸出が減る。こうして実質GDPが一定を保つ。
物価が一定の短期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で金融政策を拡大し、中央銀行が国債を買いオペしてマネーサプライMを増やすと、純輸出が増えて実質GDPが増える。
物価が一定の短期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で中央銀行が国債を買いオペすると、中央銀行がマネーサプライMの供給を増やすことになり、短期において価格Pが硬直的なので実質貨幣残高M/Pの供給を増やすことになる。それにより国内名目利子率が下落し、短期において期待インフレ率が硬直的なので国内実質利子率も下落する。それに合わせて自国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨売り・外国通貨買いを行う。自国通貨安・外国通貨高になり、名目為替レートが上昇し、短期で物価Pが硬直的なので実質為替レートも上昇し、純輸出が増える。純輸出が増えて実質GDPが増えるので実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて名目利子率が上がり、短期で期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上がり、元通りの水準に戻っていく。以上をまとめると、金融政策を拡大して、マネーサプライMの供給を増やすと、純輸出が増え、実質GDPが上がる。
タテ軸実質為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミング・モデルで考えると次のようになる[10]。物価が一定の短期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で中央銀行が国債を買いオペして、マネーサプライMの供給を増やすと、LM*曲線が右に平行移動し、名目為替レートが上昇し、短期において物価が硬直的なので実質為替レートが上昇し、純輸出が増える。以上をまとめると、金融政策を拡大して、マネーサプライMの供給を増やすと、純輸出が増え、実質GDPが上がる。
物価が一定の短期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で貿易政策を拡大し、関税を高めて輸入を減らしても、純輸出と実質GDPが一定を保つ。
物価が一定の短期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で政府が関税を引き上げ、輸入を減らす。純輸出が増えて実質GDPが増え、実質貨幣残高M/Pへの需要が増えて名目利子率が上昇し、短期で期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が上昇する。それに合わせて外国発のキャリートレードが発生し、国際的投資家が自国通貨買い・外国通貨売りを行う。自国通貨高・外国通貨安となって名目為替レートが下落し、短期で物価Pが硬直的なので実質為替レートも下落し、純輸出が減り、実質GDPが減る。実質GDPが減るので実質貨幣残高M/Pへの需要が減って名目利子率が下がり、短期で期待インフレ率が硬直的なので実質利子率が下がり、元通りの水準に戻っていく。以上をまとめると、貿易政策を拡大して関税を高めて輸入を減らしても、純輸出と実質GDPが一定を保つ。
タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルで説明すると次のようになる[11]。関税を高めて輸入を減らすとIS*曲線が右に平行移動し、名目為替レートが下落し、短期において物価が硬直的なので実質為替レートも下落し、輸出が減る。こうして純輸出と実質GDPが一定のままとなる。
物価が変動する長期において変動相場制を採用する小国開放経済の国で財政政策を拡大し、政府が国債を発行してお金を借り入れてから政府購入または消費を増やすと、実質利子率が一定を保って投資が一定を保つが、実質為替レートが下落して純輸出が減少する[12]。
「長期において実質GDPが一定を保つ」という自然率仮説を採用するのなら、政府購入や消費の増加幅は純輸出の減少幅と一致する。
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最終更新:2025/12/07(日) 18:00
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