巨椋池とは (オグライケとは) [単語記事]

巨椋池とは、かつて我が国に存在した巨大な池である。

概要

現在の京都市伏見区から、宇治市、久御山町にまでまたがって存在した巨大な池である。周囲16平方km、流域面積8平方キロメートルと、京都府最大の淡水湖であったともいわれている。

京の都が存在したあたりは、盆地であるため雨水が流入しやすかった。その上、宇治川や桂川、木津川の三川が合流し、山崎の天王山と石清水八幡宮の所在する男山に挟まれた狭い地形であるため、水はけが悪く、このような巨大な池が誕生したと言われている。

当然ながら古くから存在しており、我が国最古の歌集である『万葉集』にも柿本人麻呂によって「巨椋の　入江とよむなり　射目人の　伏見が田居に　雁わたるらし」と詠まれるほど、この池は我が国の歴史と共に有り続けていたことが伺える。

平安京と平城京の中間地点に位置していたことから、水上交通の要として用いられ、また平安時代には避暑のために藤原氏などの貴族が周辺に別荘を建てて詩歌管弦に興じたことも知られている。宇治の平等院もその背景がもとに造られており、藤原氏累代の権力の象徴として残り続けている。また、漁業も盛んに行われている。

豊臣秀吉の時代になると、巨椋池の近くで伏見城が建築され、それに伴っていくつもの大きな堤防が作られて巨椋池は4つに分割される。そのため、江戸時代には単に大池と呼ばれるようになり、境界ができたことからその周囲に住む漁師や農民の利水に関する争いが起き、中には江戸にわざわざ直訴するほどの大問題に発展したこともあったという。

明治時代に入ると、巨椋池の折からの洪水が問題となったため、少しずつ改修工事が行われていたが、1910年の淀川の大規模改修工事によって、巨椋池に流入する川はなくなり、水位低下や水質汚濁が新たな問題として取り上げられるようになった。水位が低下したことによって水草が繁茂した為、蚊が大量に湧くようになり、1927年にはマラリア流行指定地にされるなど衛生面での問題が深刻化していった。また、これらの影響で漁獲量も大幅に減ったため、漁業が立ちいかなくなり、生活排水や農業排水によって汚泥ができたため、農業も立ちいかなく成るなど、巨椋池は事実上その機能を停止していた。

そこで1933年から国は重い腰を上げて、遂に巨椋池の干拓を決断。8年がかりのこの大事業はこの巨大な池を634 ヘクタールに及ぶ農地に変えた。この農地だけで実に4500 トンに及ぶ農産物が生産され、戦後の食糧難を救う力となった。そして現代においても京都と大阪にまたがる穀倉地帯として、この地は存在し続けている。